法人の税務調査|何年に一度来るのか・どんな会社が選ばれるか
「設立して8年、まだ一度も来ていません。そろそろでしょうか」。「黒字が続くと来やすいと聞いたのですが」――法人の調査については、頻度の話が必ず出ます。
法人税の実地調査は、令和6事務年度で5万4千件でした。同じ年度の法人税の申告件数は322万件です。単純に割れば年間1.7パーセント、計算上は数十年に一度になります。ただし、この平均を自社に当てはめることはできません。件数は業種・規模・過去の指摘の有無で大きく偏るためです。
税理士法人Light UPでは、頻度を気にするより、来たときに説明できる状態かどうかで見ることをお勧めしています。頻度は自社で動かせませんが、説明できる状態かどうかは動かせるからです。
この記事では、法人の調査の頻度、選ばれ方、業種と規模による違い、そして中小企業が押さえておく備えを、国税庁の公表数値に沿って整理します。
法人の調査は年間5万4千件
結論: 令和6事務年度の法人税の実地調査は5万4千件で、前事務年度の5万9千件から7.4パーセント減少しました。
国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」によれば、実地調査の件数は5万4千件、申告漏れ所得金額の総額は8,198億円、追徴税額の総額は3,407億円です。追徴税額は直近10年で最高値と示されています。
調査1件当たりの追徴税額は634万円で、前年から15.4パーセント増えました。直近10年で2番目の水準です。
法人消費税の実地調査は5万3千件、追徴税額は1,220億円。源泉所得税の実地調査は6万4千件、追徴税額は404億円でした。法人税だけの話ではありません。
何年に一度来るのか
結論: 法人税の申告件数322万件に対し実地調査は5万4千件で、単純に割ると年間1.7パーセント程度です。
国税庁「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によれば、令和6年度における法人税の申告件数は322万件でした。実地調査5万4千件をこれで割ると、1.7パーセント程度になります。
「20年やっていて2回来ました」という会社もあれば、「30年で一度もない」という会社もあります。平均は、来ない会社が長く来ないことで押し下げられているだけです。
売上規模が大きい、現金商売、過去に不正計算を指摘された、消費税の還付申告が続いている、海外取引がある。これらに当てはまるほど、間隔は短くなります。
選定はどう行われているか
結論: 選定では、予測モデルによるリスク判定と、調査官による申告書・資料情報の分析が組み合わされています。
予測モデルによる絞り込みと調査官の分析
国税庁は、予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、想定される不正パターンを判定したうえで、申告書や保有する資料情報を調査官が分析し、最終的に実施の要否を判断すると説明しています。モデルによる抽出のあとに、調査官による確認が入る2段構えです。この2段階を経て初めて着手が決まるという順序そのものに意味があります。
公表された事例と、件数を絞る方針
同資料には、モデルが原価にリスクありと判定した法人について、調査官が決算書の原価を重点的に検討した結果、取引実態のない外注費を把握し、約3億6千万円を追徴した事例が掲載されています。
件数が7.4パーセント減る一方で、追徴税額の総額は6.6パーセント増えました。撃つ数を減らし、当たる確率を上げる方向に動いていることが数字に表れています。件数を絞りながら成果を上げているという点は、選定の精度そのものが上がっていることの裏返しでもあります。
業種による偏り
結論: 不正発見割合はバー・クラブが62.3パーセントと最も高く、現金でのやりとりが多い業種に集中しています。
不正発見割合が高い業種、金額が大きい業種
不正が見つかる割合は、業種によってはっきりした差があります。国税庁が毎年公表している上位の業種を見ると、現金取引が多い業種と、記録が残りにくい業種が並びます。まず数字を見ておきます。
| 順位 | 業種 | 不正発見割合 |
|---|---|---|
| 1 | バー・クラブ | 62.3パーセント |
| 2 | その他の飲食 | 45.2パーセント |
| 3 | 外国料理 | 40.2パーセント |
| 4 | 美容 | 34.5パーセント |
| 5 | 大衆酒場、小料理 | 34.4パーセント |
| 6 | 自動車修理 | 32.9パーセント |
