貸借対照表の見方とは?初心者向けに資産・負債・純資産を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
貸借対照表は、決算日という一日の時点で、会社がお金をどこから集め(負債と純資産)、それが何に形を変えているか(資産)を示す表です。見方は3つの手順で足ります。負債と純資産の割合を見る、資産の中身を流動と固定に分けて見る、前の期と並べて増減を見る、の順です。資産の合計と、負債と純資産の合計は必ず一致します。この記事では、3つの部の中身、間違えやすい点、流動と固定の分け方、最初に見る数字、前の期との比べ方を、会社計算規則に沿って整理します(e-Gov法令検索、2026年10月時点)。
貸借対照表の見方は?
結論: 貸借対照表は、資産・負債・純資産の3つの部で一日の財産の状態を示します。負債と純資産でお金の出どころ、資産でその使い道を見て、前の期と並べて読みます。
3つの部に載っているもの
会社計算規則第73条は、貸借対照表を資産・負債・純資産の3つの部に区分して表示すると定めています。
| 部 | 意味 | 主な科目 |
|---|---|---|
| 資産 | 会社が持っているもの。お金がいま何に形を変えているか | 現金及び預金、売掛金、商品、建物、機械及び装置、土地 |
| 負債 | 将来、返す・払う義務があるお金 | 買掛金、未払金、預り金、借入金 |
| 純資産 | 返さなくてよいお金。出資してもらった分と、稼いで残した分 | 資本金、利益剰余金 |
資産の部を先頭に、負債の部、純資産の部の順に並ぶ形が一般的です。左右に並べる形でも、上下に並べる形でも、資産の部と、負債・純資産の部の2つのまとまりに分かれ、合計が一致する点は同じです。
読む順番は3つ
初めて見るときは、次の順に読むと迷いません。
- 負債と純資産の割合を見る。 返さなければならないお金と、返さなくてよいお金のどちらが厚いかが分かります。
- 資産の中身を見る。 現金や売掛金のように近いうちに現金になるもの(流動資産)が多いのか、建物や機械のように長く使うもの(固定資産)が多いのかを見ます。
- 前の期と並べる。 1期だけでは良し悪しは決まりません。増えた科目、減った科目を見ます。
資産の合計と、負債と純資産の合計が一致する理由
同じお金を、集め方(負債と純資産)と使い道(資産)の両面から書いているからです。説明用の金額で見てみます。
500万円を借りると、負債に借入金500万円、資産に現金及び預金500万円が同時に立ちます。その現金から400万円で機械を買うと、資産の中で現金及び預金が100万円、機械及び装置が400万円になるだけで、合計は500万円のまま変わりません。
貸借対照表の読み方でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、一日の断面を1年の成績と読むこと、帳簿の金額を今の値打ちと読むこと、流動資産に置けないものが混じっているのに気づかないことの3つです。
決算書を受け取って、利益は出ているのに貸借対照表の現金が少ないことに驚き、相談に来られる方が少なくありません。数字の合計ではなく、読み方の前提にずれがある場合が多くあります。
一日の断面を1年の成績と読む
決算日の直前に大きな入金があれば、現金及び預金は厚く見えます。直後に支払いが集中する予定があっても、その分はまだ載っていません。1期だけで会社の状態を決めると、決算日の巡り合わせに左右されます。3期分を並べるか、月次の試算表で追うと、偶然の偏りかどうかが分かります。
帳簿の金額を今の値打ちと読む
資産には、原則として取得したときの価額を付け、償却すべき資産は決算日に相当の償却をします(会社計算規則第5条第1項・第2項)。建物や機械の金額は、買った金額から減価償却で減らした後の額で、今売ったらいくらになるかを示してはいません。
例外として、決算日の時価が取得原価より著しく低く、回復すると認められない資産は時価まで減らします(同条第3項)。
流動資産に置けないものが混じっている
条文は、流動資産の現金及び預金から、1年内に期限が到来しない預金を除いています(第74条第3項第1号イ)。満期が決算日の翌日から1年を超える定期預金は、固定資産の投資その他の資産です。
売掛金も同じで、破産更生債権等(破産や再生手続きに入った取引先への債権など)のうち、1年内に弁済を受けられないことが明らかなものは除かれます(同号ハ)。こうした債権が売掛金のまま流動資産に残っていると、流動資産が実態より大きく見えます。
間違えるとどうなるか
流動資産が過大に見えれば、流動比率(後述)も良く出ます。融資の面談で内訳を聞かれて数字を訂正すると、決算書の信頼にかかわります。
直近の決算書と勘定科目内訳明細書をお持ちいただければ、預金と売掛金のなかに、流動資産として置けないものがないかを一緒に確かめます。
資産の部には何が載る?
