定期同額給与とは?要件と役員報酬を変えられる3つの時期を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、毎回の支給額が同じ役員の給与です。役員報酬が税金の計算で経費として扱える金額(損金)になるための基本の形で、期の途中で金額を変えると、変えた部分が損金の額に算入できなくなります。変えてよいのは、期首から3か月以内の改定、役員の地位や職務が大きく変わったとき、経営が著しく悪化したときの減額の3つに限られます。この記事では、要件、改定できる場面、損金の額に算入できなくなる金額の決まり方、事前確定届出給与との違いを、国税庁の公表資料(令和8年4月1日現在法令等)に沿って整理します。
定期同額給与とは何?
結論: 定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、各支給時期の支給額が同額の役員給与です。中小企業の毎月の役員報酬は、ほとんどがこの形です。
役員の給与が損金になる3つの型
法人税法34条は、役員に払う給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のどれにも当たらないものを、原則として損金の額に算入できないと定めています(国税庁のタックスアンサーNo.5211)。役員は自分の給与を決められる立場で、利益が出た期に報酬を増やして利益を小さくする調整ができてしまうためです。従業員の給与には、この制限はありません。
定期同額給与の2つの要件
要件は、支給の間隔と支給額の2つで、どちらかが欠けると当たりません。
| 要件 | 内容 | 外れる例 |
|---|---|---|
| 支給の間隔 | 支給時期が1か月以下の一定の期間ごと | 年に1回、年に2回の支払い |
| 支給額 | 事業年度の各支給時期の支給額が同額 | 期の途中で増額・減額した |
毎週払いも間隔の要件を満たします。非常勤役員に年俸を年1回か2回払う形は、各月の一定額をもとに計算していても、定期同額給与に当たりません(法人税基本通達9-2-12)。
手取りをそろえても同額になる
同額かどうかは、支給額で見ます。源泉所得税、住民税、社会保険料などを引いた後の金額が同額であれば、支給額が同額のものとして扱われます(法人税法施行令69条2項)。手取りを一定にしている会社も、引いた後の金額が毎回同じなら要件を満たします。支給日が休日と重なって前後しても、支給額が変わらなければ、同額性には影響しません。
同額でも高すぎる部分は対象外
毎月同額でも、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入できません(国税庁のタックスアンサーNo.5211)。
役員報酬の改定でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、期首から3か月を過ぎた増額、資金繰りを理由にした減額、非常勤役員への年1回払い、支給の見送りの4つです。どれも法人税が増える形で表れます。
決算が近づいて利益が出そうだから増やしたい、資金が厳しいから下げたい。気づいたときには改定できる時期を過ぎていた、という相談が少なくありません。
期首から3か月を過ぎた増額
事業年度の開始から3か月を過ぎてから増やすと、臨時改定事由に当たらない限り、増やした部分が損金の額に算入できません。その分だけ会社の所得が大きく計算され、追加の法人税等を納めます。
資金繰りを理由にした減額
資金繰りが苦しいから下げた、という理由は、減額が認められる事由に当たりません(法人税基本通達9-2-13)。認められない減額をすると、下げる前に払った分のうち、下げた後の金額を超える部分が損金の額に算入できなくなります。
非常勤役員への年1回払い
非常勤の役員に、年に1回まとめて払っている会社があります。この払い方は、定期同額給与には当たりません。損金の額に算入するには、毎月払いに改めるか、事前確定届出給与の届出を税務署に出すかのどちらかが要ります。
支給の見送りと未払い
資金繰りの都合で、1か月分の報酬を払わずに未払いにする会社があります。払わない月が1か月でもあると、その期の実際の支給が同額ではなくなります。払えない月が出そうなときは、未払いにする前に、3か月以内に改定できるか、経営悪化による減額に当たるかを確かめます。
税理士が確認する順番
改定を検討するとき、税理士は次の順に見ます。
役員報酬は、定款か株主総会の決議で決めます。決議の記録がなければ、期首から3か月以内の改定かどうかを示せません。
前期までの議事録と決算日をお知らせいただければ、報酬を変えられる時期と、減額の理由が当てはまるかを確かめます。
役員報酬を変えられるのはいつ?