不正1件当たりの不正所得金額で見ると、水運が1億1,103万円、その他の卸売が5,383万円、映画サービスが5,273万円、医薬品小売が5,144万円と、順位が入れ替わります。発見される割合が高い業種と、金額が大きい業種は必ずしも一致しません。
不正計算があった件数は全体の23.5パーセント
法人税の実地調査5万4千件のうち、不正計算があった件数は1万3千件で、割合は23.5パーセントでした。4件のうち3件は、不正計算の認定に至っていません。業種による偏りがあっても、それだけで狙われているとは限らず、大半の調査は不正の指摘なしで終わっているのが実態です。数字の偏りは、当てはめる業種を絞り込むための一つの材料にすぎません。
重点課題に挙がっている3つ
結論: 国税庁は、消費税還付申告法人、海外取引法人等、無申告法人の3つを重点課題として位置づけています。
還付申告法人に対して総額299億円の消費税が追徴され、うち不正計算に係るものは51億円でした。輸出取引がある会社は、書類の整合が確認されます。
海外取引に係る申告漏れ所得は2,096億円、海外取引等に係る源泉徴収漏れは72億円が追徴されています。外国の税務当局への情報交換要請が活用された事例も公表されています。
無申告法人に対しては総額355億円の法人税・消費税が追徴され、うち228億円が不正計算に係るものでした。申告していないから対象外、ということはありません。
規模による違い
結論: 資本金や売上の規模が大きくなるほど調査の間隔は短くなり、所管する部署も変わります。
税務署所管と調査課所管の分かれ目
一定規模以上の法人は、税務署ではなく国税局の調査部門が担当します。日数も、確認される範囲も変わります。
多くの中小企業は税務署の所管です。実地調査は1日から3日、担当は1名から2名という形が一般的です。
所管が変わるのは、資本金や事業規模が一定の水準を超えたときです。増資や事業の拡大を検討している会社は、税務面の対応窓口も変わり得ると知っておくと、あとから慌てません。
規模が小さくても対象になる
売上数千万円の会社にも調査は来ます。規模ではなく、申告内容と資料情報の突合で選ばれるためです。従業員が数名の会社でも、取引先の調査から資料が回ってくれば確認の対象になります。「うちは小さいから来ない」という思い込みは、この選定の仕組みと噛み合いません。規模の大小よりも、申告内容と外部から集まる情報の突合が優先される仕組みだからです。
設立からの年数と決算期
結論: 設立から3期程度で来ることもあり、決算期の直後に集中するといった規則性はありません。
初回の調査が設立5年目という会社もあれば、10年以上来ない会社もあります。「まだ設立して間もないから」という理由で外れるわけではありません。
税務署の事務年度は7月から翌年6月までです。7月以降に着手される調査が多い、という傾向はあります。ただし、決算期との明確な関係はありません。
「決算月を変えれば調査を避けられますか」と聞かれることがあります。選定は申告内容と資料情報で行われるため、決算月の変更で頻度が変わるものではありません。
黒字・赤字と調査の関係
結論: 赤字であっても調査の対象になり、欠損金に関わる更正は10年まで可能とされています。
赤字でも消費税の納税義務はあり、源泉所得税の徴収義務もあります。法人税がゼロでも、確認すべき税目は残ります。
国税通則法第70条第2項は、法人税の純損失等の金額を増減させる更正について、10年を経過する日まで可能としています。繰越欠損金がある会社は、古い期の金額が論点になります。
赤字が続いたあとに黒字へ転じた年、あるいはその逆。数字が大きく動いた年は、理由を説明できるようにしておくことです。
中小企業で見られる場所
結論: 中小企業の調査では、売上の計上時期、外注費、人件費、在庫、そして役員に関する支出が中心になります。
役員と会社の境目にある支出
社宅、車両、交際費、役員貸付金。会社の支出でありながら、個人の生活と地続きになりやすい部分です。役員賞与と認定されれば、損金不算入に加えて源泉所得税も生じます。これらは金額の多寡だけでなく、誰のための支出かという線引きが問われる項目です。会社の経費として説明できるかどうかが、確認の出発点になります。
家族への給与と、期末付近の取引
勤務の実態、金額の妥当性、他の従業員との均衡。名前だけで給与を出している状態は、確認の対象になります。実際に働いているかどうかは、タイムカードや業務日誌といった記録で示せるようにしておきます。
売上の計上時期、仕入の計上時期、在庫の数量。決算日をまたぐ取引は、意図がなくてもずれます。期をまたぐ取引ほど、日付と実態の対応を丁寧に確認しておく必要があります。
調査に来る人数と日数
