ガソリン代の勘定科目は4つ|経費の仕訳の方法と注意点を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
ガソリン代の勘定科目は、旅費交通費・車両費・燃料費・消耗品費の4つから選びます。法令で決められた科目はなく、どれを選んでも、経費として認められる額は同じです。税務で気をつけるのは科目の名前より、軽油は軽油引取税を除いて消費税を計算すること、給油のレシートの登録番号、私用分の按分の3つです。この記事では、場面ごとの科目、仕訳の書き方、ガソリンと軽油の消費税の違い、令和7年12月31日に廃止されたガソリン税の暫定税率、個人事業主の家事按分を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
ガソリン代の勘定科目は何を使う?
結論: ガソリン代は、旅費交通費・車両費・燃料費・消耗品費の4つから、月次で何を見たいかに合わせて選びます。どれを使っても損金(法人の経費)に算入できる額は変わりません。
場面ごとの早見表
見たい数字と会社の形で、科目は次のように分かれます。
| 会社の形・見たい数字 | 選ぶ科目 | 一緒に入れる支払い |
|---|---|---|
| 営業や配達で外へ出る移動の費用をまとめて見たい | 旅費交通費 | 電車・バス・タクシー代、高速道路料金 |
| 社用車1台ごとの維持費を見たい | 車両費 | 車検代、修理代、タイヤやオイルの交換代 |
| 運送・建設など、燃料が売上に直結する | 燃料費 | 軽油、重油、機械に使う燃料 |
| 車をほとんど使わず、給油も少ない | 消耗品費 | 事務用品、少額の備品 |
国税庁の確定申告書等作成コーナーは、消耗品費の説明に「ガソリンなどの消耗品購入費」を挙げています。税務署が特定の科目を求めているわけではありません。
旅費交通費と車両費の違い
旅費交通費は、人が動くために払う費用です。国税庁は電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代などを例に挙げています。車両費は、車そのものを維持するために払う費用で、車検代や修理代と並びます。
ガソリンは、移動の費用とも車の維持費とも読めます。分かれ目は、月次の資料で何を見たいかです。
- 移動の費用を、電車やタクシーも含めて1つの数字で見たい会社は、旅費交通費
- 社用車の維持費を、1台あたりの年間の額で見たい会社は、車両費
会計ソフトの初期設定は旅費交通費になっていることが多く、それに従っても問題ありません。
燃料費と消耗品費の使いどころ
燃料費は、運送業や建設業のように、燃料が売上に直結する業種で使います。売上原価の内訳として、原価の中の燃料費に入れる会社もあります。
消耗品費は、車の使用が少なく金額も小さい会社向けです。あとから車の費用を知りたくなったとき、消耗品費の中から給油だけを拾い出す手間が増えます。
ガソリン税は別の科目にしない
ガソリンの価格には、揮発油税と地方揮発油税(まとめてガソリン税)が含まれています。この税を納めるのは、ガソリンを製造して出荷する側です。給油する会社が納める税ではないため、租税公課に別立てせず、レシートの総額をガソリン代の科目に入れます。
ガソリン代の処理で多い間違いは?
結論: 間違いが多いのは、担当者が替わって科目がずれること、軽油の消費税、私用や通勤の分の混入の3つです。どれも消費税の納税額や、経費として認められる額に影響します。
決算の直前に、期の前半と後半でガソリン代の科目が違っていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。
担当者が替わって科目がずれる
科目は毎期同じものを使います。企業会計原則の継続性の原則が、認められた会計処理を毎期続けて適用し、みだりに変えないことを求めているためです。
科目がずれると、旅費交通費が前期より増えたのが、外回りが増えたからなのか、入れ先が動いたからなのか、数字から区別できなくなります。銀行や税務調査での説明も難しくなります。変えるなら期首からにして、前期の数字も新しい科目に組み替えて並べます。
軽油の消費税を総額で処理する
軽油代に含まれる軽油引取税は、消費税の対象外です。明細に軽油引取税の金額が別に書かれているのに、総額を課税仕入れにすると、控除する消費税が多すぎになり、見つかれば修正申告で消費税を追加で納めます。計算は後の節で説明します。
私用や通勤の分が混ざる
事業に使っていない分は、経費になりません。個人事業主は、生活にも使う車の分を按分します。従業員がマイカーで通勤するときのガソリン代を会社が負担するなら、旅費交通費ではなく通勤手当です。通勤手当には距離に応じた非課税限度額があり、超えた分は給与として源泉徴収の対象になります(国税庁タックスアンサーNo.2585)。
税理士が確認する順番
税理士は、ガソリン代の総勘定元帳(科目ごとの取引の一覧)を開いて、次の順に確かめます。
前期の元帳と給油カードの明細をご用意いただければ、科目と消費税の扱い、私用分の分け方を車ごとに確かめます。
ガソリン代の仕訳はどう書く?
