個人事業主が払う税金の種類|納付時期のカレンダー
「思っていたより税金の請求が多くて驚きました」。「いつ何を払うのかが把握できていません」――独立して1年目、2年目の方からよくいただくご相談です。
結論からお伝えすると、個人事業主が納める税金は所得税、住民税、個人事業税、消費税の4つが柱です。そして問題は種類の多さではなく、納付の時期が年間に散らばっていることにあります。所得税は3月、住民税は年4回、個人事業税は8月と11月、消費税は3月末。同じ月に重なることもあれば、忘れた頃に来ることもあります。
税理士法人Light UPでは、独立された方に対して、年間のカレンダーを先に作ることをお伝えしています。金額より時期を把握しておくほうが、資金繰りの面では効果があるためです。
この記事では、4つの税金の中身、納付の時期と回数、2年目に負担が増える理由、住民税と国民健康保険料の関係、そして納税資金の準備方法までを、実際に個人事業主の申告を扱っている立場から整理します。
納める税金は4つが柱
結論: 所得税、住民税、個人事業税、消費税の4つです。このうち所得税と住民税は所得があれば必ず関わり、個人事業税と消費税は一定の要件に該当する場合に発生します。
所得税は前年分を翌年3月に納める
その年1月から12月までの所得に対して課され、翌年3月15日までに申告と納付を行います。所得が増えるほど税率も上がる累進の構造です。稼いだ年と納める年がずれるという点が、資金繰りで意識すべき最初のポイントになります。事業が好調だった年の翌年は、納税額も大きくなります。逆に、売上が落ちた年でも前年が好調であれば納税額は大きいままです。会社員の源泉徴収と違い、その月の収入から自動的に引かれる仕組みではないという点が、感覚のずれを生みます。
住民税は年4回に分かれる
住民税も前年の所得に対して課されますが、納付は6月、8月、10月、翌年1月の年4回です。これは普通徴収の場合で、市区町村から納付書が届きます。所得税の確定申告をしていれば、住民税の申告は別に必要ありません。確定申告の内容がそのまま住民税の計算に使われるという関係になっています。税率は所得に対して一律10パーセントで、これに均等割が加わります。所得税のように所得が増えるほど税率が上がる構造ではないため、所得が大きい年ほど所得税との差が開きます。第1期の6月だけ金額が違うことが多いのは、端数がそこに寄せられるためです。
個人事業税は所得290万円から
個人事業税は都道府県が課す税金で、事業所得から事業主控除290万円を差し引いた金額に税率を掛けて計算します。税率は業種によって3パーセントから5パーセントです。納付は8月と11月の年2回で、都道府県から納付書が届きます。所得が290万円以下であれば発生しないため、事業を始めて数年は関わらないこともあります。また、法定業種に該当しない事業であればそもそも課税されません。文筆業や画家など、業種によっては個人事業税の対象外とされる場合があります。自分の事業がどの区分に当たるかは、都道府県に確認できます。
消費税は前々年の売上で決まる
消費税を納める義務があるかどうかは、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えるかで判定します。ただしインボイス制度の適格請求書発行事業者として登録している場合は、売上の金額にかかわらず課税事業者になります。申告と納付の期限は3月31日です。所得税より2週間遅いという点は、資金の準備で影響します。3月15日に所得税を納め、その2週間後に消費税を納めるという流れになるため、3月は資金が大きく動く月になります。消費税額が大きい事業では、この2つを合わせた金額を見込んでおく必要があります。
| 税金 | 課される対象 | 納付の時期 |
|---|---|---|
| 所得税 | 前年の所得 | 3月15日(予定納税があれば7月・11月も) |
| 住民税 | 前年の所得 | 6月・8月・10月・翌1月(普通徴収の場合) |
| 個人事業税 | 前年の事業所得(290万円超の部分) | 8月・11月 |
| 消費税 | 課税売上(要件に該当する場合) | 3月31日(中間納付があればその時期も) |
| 国民健康保険料 | 前年の所得 | 6月から翌3月ごろ(自治体による) |
| 国民年金保険料 | 定額 | 毎月(前納の制度もある) |
2年目と3年目に負担が増える
結論: 独立1年目は前年の所得がないため住民税も個人事業税も発生しません。これらが加わるのが2年目以降で、想定していないと資金繰りが苦しくなります。
1年目は所得税だけ
会社員から独立した1年目は、その年の所得に対する所得税を翌年3月に納めます。住民税は前年の給与所得に対するものが続いており、個人事業税はまだ発生していません。税金の負担が最も軽く見える時期ですが、これは制度上のずれによるものです。この時期の感覚のまま資金計画を立てると、翌年に苦しくなります。会社員時代の住民税は前年の給与に対するものなので、退職後もしばらく続きます。この分は事業とは関係なく発生している負担です。
2年目に住民税と個人事業税が加わる
2年目には、1年目の事業所得に対する住民税と個人事業税が発生します。住民税は6月から、個人事業税は8月からです。所得税と合わせると、税金の負担感は1年目とは大きく変わります。同じ所得でも2年目の手取りは減るということで、この構造を知らずに資金を使ってしまう例が少なくありません。加えて、国民健康保険料も前年の所得で決まるため、同じタイミングで増えます。税金と保険料が同時に増えるという点が、2年目の負担感を大きくしています。
