役員報酬のシミュレーション|手取りが変わる分岐

「あと5万円上げたら、手取りはどれくらい増えますか」。役員報酬を決める場面で、いただくことの多いご質問です。この問いに一律の答えがないのは、手取りが階段状に変わるためです。

結論からお伝えすると、報酬の額には制度上の境目がいくつもあります。社会保険の標準報酬月額の等級、厚生年金の上限、給与所得控除の上限、所得税の税率区分。境目をまたぐかどうかで、増える額の意味が変わります

税理士法人Light UPでは、報酬の額を検討する際、この境目の一覧をお見せしています。どこに階段があるかを知っていれば、5万円の置き方も変わるためです。

この記事では、手取りに影響する4つの制度と、それぞれの境目を整理します。なお、示すのは制度上の区切りであり、個別の手取り額の試算ではありません。実際の金額は、扶養の状況や他の所得によって変わります。

なぜ階段状に変わるのか

結論: 社会保険料が等級で決まるためです。税金は連続的に増えますが、保険料は段差があります。

保険料は等級で決まる

社会保険料は、報酬の額そのものではなく、標準報酬月額という等級に当てはめて計算します。同じ等級のなかであれば、報酬が多少上下しても保険料は同じです。逆に、等級をひとつまたぐと保険料が段階的に増えます。報酬を1,000円上げただけで、保険料が数千円増えることがあるという構造です。この段差が、手取りが階段状に変わる主な理由になります。

税金は連続的に増える

所得税と住民税は、課税所得に税率を掛けて計算します。税率の区分が上がっても、上がるのは超えた部分だけです。課税所得が330万円を1円超えたからといって、全体に高い税率がかかるわけではありません。税率の区分をまたぐことによる急な増加は生じません。この点は、社会保険料との大きな違いです。住民税の所得割は一律10パーセントなので、こちらには税率の区分そのものがありません。所得が増えれば、その分だけ比例して増えていきます。

両方を合わせて見る

税金は連続、保険料は階段。この2つを合わせると、報酬を上げたときに手取りが増える幅は一定になりません。同じ5万円の増額でも、境目のどちら側にいるかで結果が変わります。境目の位置を知っておくことが、報酬を決めるうえでの実務的な備えになります。等級が上がらない範囲に収まれば、増額分に対する手取りの割合は大きくなります。逆に、等級を2つまたぐような増額では、その割合が小さくなります。

税金と社会保険料の違い
所得税・住民税
課税所得に応じて連続的に増える
税率の区分をまたいでも、上がるのは超えた部分だけ
所得控除の額で課税所得が変わる
上限はない
社会保険料
標準報酬月額の等級で決まる
等級をまたぐと段階的に増える
同じ等級のなかでは報酬が変わっても同額
厚生年金には上限がある

境目1:標準報酬月額の等級

結論: 健康保険は第1級58,000円から第50級まで、厚生年金保険は第1級88,000円から第32級までの区分です。

条文上の下限

e-Gov 法令検索で健康保険法40条1項を確認すると、標準報酬月額について「被保険者の報酬月額に基づき、次の等級区分によつて定める」とされ、第1級が58,000円と定められています。厚生年金保険法20条1項も同じ構造で、こちらは第1級が88,000円です。報酬をこれ未満に設定しても、保険料はこの水準で計算されます。報酬を極端に下げても保険料がゼロにならないのは、この下限があるためです。月8万円の報酬でも、厚生年金保険料は88,000円を基礎に計算されます。実際の報酬より高い水準で計算されるということです。

等級の幅は一定ではない

等級の区切りは、報酬の水準によって幅が違います。報酬が低い帯では区切りが細かく、高い帯では幅が広くなります。同じ1万円の増額でも、等級が上がる帯と上がらない帯があるということです。自分の報酬がどの等級のどのあたりにあるかを確認しておくと、増減の判断がしやすくなります。等級表は、加入している健康保険の保険者が公表しています。