結論: 期の途中で役員報酬を変えられるのは、期首から3か月以内の改定、臨時改定事由による改定、業績悪化改定事由による減額の3つです。それ以外の改定は、変えた分が損金の額に算入できません。
3つの改定の早見表
時期と増減で並べると次のとおりです。
| 改定の種類 | 時期 | 増額 | 減額 |
|---|---|---|---|
| 期首から3か月以内の改定 | 事業年度開始の日から3か月を経過する日まで | できる | できる |
| 臨時改定事由による改定 | 役員の地位や職務が大きく変わったとき | できる | できる |
| 業績悪化改定事由による改定 | 経営の状況が著しく悪化したとき | できない | できる |
期首から3か月以内の改定
事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定は、増額も減額もできます。3月決算なら6月30日、12月決算なら3月31日までです。
改定の前後で、それぞれの期間の支給額が同額であれば足ります。国税庁のQ&Aには、3月決算の会社が6月25日の総会で月50万円を60万円に増額し、7月31日支給分から適用した例があります。4月から6月までと、7月から翌年3月までの支給額がそれぞれ同額なら、どちらも定期同額給与です。
親会社の株主総会が終わるまで決議できないなど、3か月を過ぎて毎年改定する特別の事情があるときは、その時期でも認められます(法人税基本通達9-2-12の2)。
臨時改定事由
臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更などのやむを得ない事情です。国税庁の通達は、社長の退任に伴い副社長が社長に就任する場合や、合併で役員の職務の内容が大幅に変わる場合を例に挙げています(法人税基本通達9-2-12の3)。国税庁のQ&Aでは、代表取締役が病気で入院して職務の一部ができなくなり、報酬を減額した場合も、退院後に元の額へ戻す場合も、臨時改定事由とされています。
業績悪化改定事由
経営の状況が著しく悪化したことなどを理由にする改定で、減額に限られます。業績が回復しても、期の途中で元の額に戻す増額は認められず、戻せるのは翌事業年度の期首から3か月以内の改定です。
経営悪化で減額できるのはどんなとき?
結論: 経営状況が著しく悪化し、第三者との関係上、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情があるときです。一時的な資金繰りや、業績目標に届かなかっただけでは当たりません。
当たらない場合
一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは含まれません(法人税基本通達9-2-13)。国税庁のQ&Aは、悪化の事実があっても、利益調整だけを目的にした減額は、やむを得ない減額とはいえないと述べています。
当たるとされる場合
国税庁のQ&Aは、次のような減額改定は、通常、業績悪化改定事由に当たるとしています。
- 株主との関係上、業績や財務状況の悪化に対する役員としての経営上の責任から、減額せざるを得ない場合
- 取引銀行との間で行う借入金返済の条件変更の協議で、役員報酬の減額を求められた場合
- 取引先などの信用を保つため、経営の改善計画を作り、その計画に役員報酬の減額を盛り込んだ場合
同族会社が残しておく資料
同族会社や、株主と役員が親族の会社でも、株主との関係上の減額に当たる場合はあります。その場合は、減額せざるを得ない客観的で特別な事情を具体的に説明できる必要があり、材料は銀行との協議の記録、経営の改善計画、減額を決めた議事録です。
改定を誤ると、いくら損金から外れる?