結論: 中小企業の実地調査は、調査官1名から2名、日数は1日から3日という形が一般的です。
売上規模が大きい、事業所が複数ある、論点が複数の税目にまたがる。こうした場合は3名以上で来ることもあります。人数は、確認する範囲の広さを表しています。
初日で完結することはほとんどありません。追加で依頼された資料をそろえ、後日やりとりが続きます。全体では1か月から3か月かかることが多くなります。
会議室が1つあれば足ります。「立派な部屋がなくて」と気にされる方がいますが、机と椅子、資料を広げられる広さがあれば問題ありません。
前回からの間隔をどう読むか
結論: 前回の調査で指摘が多かった会社ほど次の間隔が短くなり、是認で終わった会社は間隔が空きやすくなります。
指摘なしで終わった会社は、次までの間隔が長くなる傾向があります。逆に、不正計算が認定された会社は、その後も確認の対象になりやすくなります。
「もう直したから大丈夫だろう」と思われがちですが、次の調査では、指摘された項目がその後どう処理されているかを最初に見られます。直したことを資料で示せる状態にしておくことです。
10年ぶりの調査であれば、その間の変化を一から確認することになります。間隔が長いことは、当日が楽になることを意味しません。
グループ会社がある場合
結論: 関連会社との取引がある場合、一方の調査から他方へ確認が広がることがあります。
グループ間の外注、賃貸、貸付け、経費の負担。片方が費用に計上していれば、相手方には収入があります。金額と時期が一致しているかを確認されます。
実質的に一体で運営されている会社同士では、同じ時期に調査が行われることがあります。片方だけ準備しておけばよい、とはなりません。
グループ間の取引価格は、第三者との取引と比べて妥当かを問われます。決めた時点で根拠を残しておけば、あとから説明できます。
役員が両社を兼務している場合は、報酬の負担割合も確認されます。どちらの会社の業務にどれだけ従事しているのか、決め方を書面にしておくことです。
中小企業ができる備え
結論: 備えは、月次で締めること、原始資料を保存すること、判断の理由を残すことの3つに集約されます。
月次で締め、判断の理由を1行残す
年に一度まとめて処理していると、3年前の取引の理由を誰も覚えていません。月次で締めていれば、記憶が新しいうちに処理と説明が固まります。
締める習慣がつくと、次は判断の記録です。数字が合っていることと、なぜその処理にしたかを説明できることは別です。
なぜこの支出を会議費にしたのか。なぜこの外注先の単価を上げたのか。判断した時点でメモを残しておけば、数年後に説明できます。
論点になりそうな処理を先に共有し、帳簿書類の保存を確認する
自社に固有の論点は、経営者自身が心当たりを持っていることがほとんどです。顧問税理士と先に共有しておけば、当日に慌てません。
国税庁のタックスアンサー「帳簿書類等の保存期間」によれば、法人は帳簿と書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間、青色欠損金が生じた事業年度は10年間保存しなければならないとされています。
決算書のどこが目に留まるか
結論: 申告書と決算書を数年分並べたときに、説明のつかない動きがあると確認の対象になります。
数年分を並べると見える。よく見られる比率
売上が横ばいなのに外注費だけが伸びている、粗利率が前期から大きく下がった、期末だけ在庫が急に減っている。1年分では分からなくても、3年並べれば動きが見えます。
- 粗利率の推移(同業と比べて低い、年によって振れが大きい)
- 外注費と人件費の比率(区分が入れ替わっていないか)
- 役員報酬と利益の関係(利益に合わせて後から動いていないか)
- 現金残高(実際の有り高と帳簿が合っているか)
- 役員貸付金の残高(増え続けていないか)
動いた理由があれば問題ない。現金残高は特に見られる
原材料が上がった、大口の受注が入った、設備を入れ替えた。理由があるなら説明できます。問われているのは数字そのものではなく、理由が言えるかどうかです。
比率が動いていても、理由が言えれば止まりません。
帳簿の現金残高が実際より多い状態が続いていると、売上の計上漏れか、記録されていない支出があるとみられます。日々の現金合わせは、地味ですが効果のある備えです。
連絡を受けたときにすること
結論: 通知の電話では通知事項を控え、その場で日程を確定させず、顧問税理士へ共有するところから始めます。
最初の手順
- 相手と通知事項を控える:所属官署と職員の氏名、対象税目、対象期間、開始日時と場所
- その場で確定させない:社内の予定と資料の状態を確認してから折り返す