厚生年金には上限がある

e-Gov 法令検索で厚生年金保険法81条4項を確認すると、保険料率について「千分の百八十三とする」と定められており、18.3パーセントで固定されています。ただし、計算の基礎になる標準報酬月額には上限があります。上限の等級に達すると、報酬をさらに増やしても厚生年金保険料は増えません。高い報酬帯では、増額しても保険料が増えない領域があるということです。健康保険には厚生年金より多くの等級があるため、上限に達する報酬の水準は健康保険のほうが高くなります。

賞与にも上限がある

標準賞与額にも上限が定められており、健康保険は年度の累計573万円、厚生年金は1か月あたり150万円です。事前確定届出給与として賞与を支払う場合、この上限を超える部分には保険料がかかりません。月々の報酬と賞与で、保険料の計算の仕組みが違うという点は、配分を考えるうえで意味を持ちます。ただし、税務上の要件は別に満たす必要があります。

制度 下限 上限の考え方
健康保険(標準報酬月額) 第1級58,000円 第50級まで区分がある
厚生年金保険(標準報酬月額) 第1級88,000円 第32級で頭打ちになる
健康保険(標準賞与額) 年度の累計573万円
厚生年金保険(標準賞与額) 1か月あたり150万円

境目2:給与所得控除の上限

結論: 給与収入が増えるほど控除も増えますが、一定の収入を超えると頭打ちになります。

控除が増えなくなる点

給与所得控除は、給与収入の額に応じて計算されます。収入が増えるほど控除の額も増えますが、上限が定められており、それを超えると増えません。上限に達した後は、増えた収入がそのまま課税所得を押し上げます。この点が、報酬を高くしていったときに手取りの増え方が鈍る理由のひとつです。給与所得控除は収入が増えるほど控除率が下がる設計になっており、上限に達するまでの間も増え方は緩やかになっていきます。

個人事業との比較で意味を持つ

個人事業の所得には給与所得控除がありません。法人化して役員報酬を受け取る形にすれば、この控除が使えます。ただし上限があるため、報酬を高くするほど有利になるわけではありません。控除の上限までは効果が大きく、それを超えると差が縮まるという構造です。法人化の試算では、この点が結論に影響します。役員報酬を高く設定すれば給与所得控除の恩恵を受けられますが、上限を超えた部分については、その効果がなくなります。

会社側の損金との関係

役員報酬は会社の損金になるため、報酬を上げれば会社の所得は減ります。ただし個人側では所得税と社会保険料が増えます。会社と個人を合わせた負担で見る必要があるのは、このためです。給与所得控除の上限を超えた帯では、会社に利益を残したほうが有利になる場面も出てきます。ただし、会社に残した利益はいずれ役員報酬か退職金として個人に移すため、その時点の課税も見込んでおく必要があります。

境目3:所得税の税率区分

結論: 課税所得の区分ごとに税率が上がります。ただし、上がるのは超えた部分だけです。

課税所得が決まるまで
1

役員報酬の年額を出す
月額×12。賞与があれば加える
2

給与所得控除を引く
収入に応じて計算する。一定の収入を超えると頭打ち
3

所得控除を引く
社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除など
4

課税所得に税率を掛ける
区分ごとの税率。超えた部分だけに高い税率がかかる
5

住民税を加える
所得割は一律10パーセント。均等割も加わる

超過累進という仕組み

所得税は超過累進税率で、課税所得を区分に分け、それぞれの区分に対応する税率を掛けます。課税所得が区分の境目を1円超えても、その1円に対してだけ高い税率がかかります。全体に高い税率がかかるわけではありません。この点は誤解が多く、境目の手前で報酬を止める必要はありません。所得税法89条1項の税率表も、課税総所得金額を区分に分けて、それぞれの区分の金額に税率を掛ける形で書かれています。区分をまたいだ瞬間に負担が跳ね上がる仕組みではありません。

住民税と合わせて見る

住民税の所得割は一律10パーセントです。所得税の税率と合わせると、区分ごとの合計の負担率が分かります。所得税だけを見ると税率の印象が実際と違うため、住民税を含めた率で考えるほうが実態に近くなります。復興特別所得税も所得税額に対して2.1パーセント加わります。所得税の税率が20パーセントの区分にいれば、住民税と合わせておおむね30パーセントという水準です。

