勘定科目の一覧|迷いやすい費用の分け方
「この支払い、消耗品費でいいのか毎回悩みます」。「前の担当者が使っていた科目が多すぎて、どれを選べばいいのか分かりません」――経理を引き継いだ方から、この2つはほぼ必ず出てきます。
結論からお伝えすると、勘定科目とは、取引を性質ごとに分類して集計するための名前です。法律で一覧が定められているわけではなく、会社が自社の実態に合わせて決められます。ただし、税務上の取扱いが科目によって変わるものがあり、そこだけは選び方に理由が要ります。
税理士法人Light UPでは、勘定科目で迷ったときに見るべきは名前ではなく、その支出が税務上どう扱われるかだと考えています。交際費なのか会議費なのか、費用なのか資産なのか。この2つの分かれ目さえ押さえれば、残りは社内の見やすさで決めて構いません。
この記事では、勘定科目の全体像と中小企業でよく使う科目の一覧、判断に迷いやすい費用の分け方、そして科目を決めるときの実務的な考え方を、実際に中小企業の記帳を担当している立場から整理します。
勘定科目は取引を分類するための名前
結論: 勘定科目とは、日々の取引を性質ごとに分類し集計するために付ける名前です。会社法や税法で統一された一覧が定められているわけではなく、会社が自社に合わせて設定できます。
決まった正解の一覧はない。継続して同じ基準で使うことが大切
「正式な勘定科目一覧はどこにありますか」というご質問をよくいただきます。実は、これという法定の一覧は存在しません。
会計ソフトに初期登録されている科目は、多くの会社で使われている標準的なものを集めたものです。そこから足しても減らしても構いません。
同じ性質の支出を、ある月は消耗品費、別の月は雑費に入れる。これをやると前年比が意味を持たなくなります。
科目の選び方そのものより、一度決めた基準を続けることのほうが重要です。勘定科目は、書類を入れる引き出しのラベルだと考えてください。ラベルの言葉より、同じものが同じ引き出しに入り続けることが大切です。
税務上の扱いが変わる科目だけは別。決算書の見え方にも影響する
一方で、科目の選び方が税額に影響するものもあります。交際費と会議費、費用と資産、修繕費と資本的支出などです。
これらは「見やすさで決める」わけにいきません。判断の根拠を持って選ぶ必要があります。
金融機関は決算書を見て与信を判断します。本来は販売費として計上すべきものを原価に入れていると、粗利率が実態とずれて見えます。
科目の設計は、社内向けと社外向けの両方に関わります。
勘定科目は5つのグループに分かれる
結論: 勘定科目は、資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分かれます。資産・負債・純資産は貸借対照表に、収益と費用は損益計算書に集計されます。
| グループ | 意味 | 集計先 | 科目の例 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 会社が持っているもの | 貸借対照表 | 現金、普通預金、売掛金、工具器具備品 |
| 負債 | 会社が返すべきもの | 貸借対照表 | 買掛金、未払金、短期借入金、預り金 |
| 純資産 | 資産から負債を引いた残り | 貸借対照表 | 資本金、利益剰余金 |
| 収益 | 事業で得たもの | 損益計算書 | 売上高、受取利息、雑収入 |
| 費用 | 事業で使ったもの | 損益計算書 | 仕入高、給料手当、地代家賃、消耗品費 |
5つのグループの一覧と、借方・貸方
簿記では、左側を借方、右側を貸方と呼びます。資産が増えたら左、負債が増えたら右、という並びです。資産と費用は借方に残高が生じ、負債・純資産・収益は貸方に残高が生じるのが基本の型で、上の表の並びもこの型に沿っています。
会計ソフトを使う場合、この左右を意識する場面はほとんどありません。科目を選べばソフトが位置を決めます。
費用の内訳と、損益計算書と貸借対照表が切り取る時間の違い
費用は、売上原価・販売費及び一般管理費・営業外費用の3つに分かれます。どこに置くかで、粗利益と営業利益の見え方が変わります。
製造業であれば、製造原価報告書がさらに加わります。
損益計算書が1年間の動きを表すのに対し、貸借対照表は決算日という1日の状態を表します。同じ会社の資料でも、切り取っている時間が違います。
中小企業でよく使う費用の科目
結論: 中小企業の損益計算書で使われる費用の科目は、おおむね25〜35種類に収まります。多くの会社に共通するものを押さえておけば、日々の判断はほぼ足ります。