結論: 給油した日に、借方へガソリン代の科目、貸方へ支払い手段(現金・未払金)を入れます。税抜経理の会社は、消費税を仮払消費税等に分けて入れます。
支払い方法ごとの仕訳
税込5,500円(消費税10%)の給油を、旅費交通費で処理する例です(説明用の金額です)。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 現金で給油した | 旅費交通費 5,000 仮払消費税等 500 |
現金 5,500 |
| 給油カードで給油した | 旅費交通費 5,000 仮払消費税等 500 |
未払金 5,500 |
| カードの代金が口座から引き落とされた | 未払金 5,500 | 普通預金 5,500 |
税込経理の会社は、消費税を分けず、旅費交通費に5,500円を入れます。
従業員が立て替えたとき
従業員が自分の財布で給油したときは、レシートを精算書に添えて、実費で精算します。仕訳は、給油した日に借方へガソリン代の科目、貸方へ未払金を入れ、精算の日に未払金を現金で消します。
給油所のレシートは宛名の記載が要らないため(後の節で説明します)、従業員の名前で受け取ったレシートでも、会社の課税仕入れとして扱えます。毎月一定額を渡す形にすると、実費の精算ではなく手当になり、給与として課税されることがあります。
ガソリンと軽油で消費税はどう違う?
結論: ガソリン代は、支払総額が課税仕入れです。軽油は、軽油引取税の金額が別に書かれていれば、その分を除いた金額が課税仕入れになります。
ガソリン代は総額が課税仕入れ
消費税法基本通達10-1-11は、揮発油税が売り手の対価の額に含まれると定めています。ガソリンの価格には揮発油税と地方揮発油税が入っていて、その全体に消費税がかかります。この通達は売る側の課税標準の定めですが、買う側も同じ金額で課税仕入れを判定します。税込のレシートの総額が課税仕入れで、内訳に分ける作業はありません。
軽油は軽油引取税を除く
軽油引取税は、軽油を引き取った利用者が納税義務者です。そのため同じ通達は、軽油引取税を対価の額に含まないとしています。軽油引取税は、代金とは別に利用者が負担する税金だからです。
ただし、その金額が明確に区分されていないときは、総額を対価の額に含めます。レシートや明細に軽油引取税の金額があるときだけ、除いて計算します。
軽油100リットルを給油し、明細に軽油引取税1,500円(1リットルあたり15円)が区分され、課税される代金が10,000円、消費税が1,000円のとき、支払総額は12,500円です(説明用の金額です)。課税仕入れの額は10,000円で、軽油引取税の1,500円は対象外です。仕訳は、燃料費の中で税区分を分けても、1,500円を租税公課に分けても構いません。消費税の計算は同じです。
暫定税率の廃止で変わったもの
ガソリン税の暫定税率は、令和7年12月31日に廃止されました(国税庁の公表資料)。揮発油税と地方揮発油税の合計は、1リットルあたり53.8円から本則の28.7円になり、25.1円下がっています。軽油引取税の暫定税率は、令和8年4月1日に廃止され、1リットルあたり32.1円から15円に下がりました。
変わったのは単価だけで、科目の選び方も消費税の区分も同じです。前期と比べるときは、金額だけでなくリットル数も並べると、使う量が減ったのか、単価が下がっただけなのかが分かります。
給油のレシートはどう保存する?