所得控除の影響

税率の区分は、収入ではなく課税所得で判定します。課税所得は、給与収入から給与所得控除と所得控除を引いた残りです。扶養している家族の人数、社会保険料の額、生命保険料控除。これらによって課税所得は変わります。同じ報酬でも、家族構成で税率の区分が変わることがあるということです。社会保険料は全額が社会保険料控除の対象になるため、保険料が増えれば課税所得はその分だけ小さくなります。保険料の増加が、税額の面では一部相殺されるという関係です。

報酬を上げたときに何が増えるか
役員報酬を月5万円上げた
標準報酬月額の等級が上がる
健康保険料と厚生年金保険料が段階的に増える。会社負担も同額増える
等級が変わらない
社会保険料は増えない。増えるのは所得税と住民税だけ
厚生年金の上限に達している
厚生年金保険料は増えない。健康保険料と税金だけが増える
給与所得控除の上限を超えている
増えた分がそのまま課税所得になる
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境目4:扶養と配偶者の判定

結論: 配偶者や家族の収入によっては、扶養の判定が変わり、控除や保険料に影響します。

社会保険の被扶養者

被扶養者として認定されるには、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、被保険者の年間収入の2分の1未満であることが原則です。ただし、令和7年10月1日以後に扶養の認定を受ける19歳以上23歳未満の親族(被保険者の配偶者を除く)は、この収入の基準が150万円未満になります。年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。大学生の子がアルバイトをしている家庭では、この20万円の差が判定を分けます。被扶養者の分の保険料はかからないため、この判定は世帯の負担に直接影響します。配偶者が働き方を変えるときは、この基準が判断の材料になります。配偶者については、同時に国民年金の第3号被保険者になれるかどうかも決まります。第3号であれば、保険料の負担なく国民年金の記録が積まれます。

配偶者控除と配偶者特別控除

所得税では、配偶者の合計所得金額に応じて、配偶者控除または配偶者特別控除のどちらかが適用されます。控除額が動く軸は2つあり、混同しやすいところです。1つは配偶者の所得で、合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除、58万円超133万円以下なら配偶者特別控除となります。この軸で控除額が段階的に下がるのは配偶者特別控除のほうで、配偶者控除は58万円を超えた時点で対象から外れます。もう1つは役員本人の所得です。こちらは両方に共通し、本人の合計所得金額が900万円を超えると控除額が下がり、1,000万円を超えると適用がなくなります。役員報酬を上げたときに影響するのは、この2つ目の軸のほうという関係です。報酬の増額だけを見ていると、この影響を見落とします。控除がゼロになる水準まで報酬を上げる場合、その手前の帯では控除の減少分も負担として加わることになります。

家族に報酬を分ける場合

配偶者や家族が実際に業務に従事しているなら、役員報酬を分ける形が取れます。累進税率のもとでは、1人に集めるより2人に分けるほうが合計の税率は下がります。ただし、それぞれについて社会保険の加入が生じ、被扶養者から外れることもあります。税金だけを見て分けると、保険料で逆転することがあります。両方を含めて計算する必要があります。

境目を確認する順番
1

現在の標準報酬月額の等級を確認する
給与明細か、標準報酬決定通知書で分かる
2

等級表で前後の区切りを見る
いくら上げると等級が上がるかを把握する
3

厚生年金の上限に達しているか確認する
達していれば、増額しても厚生年金保険料は増えない
4

給与所得控除の上限を超えているか確認する
超えていれば、増額分がそのまま課税所得になる
5

扶養の判定への影響を見る
配偶者控除の減少、被扶養者の認定

報酬を下げる方向の分岐

結論: 下げても保険料はゼロになりません。将来の年金額と在職中の保障にも影響します。

保険料の下限

厚生年金保険の第1級は標準報酬月額88,000円、健康保険は58,000円です。報酬をこれ未満に設定しても、保険料はこの水準で計算されます。報酬をゼロにすれば被保険者になりませんが、生活費を会社から受け取れなくなります。他に給与所得があってそちらで社会保険に加入している場合を除けば、現実的な選択にはなりません。