結論: 資産の部は、流動資産・固定資産・繰延資産の3つに区分します(会社計算規則第74条第1項)。固定資産はさらに、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に分かれます。
流動資産と固定資産の主な科目
| 区分 | 主な科目 |
|---|---|
| 流動資産 | 現金及び預金、受取手形、売掛金、商品、製品、原材料、仕掛品、前払費用、前渡金 |
| 有形固定資産 | 建物、構築物、機械及び装置、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定 |
| 無形固定資産 | 特許権、借地権、商標権、ソフトウェア、のれん |
| 投資その他の資産 | 出資金、長期貸付金、関係会社の株式、繰延税金資産 |
| 繰延資産 | 繰延資産として計上することが適当と認められるもの |
科目の例は、条文第74条第3項に挙がっているものです。
並び順と繰延資産
資産の部は、現金に近いものから順に並べるのが一般的です。
繰延資産は、すでに支払った費用のうち、効果が将来に及ぶものとして資産に計上した、形のない資産です。載っていない会社もあります。
流動と固定はどう分ける?
結論: 本業の通常の取引で生じたものは流動、それ以外は決算日の翌日から1年以内に現金になる、または払う予定かどうかで分けます。1年を超えるなら固定です。
本業の通常の取引が先に来る
会社計算規則は、売掛金を「通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金」とし、通常の取引を「当該会社の事業目的のための営業活動において、経常的に又は短期間に循環して発生する取引」と定めています(第74条第3項)。
つまり、本業のサイクルのなかで生まれた売掛金や買掛金は、回収や支払いまで1年を超える条件でも、流動資産や流動負債に入ります。
それ以外は決算日の翌日から1年で切る
営業のサイクルの外にあるものは、期間で分けます。条文の「一年内」は、事業年度の末日の翌日から起算して1年以内の日までを指します(第74条第4項)。
| 項目 | 1年以内 | 1年を超える |
|---|---|---|
| 社長や取引先への貸付金 | 流動資産(その他の資産で1年内に現金化できると認められるもの) | 固定資産(長期貸付金) |
| 定期預金 | 流動資産(現金及び預金) | 固定資産(投資その他の資産) |
| 金融機関からの借入金 | 流動負債(1年内に返済されると認められるもの) | 固定負債(長期借入金) |
長期借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済する分は、流動負債に振り替えます。決算書では「1年内返済予定の長期借入金」という科目名で載ります。
負債の部と純資産の部には何が載る?
結論: 負債の部は流動負債と固定負債に分かれます。純資産の部は、返さなくてよいお金で、株主資本・評価・換算差額等・株式引受権・新株予約権に区分します。
流動負債と固定負債
負債の部の区分は、資産と同じ考え方です(会社計算規則第75条)。
| 区分 | 主な科目 |
|---|---|
| 流動負債 | 支払手形、買掛金、前受金、未払金、未払費用、預り金、引当金、1年内に返済する借入金 |
| 固定負債 | 社債、長期借入金、退職給付引当金、繰延税金負債 |
預り金は会社のお金ではない
条文は、流動負債の例として、通常の取引に関連して発生する未払金や預り金で、発生後短期間に支払われるものを挙げています(第75条第2項第1号ホ)。従業員から預かった源泉所得税や住民税、社会保険料の本人負担分がこれにあたり、いずれ国や自治体へ渡すお金です。借入金と違い、事業に使ってよいお金ではありません。
純資産の部の内訳
株式会社の純資産の部は、次のとおり区分されます(第76条)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 株主資本 | 資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式(控除項目) |
| 評価・換算差額等 | その他有価証券評価差額金など |
| 株式引受権・新株予約権 | 将来、株式に変わるもの |
資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に区分されます。決算書に「繰越利益剰余金」と書かれているのは、その他利益剰余金を細分した項目です(同条第5項・第6項)。
利益剰余金は積み上げの記録
設立以来の利益の累計から、配当などで社外へ出した分を引いた残りです。単年度の利益は損益計算書で分かりますが、何年分を積み上げてきたかは貸借対照表にしか出ません。
純資産がマイナスなら債務超過
資産より負債が多く、純資産の合計がマイナスになった状態です。赤字の累計が、資本金などを上回っています。自己資本比率と合わせた見方は、次の記事にまとめています。
最初に見る数字は?
