小規模企業共済のデメリットとは?損しないための注意点を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
小規模企業共済のデメリットは5つあります。掛金を納めた月数(掛金納付月数)が240か月(20年)未満で自分の都合で解約(任意解約)すると元本割れすること、12か月未満なら掛け捨てになること、掛金を減額すると減らした部分の納付月数が止まること、受け取るときに課税されること、20年近く資金を動かしにくいことです。金額に響くのは元本割れと減額で、どちらも加入前に知っておけば備えられます。この記事では、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)と国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
小規模企業共済のデメリットは?
結論: デメリットは、元本割れ、掛け捨て、減額による納付月数の停止、受取時の課税、資金の動かしにくさの5つです。元本割れは任意解約のときの話で、廃業や死亡の共済金では起きません。
5つのデメリットの一覧
| デメリット | 起きる条件 |
|---|---|
| 元本割れ | 納付月数240か月未満の任意解約 |
| 掛け捨て | 納付月数12か月未満の解約 |
| 納付月数が止まる | 掛金月額を減額した |
| 受取時の課税 | 共済金・解約手当金を受け取るとき |
| 資金が動かしにくい | 20年近く掛金を納め続ける間 |
解約したときに受け取るお金を解約手当金といい、出る事由は、任意解約と、12か月以上の掛金の滞納による中小機構からの解約(機構解約)の2つです。元本割れの話はこの2つに限られます。
解約や受け取りで損をしやすいのはどんなとき?
結論: 間違えやすいのは、解約を決める前の事由の確認、減額の使い方、受け取る年と方法の選び方の3つです。どれも、戻る金額と税金がずれます。
売上が落ちた年の秋に、掛金が重いので解約したいと相談に来られる方が少なくありません。解約を出す前に確かめるところは3つです。
解約の前に確かめる事由
廃業や会社役員の退任を予定しているのに、先に任意解約を出してしまう誤りがあります。事由が廃業や死亡なら、受け取るのは共済金A(廃業や死亡のときの共済金)です。共済金Aは、納付月数が6か月以上あれば掛金の合計以上になりますが、任意解約の解約手当金は240か月未満なら掛金の合計を下回ります。同じ時期にやめても、請求の事由で手元に残る額が違います。
減額と解約の違い
減額は解約より損を抑えられますが、減額した部分は納付月数が止まり、240か月に届いても元本割れが残ります。減らす額は、手元資金が最も減る月から逆算して決めます。
受け取る年と方法の選び方
受け取り方は一括・分割・併用の3種類で、所得の区分が変わります。会社から役員退職金も受け取るなら、共済金を請求する年で税額が変わります。
税理士が確認する順番
掛金の納付状況が分かる書類と、ほかに受け取る退職金の見込みを伺えれば、解約・減額・受け取り方のどれが合うかを一緒に整理します。
何年で元本割れしなくなる?
結論: 任意解約で元本割れしなくなるのは、掛金納付月数が240か月(20年)以上のときです。12か月未満の解約では解約手当金が出ず、掛金は掛け捨てになります。
納付月数ごとの支給率
解約手当金は、納めた掛金に支給率を掛けて決まります。中小機構の「解約手当金の額の算定方法」(2004年4月以降の掛金)では、支給率は次のとおりです。2004年3月までの掛金は支給率が異なります。
| 掛金納付月数 | 支給率 |
|---|---|
| 12〜83か月 | 80% |
| 84〜89か月 | 80.5% |
| 240〜245か月 | 100% |
| 720か月以上 | 120% |
84か月からは6か月ごとに0.75ポイント、246か月からは6か月ごとに0.25ポイントずつ上がります。
月7万円で納めて解約した場合
84か月(7年)に届いても支給率は80.5%です。月7万円で納め続けた人が任意解約した場合は次のとおりです(説明用の金額です)。
| 納めた期間 | 掛金の合計 | 受け取る額 | 戻らない額 |
|---|---|---|---|
| 7年(84か月) | 588万円 | 473.34万円 | 114.66万円 |
| 10年(120か月) | 840万円 | 714万円 | 126万円 |
| 20年(240か月) | 1,680万円 | 1,680万円 | 0円 |
10年続けても126万円が戻りません。戻らない額は、掛金の所得控除で減った所得税と住民税の合計と並べて損得を見ます。
12か月未満の掛け捨てと滞納
納付月数が12か月に届かないうちに解約すると、解約手当金は出ません。引き落としにも注意が要ります。口座振替の日は毎月18日で、引き落とせなかった月分は偶数月に合算して請求され、未納が12か月以上になると契約は解除されます。
廃業や法人成りでも元本割れする?