将来の年金額への影響

厚生年金の受給額は、加入期間中の報酬に連動します。報酬を低く設定した期間が長いほど、将来受け取る額は小さくなります。目先の保険料と将来の受給額はつながっているという点を踏まえて設定する必要があります。何十年という期間で見ると、この差は無視できない金額になります。厚生年金の受給額は加入期間中の報酬の平均で計算されるため、一時的に下げた期間があっても平均に反映されます。

在職中の保障への影響

傷病手当金と出産手当金の額も、標準報酬月額をもとに計算されます。病気で働けなくなったときに受け取れる額が、報酬の設定に連動するということです。保険料を抑えるという判断は、保障を薄くするという判断でもあります。この点も、金額を決める前に確認しておく価値があります。傷病手当金は、療養のため働けない期間について標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。報酬の設定が、そのまま支給額に反映されます。

役員貸付金が生じる形

報酬を生活費より低く設定し、不足分を会社から借りると、役員貸付金が積み上がります。金融機関の評価で不利に働くほか、認定利息の計上も必要になります。融資を受ける予定があるなら、この形は避けたほうがよいと思います。生活に必要な額を先に決め、そこから調整するという順序が現実的です。役員貸付金は、いったん積み上がると解消に時間がかかります。報酬から返済していくことになるため、その分だけ手取りはさらに減ります。

報酬を下げたときに起きること
01
保険料はゼロにならない
厚生年金88,000円、健康保険58,000円が下限
02
将来の年金額が下がる
厚生年金の受給額は加入期間中の報酬に連動する
03
在職中の保障も下がる
傷病手当金と出産手当金は標準報酬月額をもとに計算される
04
役員貸付金が生じる
生活費が不足して会社から借りると、貸付金として残る

決めた後に動かせない期間

結論: 役員報酬は期首から3か月以内に決め、その事業年度は原則として変更できません。

定期同額給与の要件

e-Gov 法令検索で法人税法34条1項1号を確認すると、定期同額給与について「その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの」と定められています。改定できるのは、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行われる改定などに限られます。期の途中で自由に増減できないという制約が、決めるときの重さを生みます。1年間の業績を見通したうえで決めることになりますが、実際には期首の時点で正確な見通しを立てるのは難しい場面がほとんどです。この不確実性を、どちら側に振るかという判断も伴います。

変えられる場合

臨時改定事由(役職の変更など)と業績悪化改定事由に該当すれば、期の途中でも改定できます。ただし、業績悪化改定事由は、単に業績が思わしくないという理由では認められません。要件が限定されているため、期首の判断が実質的に1年を決めます。業績悪化改定事由は、株主や取引銀行、取引先といった第三者との関係上、報酬を減額せざるを得ない事情がある場合などとされています。社内の判断だけで下げる形は、この事由に当たりません。

社会保険の見直しは別の周期

社会保険の標準報酬月額は、毎年7月の算定基礎届で見直されます。役員報酬を期首に改定した場合、その内容が保険料に反映されるのは、月額変更届の要件に当たれば4か月目から、そうでなければ翌年9月からです。税務の周期と社会保険の周期がずれているという点は、実務で混乱しやすい部分です。4月から6月の報酬が算定基礎届の対象になるため、この時期の報酬が1年間の保険料を決めます。期首が4月の会社では、改定した報酬がそのまま算定の基礎になります。

税務と社会保険で周期が違う
税務(定期同額給与)
期首から3か月以内に決める
その事業年度は原則として変更できない
臨時改定事由と業績悪化改定事由が例外
事業年度が基準
社会保険(標準報酬月額)
毎年7月の算定基礎届で見直す
適用は9月から翌年8月まで
2等級以上の差が出たら月額変更届
暦の月が基準

事例:等級の境目を知らずに増額した会社

サービス業の会社から、役員報酬の改定についてご相談をいただきました。前期の業績がよかったため、月5万円の増額を検討されていました。

現在の報酬は月62万円でした。

社長1人の会社です。

増額すると月67万円になります。標準報酬月額の等級が上がり、健康保険料と厚生年金保険料の両方が増える位置でした。会社と個人で折半しますが、一人社長の会社では会社負担分も自分の会社から出ていきます。