結論: 貸借対照表から最初に出す数字は、流動比率・当座比率・自己資本比率の3つです。目安の数字より、同じ業種の平均と、自社の過去3期との比較で読みます。
流動比率と当座比率の式
| 指標 | 式 | 見ているもの |
|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 1年以内の支払いに、1年以内に現金になる資産がどれだけ対応しているか |
| 当座比率 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 | 在庫が売れなくても、支払いに耐えられるか |
当座資産は、現金及び預金、受取手形、売掛金、売買目的有価証券など、すぐ現金にできる資産で、流動資産から在庫を除いて考えます。
100%を下回るとき
流動比率が100%を下回るのは、1年以内に払うお金が、1年以内に入るお金より多い状態です。ただし、売掛金が少なく在庫の回転が速い飲食店や小売業では、100%前後で回る会社もあります。100%か否かだけでは決まらず、業種の平均と自社の前の期に並べて見ます。
自己資本比率と運転資金は別の記事で
純資産を総資産で割る自己資本比率は、別の記事にまとめています。売掛金と在庫に資金がどれだけ固定されているかを日数で見る方法は、次の記事に書きました。
前の期と比べるには?
結論: 3期分を並べ、科目ごとの増減を出します。資産が増えた分を負債と純資産のどれで賄ったかを追うと、お金の流れが一文で言えるようになります。
科目ごとの増減を出す
説明用の金額で、前の期から今の期への増減を見ます。
| 科目 | 増減 |
|---|---|
| 現金及び預金 | −800万円 |
| 売掛金 | +1,200万円 |
| 棚卸資産 | +500万円 |
| 機械及び装置 | +1,500万円 |
| 長期借入金 | +1,500万円 |
| 買掛金 | +300万円 |
| 利益剰余金 | +600万円 |
増えた資産を何で賄ったか
資産は、売掛金・棚卸資産・機械及び装置で合計3,200万円増えました。賄ったのは、借入金1,500万円、買掛金300万円、利益600万円の合計2,400万円と、現金及び預金の取り崩し800万円です。
一文にすると、借入と仕入先の支払いの猶予と利益で資金を集め、機械の購入と、売掛金・在庫の増加に使った、という流れです。
利益と現金がずれる理由も見える
この例では、利益剰余金が600万円増えたのに、現金及び預金は800万円減りました。利益が売掛金や在庫、機械に形を変えたためです。この仕組みは、キャッシュフロー計算書でも確かめられます。
よくある質問
貸借対照表と賃借対照表は、どちらが正しいですか?
流動比率は何%あれば安全ですか?
貸借対照表の利益は、どこに入りますか?
まとめ:資産・負債・純資産を3つの手順で読もう
- 貸借対照表は、決算日の一日の時点で、お金の出どころ(負債と純資産)と使い道(資産)を示す表です
- 読む順番は、負債と純資産の割合、資産の中身、前の期との比較です
- 流動と固定は、本業の通常の取引か、決算日の翌日から1年以内かで分けます
- 目安の数字を探すより、同じ業種の平均と自社の過去3期を並べます
決算書の数字の意味がつかめない方、金融機関に提出する前に内容を整理しておきたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近3期分の決算書と勘定科目内訳明細書を確認し、数字の動きとその理由を一緒に整理します。
出典
- e-Gov法令検索 会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)第5条、第73条、第74条、第75条、第76条





