青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットと選び方を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
青色申告と白色申告の違いは、青色が事前に承認を受けて帳簿を付ける代わりに、最高65万円の特別控除、赤字の3年間の繰越し、家族への給与の経費算入といった特典を受けられる点です。白色申告にはこれらの特典がありません。ただし、記帳と帳簿書類の保存の義務は、白色にも青色と同じようにあります。
この記事では、違いの一覧、間違えやすい点、特別控除・赤字・家族への給与の違い、選び方の目安、青色への切り替え手続きを、国税庁の資料(2026年10月時点)で整理します。
青色申告と白色申告の違いは?
結論: 青色申告は、承認を受けて帳簿を付けると、特別控除・赤字の繰越し・家族への給与の経費算入などを受けられます。白色申告は申請が要らない代わりに、特典がありません。
違いの早見表
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前の手続き | 青色申告承認申請書の提出と承認が必要 | 不要 |
| 記帳 | 複式簿記(10万円控除なら簡易な記帳も可) | 簡易な記帳でよい |
| 特別控除 | 最高65万円(55万円・10万円もある) | なし |
| 赤字(純損失) | 翌年以後3年間の繰越し、前年への繰戻し | その年で終わる(例外あり) |
| 家族への給与 | 届出の範囲で全額が必要経費 | 事業専従者控除(配偶者86万円、その他の親族は1人50万円が上限) |
| 少額減価償却資産の特例 | 40万円未満の資産を年300万円まで全額経費(令和8年4月1日以後の取得) | 使えない |
記帳と帳簿の保存は白色にも必要
国税庁タックスアンサーNo.2080によると、不動産所得・事業所得・山林所得がある人は、白色申告でも売上げや経費を帳簿に記帳し、その帳簿と請求書・領収書などを保存します。収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年、それ以外の帳簿と書類は5年です。日々の合計額でまとめる簡易な記載も認められています。
白色なら帳簿が要らないという説明は、いまの制度には当てはまりません。
申告方法の選択でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、白色なら帳簿は不要という思い込み、申請期限の取り違え、初年度は白色でよいという判断、家族の給与を届出なしで払うことの4つです。間違えると、控除や赤字の繰越しを受けられない年が出ます。
白色のまま申告してから、青色にしておけば良かったと気づいて相談に来られる方が少なくありません。
白色なら帳簿は不要という思い込み
白色にも記帳と帳簿書類の保存の義務があります。帳簿や領収書が残っていないと、必要経費の根拠を示せず、経費として認められないことがあります。
申請期限の取り違え
青色申告承認申請書の期限は、青色にしたい年の3月15日です。翌年の確定申告の時期に出しても、その年分は白色申告になり、特別控除も赤字の繰越しも適用できません。
初年度は白色でよいという判断
開業した年は、設備の購入や広告費が先に出て、赤字になりやすい年です。白色だと、その赤字は2年目以降の黒字から引けません。
家族の給与を届出なしで払う
家族に払う給与を青色で経費にするには、青色事業専従者給与に関する届出書の提出が前提です。届出を出さずに払った給与は、必要経費になりません。
税理士が確認する順番
税理士は、相談を受けたら次の順で確かめます。
- 所得が事業所得か、雑所得か(青色申告の対象は不動産所得・事業所得・山林所得です)
- 青色申告承認申請書を出した記録があるか
- 前の年までに赤字が出ていないか
- 家族が事業を手伝っているか
- 記帳を複式簿記と簡易な記帳のどちらで行うか
開業日と直近の確定申告書、帳簿や領収書の保管状況をお持ちいただければ、青色にする年と、受けられる控除や届出を一緒に確かめます。
特別控除はいくら違う?
結論: 青色申告特別控除は、令和8年分まで65万円・55万円・10万円の3段階で、白色申告にはありません。令和9年分以後は、複式簿記とe-Taxでの申告が65万円の条件になります。
3段階の控除額と要件
国税庁タックスアンサーNo.2072(令和8年4月1日現在法令等)によると、令和8年分までの条件は次のとおりです。
- 55万円:不動産所得か事業所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書等を添付して、確定申告期限(翌年3月15日)までに提出する
- 65万円:55万円の条件に加えて、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存の要件で保存するか、e-Taxで期限までに申告する
- 10万円:55万円・65万円の条件に当たらない青色申告者
所得の合計が控除額に届かない年は、その合計額が限度です。
所得税と住民税への影響
控除は、課税される所得を直接減らします。所得税と住民税の税率が合わせて20%の人なら、65万円の控除で13万円ほど税額が変わります(説明用の数字です)。白色には特別控除がないので、同じ所得なら、その分だけ課税される所得が大きくなります。
令和9年分以後の見直し
令和9年分以後は条件が変わります(国税庁パンフレット、令和8年4月)。
- 複式簿記で記帳し、e-Taxで申告すると、65万円の控除を受けられる
- 請求書データ等との自動連携や訂正削除履歴の記録など、一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成・保存していると、75万円の控除を受けられる
- 簡易な記帳で、前々年の事業所得または不動産所得の収入金額が1,000万円を超える人は、10万円控除を適用できない(不動産所得は事業的規模の場合)
令和8年分の申告(令和9年3月)までは、前の項の条件のままです。
赤字の年の扱いはどう違う?