手取りの増加額を計算すると、増額分の5万円に対して、実際に手元に残る額は想定よりかなり小さくなる見込みでした。

そこで、報酬の増額幅を変える案と、増額せずに会社に利益を残す案を並べました。会社に残す場合、法人税等はかかりますが、社会保険料は増えません。

最終的には、増額幅を抑える形にしました。同じ5万円でも、等級の境目のどちら側にいるかで意味が変わるという点が、この事例から見えたところです。改定の前に等級表を確認する運用にしています。

よくある質問

役員報酬を上げると手取りはどれくらい増えますか?
一律の答えはありません。標準報酬月額の等級をまたぐかどうか、厚生年金の上限に達しているかどうか、給与所得控除の上限を超えているかどうかで、増える幅が変わります。まず自分の報酬がどの等級にあるかを確認してください。
なぜ手取りが階段状に変わるのですか?
社会保険料が標準報酬月額という等級で決まるためです。同じ等級のなかでは報酬が変わっても保険料は同じですが、等級をひとつまたぐと段階的に増えます。税金は連続的に増えるため、この段差は保険料によるものです。
所得税の税率区分をまたぐと損しますか?
損しません。所得税は超過累進税率で、区分の境目を超えた部分だけに高い税率がかかります。全体に高い税率がかかるわけではないため、境目の手前で報酬を止める必要はありません。
報酬を下げれば保険料はゼロになりますか?
なりません。厚生年金保険の第1級は標準報酬月額88,000円、健康保険は58,000円が下限です。報酬をこれ未満に設定しても、保険料はこの水準で計算されます。報酬をゼロにすれば被保険者になりませんが、生活費を会社から受け取れなくなります。
賞与で受け取ると保険料は変わりますか?
標準賞与額には上限があり、健康保険は年度の累計573万円、厚生年金は1か月あたり150万円です。ただし、役員賞与を損金にするには事前確定届出給与の要件を満たす必要があり、届出の期限もあります。税務の要件を先に確認してください。
いつまでに決める必要がありますか?
定期同額給与の要件を満たすには、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに改定する必要があります。その事業年度は原則として変更できません。臨時改定事由と業績悪化改定事由に該当すれば期中の改定も可能ですが、要件は限定されています。

まとめ:境目の位置を先に確認する

役員報酬を上げたときの手取りの増え方は、一定ではありません。社会保険料が等級で決まるため、手取りは階段状に変わります。

境目は4つの制度にあります。健康保険の標準報酬月額(第1級58,000円から第50級まで)、厚生年金保険の標準報酬月額(第1級88,000円から第32級まで)、給与所得控除の上限、そして所得税の税率区分です。

このうち所得税の税率区分をまたぐことによる損はありません。超過累進税率なので、上がるのは超えた部分だけです。境目の手前で報酬を止める必要はありません。

一方、社会保険料の等級には段差があります。等級をひとつまたぐと保険料が段階的に増え、一人社長の会社では会社負担分も自分の会社から出ていきます。改定の前に等級表を確認しておくと、同じ増額でも置き方が変わります。

下げる方向にも境目があります。報酬をどれだけ下げても、厚生年金88,000円、健康保険58,000円という下限があるため保険料はゼロになりません。将来の年金額と、傷病手当金などの在職中の保障にも影響します。

そして、決めたら原則としてその事業年度は変更できません。期首から3か月以内という期限が、判断の重さを決めています。

なお、ここで示したのは制度上の境目です。実際の手取りは、扶養の状況や他の所得によって変わります。

税理士法人Light UPでは、役員報酬の設定について、税と社会保険の両方を含めたご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

役員報酬のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • e-Gov 法令検索「健康保険法」(大正十一年法律第七十号)第40条、第45条
  • e-Gov 法令検索「厚生年金保険法」(昭和二十九年法律第百十五号)第20条、第24条の4、第81条
  • e-Gov 法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号)第28条、第83条、第83条の2、第89条
  • e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第34条
  • e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第69条
  • 国税庁 タックスアンサー No.1191「配偶者控除」・No.1195「配偶者特別控除」
  • 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」(厚生労働省 保発0704第1号・年管発0704第1号 令和7年7月4日)

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