販売費及び一般管理費の主な科目と、業種によって足りない科目
費用の科目は、業種を問わず使うものと、業種特有のものに分かれます。まずよく使うものを一覧で押さえておくと、迷う場面が減ります。
| 科目 | 主な内容 |
|---|---|
| 役員報酬 | 役員に支払う定期的な報酬 |
| 給料手当 | 従業員の給与・各種手当 |
| 法定福利費 | 社会保険料・労働保険料の会社負担分 |
| 福利厚生費 | 健康診断、慶弔見舞金、社内行事の費用 |
| 旅費交通費 | 電車・タクシー・宿泊費・出張日当 |
| 通信費 | 電話、インターネット、郵送料 |
| 広告宣伝費 | 広告出稿、パンフレット、ウェブサイト制作費 |
| 接待交際費 | 取引先との飲食、贈答、慶弔 |
| 会議費 | 社内外の打合せに伴う茶菓・弁当代 |
| 消耗品費 | 事務用品、10万円未満の備品 |
| 地代家賃 | 事務所・店舗・駐車場の賃料 |
| 水道光熱費 | 電気・ガス・水道 |
| 修繕費 | 建物・設備の維持補修 |
| 保険料 | 損害保険・生命保険(一部は資産計上) |
| 支払手数料 | 振込手数料、専門家報酬、各種サービス利用料 |
| 租税公課 | 印紙税、固定資産税、自動車税、事業税 |
| 減価償却費 | 固定資産の期間配分 |
| 支払報酬 | 税理士・弁護士などへの報酬(支払手数料に含める会社もある) |
| 車両費 | ガソリン代、車検、修理(燃料費として分ける会社もある) |
| 荷造運賃 | 商品の発送にかかる送料・梱包材 |
| 新聞図書費 | 書籍、新聞、有料情報サービス |
| 研修費 | 従業員の教育・セミナー参加費 |
| 雑費 | 上記のいずれにも当てはまらない少額の費用 |
飲食業なら食材の仕入と消耗品の区分、建設業なら外注費と労務費、小売業なら仕入高と荷造運賃。業種特有の科目は、初期設定に入っていないことがあります。
金額が大きく、毎月発生するものは独立した科目を立てます。
雑費が膨らんでいたら見直しの合図
雑費は、どこにも当てはまらないものを入れる箱です。ここが費用全体の数%を超えてきたら、分類が追いついていない状態です。
年間で集計してみて、同じ内容が何度も出てくるなら独立した科目を作ります。
費用全体の1割を超えているようなら、独立させる科目がないかを見ます。内訳が分からない箱が大きいと、月次を読むときに困ります。
資産・負債の科目は決算書の姿を左右する
結論: 資産と負債の科目は、金融機関や取引先が会社の状態を判断する材料になります。特に売掛金・棚卸資産・借入金の3つは、実態と一致しているかが問われます。
資産と負債の主な科目、買掛金と未払金は分けて使うこと
資産と負債の科目は、決算日の姿をそのまま示します。どの科目に置くかで、貸借対照表の読まれ方が変わる部分です。金融機関は流動と固定の区分や、負債の中身まで見ています。まず主なものを並べたうえで、間違えやすい2組を確かめます。
| 科目 | 主な内容 |
|---|---|
| 現金 | 手元の現金、小口現金 |
| 普通預金・当座預金 | 金融機関の口座残高 |
| 売掛金 | 商品・サービスを提供して未回収の代金 |
| 商品・製品・原材料 | 期末に残っている在庫 |
| 前払費用 | 翌期分を先に支払った家賃・保険料など |
| 立替金 | 従業員や取引先に一時的に立て替えた金額 |
| 建物・機械装置・工具器具備品 | 固定資産 |
| 敷金・保証金 | 賃貸契約で預けている金額 |
| ソフトウェア | 自社利用のソフトウェア(無形固定資産) |
| 科目 | 主な内容 |
|---|---|
| 買掛金 | 仕入代金で未払いのもの |
| 未払金 | 仕入以外の未払い(備品購入など) |
| 未払費用 | 期間の経過に応じて発生した未払い(家賃・給与など) |
| 預り金 | 源泉所得税、社会保険料の従業員負担分 |
| 短期借入金・長期借入金 | 金融機関からの借入 |
| 未払法人税等 | 決算で確定した法人税等 |
仕入に関するものが買掛金、それ以外が未払金です。この区分が崩れていると、仕入債務の回転期間が正しく出ません。
金融機関はこの数字から資金繰りの状況を読みます。
預り金は他人のお金
源泉所得税や社会保険料の従業員負担分は、会社のお金ではありません。預り金として区分し、納付するまで残高が残ります。
この残高が合わないまま決算を迎えると、納付漏れが後から見つかります。
源泉所得税、社会保険料の本人負担分、住民税。いずれも預かっているだけで、会社の収入ではありません。残高が合わない状態は放置しないことです。