結論: 事業の赤字を他の所得から引く損益通算は、白色でもできます。通算しても残った赤字を翌年以後3年間繰り越せるのは青色だけで、白色の赤字は原則その年で終わります。
損益通算は白色でもできる
損益通算は、事業所得などの赤字を給与所得など他の所得から引く仕組みで、通算できるのは不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の損失です。副業の所得が雑所得なら、赤字が出ても給与から引けません(国税庁タックスアンサーNo.2250)。
繰越しと繰戻しは青色だけ
損益通算をしても引ききれない赤字を、純損失といいます。青色申告者は、純損失を翌年以後3年間繰り越して、各年分の所得から引けます。前の年も青色申告をしていれば、繰越しの代わりに前年分の所得に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受ける方法もあります(国税庁タックスアンサーNo.2070)。
繰越しの条件
所得税法70条は、繰越しの対象を、青色申告書を出している年に生じた純損失と定めています。損失が生じた年の確定申告書を出し、その後も連続して出していることが条件です。
白色でも繰り越せる例外
白色の年に生じた赤字でも、変動所得の金額の計算上生じた損失と、被災事業用資産の損失は、前年以前3年内のものを繰り越して引けます(所得税法70条2項)。被災事業用資産の損失とは、災害で棚卸資産や事業用の資産に生じた損失から、保険金などで補われる部分を除いた額です。
家族への給与はどう違う?
結論: 家族への給与は、青色なら届出の範囲で全額が必要経費に入ります。白色は事業専従者控除で、配偶者86万円、その他の親族は1人50万円が上限です。
青色事業専従者給与
青色事業専従者に当たるのは、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年の12月31日現在で15歳以上、その年を通じて6か月を超える期間、専ら事業に従事している人です(国税庁タックスアンサーNo.2075、令和8年4月1日現在)。
- 届出書の提出期限は、給与を経費にしたい年の3月15日。1月16日以後に事業を始めた場合や新たに専従者が生じた場合は、その日から2か月以内
- 専従者や給与額を増やすときは、変更届出書を遅滞なく出す
- 届出の金額の範囲内で、届出どおりの方法で払う
- 給与額は、労務の対価として相当な金額であること。過大な部分は必要経費になりません
白色の事業専従者控除
白色申告の事業専従者控除は、次の2つのうち低いほうの金額です(同No.2075)。
- 配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら専従者1人につき50万円
- 控除前の事業所得等の金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額
実際にいくら払ったかにかかわらず、上の低いほうの金額が控除されます。
配偶者控除などとの関係
青色事業専従者として給与を受ける人も、白色の事業専従者である人も、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。給与を経費にする効果と、配偶者控除や扶養控除を使えなくなる影響を並べて比べます。
青色と白色のどちらを選ぶ?
結論: 赤字が出る見込みがある、家族が手伝っている、設備を買う予定がある、のどれかに当てはまるなら青色にします。当てはまらず、所得が小さい年が続くなら、白色のままでも不利は小さくなります。
青色申告のメリットとデメリット
メリットは、特別控除、赤字の繰越しと繰戻し、専従者給与の経費算入、少額減価償却資産の特例、一括評価の貸倒引当金(年末の貸金の5.5%以下。金融業は3.3%)です。デメリットは、承認申請書の提出が要ることと、55万円以上の控除には複式簿記と貸借対照表が要ることです。
少額減価償却資産の特例は、取得価額が10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)の資産を、年300万円まで取得した年に全額必要経費にできる、青色申告者の制度です(国税庁タックスアンサーNo.2100)。
白色申告のメリットとデメリット
メリットは、承認申請書が要らないことと、簡易な記帳で足りることです。デメリットは、特別控除、赤字の繰越し、専従者給与の全額経費算入、少額減価償却資産の特例が使えないことです。
迷うときは10万円控除から
複式簿記に不安があるなら、青色申告のまま10万円控除を選べます。簡易な記帳で足り、赤字の繰越しと専従者給与も使えるため、白色より不利になる点はありません。まず青色の枠に入り、記帳が整った年に65万円を目指す順番でも構いません。
白色から青色に切り替えるには?
結論: 青色にしたい年の3月15日までに、青色申告承認申請書を出します。1月16日以後に事業を始めた年は、始めた日から2か月以内です。
承認申請書の期限
国税庁の手続案内「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」では、提出時期を、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までとしています。令和9年分から青色にするなら、令和9年3月15日が期限です。
一緒に出す届出
家族に給与を払うなら、青色事業専従者給与に関する届出書も同じ期限で出します。申請書と届出書は別の書類なので、出し忘れがないか分けて確かめます。
提出する決算書類の違い
確定申告書に添える決算書は、白色が収支内訳書、青色が青色申告決算書で、貸借対照表の欄があるのは青色申告決算書です。
よくある質問
青色申告と白色申告は、どちらが得ですか?
副業でも青色申告にできますか?
会計ソフトを使えば、簿記が分からなくてもできますか?
年の途中で青色に変えられますか?
まとめ:赤字と家族の予定で選ぼう
- 青色と白色の違いは、特別控除、赤字の3年間の繰越し、専従者給与、少額減価償却資産の特例などの特典
- 記帳と帳簿書類の保存の義務は、白色にもある
- 損益通算は白色でもできるが、繰越しは青色だけ(変動所得などの例外あり)
- 切り替えの期限は、青色にしたい年の3月15日(開業年は始めた日から2か月以内)
黒字だけを見て決めると、赤字の年や家族が手伝い始める年に、白色の限界が出ます。開業したばかりで白色のまま申告している方、家族に手伝ってもらい始めた方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。開業日と直近の申告書、帳簿を確認し、青色申告に切り替える年と期限、受けられる控除を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」
- 国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」
- 国税庁 手続案内「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」(令和8年4月)
- e-Gov 法令検索「所得税法」第70条