- 顧問税理士へ共有する:対象期間の帳簿と証憑の所在を一緒に確認する
- 準備の逆算表を作る:当日までに何をどこまで揃えるかを決める
- 社内の担当を決める:資料を出す人、質問に答える人を先に決めておく
日程は協議を求められる。慌てて数字を直さない
国税通則法第74条の9第2項は、合理的な理由を付して日時や場所の変更を求められた場合、税務署長等は「当該事項について協議するよう努めるものとする」と定めています。繁忙期や資料の保管場所の事情は、伝えて構いません。
通知を受けてから帳簿を作り直す、日付を書き換える。これらは仮装隠蔽と評価される行為で、負担が跳ね上がります。準備とは、あるものを揃えることであって、作ることではありません。
調査が終わったあとにすること
結論: 調査が終わったら、指摘された項目の処理を翌期以降どう変えるかまで決めて、記録に残します。
前回の指摘がその後どう処理されているかは、次の機会に必ず確認されます。修正申告を出して終わりにすると、同じ論点をもう一度説明することになります。
外注費の区分を指摘されたなら契約書の形を、交際費を指摘されたなら支出時の記録の取り方を変えます。担当者の注意に頼る運用に戻すと、数年後に同じ状態へ戻ります。
指摘なしで終わったなら、そのときの処理の考え方が確認できたということです。何をどう説明して是認に至ったかを残しておけば、次回の準備がそこから始められます。
よくある相談事例|法人の3つの場面
設立6年目で初回の調査を受けた製造業/10年ぶり2回目だった小売業
売上が3期連続で伸びていた会社です。外注費の増加について理由を整理し、契約書と作業実績を並べて説明しました。指摘は在庫の計上時期の1件にとどまっています。
初回かどうかで、確認される範囲も変わります。
前回の調査で交際費の指摘を受けていました。今回はその項目の処理が変わっているかを確認され、運用が改まっていることを資料で示しています。
消費税の還付が続いていた卸売業/赤字が続いていたサービス業
輸出取引の割合が高く、還付申告が続いていました。通関書類と請求書、入金の記録を紐づけた一覧を作成し、取引の実在を説明しています。
還付が続く会社と、赤字が続く会社。どちらも数字の動きから説明を求められます。
法人税はゼロでしたが、源泉所得税と消費税の確認が行われました。「赤字なのになぜ」と驚かれましたが、税目は法人税だけではありません。
よくある質問
法人の税務調査は何年に一度くらい来ますか?
設立して間もない会社にも来ますか?
赤字でも調査は来ますか?
一度指摘を受けると、また来やすくなりますか?
顧問税理士がいれば調査は来ませんか?
まとめ:頻度は動かせないが、状態は動かせる
法人税の実地調査は年間5万4千件、申告件数322万件に対して1.7パーセント程度です。ただし平均は実感とずれます。現金商売、売上規模の大きい会社、過去に指摘を受けた会社ほど、間隔は短くなります。
選定は、予測モデルによるリスク判定と調査官の分析の組み合わせで行われています。件数を絞って1件当たりの追徴が増えている以上、確率の低さを前提にするのは現実的ではありません。
一方で、不正発見割合は23.5パーセントです。4件のうち3件は不正計算の認定に至っていません。調査=不正の指摘、という受け止め方も実態とは違います。
やることは3つだけです。月次で締める、原始資料を残す、判断の理由を1行書く。頻度は選べませんが、来たときの状態は選べます。
税務調査への対応に不安をお持ちの方や、自社の処理で説明が弱い箇所を確認しておきたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近3期の申告書と試算表から、論点になりやすい項目を洗い出します。
出典
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月)
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」(令和7年10月)
- 国税庁「帳簿書類等の保存期間」(タックスアンサー・令和7年4月1日現在法令等)
- 財務省「加算税制度の概要」
- e-Gov法令検索「国税通則法」第68条・第70条
- 国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて」(事務運営指針・令和8年6月30日改正)
【メタディスクリプション】
法人の税務調査について、頻度と選ばれ方を国税庁の公表数値から整理しました。年間5万4千件という件数、申告件数322万件との比較、業種別の不正発見割合、重点課題の3分野、規模や赤字との関係、中小企業ができる備えまで解説します。



