損益計算書の見方をわかりやすく解説|利益が減った段階の見つけ方
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
損益計算書の見方は、上から順に5つの利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)を読み、利益が小さくなった段階を見つけることです。5つの利益は、売上高から原価、経費、利息、臨時の損益、税金を順に引いた途中経過なので、減った段階が分かれば、見直す費用の種類も絞れます。この記事では、読み方の手順と建設業の呼び方まで、会社計算規則と建設業法施行規則の原文(e-Gov 法令検索、2026年10月時点)に沿って整理します。
損益計算書は何から見る?
結論: 損益計算書は、売上高から順に5つの利益を上から読みます。どの段階で利益が小さくなったかを見つけるのが、最初の作業です。
5つの利益の早見表
5つの利益は、上の利益から次の利益へ、引くものと足すものが決まっています(会社計算規則89条から94条)。
| 利益 | 計算式 | 何を示すか |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 売上高 − 売上原価 | 商品やサービスそのものの利益(粗利) |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 本業の利益 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 借入の利息など財務の損益まで含めた、毎期続く利益 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | その期だけの臨時の損益まで含めた、税金を引く前の利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 税金を引いたあと、最後に会社に残る利益 |
法人税等は、法人税・住民税・事業税のことで、税効果会計を使う会社はこれに法人税等調整額を加減します。
並び順は法令で決まっている
損益計算書は、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7つに区分して表示します(会社計算規則88条)。他社や前期の決算書と並べて読めるのは、この区分が共通だからです。
損失と書かれているとき
利益の金額がマイナスのときは、売上総損失、営業損失、経常損失のように名前が変わります。どの段階から損失の表示になったかを見ると、赤字の入口が分かります。
利益の読み方でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、在庫の増減、役員報酬の水準、減価償却費の抜け、特別損益の区分の4つです。利益の見え方が実態からずれ、判断を誤ります。
決算書を受け取って、営業利益の金額だけで良し悪しを判断し、あとから費用の入れ方がずれていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。5つの利益は、どの費用をどの区分に入れるかで金額が変わります。
在庫が増えると利益が増えて見える
売上原価は、期首の在庫に当期の仕入れを足し、期末の在庫を引いて計算します。売れずに在庫が増えると、売上原価が小さくなり、売上総利益は大きく出ます。
売上が伸びていないのに売上総利益だけが増えた期は、在庫の増減を先に見ます。
役員報酬の水準で営業利益が動く
役員報酬は販売費及び一般管理費に入るため、報酬を上げれば営業利益は減り、下げれば増えます。社長一人の会社では、稼ぐ力は変わらないのに、報酬の設定だけで営業利益が大きく動きます。
報酬の額が違う期どうしは、営業利益をそのまま比べられません。前期と比べるときは、報酬を変えた期かどうかを先に確かめます。
減価償却費が抜けている
減価償却費は、使った設備の費用を何年かに分けて計上するもので、現金は出ていきません。計上が抜けると、費用が足りない分だけ営業利益が大きく見えます。
利益が出ている決算で、建物や車両があるのに減価償却費が小さい場合は、計上漏れがないかを確かめます。
特別損益が毎期出ている
特別損益は、その期だけ臨時に起きた損益を入れる区分です。同じ名前の特別損失が3期続いているなら、毎期起きる費用を特別損失に入れている疑いがあり、経常利益が実態より良く見えます。
特別損益の欄が毎期埋まっていたら、中身が臨時のものかを確認します。毎期続く費用なら、営業外費用か販売費及び一般管理費へ入れ直す対象です。
直近3期分の決算書と月次の試算表をお持ちいただければ、利益が減った段階と、費用を入れる区分に誤りがないかを一緒に確かめます。
売上総利益と営業利益は何を示す?
結論: 売上総利益は売上高から売上原価を引いた粗利で、値決めと仕入れの結果です。営業利益はそこから販売費及び一般管理費を引いた、本業の利益です。
売上総利益は値決めと仕入れの結果
売上原価は、売れた分の仕入れ代金(製造業なら製造にかかった費用)です。仕入れた金額ではなく、売れた分だけが入ります。売上総利益が前期より薄くなったときは、値引きの増加、仕入価格の上昇、売れる商品の入れ替わりを疑います。
売上総利益は粗利とも呼ばれますが、固定費と変動費に分けて出す限界利益とは別の数字です。
営業利益は本業の利益
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた額です。販売費及び一般管理費には、役員報酬、従業員の給料手当、地代家賃、広告宣伝費、減価償却費、租税公課、保険料などが入ります。売上原価に入らない、会社を動かす費用がここに集まります。
売上総利益は出ているのに営業利益が小さい会社は、販売費及び一般管理費が重い会社です。金額の大きい科目から前期と比べると、増えた費用が見つかります。どこまで売上が下がると赤字になるかは、損益分岐点で出せます。
経常利益は営業利益と何が違う?
結論: 経常利益は、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いた額です。借入の利息など、本業以外で毎期続く収支が加わります。
営業外収益と営業外費用
営業外収益の代表は受取利息と受取配当金、営業外費用の代表は支払利息です(建設業法施行規則の様式第十六号にも、受取利息及び配当金と支払利息が並びます)。毎期くり返し起きるため、臨時の損益とは分けて、営業利益の下に置きます。
営業利益との差の読み方
営業利益は黒字なのに経常利益が小さい、または赤字の会社は、借入の利息が営業利益を削っています。差が年々大きくなっているなら、借入が増えているか、利率が上がっています。
逆に、経常利益が営業利益より大きいときは、受取利息や雑収入など本業以外の収入が支えています。本業の力が落ちているのに、見かけの利益が保たれている状態です。
特別損益と当期純利益は何を示す?