結論: 廃業や死亡で受け取る共済金Aは、納付月数が6か月以上あれば元本割れしません。法人成りで受け取る準共済金も、18年6か月までは掛金の合計と同額です。
事由ごとの4つの区分
個人事業主の場合は次のとおりです。
| 区分 | 主な事由 | 必要な納付月数 |
|---|---|---|
| 共済金A | 個人事業の廃業、契約者の死亡 | 6か月以上 |
| 共済金B | 65歳以上で、掛金を180か月以上納めた老齢給付(事業を続けたままでも請求できる) | 6か月以上 |
| 準共済金 | 法人成りで加入資格を失った場合 | 12か月以上 |
| 解約手当金 | 任意解約、12か月以上の滞納による機構解約 | 12か月以上 |
中小機構の制度のしおり(令和8年6月改訂版)によると、掛金月額1万円で20年納めた場合、掛金の合計240万円に対して共済金Aは278万6,400円です(付加共済金を除く)。
法人成りしたときの扱い
個人事業を法人成りして、その会社の役員として加入資格が残るなら、共済金を受け取らずに納付月数を通算して契約を続けられます。申出は請求事由が生じてから1年以内です。資格が残るのに解約すると解約手当金、資格を失う場合は準共済金です。
会社役員の退任の事由
会社の役員も、区分は事由で決まります。会社の解散(破産を含む)は共済金A、疾病・負傷による退任や65歳以上での退任は共済金Bです。解散や疾病によらずに65歳未満で退任した場合は準共済金になり、役員のまま契約だけをやめれば任意解約で解約手当金です。
減額すると何が起きる?
結論: 掛金月額を減らすと、減らした部分の納付月数はそこで止まります。月数を積み続けるのは減額後も残る低い掛金の部分だけで、合計で240か月に届いても、減額した部分には元本割れが残ります。
減額した部分の納付月数
中小機構の算定方法では、掛金月額500円を1口として、掛金月額ごとに納付月数を数え、支給率を掛けて合計します。減額で外れた部分は、その時点の月数のまま止まります。増額した場合は、それまでの部分が月数を積み続け、増やした分が新しい区分として数え始まります。
月7万円から1万円に減額した例
月7万円で36か月納めたあと、月1万円に減額して204か月続け、合計240か月の時点で任意解約したとします(説明用の金額です)。
| 区分 | 納付月数 | 納めた掛金 | 支給率 | 受け取る額 |
|---|---|---|---|---|
| 月1万円の部分 | 240か月 | 240万円 | 100% | 240万円 |
| 減額で外れた月6万円の部分 | 36か月 | 216万円 | 80% | 172.8万円 |
| 合計 | 456万円 | 412.8万円 |
戻らないのは43.2万円で、減額した6万円の部分だけに元本割れが残ります。同じ36か月の時点で解約していれば戻らない額は50.4万円でした。減額は損を抑えますが、損は消えません。
前納した期間の扱い
まとめて前納した期間も、年払い・半年払いで前納した期間も、掛金月額は減額できません。年末に12か月分を前納したあと、翌春に資金が足りなくなって相談に来られる方が少なくありません。
資金が必要なときの選択肢
積み立てた資金は、契約者貸付で借りることもできます。利率は一般貸付が年1.5%、傷病災害時・緊急経営安定・廃業準備などの貸付が年0.9%です(2026年10月時点)。借入のため、自由には引き出せません。掛金は、手元資金が最も減る月を資金繰り表で確かめ、運転資金を除いた残りから決めます。
受け取るときの税金は?