3年目に消費税が加わることがある
1年目の課税売上高が1,000万円を超えていれば、3年目から消費税の納税義務が生じます。前々年で判定するため、2年のずれがあります。好調だった年の2年後に請求が来るという構造で、その頃には売上が落ちていることもあります。判定の基準については、個人事業主の消費税を整理した記事もあわせてご覧ください。なお、適格請求書発行事業者として登録している場合は売上の金額にかかわらず課税事業者になるため、この2年のずれは関係しません。登録した時点から納税の義務が生じます。
予定納税は7月と11月に来る
結論: 前年の実績から計算した予定納税基準額が15万円以上になると、その年の7月と11月にも所得税を納めます。年3回の納付になるということです。
基準額の3分の1ずつ
所得税法104条1項は、予定納税基準額が15万円以上である場合に、第1期(7月1日から7月31日)と第2期(11月1日から11月30日)にそれぞれ3分の1を納付すると定めています。3分の1に100円未満の端数があるときは切り捨てます。3月の申告を終えた4か月後に次の納付が来るという形で、忘れた頃に通知が届きます。通知は6月ごろに税務署から送られてきます。予定納税があること自体を知らないと、届いた通知を見て驚くことになります。前年の所得税額が15万円を超えたら翌年は3回になる、と覚えておいてください。
業績が落ちても金額は変わらない
予定納税額は前年の実績で決まるため、その年の業績が落ちていても金額は同じです。ただし、廃業や業績の悪化により所得税額が予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合は、減額の承認を申請できます。第1期と第2期の両方について申請する場合は7月15日まで、第2期分だけであれば11月15日までが期限です。期限を過ぎると申請できないため、上半期の数字が固まった時点で判断します。減額が承認されれば、その分の資金を事業に回せます。業績が明らかに落ちているのであれば、申請を検討する価値があります。ただし見込みが甘いと後で不足が生じるため、根拠のある数字で申請してください。
税金以外にも社会保険料がある
結論: 国民健康保険料と国民年金保険料は税金ではありませんが、資金繰りの面では同じように出ていきます。国民健康保険料は前年の所得で決まるため、住民税と同じ動きをします。
国民健康保険料は所得に連動する
国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算されます。したがって、所得が増えれば保険料も増えます。納付は6月ごろから翌年3月ごろまでの複数回に分かれることが多く、自治体によって回数も時期も違います。所得が増えた翌年は、税金と保険料の両方が増えるという構造で、この二重の増加が資金繰りを圧迫します。国民健康保険料には上限額が設けられていますが、その水準に達するまでは所得に比例して増えていきます。計算の方法は自治体によって違うため、前年度の通知書で自分の負担を確認しておいてください。
国民年金保険料は定額
国民年金保険料は所得に関係なく定額です。毎月納付するほか、前納すれば割引を受けられる制度もあります。所得が少ない年は免除や納付猶予の制度を利用できますが、将来受け取る年金額に影響します。定額であることは、所得が少ない年に負担が重く感じられるということでもあります。逆に、所得が大きい年には負担率が下がる構造です。免除や納付猶予を利用した期間は、受け取る年金額が減るか、あるいは受給資格期間に算入されるだけになります。後から追納できる期間にも制限があります。
控除の対象になる
国民健康保険料と国民年金保険料は、社会保険料控除として全額が所得控除の対象になります。支払った年の分が対象なので、まとめて前納した場合はその年の控除になります。支払の時期を調整すると控除の年も変わるため、所得が大きい年に前納するという選択もあります。国民年金保険料は最大2年分を前納でき、まとめて支払った年の控除にすることも、各年分に按分することもできます。所得の見通しに合わせて選べるということです。
所得税と住民税の違いを押さえる
結論: 同じ前年の所得に対して課される税金でも、所得税と住民税では税率の構造も控除の額も違います。この違いが手取りの見込みに影響します。
税率の構造が違う
所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進の構造で、5パーセントから45パーセントまで段階が分かれています。一方、住民税の所得割は一律10パーセントです。所得が小さい年は住民税のほうが重く感じられることになり、逆に所得が大きい年は所得税の比重が上がります。2つを合わせた負担率で見ることが、資金の見込みには必要です。
控除の額も違う
基礎控除や配偶者控除といった所得控除は、所得税と住民税で金額が異なります。住民税のほうが控除額は小さく設定されているため、同じ所得でも課税される金額は住民税のほうが大きくなります。所得税がゼロでも住民税が発生することがあるのは、この差によるものです。確定申告の結果だけを見て、住民税もゼロだと考えないでください。
納税資金は先に分けておく
結論: 売上が入った時点で一定割合を別の口座へ移す方法が、もっとも確実です。手元にある資金は使ってしまうためです。
割合を決めて自動化する
