消費税の決算仕訳を解説|仮受消費税と仮払消費税の差額の処理方法

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

消費税の決算仕訳は、税抜経理(消費税を本体価格と分けて記帳する方法)なら、仮受消費税等と仮払消費税等を相殺し、申告で確定した納付税額を未払消費税等にして、残った差額を雑収入または雑損失にします。税込経理(消費税を本体価格に含めて記帳する方法)なら、納付税額を租税公課に計上します。差額は、会計の集計と申告書の計算がずれて出る金額で、ゼロに合わせる必要はありません。国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。

税抜経理の決算仕訳はどう入れる?

結論: 税抜経理の決算では、仮受消費税等と仮払消費税等を相殺し、申告で確定した納付税額を未払消費税等にします。残った差額は、雑収入または雑損失です。

仮受と仮払を相殺する仕訳

税抜経理では、売上に含まれる消費税を仮受消費税等、仕入や経費に含まれる消費税を仮払消費税等に分けて記帳します。国税庁のタックスアンサーNo.6901によると、納める税額は未払消費税等、還付を受ける税額は未収消費税等として計上します。決算では、仮受と仮払の勘定を消し、納付税額(国税の消費税と地方消費税の合計)を未払消費税等に移します。

場面 借方 貸方
決算(中間納付なし) 仮受消費税等 10,000,000 仮払消費税等 6,000,000
未払消費税等 3,999,800
雑収入 200

説明用の金額です。確定した納付税額が3,999,800円で、仮受と仮払の差額より200円少ない場合です。

中間納付があるときの仕訳

中間納付(年の途中で先に納める消費税)を仮払消費税等で処理している会社は、決算の仮払消費税等に、仕入や経費の分と中間納付の分が入っています。未払消費税等に入れるのは、年間の納付税額から中間納付額を引いた残りです。上の例で中間納付が1,000,000円なら、仮払消費税等は7,000,000円、未払消費税等は2,999,800円になり、雑収入は200円のままです。仮払金で処理していた場合は、決算で未払消費税等へ振り替えます。

差額は雑収入か雑損失

仮受と仮払の差額と納付税額のずれは、その課税期間を含む事業年度の益金(税金の計算上の収益)または損金に算入します。国税庁の通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(以下「経理通達」)の定めです。会計では、貸方に差額が出れば雑収入、借方に出れば雑損失です。

消費税の仕訳でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、差額をゼロに合わせること、簡易課税などの大きな差額を誤りと決めつけること、中間納付の二重計上、納付税額を会計の数字で決めることの4つです。

決算の直前に、差額が合わないからと売上や仕入の金額を触ってしまい、相談に来られる方が少なくありません。

差額をゼロにしようと数字を動かす

売上や仕入の金額を動かして差額を消すと、帳簿が請求書や通帳と合わなくなり、銀行や税務調査の場で説明できなくなります。ずれた分は雑収入か雑損失に入れ、数字は動かしません。

簡易課税などの差額を誤りと疑う

簡易課税(売上の税額に、業種ごとのみなし仕入率をかけて仕入の税額を求める方法)と2割特例では、納付税額を実際の仕入と関係なく計算します。差額は端数ではなく、大きな金額になるのが通常です。誤りと決めつけて数字を直したり、雑収入の計上を忘れたりすると、利益と法人税の申告がずれます。

中間納付を二重に計上する

仮払消費税等で処理した中間納付を決算で見落とし、年間の納付税額の全額を未払消費税等にする誤りです。納付済みの分まで未払に残ります。納付書の控えと仮払消費税等の内訳を突き合わせます。

会計の数字から納付税額を決める

納付税額は、申告書の計算で確定します。試算表の仮受と仮払の差で未払計上すると、申告書の金額とずれます。

今期の試算表と消費税の申告書の控え、中間納付の納付書をお持ちいただければ、仮受と仮払の差額の内訳と、中間納付の計上場所を一緒に確かめます。

インボイス・消費税は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

決算で差額が出る理由は?