結論: 特別損益はその期だけの臨時の損益、当期純利益は税金を引いたあとに残る額です。当期純利益は貸借対照表の純資産に加わります。
特別損益に入るもの
特別利益には固定資産売却益、前期損益修正益、負ののれん発生益などが、特別損失には固定資産売却損、減損損失、災害による損失、前期損益修正損などが入ります(会社計算規則88条)。事務所の建物を売った、使わない設備を処分した、災害で損害を受けた、といった臨時の出来事です。
経常利益と税引前当期純利益の差が大きい期は、臨時の出来事が起きています。その期の当期純利益だけで会社の力は判断できません。
法人税等を引いて当期純利益が出る
税引前当期純利益から法人税、住民税及び事業税などを引いた額が、当期純利益です。法人税等の科目の分け方は、法人税等の勘定科目の記事で詳しく説明しています。
貸借対照表の純資産に加わる
当期純利益は、配当などで社外へ出さなければ、貸借対照表の純資産の部にある繰越利益剰余金に加わります。黒字が続けば純資産が厚くなり、赤字が続けば削られます。
利益と現金は一致しない
当期純利益が出ていても、預金が同じ額だけ増えるとは限りません。売掛金のまま回収できていない、在庫に変わっている、借入の返済や設備の購入に使った、という理由で現金は減ります。利益が出ているのに資金が足りないときは、損益計算書では原因が見えません。
建設業の損益計算書はどう読む?
結論: 建設業の損益計算書は、売上高を完成工事高、売上原価を完成工事原価、売上総利益を完成工事総利益と呼びます。利益の順序は一般の会社と同じです。
建設業ならではの呼び方
会社計算規則は、売上高という項目に、業種に合う別の名称を付けることを認めています(88条1項1号)。建設業法施行規則の損益計算書の様式(様式第十六号)では、次のように呼びます。
| 一般の会社 | 建設業の損益計算書 |
|---|---|
| 売上高 | 完成工事高(建設業以外の事業があれば、兼業事業売上高を別に表示) |
| 売上原価 | 完成工事原価(兼業事業売上原価) |
| 売上総利益 | 完成工事総利益(兼業事業総利益) |
| 営業利益以降 | 営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益で同じ名前 |
建設業許可を受けている会社は、事業年度が終わるたびに、貸借対照表や損益計算書などを許可を受けた行政庁へ届け出ます(同規則10条)。様式が決まっているため、毎期同じ形で作ります。
完成工事総利益で工事の採算を見る
完成工事総利益は、完成工事高から、その工事のために使った完成工事原価を引いた額です。割合が前期より下がっていれば、請負金額が下がったか、材料費や外注費が上がったかのどちらかです。
原価と経費の線引きで総利益が変わる
現場の費用を完成工事原価に入れるか、販売費及び一般管理費に入れるかで、完成工事総利益の水準は変わります。線引きが年によって変わっていると、期どうしで比べられません。
毎期の損益計算書を読む手順は?
結論: 3期分の損益計算書を並べ、売上高に対する各利益の割合を出して、どの段階で割合が下がったかを見ます。金額だけで判断しない読み方です。
割合を出す手順
金額だけでは良し悪しが分からないため、売上高に対する割合にそろえます。
説明用の金額で割合を出す
次の表は、説明用の金額です。
| 項目 | 金額 | 売上高に対する割合 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,000万円 | 100% |
| 売上総利益 | 3,000万円 | 30% |
| 営業利益 | 400万円 | 4% |
| 経常利益 | 280万円 | 2.8% |
| 税引前当期純利益 | 200万円 | 2% |
| 当期純利益 | 140万円 | 1.4% |
この例では、営業利益の4%から経常利益の2.8%へ、営業外費用(支払利息など)の分だけ下がっています。さらに特別損失で、税引前当期純利益は2%です。段階ごとの差を見ると、本業は黒字で、利息と臨時の損失で小さくなったと読めます。
比べるのは同じ会社の過去
割合の水準は業種で違うため、基準にするのは自社の過去3期の推移です。下がり続けているか、1期だけ下がったかで、打つ手が変わります。
よくある質問
5つの利益のうち、どれを見ればよいですか?
営業利益は黒字なのに、経常利益が赤字になるのはなぜですか?
特別損失が出たら、悪い決算ですか?
まとめ:5つの利益を順に読もう
- 損益計算書は、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益を上から順に読み、利益が小さくなった段階を探します
- 経常利益と営業利益の差には、借入の負担が表れます
- 在庫の増減、役員報酬の水準、減価償却費の抜け、特別損益の区分は、利益の見え方を変えます
- 建設業は、売上高を完成工事高、売上原価を完成工事原価と呼び、順序は同じです
- 金額ではなく売上高に対する割合を、同じ会社の3期分で並べて読みます
決算書を受け取ったが、どの利益から見ればよいか分からない方、利益が減った理由を説明できず金融機関や取引先に聞かれて困っている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近3期分の損益計算書を並べ、利益が減った段階とその段階の科目の増減を確認し、見直す順番を整理します。
出典
- e-Gov 法令検索「会社計算規則」(第88条から第94条)
- e-Gov 法令検索「建設業法施行規則」(第10条、様式第十六号)





