運転資金の回転期間の計算式|資金不足の原因を日数で調べる方法
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
運転資金の回転期間は、運転資金(売上債権+棚卸資産−仕入債務)を月商(1か月あたりの売上高)で割って求めます。月商の何か月分の資金が、代金の回収待ちと在庫に固定されているかを示す数字です。売上債権は売掛金や電子記録債権(でんさい)のようにまだ入金されていない売上代金、棚卸資産は在庫、仕入債務は買掛金のようにまだ払っていない仕入代金を指します。この記事では、計算の手順、間違えやすい点、売上が増えると資金が足りなくなる理由、回転期間を短くする方法を整理します。紙の手形は2027年3月末までの交換廃止が示されているため、でんさいの扱いも書きます(2026年10月時点)。
運転資金の回転期間の計算式は?
結論: 運転資金は「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で出し、これを月商で割ると運転資金回転期間(月商の何か月分か)になります。3つの数字は貸借対照表から拾います。
運転資金を出す計算式
運転資金とは、仕入や経費を先に払い、売った代金が入るまでの間、立て替えておく資金です。この額は、事業を続ける間、回収待ちの代金と在庫に固定されます。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務
3つの数字は、貸借対照表の次の科目から拾います。
- 売上債権:売掛金、電子記録債権、受取手形(流動資産)
- 棚卸資産:商品、製品、原材料、仕掛品(流動資産)
- 仕入債務:買掛金、電子記録債務、支払手形(流動負債)
財務諸表等規則の第15条は、通常の取引で生じた電子記録債権を、受取手形や売掛金と並べて流動資産に挙げています。紙の手形が残っていれば受取手形を、でんさいを使っていれば電子記録債権を、売掛金と一緒に足します。
3つの回転期間の求め方
回転期間は、残高が何日分(何か月分)の取引にあたるかを表します。決算書の年間の数字を使う計算式は次のとおりです。
| 指標 | 計算式 | 割る数 |
|---|---|---|
| 売上債権回転期間(日) | 売上債権 ÷(年間売上高 ÷ 365) | 売上高 |
| 棚卸資産回転期間(日) | 棚卸資産 ÷(年間売上原価 ÷ 365) | 売上原価 |
| 仕入債務回転期間(日) | 仕入債務 ÷(年間売上原価 ÷ 365) | 売上原価 |
| 運転資金回転期間(月) | 運転資金 ÷(年間売上高 ÷ 12) | 売上高 |
月数で出したいときは、365を12に替えます。仕入債務を仕入高で割る方法もあるので、前期と同じ方法で比べます。
説明用の金額で計算する
年間売上高が3億6,500万円(1日あたり100万円)、年間売上原価が2億9,200万円(1日あたり80万円)の会社で計算します。金額は説明用です。
| 項目 | 期末残高 | 回転期間 |
|---|---|---|
| 売上債権(売掛金とでんさい) | 6,000万円 | 60日 |
| 棚卸資産 | 4,000万円 | 50日 |
| 仕入債務(買掛金) | 3,200万円 | 40日 |
| 運転資金 | 6,800万円 | 月商の約2.2か月分(68日分) |
運転資金は6,000万円+4,000万円−3,200万円で6,800万円です。月商は約3,042万円なので、6,800万円÷3,042万円で、運転資金回転期間は約2.2か月になります。
運転資金の計算でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、でんさいの入れ忘れ、日数の足し引き、期末の一時的な残高の3つです。どれも必要な運転資金の見積もりがずれ、借入の額や銀行への説明に響きます。
銀行へ出す資金繰りの説明のために回転期間を計算したら前期より大きく短くなっており、調べると電子記録債権が計算から抜けていた、という相談があります。決算書から数字を拾うだけの計算ですが、拾う範囲と割る数でずれが出ます。
電子記録債権の入れ忘れ
紙の手形をでんさいに切り替えた会社は、貸借対照表に「電子記録債権」の科目が出ます。売掛金と受取手形だけを拾うと、売上債権が実際より小さくなり、回転期間も、必要な運転資金も、小さく出ます。