費用と資産の境目は取得価額で決まる
結論: 備品を購入したとき、費用として一度に落とせるか資産として計上するかは、取得価額と使用可能期間で決まります。10万円未満は費用処理でき、20万円未満は一括償却資産、中小企業者等には別の特例があります。
判定の順番と、1組・1式で判定すること
国税庁のタックスアンサーNo.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」によれば、少額の減価償却資産に該当するのは「使用可能期間が1年未満のもの」または「取得価額が10万円未満のもの」です。
この場合、事業の用に供した事業年度に取得価額の全額を損金経理していれば、損金の額に算入されます。
同タックスアンサーは、取得価額の判定について「通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します」としたうえで、応接セットはテーブルと椅子の1組で、カーテンは部屋ごとの合計額で判定すると例示しています。
パソコン本体とモニターを別々に買った場合の扱いも、同じ考え方で整理します。
金額別の選択肢、中小企業者等の特例、資産に計上した後では戻せない
| 取得価額 | 選べる処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 全額を損金経理(消耗品費など) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却/通常の減価償却 |
| 20万円以上 | 通常の減価償却(中小企業者等は下記の特例あり) |
青色申告をしている中小企業者等は、取得価額30万円未満の減価償却資産について、取得した年度に全額を損金算入できる特例があります。年間300万円が上限です。
なお令和8年度の税制改正で、この基準額が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。令和8年4月1日以後に取得する資産が対象です。
同タックスアンサーは、「いったん資産に計上したものをその後の事業年度で一時に損金経理をしても損金の額に算入することはできません」と注記しています。
期中の処理を後から直す形では間に合わない場面がある、ということです。
交際費・会議費・福利厚生費の分かれ目
結論: 取引先との飲食は接待交際費、打合せに伴う茶菓や弁当は会議費、従業員全員を対象とする支出は福利厚生費に分かれます。交際費には損金算入の上限があるため、区分が税額に影響します。
交際費には枠がある。1人1万円以下の飲食費は除かれる
資本金1億円以下の法人は、年800万円までの交際費等を損金に算入できます。接待飲食費の50%を選ぶこともでき、有利なほうを選択します。
枠を超えた部分は損金になりません。ここが他の費用科目と決定的に違う点です。
取引先との飲食のうち、1人あたり1万円以下のものは、一定の書類を保存していれば交際費等から除かれます。この基準は令和6年4月1日以後の支出について5,000円から1万円へ引き上げられました。
書類には、日付・参加者の氏名と関係・参加人数・金額・飲食店の名称と所在地などを記載します。領収書だけでは要件を満たしません。
福利厚生費は全員が対象、会議費は目的で判断、会費も交際費に入ることがある
特定の従業員だけを対象にした支出は、給与として扱われます。全従業員を対象とし、社会通念上妥当な金額であることが条件です。
社内の慰安旅行や忘年会も、参加できる範囲が限定されていると扱いが変わります。
打合せの場所代、会議中の弁当や飲み物は会議費です。会議の後に場所を変えて飲食した分は、交際費に該当することが一般的です。
社交団体やゴルフクラブの年会費は、諸会費ではなく交際費等です。諸会費のまま置くと、年800万円の枠の計算から漏れます。同業団体の会費は損金になりますが、団体の性格によって扱いが分かれます。
同じ日の支出でも、目的が変われば科目が変わります。
修繕費と資本的支出は効果の及ぶ期間で分かれる
結論: 建物や設備への支出は、原状回復や維持のためであれば修繕費、価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりするものであれば資本的支出として資産計上します。金額ではなく内容で判断します。
判断の基準は3つ。金額基準の目安もある
- 元の状態に戻すためのものか、性能を上げるものか
- 通常の維持管理の範囲か、価値を増加させるものか
- 使用可能期間が延びるかどうか
