消耗品費とは|10万円の基準と少額資産との関係
「パソコンを15万円で買ったのですが、消耗品費で落とせますか」。「10万円を超えたら全部資産になるのでしょうか」――備品を買ったときに、こうしたご質問をいただきます。
消耗品費で処理できるのは、取得価額が10万円未満のもの、または使用可能期間が1年未満のものです。ただし10万円を超えたからといって、通常の減価償却しか道がないわけではありません。20万円未満と40万円未満に、それぞれ別の扱いが用意されています。
税理士法人Light UPでは、金額だけで決めず償却資産税まで含めて比べることをお勧めしています。同じ資産でも、選んだ処理によって翌年以降の負担が変わります。
この記事では、消耗品費の範囲、金額による3つの線、令和8年度の改正、消費税の処理による判定の違い、期末の貯蔵品への振替、償却資産税との関係までを整理します。
消耗品費とは何を指すか
結論: 消耗品費は、短期間で使い切るものや、金額の小さい備品を処理する科目です。取得価額10万円未満、または使用可能期間1年未満のものが対象になります。
条文が定めている範囲
e-Gov 法令検索の法人税法施行令133条は、取得価額が「十万円未満であるもの」または「使用可能期間が一年未満であるもの」について、事業の用に供した日の属する事業年度で損金経理をすれば損金に算入すると定めています。
ここで押さえておきたいのは、10万円未満と使用可能期間1年未満が並列の条件である点です。10万円を超えていても、1年未満で使い切るものであれば費用にできます。作業用の消耗工具などが該当することがあります。
事務用品費との使い分け
消耗品費と事務用品費は、どちらを使っても構いません。会計のうえで明確な線引きがあるわけではないためです。
分けている会社では、文房具や用紙などを事務用品費、それ以外の備品や資材を消耗品費としていることが多くあります。大事なのは、決めたルールを毎年同じように使うことです。年によって入れ替わると、期間の比較ができなくなります。
使用可能期間1年未満とは
1年未満で使い切るかどうかは、その資産の一般的な使用状況で判断します。自社が1年で買い替える予定だから、という理由だけでは足りません。
判断に迷う場合は、同じ業種で一般的にどの程度の期間使われているかを基準にします。ここが曖昧なまま金額の大きいものを費用にすると、後で指摘を受ける余地が残ります。
金額の線は3つある
結論: 10万円未満は全額を費用に、20万円未満は3年で均等に、40万円未満は中小企業者等の特例で全額を費用にできます。それぞれ根拠となる規定が違います。
| 取得価額 | 処理 | 償却資産税 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額を費用にできる | 対象外 | 法人税法施行令133条 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に費用にする | 対象外 | 法人税法施行令133条の2 |
| 20万円以上40万円未満 | 中小企業者等は全額を費用にできる(年間300万円まで) | 対象 | 租税特別措置法67条の5 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 | 対象 | 法人税法31条ほか |
一括償却資産という選択
20万円未満の資産は、3年で均等に費用にする方法を選べます。e-Gov 法令検索の法人税法施行令133条の2は、一括償却対象額を「三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」を損金にできるとしています。36で割る、つまり3年かけて費用にするという意味です。
この方法の利点は、償却資産税の対象にならない点にあります。取得した年に全額を費用にできるわけではありませんが、翌年以降の負担が変わってきます。
なお、月割ではなく年割である点も特徴です。期末に取得した資産でも、その事業年度に3分の1を費用にできます。
中小企業者等の特例
資本金1億円以下などの要件を満たす中小企業者等であれば、取得価額が一定額未満の資産について全額を費用にできる特例があります。租税特別措置法67条の5に定められています。
年間の合計で300万円が上限です。事業年度が1年に満たない場合は月数按分します。この上限を超える分は、通常の減価償却か一括償却資産の扱いになります。
令和8年度の改正で基準額が上がった
結論: 中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、対象となる取得価額が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。令和8年4月1日以後に取得する資産が対象です。
適用の時期
引き上げの対象になるのは、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供した資産です。それより前に取得したものは、従前どおり30万円未満が基準になります。
決算をまたぐ時期に取得した資産があれば、取得日を確認します。同じ事業年度の中でも、3月に買ったものと5月に買ったもので判定が変わることになります。
従業員数の要件と、年間300万円の上限は変わらないこと
あわせて、常時使用する従業員数が400人を超える法人は、この特例の対象から外れることになりました。従来より対象が絞られています。