結論: 掛金は納めた年に所得控除を受けるぶん、受け取るときに課税されます。一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得、65歳未満の任意解約は一時所得です。
受け取り方ごとの所得区分
中小機構の「共済金等」の案内(2026年10月時点)によると、受け取り方と請求の事由で、税法上の区分が変わります。
| 受け取り方 | 税法上の扱い |
|---|---|
| 共済金・準共済金を一括で受け取る(死亡を除く) | 退職所得 |
| 共済金を分割で受け取る | 公的年金等の雑所得 |
| 65歳以上の任意解約 | 退職所得 |
| 65歳未満の任意解約、機構解約 | 一時所得 |
分割を選べるのは、共済金AまたはBを死亡以外の事由で60歳以上のときに請求し、300万円以上ある場合です。
退職所得と一時所得の計算
退職所得の金額は、国税庁のタックスアンサーNo.1420(令和8年4月1日現在法令等)のとおり、(収入金額−退職所得控除額)×2分の1です。控除額は、勤続年数20年以下なら40万円×年数(最低80万円)、20年超なら800万円+70万円×(年数−20)で、共済契約の期間がこの年数になります。契約20年なら800万円です。
一時所得は、同No.1490のとおり、収入金額から支出した金額と特別控除額(最高50万円)を引いた額の2分の1が他の所得と合算されます。退職所得のような大きな控除は付かないため、65歳未満の任意解約は元本割れと課税の両方で不利です。別の年に受け取った退職金と時期が近いと控除額の計算が変わり、確定拠出年金の一時金が関わると期間が9年内や19年内に延びます(同No.2735)。
掛金は経費でなく所得控除
掛金は事業の必要経費ではなく、確定申告で小規模企業共済等掛金控除として差し引きます。国税庁のタックスアンサーNo.1135(令和8年4月1日現在法令等)によると、控除できるのはその年に支払った掛金の全額です。必要経費ではないので、青色申告決算書の所得の金額は変わりません。
加入前に確かめることは?
結論: 加入できるのは、常時使用する従業員が建設業・製造業などで20人以下、卸売業・小売業などで5人以下の個人事業主や会社役員です。掛金は月1,000円から7万円までです。
従業員数の上限と数え方
加入資格では、建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)などが20人以下、商業(卸売業・小売業)とサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)が5人以下です。数えるのは正社員で、パート、臨時のアルバイト、家族従業員、役員は数えません。2つ以上の事業があるときは主たる事業の業種で判定し、加入後に従業員が増えても契約は続けられます。
現金納付の終了時期
中小機構の「小規模企業共済契約約款の一部改正のお知らせ」(2026年9月10日)によると、2026年12月末で現金による掛金納付が終わり、2027年1月以降は原則として預金口座振替に統一されます。掛金や共済金の額は変わりません。
掛金の決め方
並べるのは、①月の平均的な手残り、②運転資金として手元に置く額、③iDeCoや国民年金基金などほかの積立の掛金の3つです。見ないまま上限で始めると、数年後に減額することになりがちです。廃業や引退の時期がある程度読めていて、続けられる額に設定できるなら、有力な選択肢です。
よくある質問
小規模企業共済は、途中で解約すると損をしますか?
掛金が払えなくなったら、減額と解約のどちらがよいですか?
経営セーフティ共済とは何が違いますか?
まとめ:やめ方を先に考えよう
- 任意解約で元本割れしなくなるのは、納付月数が240か月(20年)以上から。12か月未満は掛け捨てになる
- 廃業・死亡などの共済金は、6か月以上納めていれば掛金の合計以上
- 減額すると、減額した部分の納付月数が止まる。前納した期間は減額できない
- 受け取るときは課税される。掛金は経費ではなく所得控除
掛金を下げるか続けるか迷っている方、廃業や法人成りを控えて受け取り方を決めたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。加入時期と掛金の履歴、直近の確定申告書を確認し、減額・継続・請求のどれが合うかを整理します。
出典
- 中小機構「小規模企業共済」の共済金等・解約手当金の額の算定方法・掛金・減額・未納掛金・貸付・加入資格の各ページ
- 中小機構「小規模企業共済契約約款の一部改正のお知らせ」(2026年9月10日)、「制度のしおり」(令和8年6月改訂版)
- 国税庁 タックスアンサー No.1135、No.1420、No.1490、No.2735