塗装のやり直しは修繕費、間取りの変更を伴う改装は資本的支出、という分かれ方です。
1件あたり20万円未満の支出や、おおむね3年以内の周期で行われる修理は、修繕費として処理できる取扱いがあります。判断に迷う場合の逃げ道として用意されているものです。
資産計上すると当期の損金は減る。見積書の書き方で判断が変わる
資本的支出になると、その年に全額を費用にできません。耐用年数にわたって減価償却していきます。
大規模な工事を予定しているなら、この点を先に確認しておく必要があります。
「修繕工事一式」とだけ書かれた見積書では、中身の判断ができません。工事の内容ごとに金額が分かれていれば、修繕費と資本的支出に分けて処理できます。
発注のときに内訳を依頼しておくと、決算のときに困りません。
税金の科目は損金になるかどうかで分かれる
結論: 会社が納める税金のうち、法人税・法人住民税は損金になりません。印紙税・固定資産税・自動車税・法人事業税などは損金になり、租税公課として処理します。
租税公課に入るものと、法人税等として区別するもの
印紙税、固定資産税、都市計画税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、事業所税、そして法人事業税と特別法人事業税です。
これらは納付した事業年度の損金になります。
法人税、地方法人税、法人住民税は、損金になりません。決算書では法人税等として区分し、租税公課には入れません。
同じ税金でも扱いが違うため、科目を分けておくと申告書の作成が楽になります。
延滞税や加算税も損金にならない。消費税は経理方式で変わる
延滞税、加算税、延滞金(地方税)、罰金や科料は損金になりません。租税公課に入れた場合は、申告書で加算する調整が必要です。
科目を分けて「租税公課(損金不算入)」のような補助科目を立てておく会社もあります。
税込経理を採用している場合、納付する消費税は租税公課として処理します。税抜経理の場合は、仮受消費税と仮払消費税の差額として処理し、費用になりません。
どちらの方式を採るかで、決算書の見え方が変わります。
勘定科目と消費税の区分は別に決まる
結論: 勘定科目を選ぶことと、消費税の課税区分を決めることは別の作業です。同じ科目でも、取引の内容によって課税・非課税・不課税・免税に分かれます。
支払手数料は中身で分かれる。地代家賃も分かれる
銀行の振込手数料は課税、税理士報酬も課税ですが、金融機関への融資に伴う保証料は非課税です。同じ支払手数料の中で区分が混在します。
会計ソフトの初期設定を信じたまま入れると、この差が拾えません。
事務所や店舗の家賃は課税、住宅として貸し付けられる部分の家賃は非課税です。社宅の家賃を地代家賃で処理している場合は注意が要ります。
駐車場は、施設の利用に伴うものであれば課税です。
給与と外注費の違いは重い。区分を間違えると納税額が変わる
給与は不課税、外注費は課税です。同じ人に同じ金額を払っていても、契約の実態がどちらかで消費税の計算が変わります。
税務調査で論点になりやすい部分でもあります。指揮命令の有無、時間的な拘束、材料や道具の負担などから総合的に判断されます。
科目の選び方が間違っていても、税額に影響しない場合があります。しかし消費税の区分は、そのまま納付額に反映されます。
科目は棚の名前、税区分は中身の値札だと考えてください。値札を間違えると、レジで金額が変わります。
車にかかる費用は複数の科目に分かれる
結論: 社用車にかかる費用は、ガソリン代・保険料・自動車税・車検・修理で科目が分かれます。すべてを車両費にまとめる方法もありますが、税務上の扱いが違うものが混ざる点に注意が要ります。
| 支出 | 主な科目 | 消費税の区分 |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 車両費または旅費交通費 | 課税 |
| 自動車税・重量税 | 租税公課 | 不課税 |
| 自賠責保険・任意保険 | 保険料 | 非課税 |
| 車検の整備費用 | 車両費または修繕費 | 課税 |
| 駐車場代(月極) | 地代家賃 | 課税 |
| コインパーキング | 旅費交通費 | 課税 |
| 高速道路料金 | 旅費交通費 | 課税 |
車検の請求書には、整備費用・自賠責保険料・重量税・印紙代がまとめて記載されています。この4つは消費税の区分がそれぞれ違います。
一括で車両費に入れると、課税仕入れの金額が過大になります。金額の大きい支出なので、影響も小さくありません。