支払う側も同じです。でんさいで仕入代金を払っている会社は、「電子記録債務」の残高を仕入債務に加えます。入れ忘れると、仕入債務が小さくなって運転資金が大きく出ます。
日数の足し引き
3つの回転期間の日数を足し引きし、1日あたりの売上高を掛けて運転資金を出すと、金額が一致しません。売上債権は売上高で割り、棚卸資産と仕入債務は売上原価で割るため、日数の土台が違うからです。
前の例では、60日+50日−40日で70日、これに1日あたりの売上高100万円を掛けると7,000万円になり、実際の運転資金6,800万円とずれます。金額は、先に残高で運転資金を計算してから月商で割って出します。日数の足し引きは、資金が固定されている長さの目安にとどめます。
期末の一時的な残高
決算日の残高は、大口の入金が翌月初にずれ込んだ、月末に大きな仕入があった、といった事情で動きます。決算日だけで出すと普段の水準とずれるので、月次の試算表の数か月分も同じ方法で出して並べます。
間違えるとどうなるか
運転資金を小さく見積もると、売上が増える期に資金が足りなくなり、借入の申込みが間に合いません。大きく見積もると、使わない借入の利息を払います。借入の相談で必要な資金の根拠として回転期間を示すときも、拾い漏れがあると説明が通りません。
直近2期分の決算書と、取引先別の売掛金・買掛金の残高一覧をお持ちいただければ、3つの回転期間の拾い漏れと、日数が延びている原因を一緒に確かめます。
計算した日数はどう読む?
結論: 回転期間に正解の日数はなく、前期と、取引条件から想定される日数と比べて読みます。売上債権と棚卸資産は短いほど、仕入債務は長いほど、資金の負担は軽くなります。
売上債権回転期間の読み方
締日と支払日の条件から想定される日数と比べます。月末締めの翌月末払いで、売上が月の中で均等に立つなら、売上から入金までの平均はおよそ45日です。これを大きく上回るなら、条件どおりに回収できていない取引先があるので、取引先別の残高を並べて遅れている先を探します。
棚卸資産回転期間の読み方
在庫が仕入れてから売れるまでの日数です。生鮮食品を扱う事業では短く、機械や住宅設備を扱う事業では長くなるなど、業種による差が大きいので、まず自社の前期と比べます。延びているときは、売れ残っている品目が増えていないかを品目別に確かめます。
仕入債務回転期間の読み方
仕入代金を払うまでの日数です。他の2つと違い、長いほど資金の負担は軽くなります。ただし、約束の日を過ぎて払いが遅れた結果として延びている場合は、資金繰りが苦しくなっている合図です。
運転資金がマイナスになる場合
飲食店や小売店のように、販売と同時に現金が入る事業は、売上債権がほとんどありません。仕入代金を後で払う条件なら、仕入債務のほうが大きくなり、運転資金はマイナスになります。この、代金を払う前に手元へ入る資金を、回転差資金と呼ぶことがあります。
マイナスは、事業を回すために資金を立て替える必要がないという意味で、売上が増えるほど手元に資金が残ります。ただし、設備の支払いや借入の返済は運転資金とは別に出ていくので、資金に余裕があるとは限りません。
売上が増えると資金が減る理由は?
結論: 回転期間が同じなら、運転資金は売上に比例して増えます。増えた分が利益から税金などを引いた現金を上回ると、黒字でも手元の現金は減ります。
売上に比例して増える運転資金
回転期間が同じまま売上が2割増えると、売上債権も棚卸資産も仕入債務も、おおむね2割増えます。差し引きの運転資金も2割増えます。
前の例では、運転資金6,800万円が約8,160万円になり、1,360万円が追加で必要です(説明用の金額です)。税金や借入の返済を払った後の現金が1,360万円に届かなければ、売上が増えた年に現金は減ります。
増加運転資金の考え方
売上の増加にともなって追加で必要になる運転資金を、増加運転資金といいます。賄う方法は、利益、借入、回転期間の短縮の3つで、売上計画を立てる段階で計算しておきます。
黒字でも資金が尽きる仕組み
大口の受注が入った月は、仕入と外注の支払いが先に来て、入金は後になります。利益が出ていても、立て替えの増加が利益を上回れば資金が尽きます。いわゆる黒字倒産の主な仕組みです。
回転期間を短くするには?
