仮払金とは?決算で残ったときの仕訳と立替金との違いを解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

仮払金とは、お金は払ったものの金額や使い道がまだ決まっていないときに、決まるまで一時的に入れておく勘定科目です。出張の前に社員へ渡す旅費の概算が代表例で、貸借対照表(決算書のうち、会社の財産を表す表)では流動資産に並びます。決算までに精算して、旅費交通費などの本来の科目へ振り替えるのが基本です。この記事では、決算で残ったときの処理、役員に渡したまま精算しない場合の税金の扱い、立替金との違い、仕訳、消費税の控除の時期を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)で整理します。

仮払金が決算で残ったらどうする?

結論: 決算日に仮払金が残っていたら、中身を費用になるもの・翌期に持ち越すもの・役員への貸付けや給与になるものに分けて、1件ずつ振り替えます。中身が分からないまま残すと、決算書でも申告書でも説明が要ります。

中身別の早見表

決算日の状況 決算での処理
出張が終わり、領収書がそろっている 旅費交通費などの費用に振り替えて、仮払金をゼロにする
出張は終わったが、精算が決算日に間に合っていない 実際に使った額で、決算日付けで費用に振り替える。余りは返金待ちとして未収入金に、不足は未払金に入れる
出張などが翌期で、まだ使っていない 仮払金のまま翌期に持ち越す。当期の費用にはしない
役員に渡し、会社の業務に使ったと確かめられない 役員への給与か、役員貸付金として整理する(次の節)
何の支払いか分からない 通帳・領収書・担当者への確認で相手先を追う

中身が分からない仮払金

使い道が分からない仮払金は、手がかりが減る古い残高から順に、通帳の摘要・領収書・渡した本人への確認で追います。調べ尽くしても分からない分は、費用に入れて済ませられません。業務に使ったと説明できない支出は、損金の額に算入できるかが問われます。渡した相手が役員なら、次の節の扱いです。金融機関は決算書を見るとき、中身を説明できない仮払金を、資産として評価しないことがあります。

申告書に付ける仮払金の内訳書

法人税の申告書には、勘定科目内訳明細書の「仮払金(前渡金)の内訳書」を付けます。e-Tax(国税電子申告・納税システム)の記載要領では、相手先ごとの期末残高が50万円以上のものは1件ずつ書きます。相手先が役員・株主・関係会社のものは、50万円未満でもすべて1件ずつ書き、摘要欄に取引の内容を書きます(令和6年3月1日以後終了事業年度分)。

仮払金の処理でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、役員に渡した仮払金を精算しないこと、出張費の渡しすぎ、何でも仮払金に入れることの3つです。どれも、法人税や所得税の負担が増えたり、決算書で説明を求められたりします。

役員に渡した仮払金を精算しない

役員に渡した仮払金を精算しないまま置くと、実態は会社から役員への貸付けか、役員への給与のどちらかです。科目名が仮払金のままでも扱いは変わりません。どちらになるかは、お金の使い道が会社の業務か私的か、返済の約束があるかで分かれます。

役員への給与になる場合を先に見ます。法人税基本通達9-2-9は、役員に旅費などの名義で渡した金額のうち、会社の業務に使ったことが明らかでないものを、給与と同じ経済的な利益として扱います。役員に払う給与は、毎月同額の定期同額給与、事前に決めた時期と額で払う事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも当たらないと、損金の額に算入できません(国税庁タックスアンサーNo.5211)。

貸付けとして整理する場合は、利息が論点です。無利息または通常より低い利率で貸すと、通常の利率との差額が役員への経済的な利益にあたります(法人税基本通達9-2-9の(7))。役員の側では、その差額が給与として所得税の課税対象になります。国税庁タックスアンサーNo.2606の利率は、貸した年ごとに次のとおりです。

貸付けを行った年 利率
令和3年 年1.0%
令和4年から令和7年 年0.9%
令和8年 年1.3%

会社が他から借り入れて貸した場合は、その借入金の利率で計算します。次のどれかに当たれば、給与としての課税は行われません。

  • 災害や病気で臨時に多額の生活資金が必要な役員に、合理的な金額と返済期間で貸した場合
  • 平均調達金利など、合理的な利率を決めて貸した場合
  • 上の2つ以外で、利息の差額が1年間で5,000円以下の場合

3つ目の5,000円は、年1.3%なら元本が約38万円までの目安です(説明用の計算)。役員への貸付けは、決算書では役員貸付金と表示し、申告書には貸付先・期末残高・期中の受取利息額・利率を書く「貸付金及び受取利息の内訳書」を付けます。