車が多い会社では、車両費として1本にまとめたほうが管理しやすい場合があります。その場合でも、消費税の区分だけは仕訳ごとに分けます。
科目を1つにすることと、税区分を1つにすることは別です。
収入印紙と切手は買った時点で費用にならない
結論: 収入印紙と郵便切手は、購入した時点では貯蔵品として資産に計上し、使用した分を費用に振り替えるのが原則です。少額であれば購入時に費用処理する簡便な方法も認められています。
契約書や領収書に貼る収入印紙は、使用したときに租税公課となります。郵便切手は通信費です。
購入した段階では、どちらもまだ使っていないため貯蔵品です。
原則どおりに処理するなら、決算日に手元に残っている印紙と切手を数えて貯蔵品に振り替えます。金額が小さい会社では、この作業を省いて購入時に費用処理する運用も広く行われています。
金額が大きい場合や、期末にまとめ買いをした場合は、原則どおりの処理が求められます。
収入印紙は郵便局や指定の売りさばき所で購入した場合、非課税です。金券ショップで購入した場合は課税になります。
郵便切手も、郵便局で購入した時点では非課税で、使用したときに課税仕入れとして扱う原則があります。
新しい取引が出たときは3つの質問で決める
結論: 前例のない支出が出たときは、その支出が事業のどの活動に対応するか、費用か資産か、税務上の制限がある区分に当たらないか、の3点を順に確認します。この順番で見れば、多くの場合は科目が決まります。
手順1:どの活動に対応するか/手順2:費用か資産か/手順3:制限のある区分
売上を作るための支出か、社内を維持するための支出か、資金調達に伴う支出か。まずここで、売上原価・販売費及び一般管理費・営業外費用のどこに入るかが決まります。
その支出の効果が当期で終わるのか、翌期以降にも及ぶのか。1年を超えて効果が続くもの、10万円以上の物を取得したものは資産計上を検討します。
前払いの家賃や保険料も、翌期分は前払費用として資産に計上します。
交際費、寄附金、役員給与。この3つは損金算入に制限があります。当てはまるなら、社内の見やすさより税務上の区分を優先します。
クラウドサービスの利用料は費用が原則。判断できないものは仮勘定に置く
会計ソフトやグループウェアの月額利用料は、資産ではなく費用です。ソフトウェアとして資産計上するのは、自社で開発した場合や、購入して自社のものになる場合に限られます。
年間契約を一括で前払いした場合は、翌期にかかる部分を前払費用として資産に計上します。ただし、支払った日から1年以内に提供を受ける役務については、短期前払費用として支払時の損金にできる取扱いもあります。
3つを確認しても決まらないときは、仮払金として置いておきます。決算までに内容を確認して振り替える、という運用です。
分からないものを無理に分類するより、分からないという印を付けて残すほうが安全です。後から追える形を残しておくことが大切でしょう。
個人事業主には法人にない科目がある
結論: 個人事業主の帳簿には、事業主貸・事業主借という科目があります。事業のお金と生活のお金の行き来を記録するもので、法人でいう役員貸付金や役員報酬とは意味が異なります。
事業のお金を生活のために使ったら事業主貸、生活のお金を事業のために使ったら事業主借です。年末にはこの2つを相殺し、元入金へ振り替えます。
生活費の引き出しは経費ではありません。ここを経費として処理してしまうご相談は毎年いただきます。
自宅兼事務所の家賃や、共用している車の費用は、事業使用分だけが必要経費です。毎月の支払時に全額を計上し、決算で事業主貸へ振り替える方法が実務では多く採られています。
按分の割合は、床面積や使用日数など説明できる根拠に基づいて決めます。
これらは必要経費ではなく、所得控除の社会保険料控除として扱います。事業主貸で処理し、確定申告書で控除します。
法人の法定福利費とは扱いが違う点です。
科目は増やしすぎないほうが使いやすい
結論: 勘定科目を細かく分けすぎると、入力のたびに迷いが生じ、集計しても読みにくくなります。管理したい単位は、科目を増やすのではなく補助科目や部門で分けるのが実務的です。
判断に迷う時間が増える、補助科目で内訳を持つ、部門やタグで切る
科目が50を超えると、どれに入れるかの判断に時間がかかります。担当者が変わったときの引継ぎも重くなります。
たとえば支払手数料の中身を知りたい場合、科目を分けるのではなく補助科目を設定します。損益計算書の行数は増えず、内訳は取れます。
金融機関の口座も、普通預金の補助科目として銀行別に持たせるのが一般的です。
事業所別・案件別に把握したい場合は、部門機能やタグを使います。科目で分けると、事業所が増えるたびに科目が増えていきます。