適用期限も延長されており、当面は使える見通しです。ただしこの種の特例は改正のたびに条件が動くため、年度をまたぐときは必ず最新の内容を確認します。
基準額が上がっても、年間の合計額の上限は300万円のままです。40万円の資産であれば、年に7個までが上限に収まる計算になります。
上限を超えた分をどう扱うかは、超えた資産ごとに判断します。20万円未満であれば一括償却資産に、それ以上であれば通常の減価償却になります。
中古で買った場合
中古で購入した資産も、取得価額で判定します。新品か中古かで基準額が変わることはありません。
中古の場合に違ってくるのは、資産計上したときの耐用年数です。法定耐用年数をそのまま使うのではなく、経過年数に応じて短い年数を見積もる方法があります。もっとも、10万円未満で費用にする場合や一括償却資産を選ぶ場合には、耐用年数の見積り自体が不要になります。
中古の資産を多く買う事業では、この点も処理を選ぶときの材料になります。耐用年数の見積りを毎回行うより、金額が収まるなら一括償却資産で処理するほうが手間が少なくて済みます。
消費税の処理で判定が変わる
結論: 10万円、20万円、40万円という基準は、経理方式によって税込金額で判定するか税抜金額で判定するかが変わります。免税事業者は税込金額で判定します。
税込経理と税抜経理で結果が違う
本体価格98,000円のパソコンを例にすると、税抜経理であれば98,000円で判定するため10万円未満に収まります。税込経理であれば107,800円となり、10万円以上の扱いになります。
同じ資産を買っても、経理方式によって処理が変わるということです。この差は基準額の近くで買い物をするときに表れます。
付随費用も取得価額に入る
判定に使うのは本体価格だけではありません。送料、据付費、設置のための工事費など、事業に使えるようにするまでにかかった費用が取得価額に含まれます。
本体が98,000円でも、送料が3,000円かかれば101,000円です。基準額の近くの買い物では、付随費用まで含めて確かめる必要があります。
送料や設置費用を含めた金額で判定します。
期末の貯蔵品への振替
結論: 期末に未使用のまま残っている消耗品は、原則として貯蔵品へ振り替えます。ただし毎期おおむね一定量を取得して経常的に消費するものは、取得時の費用処理を続けられます。
原則と例外
購入した消耗品のうち、期末に使い切っていない分は資産として残っているという考え方が原則です。この場合、未使用分を貯蔵品に振り替えます。
一方で、毎期おおむね一定量を買い、経常的に消費しているものについては、取得したときに費用として処理する方法が認められています。法人税基本通達2-2-15に定めがあります。文房具や梱包材のように、常に一定量を持っている消耗品が該当します。
振替が必要になる場面
例外が使えないのは、期末にまとめ買いをした場合です。決算前に大量に購入して費用を増やす形にすると、経常的な消費とは言えなくなります。
金額が大きい場合も同様です。通常の月と比べて明らかに多い購入があれば、未使用分の振替を検討することになります。ここは金額と数量の両方から判断します。
期末に大量に残っている場合です。
棚卸の対象になるものと、仕訳の形
貯蔵品として振り替えるかどうかを決めるには、期末に何がどれだけ残っているかを数える必要があります。ここが手間になるため、対象を絞っておくのが実務的です。
数えるのは、単価が高いもの、まとめ買いをしたもの、決算月に購入したものに絞ります。文房具1本まで数える必要はありません。金額の重要性から見て、判断に影響しない範囲は対象外として構いません。
対象を絞る基準は社内で決めて、毎年同じように運用します。1個あたり何円以上、あるいは1回の購入で何円以上、といった形が扱いやすいでしょう。
期末に貯蔵品へ振り替える場合は、消耗品費から貯蔵品へ振り替えます。翌期首に元へ戻す方法と、翌期に消費した分だけ費用へ振り替える方法があります。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 購入時 | 消耗品費 50,000 | 普通預金 50,000 |
| 期末に未使用分を振り替え | 貯蔵品 12,000 | 消耗品費 12,000 |
| 翌期首に戻す | 消耗品費 12,000 | 貯蔵品 12,000 |
| 15万円のパソコンを一括償却資産で処理 | 一括償却資産 150,000 | 普通預金 150,000 |
| 一括償却資産の当期分(3年均等) | 減価償却費 50,000 | 一括償却資産 50,000 |
償却資産税まで含めて選ぶ
結論: 金額だけで処理を決めると、償却資産税の負担を見落とします。20万円未満であれば、一括償却資産を選ぶことで償却資産税の対象から外れます。
一括償却資産の利点
15万円のパソコンを例にします。少額減価償却資産の特例を使えば、取得した年に全額が費用になります。一括償却資産を選べば、3年に分かれます。
税負担の時期だけを見れば前者が有利に見えます。ただし前者は償却資産税の対象として残り続けます。後者は対象になりません。取得する数が多い会社ほど、この差が積み上がります。
免税点150万円との関係
償却資産税には免税点があり、課税標準額の合計が150万円未満であれば課税されません。