出張費の渡しすぎ

出張旅費のうち、その旅行に通常必要と認められる範囲までが、所得税の非課税の旅費です。範囲は、全員で釣り合いが取れた基準で計算されているか、同業種・同規模の会社の支給額に照らして相当かで見ます(所得税基本通達9-3)。超えた部分は、非課税の旅費として扱えません。多めに渡した仮払金の余りを返してもらわないまま精算を終えると、その差額が本人への給与になりかねません。渡した額と使った額の差は、必ず返金か追加払いで精算します。

何でも仮払金に入れる

払う相手と目的がどちらも決まっている支払いは、仮払金ではありません。社員が負担すべき費用を会社が立て替えたなら立替金、商品の代金を先に払ったなら前渡金です。仮払金に入れると、決算で中身を探し直すことになります。

税理士が確認する順番

税理士は、仮払金の総勘定元帳(科目ごとの取引の一覧)を次の順で確かめます。

決算で残った仮払金を確かめる順番
1

残高を並べる
相手先と渡した日ごとに、古い順に並べる
2

渡した相手を分ける
従業員か、役員・株主か。役員・株主は金額に関わらず内訳書に書く対象
3

中身を追う
通帳の摘要、領収書、出張の記録で、費用になるものを特定する
4

決算日の状況で分ける
当期の費用、翌期に持ち越す分、返金待ちに仕分ける
5

振り替える科目と消費税を決める
旅費交通費など本来の科目に移し、消費税の区分も付ける

決算書の仮払金の内訳と、直近の通帳・領収書・出張の精算書をお持ちいただければ、残高ごとに費用か貸付けかを分け、役員分の利息と申告書の内訳書まで確かめます。

勘定科目・仕訳は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

仮払金と立替金・前渡金の違いは?

結論: 仮払金は、払った時点で金額か使い道が決まっていないものです。誰が負担するかが決まっていれば立替金、何の代金かが決まっていれば前渡金で処理します。

仮払金の意味

仮払金は資産の科目です。出張に行く社員に5万円を渡した時点では、交通費と宿泊費の額が決まっていません。旅費交通費として確定するまで、支払った事実だけを残す科目が仮払金です。

科目ごとの違いの早見表

科目 使う場面 払った時点で決まっていること
仮払金 出張費の概算渡し、内容が分からない出金 払った事実だけ
立替金 従業員や取引先が負担すべき費用を、会社が先に払った 誰が負担するか(回収する相手)
前渡金(前払金) 商品やサービスの代金を先に払った 何の代金か、払い先
仮払消費税等 税抜経理で、課税仕入れの消費税を分けて入れる 消費税額

仮払消費税等は別の科目

名前が似ている仮払消費税等は、仮払金とは別の科目です。税抜経理(消費税を売上や仕入れに含めず、別に分けて記帳する方法)を採る会社が、課税仕入れの消費税額を入れる科目で、金額は確定しています(国税庁タックスアンサーNo.6375)。

仮払金の仕訳はどうなる?

結論: 渡したときは仮払金を借方に、精算したときは本来の科目を借方に入れ、仮払金を貸方でゼロに戻します。使った額が渡した額より少なければ現金で戻し、多ければ追加で払います。

渡したときと精算したときの仕訳

出張の前に社員へ5万円を渡し、実費が4.2万円で8,000円が戻った場合と、実費が5.5万円で5,000円を追加で払った場合です(説明用の金額です)。

場面 借方 貸方
現金5万円を渡した 仮払金 50,000 現金 50,000
実費が42,000円で、余りが戻った 旅費交通費 42,000
現金 8,000
仮払金 50,000
実費が55,000円で、不足分を払った 旅費交通費 55,000 仮払金 50,000
現金 5,000

税抜経理の会社は、精算のときに旅費交通費を本体価額と仮払消費税等に分けます。

決算日の前後で変わること

出張が決算日の前に終わっていれば当期の旅費交通費、決算日のあとなら仮払金のまま翌期に持ち越します。

出張は終わったが、余りの返金だけが決算日をまたぐ場合は、決算日に費用と返金待ちを分けます。50,000円を渡して実費が42,000円なら、借方に旅費交通費42,000円と未収入金8,000円、貸方に仮払金50,000円を入れ、翌期に8,000円が戻ったら未収入金を消します。

仮払金の消費税はいつ控除する?