期の途中で変えない。使っていない科目は非表示にする
科目を統廃合するなら、期首から切り替えます。期中に変えると、前年比較ができない期が1年できてしまいます。
やむを得ず変える場合は、変更の内容と時期を記録に残しておきます。金融機関へ決算書を提出する際に、前期と科目が違う理由を説明できる状態にしておくためです。
会計ソフトの多くは、科目を削除しなくても選択肢から隠せます。過去に使った科目は残高や履歴が残るため、削除ではなく非表示にするのが安全です。
選択肢が減るだけで、入力時の迷いは目に見えて減ります。
実務でつまずきやすい5つの場面
結論: 勘定科目でご相談が多いのは、雑費への集中・交際費の区分漏れ・資産計上の判定・預り金の残高不一致・科目の途中変更の5つです。いずれも決算のときにまとめて表面化します。
雑費に逃がす、交際費の書類を残していない、10万円超の備品
その場は早く終わりますが、決算で内容を確認できません。分からないものは仮払金や仮勘定に置き、後で振り替えるほうが追いやすくなります。
1人1万円以下の飲食費でも、参加者と人数の記録がなければ交際費等から除けません。領収書の裏に手書きで残す運用でも足ります。
金額の判定を単品でしてしまい、1組で10万円を超えているケースです。パソコンとモニターとドッキングステーションを同時に購入した場合などが該当します。
預り金の残高が合わない/前任者の科目をそのまま引き継ぐ
源泉所得税の納付額と預り金の残高がずれたまま数か月が過ぎると、原因の特定に時間がかかります。毎月、納付後の残高を確認する習慣があると防げます。
残高の合わなさと同じく、引き継ぎでも問題が起きます。
引き継いだ時点で使われていない科目が残っていることがあります。使っていない科目は非表示にしておくと、選択の迷いが減ります。
事例:科目を整理して月次が読めるようになった会社
サービス業の会社から、月次試算表を見ながら「毎月見ているのですが、何が起きているのかが分かりません」というご相談をいただきました。
試算表を確認すると、費用の科目が68ありました。前任者が判断に迷うたびに新しい科目を作っていたためです。年間で1回しか使われていない科目が20以上ありました。
最初にしたのは、直近2期分の科目別の発生額を並べる作業です。金額の小さいものと、内容が重複しているものを洗い出しました。
そのうえで、科目を32に整理しています。減らした分は補助科目に落とし、内訳が必要なものは取れる形を残しました。
切り替えは翌期首に行い、期中は元の科目のまま走らせています。整理後、社長からは「どこが増えているのかがひと目で分かるようになった」という言葉がありました。数字そのものは何も変えていません。並べ方だけを変えた結果です。
よくある質問
勘定科目は自分で作ってもよいのでしょうか?
去年と違う科目に入れてしまいました。直すべきですか?
会計ソフトの初期設定のまま使って問題ありませんか?
雑費はどのくらいまでなら許容されますか?
個人事業主と法人で勘定科目は違いますか?
まとめ:迷ったら税務上の扱いから逆算する
- 勘定科目に法定の一覧はなく、会社が自社に合わせて設定できる
- 5つのグループ(資産・負債・純資産・収益・費用)に分かれ、集計先が決まる
- 税額に影響するのは、交際費の区分・費用と資産の判定・修繕費と資本的支出の3つ
- 勘定科目と消費税の課税区分は別に決まる。同じ科目でも取引内容で分かれる
- 科目を増やすより、補助科目や部門で内訳を取るほうが読みやすい
先に決めるべきは、科目の名前ではなく判断のルールです。1人1万円以下の飲食をどう記録するか、10万円を超える備品をどう判定するか。ここが決まっていれば、名前は後から整理できます。
やらなくてよいこともあります。網羅的な科目一覧を暗記する必要はありません。自社で毎月発生する30前後の科目に集中すれば、日々の判断はほぼ足ります。
税理士法人Light UPでは、勘定科目の設計から月次の運用までのご相談をお受けしています。いまの科目が多すぎる、雑費が膨らんでいる、消費税の区分が不安――そうしたご相談は無料相談からお寄せください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」
- e-Gov 法令検索「法人税法」「租税特別措置法」(第61条の4)
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。税制は毎年の改正で変わるため、適用にあたっては最新の情報をご確認ください。