いま合計が150万円を下回っている会社であれば、新たに資産を増やすときに一括償却資産を選ぶことで、免税点の範囲に収まり続ける場合があります。逆にすでに大きく超えている会社では、この観点の重みは下がります。
たとえば、いま課税標準額の合計が130万円の会社が、新しく20万円未満の資産を少額減価償却資産の特例で処理すると、その資産も合計に加わり150万円を超えてしまいます。同じ資産を一括償却資産で処理すれば合計に加わらないため、免税点の範囲にとどまります。
個人事業主の場合
結論: 個人事業主も同じ金額の線で判定します。ただし少額減価償却資産の特例を使えるのは青色申告者に限られ、家事按分がある場合は按分前の金額で判定します。
特例を使えるのは青色申告者
10万円未満を費用にする扱いと、20万円未満を3年で均等に費用にする一括償却資産の扱いは、白色申告でも使えます。
一方、少額減価償却資産の特例は青色申告者に限られます。白色申告の場合、20万円以上の資産は通常の減価償却になります。この差は、青色申告を選ぶかどうかの判断材料のひとつでもあります。
年間300万円という上限も同じように適用されます。事業を始めた年など、開業から年末までが1年に満たない場合は月数按分します。
家事按分がある場合の判定
自宅を兼ねている場合、資産を事業と家事の両方で使うことがあります。この場合、判定に使うのは按分後の金額ではなく取得価額そのものです。
たとえば12万円のパソコンを事業に7割使うとしても、10万円未満かどうかは12万円で判定します。したがって全額を費用にすることはできず、一括償却資産か特例の対象になります。経費になるのは、そこから按分した7割分です。
按分の割合は、使用時間や使用の実態など合理的な基準で決めます。記録を残しておくと、後から説明できます。
開業前に買ったもの
開業する前に購入した資産も、事業に使い始めた時点で経費の対象になります。開業日より前に買っていても、そこで処理が終わるわけではありません。
判定に使うのは購入時の取得価額です。ただし開業までに時間が空いている場合、中古資産として耐用年数を見積もる必要が出ることもあります。開業時にまとめて整理しておくと、初年度の申告で迷いません。
事例:まとめ買いの処理を見直した会社
従業員28名の会社からのご相談でした。「決算月に備品をまとめて購入したのですが、全額を消耗品費にしてよいか迷っています」というお話です。
内容を確認したところ、8万円台のモニターを12台、合計で約102万円の購入でした。1台あたりは10万円未満のため、金額の基準としては費用にできます。
問題は購入の時期でした。決算月の3月にまとめて購入し、実際に使い始めたのは4月以降が7台という状況です。法人税法施行令133条は「その事業の用に供した日の属する事業年度」と定めているため、使い始めていない資産は当期の費用になりません。
そこで、3月中に設置して使い始めた5台分を当期の費用とし、残りの7台は貯蔵品として資産に計上する形に修正しました。金額としては約59万円が翌期に移ることになります。
あわせて、購入の時期を期末に寄せない方針を決めています。担当の方からは「金額の基準ばかり見ていて、いつから使ったかという観点がなかった」というお言葉をいただきました。判定に使うのは購入日ではなく、事業に使い始めた日という点は、金額の線と同じくらい重要です。
よくある質問
消耗品費で処理できる金額の上限はいくらですか?
15万円のパソコンはどう処理すればよいですか?
消費税の扱いで判定が変わりますか?
送料や設置費用は金額に含めますか?
期末に買った消耗品は全額を費用にできますか?
少額減価償却資産の特例は、基準額が変わったのでしょうか?
まとめ:金額の線と、使い始めた日の両方を見る
- 消耗品費で処理できるのは、取得価額10万円未満、または使用可能期間1年未満のもの
- 10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年で均等に費用にできる。償却資産税の対象にならない
- 20万円以上40万円未満は、中小企業者等であれば全額を費用にできる(年間300万円まで)
- 令和8年度の改正で基準額が30万円未満から40万円未満へ。令和8年4月1日以後に取得したものが対象
- 判定に使う金額は経理方式で変わる。付随費用も取得価額に含める
- 判定の基準日は購入日ではなく、事業に使い始めた日
金額だけで決めると、償却資産税の負担を見落とします。20万円未満であれば、一括償却資産を選ぶことで対象から外れます。
そして、期末のまとめ買いは金額の基準を満たしていても費用にならないことがあります。使い始めた日を記録しておくと、決算のときに迷いません。
税理士法人Light UPでは、記帳から決算・申告まで一貫してお引き受けしています。金額ごとの処理をどう固定するか、償却資産の合計額をどう見るかも含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(第133条、第133条の2、第54条)
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(第67条の5)
- 国税庁「法人税基本通達」2-2-15(消耗品費等)
- 国税庁「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。特例の適用要件や期限は改正のたびに変わるため、適用にあたっては最新の内容を税理士にご確認ください。