結論: 消費税の仕入税額控除は、課税仕入れを行った日、つまり旅行や宿泊の役務の提供を受けた日の課税期間で行います。仮払いの日には控除できず、仮払金のまま決算をまたいだ分は、控除も翌期です。

課税仕入れを行った日

消費税法基本通達11-3-1は、課税仕入れを行った日を、資産の譲受けや借受けをした日、または役務の提供を受けた日としています。お金を渡した日は基準になりません。3月決算の会社が3月末に出張費を渡し、出張が4月なら、控除は翌期です。

仮払いの日と出張が終わった日で、消費税の扱いが変わる
仮払いをした日
課税仕入れはまだ行われていない
仕入税額控除の対象にならない
帳簿には仮払金として残すだけ
出張が終わり精算した日
役務の提供を受けた日が課税仕入れの日
その課税期間で仕入税額控除の対象になる
本来の科目に振り替えて課税区分を付ける

出張旅費はインボイスがなくても控除できる

社員に支給する国内の出張旅費・宿泊費・日当のうち、旅行に通常必要と認められる部分は、課税仕入れの支払対価です。適格請求書(インボイス)がなくても、一定の事項を書いた帳簿だけを保存すれば、仕入税額控除ができます(国税庁インボイス制度に関するQ&A 問107)。

この扱いは、概算で渡した場合も、実費で精算する場合も同じです(同 問107-2)。通常必要と認められる範囲は所得税が非課税となる範囲で判定するため、渡しすぎた分は控除の対象外です。会社が用務先に直接払ったのと同じ性質の支払いは、帳簿に加えて適格請求書などの保存が要ります。

仮払金を残さない運用は?

結論: 仮払金が残るのは、精算の期限が決まっていないからです。申請書の項目、精算までの日数、次を渡す条件を決めれば、決算に残る仮払金は大きく減ります。

申請書の項目と精算の期限

申請書には、目的・使う日・概算額・精算予定日を書いてもらいます。この4つがあれば、月末に残高を見て、何の精算待ちかが分かります。

期限は日数で決めます。出張なら帰社後5営業日以内、その他は使い終えてから1週間以内、といった形です。期限を過ぎたら経理から本人へ連絡し、前の仮払金を精算していない人には次を渡さないようにします。仮払いが重なると、どの領収書がどの精算か分からなくなるためです。

立替精算や法人カードに切り替える

仮払いをやめる方法もあります。社員が立て替えて実費を精算するか、会社の法人カードで払えば、仮払金は生じません。カードの明細が支払いの記録になります。長期の出張は立替えの負担が重いため、仮払いを残す運用も現実的です。

よくある質問

出張の前に社員へ渡すお金は、仮払金でよいですか?
仮払金で処理します。金額が確定していない支出の典型です。帰社後に領収書と突き合わせて、旅費交通費などの本来の科目へ振り替えます。
決算日に仮払金が残っていると、税務署に指摘されますか?
残高があるだけで違反になることはありません。ただし、申告書に仮払金の内訳書を付けるため、相手先と取引の内容を説明できる状態が前提です。役員に渡したまま精算されていないものは、役員給与か役員貸付金かが論点になります。
役員への仮払金は、必ず利息を取らなければいけませんか?
無利息のままだと、通常の利率との差額が役員への給与として課税の対象になります。合理的な利率を決めて貸す場合や、差額が1年間で5,000円以下の場合は課税されません。利率は貸した年ごとに決まっているため、残高の発生年を分けて確かめます。

まとめ:決算までに仮払金の中身を確定しよう

  • 仮払金は、金額か使い道が決まっていない支出を一時的に入れる資産の科目
  • 決算では、費用になるもの・翌期に持ち越すもの・役員への貸付けや給与になるものに分ける
  • 役員に渡して精算しない仮払金は、役員給与か役員貸付金として扱われ、利息の論点が出る。令和8年に貸した分の目安の利率は年1.3%
  • 消費税の控除は仮払いの日ではなく、役務の提供を受けた日。出張旅費はインボイスがなくても、帳簿のみで控除できる
  • 申告書には仮払金の内訳書を付ける。残高は相手先と取引の内容を説明できる状態にする

決算書に仮払金が残っている方、社長への仮払金を精算しないまま何年も置いている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。残高を相手先と発生年ごとに分け、費用になるもの、役員貸付金として利息を決めるものを仕分けます。

勘定科目・仕訳は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6375「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」
  • 国税庁 法人税基本通達 9-2-9(債務の免除による利益その他の経済的な利益)
  • 国税庁 消費税法基本通達 11-3-1(課税仕入れを行った日の意義)
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問107、問107-2(出張旅費、宿泊費、日当等)と所得税基本通達9-3
  • e-Tax 勘定科目内訳明細書(仮払金(前渡金)の内訳書/貸付金及び受取利息の内訳書)の記載要領(令和6年3月1日以後終了事業年度分)

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

事務所概要を見る

勘定科目・仕訳の記事

更新日 2026年10月16日
未払金と未払費用の違いとは?決算の仕訳と使い分けを解説
更新日 2026年10月14日
固定資産税の勘定科目は租税公課|経費にする時期と仕訳の方法
更新日 2026年10月14日
駐車場代の勘定科目と仕訳の方法|更新料・消費税の扱いまで解説
更新日 2026年10月14日
労働保険料の勘定科目と仕訳を解説|会社と従業員の負担の分け方
勘定科目・仕訳をすべて見る