結論: 差額は、端数処理の違いと、納付税額の計算方法の違いから出ます。簡易課税と2割特例の会社は、大きな差額が出るのが通常です。

端数処理の違い

会計では、請求書や取引ごとに消費税を計算し、端数を処理して積み上げます。申告書では、課税標準額を1,000円未満切り捨てで出し、税額は1円未満、差引税額と地方消費税は100円未満を切り捨てます(国税庁タックスアンサーNo.6371)。計算の単位と切り捨てる場面が違うので、本則課税(売上の税額から実際の仕入の税額を引く原則の方法)でも差額は出ます。

簡易課税と2割特例

簡易課税の納付税額は、売上に係る税額とみなし仕入率で計算します。2割特例(インボイスの登録を機に課税事業者になった会社が、納付税額を売上に係る税額の2割にできる経過措置)も、実際の仕入の消費税額を使いません。みなし仕入率が50%の事業で、仮受消費税等が10,000,000円、実際の仮払消費税等が2,000,000円なら、次のとおりです(説明用の金額です)。

項目 金額
仮受消費税等 10,000,000
実際の仮払消費税等 2,000,000
簡易課税の納付税額(10,000,000円の50%) 5,000,000
差額(雑収入) 3,000,000

この3,000,000円は、利益になる雑収入で、法人税の課税対象です。

免税事業者などからの仕入れと税区分

インボイスの登録のない事業者からの仕入れは、控除できる割合が決まっています。会計ソフトが消費税を全額仮払にしていると差額が出ます。給与や保険料のように消費税がかからない取引に課税の税区分が付いていても、仮払消費税等が多くなります。本則課税で差額が大きいときは、先にこの2つを疑います。

差額の原因を探す順番
1

計算方法を確かめる
簡易課税か2割特例なら、大きな差額が出るのが通常
2

免税事業者などからの仕入れを見る
仮払消費税等にした割合が、控除できる割合と合っているか確かめる
3

税区分を確かめる
給与や保険料などの対象外の取引に、課税の区分が付いていないか見る
4

端数と判断する
残った差額は、雑収入または雑損失で処理する

税込経理の決算仕訳はどう入れる?

結論: 税込経理の決算では、納付する消費税を租税公課にして、未払金に計上します。仮受と仮払を相殺する作業はなく、差額も出ません。

納付税額を租税公課にする仕訳

国税庁のタックスアンサーNo.6901によると、税込経理の納付税額は租税公課として損金に算入し、還付税額は雑収入などとして益金に算入します。

場面 借方 貸方
決算(納付税額 3,999,800円) 租税公課 3,999,800 未払金 3,999,800

説明用の金額です。中間納付を租税公課で処理していた会社は、その分を引いた額を追加します。

損金に入る時期

損金に入る時期は、原則として、申告書を提出した日の属する事業年度です。ただし、申告期限が来ていない申告書に記載する税額を、損金経理(決算で費用の科目に計上すること)で未払金に計上したときは、計上した事業年度の損金に算入できます。未払計上しない会社は、費用に入るのが決算の翌期になります。

税抜経理との見え方の違い

どちらの方式でも、納める消費税の額は同じです(国税庁タックスアンサーNo.6375)。違うのは、決算書の見え方です。

場面 税抜経理 税込経理
端数の差 雑収入または雑損失で調整する 生じない
売上高の表示 消費税を含まない 消費税を含む
資産の取得価額 消費税を含まない 消費税を含む

免税事業者は、税抜経理で記帳していても、法人税の所得の計算では税込経理方式を適用します(経理通達、同No.6375)。

納付と還付の仕訳は?

結論: 納付は未払消費税等を、還付は未収消費税等を消し込みます。税込経理の会社は、納付が未払金の消込み、還付が雑収入です。

申告して納付したとき

法人の消費税の申告と納付の期限は、原則として課税期間の終了後2か月以内です(国税庁タックスアンサーNo.6610)。税抜経理は、借方が未払消費税等、貸方が現金預金です。税込経理は、借方が決算で計上した未払金です。納付で損益は動きません。

還付になるとき

仮払消費税等が仮受消費税等を上回ると、還付です。税抜経理では、決算で未収消費税等に計上し、入金時に現金預金と消し込みます(説明用の金額です)。

場面 借方 貸方
決算(還付税額 1,999,900円) 仮受消費税等 3,000,000
未収消費税等 1,999,900
雑損失 100
仮払消費税等 5,000,000

還付金と一緒に入る還付加算金(利息に当たるもの)は、受取利息または雑収入です。

控除対象外消費税額等の処理は?