売上が入金されたら、その一定割合を納税用の口座へ移します。所得税、住民税、個人事業税、消費税、国民健康保険料を合わせると、所得の3割前後になる年もあります。利益は自分の取り分ではなく、まだ税金と混ざったままの数字だと考えておくと、使いすぎを防げます。金額の設定は、前年の実績から逆算すると精度が上がります。1年目で前年の実績がない場合は、多めに見積もっておくほうが安全です。余った分は翌年の納税に回せば無駄になりません。
消費税は預かっているだけ
課税事業者の場合、売上に含まれる消費税は預かっているお金であって自分のものではありません。税抜経理にしていれば帳簿の上でも分かれますが、税込経理では売上の中に混ざって見えます。消費税の分を最初に分けておく運用にすると、翌年の納付で慌てることがなくなります。売上の10パーセントがそのまま納付額になるわけではなく、仕入や経費に含まれる消費税を差し引いた残りが納付額です。それでも、預かった分を手元に残しておけば不足することはありません。
年間のカレンダーを作る
いつ何を納めるかを1枚の表にしておけば、資金の谷が見えます。3月に所得税と消費税、6月に住民税、7月に予定納税、8月に個人事業税と住民税。重なる月が分かれば、その時期に向けた準備ができます。金額より時期を把握しておくことが、資金繰りでは効果があります。表は手書きでも表計算ソフトでも構いません。月ごとに何を納めるかを1行ずつ書き出すだけで、資金の谷が目に見える形になります。年に一度作れば、翌年からは金額を入れ替えるだけです。
納付の方法を選ぶ
結論: 納付の方法によって、実際に現金が出ていく日が変わります。振替納税を選べば引落しが約1か月後ろにずれます。
振替納税は引落しが4月中旬
所得税と消費税について、あらかじめ口座振替の依頼書を提出しておくと自動的に引き落とされます。引落日は例年4月中旬に設定されるため、3月15日や3月31日に納付する場合と比べて約1か月の余裕が生まれます。一度手続をすれば翌年以降も継続されるため、独立した年に済ませておくのが確実です。依頼書は税務署または金融機関に提出します。ただし残高不足で引き落とせなかった場合は法定納期限からの延滞税が発生するため、引落日の前に残高を確認する習慣は必要です。
その他の方法
ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマートフォンアプリ納付、コンビニ納付、窓口での納付があります。クレジットカード納付には決済手数料がかかり、コンビニ納付とアプリ納付には金額の上限があります。手数料と上限を確認してから選ぶ必要があり、金額が大きい場合は振替納税かダイレクト納付が現実的です。住民税と個人事業税については、自治体によって使える方法が違います。納付書に記載されている方法を確認してください。
事例:2年目の負担を見込んでいなかった方
独立して1年目に約620万円の所得があったフリーランスの方から、2年目の夏にご相談をいただきました。8月に届いた個人事業税の納付書を見て、資金が足りないという内容です。
1年目は所得税だけで、負担は軽く感じていたということでした。
2年目は、納める先が3つに増えていました。
3月に所得税を納め、6月から住民税が始まり、8月に個人事業税と住民税の第2期が重なりました。加えて7月には予定納税もありました。1年目の感覚のまま資金を使っていたため、8月の時点で不足が生じています。
対応として、まず納付できる分から納めたうえで、翌年に向けた仕組みを作りました。売上が入金されたら3割を納税用の口座へ移す運用にし、年間のカレンダーを1枚の表にして手元に置いています。
翌年は同じ時期でも資金が足りることはありませんでした。金額を減らしたのではなく、時期を把握して先に分けただけという点が、この対応の要点です。
よくある質問
個人事業主が払う税金は何種類ですか?
なぜ2年目に負担が増えるのですか?
予定納税とは何ですか?
納税資金はどう準備すればよいですか?
納付が遅れるとどうなりますか?
まとめ:金額より時期を先に押さえる
個人事業主が納める税金は、所得税、住民税、個人事業税、消費税の4つが柱です。問題は種類ではなく、納付の時期が年間に散らばっていることにあります。3月に所得税と消費税、6月から住民税、7月と11月に予定納税、8月と11月に個人事業税。重なる月もあれば、忘れた頃に来る月もあります。
とくに注意が要るのが、2年目に負担が増える構造です。住民税と個人事業税は前年の所得に対して課されるため、独立1年目には発生しません。1年目の感覚のまま資金を使うと、2年目の夏に苦しくなります。
対策は単純で、売上が入った時点で一定割合を別の口座へ移すことです。所得の3割前後を目安にしておけば、多くの場合は足ります。手元にある資金は使ってしまうため、入口で分けることに意味があります。
あわせて、振替納税の手続をしておけば所得税と消費税の引落しが4月中旬になります。一度の手続で翌年以降も継続されるため、独立した年に済ませておいてください。
税理士法人Light UPでは、個人事業主の方の記帳と申告のご相談を承っています。納税資金の見込みを立てたい場合も、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号)第104条、第120条、第128条
- e-Gov 法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号)第72条の49の17、第320条
- e-Gov 法令検索「消費税法」(昭和六十三年法律第百八号)第9条、第45条
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(昭和三十二年法律第二十六号)第86条の4