結論: 売上債権は回収を早め、棚卸資産は在庫を減らし、仕入債務は支払いの条件を延ばします。取引先に関わるため、金額の大きい先から順に見直します。
回収を早める
締日と支払日の条件を見直す、前受金や手付金を受け取る、請求書を早く出す、といった方法です。回収が1日早まると、1日あたりの売上高の分だけ資金が戻ります。1日あたりの売上高が100万円の会社なら、10日短くして約1,000万円です(説明用の金額です)。
在庫を減らす
発注の回数を増やして1回の量を減らす、動きの遅い品目を絞る、といった方法です。減らしすぎて欠品が出ると売る機会を失うので、品目別の回転を出し、売れ残っているものから手をつけます。
支払いを延ばす限度
仕入先への支払いを延ばせば資金の負担は軽くなりますが、仕入先の資金繰りを圧迫します。対象は金額の大きい主要な仕入先に絞り、先に回収と在庫の見直しを検討します。
でんさいの割引と債権の譲渡
でんさいは、支払期日の前に取引金融機関で資金化できます(でんさいネット)。期日までの利息にあたる割引料が引かれるため、回収は早まりますが費用がかかります。売掛債権を譲渡して現金化する方法も手数料は契約ごとに違うので、同じ額を借入で用意した場合の金利と比べてから選びます。
紙の手形の廃止で何が変わる?
結論: 紙の手形は令和9年3月31日で廃止され、振り出せるのは令和8年9月30日までです。運転資金の計算では、受取手形の残高の代わりに電子記録債権の残高を入れます。
廃止の時期と金融機関ごとの期限
全国銀行協会は、2026年度末(2027年3月末)までに、電子交換所での手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを目標にしています。2025年3月26日の発表では、2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換を廃止することも決めました。
ただし、2027年度初から手形・小切手が使えなくなるわけではありません。交換を介さない個別の取立てになり、取扱いが金融機関の判断で変わる場合があります。紙の手形を振り出せるのは令和8年9月30日までで、それより後に振り出した手形・小切手は、原則として当座勘定から支払えなくなります。法律で禁止されたのではなく、銀行業界が自主行動計画で進める取組みです。
でんさいに切り替えたときの数え方
紙の手形の代わりになるのが、でんさい(電子記録債権)と、インターネットバンキングによる振込です。回転期間の計算式は変わらず、貸借対照表の科目が入れ替わります。
紙の手形とでんさいの取引先が混ざっている間は、受取手形と電子記録債権の両方を売上債権に足し、支払手形と電子記録債務の両方を仕入債務に足します。
よくある質問
運転資金回転期間とは何ですか?
回転期間は日数と月数のどちらで出しますか?
受取手形がなくなると、計算式は変わりますか?
どのくらいの頻度で計算すればよいですか?
まとめ:日数で資金不足の原因を探そう
- 運転資金は「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で出し、月商で割ると運転資金回転期間になります
- 売上債権にはでんさい(電子記録債権)を、仕入債務には電子記録債務を、忘れずに加えます
- 回転期間が同じなら、売上が増えた分だけ運転資金も増えます。黒字でも現金は減ります
- 改善は、回収を早める、在庫を減らす、支払いを延ばす、の順に検討します
決算書の数字から3つの日数を出したものの、でんさいの拾い漏れや割る数の取り違えがないか不安な方、売上が増える期に追加で必要な資金の額を決めたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近2期分の決算書と取引先別の残高一覧をもとに、3つの回転期間を出し直し、必要な運転資金の見通しを整理します。
出典
- 全国銀行協会「手形・小切手の廃止について」
- 全国銀行協会「手形・小切手の電子化に関する中間的な評価を踏まえた抜本的な取組み等について」(2025年3月26日)
- 株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)公式サイト
- e-Gov 法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)第15条
- e-Gov 法令検索「会社計算規則」(平成十八年法務省令第十三号)第74条・第75条