結論: 給油のレシートは、登録番号の有無を確かめて保存します。紙で受け取ったレシートは紙のまま、スマホアプリやウェブで受け取った明細は電子データのまま残します。
登録番号の確認
給油所のレシートは、小売業が交付する適格簡易請求書として使えます。適格簡易請求書は、宛名の記載が要らず、税率か消費税額のどちらかが書かれていれば足ります(国税庁のインボイスQ&A)。控除の可否は、登録番号(Tで始まる番号)が印字されているかで決まります。
登録番号のない給油は、次の2つで考えます。
- 少額特例:1回の取引が税込1万円未満なら、帳簿だけで控除できる制度です(判定は1回の取引ごとです)。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和11年9月30日までの取引で使えます。
- 経過措置:登録のない事業者からの仕入れに残る制度で、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは、仕入れに含まれる消費税額の70%を控除できます。
電子で受け取った明細は電子のまま
スマホアプリの電子レシート、メールで届いたレシート、カード会社のウェブ明細は、電子取引にあたります。電子データのまま保存する義務があり、印刷した紙だけを残す方法は認められません(国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】)。紙のレシートは、紙のまま保存して構いません。
個人事業主のガソリン代の按分は?
結論: 個人事業主は、事業に使った分だけが必要経費です。事業と生活の両方に使う車は、業務に使った部分を記録で区分できる範囲に限り、その分を必要経費にします。
按分の割合の決め方
事業専用の車なら、ガソリン代は全額が必要経費です。生活にも使う車は、国税庁のタックスアンサーNo.2210(家事関連費)が、業務に直接必要な部分を取引の記録などに基づいて明らかに区分できる場合に限り、その区分できる金額を必要経費にするとしています。
割合は、次のいずれかの基準で決めます。
- 走行距離:業務で走った距離と私用で走った距離の比率。給油の記録やカーナビから数字を作れます
- 使用日数:業務で使った日と私用で使った日の比率。平日は業務、休日は私用と分かれる人に向きます
- 業務の記録:訪問先のメモや業務日誌から決めます
記録の残し方
代表的な1か月の走行メモや訪問先の記録があれば、割合の根拠になります。同じ車のガソリン代、自動車税、保険料、車検代は、同じ割合で処理します。ガソリン代だけ8割、保険料は6割と分けると、割合の根拠を説明できなくなります。
よくある質問
高速道路料金や駐車場代は、ガソリン代と同じ科目でよい?
期末にタンクに残ったガソリンは、貯蔵品にする?
暫定税率が廃止されたので、過去の処理を直す必要はある?
まとめ:科目を決めて軽油を確かめよう
- ガソリン代の科目は、旅費交通費・車両費・燃料費・消耗品費の4つから、見たい数字に合わせて選ぶ
- 一度決めた科目は毎期同じにし、変えるなら期首から、前期も組み替えて比べる
- ガソリンは支払総額が課税仕入れ。軽油は、軽油引取税の区分があれば除く
- 給油のレシートは登録番号を確かめる。1万円未満なら少額特例が使える場合がある
- 個人事業主は、事業に使った割合を走行距離などの記録で区分できる分だけが必要経費
社用車が複数ある方、軽油を使う車の経理を整理したい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の決算書と給油カードの明細、前期の総勘定元帳を確認し、科目の統一方針と消費税の区分を整理します。
出典
- 国税庁 消費税法基本通達10-1-11「個別消費税の取扱い」
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「消耗品費」「旅費交通費」「課税仕入れ等とは」
- 国税庁「暫定税率廃止に伴う揮発油税戻入れ(移入)控除(還付)税額計算書の記載要領」
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(問24、問58)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「家事関連費」
- 国税庁 タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
- 国税庁 少額特例の概要(令和5年度税制改正関係)
- 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
- 国税庁 令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)
- 国税庁 令和8年度 税制改正関係(インボイス制度に関するお知らせ)
- 各道府県の案内「軽油引取税の税率について(令和8年4月1日から)」
- 企業会計審議会 企業会計原則(継続性の原則)