結論: 税抜経理で課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円を超えると、控除対象外消費税額等が生じます。資産に係るものは、損金経理か繰延消費税額等かで分かれます。

生じる場合

国税庁のタックスアンサーNo.6921によると、控除対象外消費税額等は、仮払消費税等のうち、仕入税額控除で引ききれなかった金額です。課税売上割合(課税売上げと非課税売上げの合計のうち、課税売上げの割合)が95%未満の期や、課税売上高が5億円を超える期に生じます。税込経理の会社には、この処理はありません。

損金経理で一括して損金にできるもの

経費に係るものは、全額を損金に算入できます(交際費等に係る部分は、交際費等の額に加えます)。資産に係るものは、次のどれかに当たれば、損金経理をした金額を損金に算入できます。

  • 課税売上割合が80%以上の事業年度
  • 棚卸資産に係るもの
  • 1つの資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満

繰延消費税額等として償却するもの

上の3つのどれにも当たらない資産に係る分は、繰延消費税額等として資産に計上し、損金経理した金額を損金に算入します。上限は、繰延消費税額等を60で割り、事業年度の月数をかけた額で、取得した事業年度は2分の1です。

免税事業者からの仕入れの仕訳は?

結論: 令和8年10月1日から、免税事業者などからの課税仕入れは、消費税額の70%だけが控除できます。税抜経理では、この70%分を仮払消費税等にし、残りは取引の対価に含めます。

経過措置の割合

適格請求書発行事業者(インボイスの登録を受けた事業者)以外の人からの課税仕入れでも、一定の割合は控除できます。国税庁のリーフレット「インボイス制度に関するお知らせ」(令和8年9月)によると、この割合は令和8年10月1日から80%が70%になります。令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%になり、令和13年10月1日からは控除できません。令和8年度税制改正の大綱は、対象になる課税仕入れが年(事業年度)で1億円を超えた部分を、対象外にするとしています。

仮払消費税等にする部分と取得価額に含める部分

国税庁の「消費税経理通達関係Q&A」(令和5年12月改訂)は、免税事業者などからの課税仕入れでは、従前の仮払消費税等の額に控除できる割合をかけた金額を仮払消費税等とし、残りを取引の対価に含めるとしています。110,000円(税込)の備品を買ったときは、次のとおりです。

場面 借方 貸方
備品の購入(控除割合70%) 備品 103,000
仮払消費税等 7,000
現金預金 110,000

説明用の金額です。消費税等相当の10,000円のうち70%の7,000円を仮払消費税等にし、残り3,000円は備品の取得価額に含めています。

簡易課税と2割特例の特例

簡易課税や2割特例の会社は、継続して使うことを条件に、相手の登録の有無を分けず、全ての課税仕入れの消費税等相当額(支払対価の110分の10、軽減税率は108分の8)を仮払消費税等にできます。経過措置の期間中は、どの会社でも、免税事業者などからの仕入れを仮払消費税等に区分しない処理も認められ、その場合は差額が雑収入の側に出ます。

よくある質問

決算で消費税の仕訳はどう入れる?
税抜経理の会社は、仮受消費税等と仮払消費税等を相殺し、申告で確定した納付税額を未払消費税等にします。差額は雑収入または雑損失です。税込経理の会社は、納付税額を租税公課にして、未払金に計上します。
仮受と仮払の差額は、何の科目で処理する?
貸方に差額が出たときは雑収入、借方に出たときは雑損失です。
簡易課税の会社は、差額が大きくなる?
大きくなるのが通常です。納付税額を実際の仕入に係る消費税額を使わずに計算するため、その差がそのまま差額になります。

まとめ:申告で税額を確定してから仕訳しよう

  • 税抜経理は、仮受と仮払を相殺し、申告で確定した納付税額を未払消費税等にします
  • 相殺して残る差額は、雑収入または雑損失で、ゼロに合わせません
  • 簡易課税と2割特例の会社は、差額が大きくなるのが通常です
  • 税込経理は、決算で未払金に計上すると、その事業年度の損金に算入できます

決算で消費税の仕訳が合わない方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。試算表と消費税の申告書を確認し、差額の原因と未払消費税等の金額を整理します。

インボイス・消費税は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.6901・No.6375・No.6921・No.6371・No.6610
  • 国税庁「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)、「消費税経理通達関係Q&A」(令和5年12月改訂)
  • 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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