結論: 認められない増額は、増やした金額に月数を掛けた分が、認められない減額は、下げる前に払った額のうち下げた後を超える部分が、損金の額に算入できなくなります。全額が外れるとは限りません。
増額した場合
国税庁の質疑応答事例は、3月決算の会社が、毎月20日に月額50万円を払っていた役員報酬を、2月10日の臨時株主総会で70万円に増額した例を示しています。この増額は期首から3か月以内でも臨時改定事由でもないため、増額後の2月分と3月分の2か月について、上乗せ分の20万円が定期同額給与に当たりません。損金の額に算入できない金額は、20万円に2か月を掛けた40万円です。増額前の50万円の部分は、損金の額に算入できます。
減額した場合
国税庁のQ&Aには、月額50万円の役員報酬を、12月支給分から40万円に減額した例があります。この減額が臨時改定事由にも業績悪化改定事由にも当たらないとき、減額後の40万円を継続して払う定期給与とみなします。減額前の6月から11月までの6か月間は、40万円に10万円を上乗せして払っていたものとして扱い、損金の額に算入できない金額は、10万円に6か月を掛けた60万円です。
役員本人の税金は減らない
会社で損金の額に算入できなくても、役員が受け取った報酬は、給与として所得税と住民税の対象です。会社の法人税は増え、本人の税金は減らない、という二重の負担になります。
事前確定届出給与との違いは?
結論: 毎月同額で払うのが定期同額給与、届出をした時期と金額のとおりに払うのが事前確定届出給与です。役員賞与を損金の額に算入したいときは、事前確定届出給与を使います。
3つの役員給与の比較
比較すると次のとおりです。
| 種類 | 支給の形 | 手続き | 中小企業での使い方 |
|---|---|---|---|
| 定期同額給与 | 1か月以下の一定の期間ごとに同額 | 届出は不要。改定できる時期が限られる | 毎月の役員報酬 |
| 事前確定届出給与 | 届出をした時期に、届出をした金額を払う | 期限までに税務署へ届出 | 役員賞与 |
| 業績連動給与 | 利益や株価などの指標に連動する | 算定方法の開示など、要件が多い | 同族会社は条件が厳しく、使いにくい |
事前確定届出給与の届出期限
届出の期限は、株主総会などで決議をした日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日のうち、早い日です。新設の法人は、設立の日から2か月を経過する日です(国税庁のタックスアンサーNo.5211)。届出をした金額と実際の支給額が異なると、事前確定届出給与に当たらず、原則として支給額の全額が損金の額に算入できません(法人税基本通達9-2-14)。定期同額給与の増額は上乗せ分だけが外れますが、事前確定届出給与は全額が外れます。
業績連動給与は中小企業で使いにくい
業績連動給与は、利益や株価などの指標で算定する給与です。対象は業務執行役員で、算定方法の客観性、報酬委員会などの適正な手続、有価証券報告書などでの開示といった要件をすべて満たす必要があります。同族会社は、同族会社以外の法人との間で完全支配関係があるものに限られます(国税庁のタックスアンサーNo.5211)。中小企業の多くは、定期同額給与と事前確定届出給与の2つから選ぶことになります。
よくある質問
期の途中で役員報酬を上げることはできますか?
期首から3か月以内なら、何回でも改定できますか?
決算が近づいて利益が出そうなとき、役員報酬で調整できますか?
まとめ:決められる時期に、1年分の額を決めよう
- 定期同額給与は、1か月以下の一定の期間ごとに、毎回同額で払う役員給与です
- 同額かどうかは、支給額か、源泉所得税や社会保険料を引いた後の額で見ます
- 期の途中で変えられるのは、期首から3か月以内、臨時改定事由、業績悪化改定事由の3つです
- 業績悪化改定事由は減額に限られ、一時的な資金繰りの都合は含まれません
- 認められない改定は、増額なら上乗せ分に月数を掛けた額、減額なら下げた後を超える額が損金の額に算入できません
役員報酬を期の途中で変えたい方、減額が認められるか判断できずに決議が止まっている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。事業年度の開始日と決議の日、直近の月ごとの支給額と議事録を確認し、改定できる時期と損金の額に算入できなくなる金額を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 法人税基本通達9-2-12、9-2-12の2、9-2-12の3、9-2-13、9-2-14
- 国税庁「役員給与に関するQ&A」(平成20年12月、平成24年4月改訂)
- 国税庁 質疑応答事例「定期給与の額を改定した場合の損金不算入額(定期同額給与)」
- 法人税法34条、法人税法施行令69条





