開業届の書き方を解説|欄ごとの記入例と出し方の流れ
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
開業届は、国税庁の様式「個人事業の開業・廃業等届出書」に、納税地・職業・開業日・事業の概要などを上から順に書き、納税地を管轄する税務署へ出す書類です。提出期限は、事業を始めた日の属する年分の確定申告期限までで、書面なら窓口か郵送、電子ならe-Taxで出します。令和7年1月から、控えに収受日付印(受け取った日を示す印)は押されません。この記事では、各欄の書き方、間違えやすい点、提出の方法、控えの残し方、一緒に出す書類を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)で整理します。
開業届の各欄には何を書く?
結論: 開業届は、様式の上から順に、提出先・氏名・納税地・職業・届出の区分・所得の種類・開業日・事業の概要・給与の状況を書きます。迷いやすいのは、納税地、開業日、事業の概要です。
欄ごとの書く内容の早見表
| 欄 | 書く内容 | 迷いやすい点 |
|---|---|---|
| 提出先・提出日 | 納税地を管轄する税務署名と、提出する日 | 提出先は納税地で決まる |
| マイナンバー(個人番号) | 12桁の個人番号 | 書面で出すときは本人確認書類の提示か写しの添付が要る。e-Taxは不要 |
| 職業 | 実際の仕事が分かる名前 | 自営業とだけ書かない |
| 屋号 | 付けている屋号 | 付けていなければ空欄 |
| 納税地・区分 | 区分の番号(5=住所地、6=居所地、7=事業所等)と、その住所 | 自宅で始めるなら住所地の5 |
| 届出の区分 | 開業の欄に「1」 | 廃業や事業所の新設とは欄が別 |
| 所得の種類 | 不動産所得・山林所得・事業(農業)所得から選ぶ | 事業所得は商売や仕事の請負 |
| 開業・廃業等日 | 事業を始めた日 | 準備を始めた日ではない |
| 開業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書と課税事業者選択届出書を出すかどうか | 出す書類に「有」 |
| 事業の概要 | 何をする事業かを具体的に | 業種名だけにしない |
| 給与等の支払の状況 | 従業員や家族に払う給与の人数と定め方 | 払う予定がなければ書く内容がない |
納税地と区分の番号
納税地は、区分の欄の番号で選びます。自宅で事業を始める方は、住所地の5です。事業所等の7は、自宅とは別の場所を税務署の窓口にしたいときの選び方です。納税地とは別の住所地や事業所は「上記以外の住所地・事業所等」の欄に書きます。納税地が、そのまま提出先の税務署を決めます。
開業日と届出の区分
届出の区分は、開業の欄に「1」と書きます。開業・廃業等日の欄には、事業を始めた日を書きます。物件を探し始めた日や名刺を作った日ではなく、お客さんへ商品やサービスを出し始めるなど、事業として動き出した日です。この日が、青色申告承認申請書の期限の数え始めです。
事業の概要と所得の種類
商品を売る、仕事を請け負うといった事業は、通常は事業所得です。土地や建物を貸す事業は不動産所得です。事業の概要は、様式が「できるだけ具体的に記載します」と求めています。「小売業」ではなく「インターネットによる衣料品の販売」のように、売る物と売り方が分かる形で書きます。
給与等の支払の状況
従業員や家族に給与を払う予定があるときに書く欄です。区分は専従者と使用人に分かれ、給与の定め方には日給や月給などを書きます。税額の有無は、各人の給与額と扶養親族等の状況から、源泉徴収する税額があるかを判断し、全員に税額がなければ「無」、それ以外は「有」にチェックします(国税庁の記載要領)。給与を払い始める日は「給与支払を開始する年月日」の欄に書きます。
開業届の書き方でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、開業日の選び方、事業の概要の書き方、青色申告承認申請書の出し忘れ、給与の届出の出し忘れの4つです。間違えると、青色申告を使えない年が出たり、期限を過ぎた届出が残ったりします。
提出の直前に、開業届を出せば青色申告も済んだと思っていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。
開業日を準備を始めた日にする
開業日は、ほかの届出の期限を数える起点です。
たとえば、営業を始めたのは2月20日なのに、物件を探し始めた1月10日を開業日に書いたとします(説明用の日付です)。1月15日までの開業なら青色申告承認申請書の期限は3月15日なので、書類の上では3月15日が期限に見えますが、実際の期限は2月20日から2か月後の4月20日です。
職業や事業の概要を広く書く
職業と事業の概要に、自営業やフリーランスとだけ書いて出される方が少なくありません。税務署が見ても何の事業かが分からず、確定申告書の業種名と食い違うと、あとから説明が必要になります。売る物と仕事の内容まで書いておけば、確定申告でも同じ言葉を使えます。
青色申告承認申請書の出し忘れ
青色申告承認申請書は、開業届とは別の書類です。開業届を出しても、申請書を出さなければ青色申告にはなりません。反対に、開業届を出していなくても、申請書だけを出すことはできます。期限を過ぎると、その年分は白色申告になり、青色申告特別控除と赤字の3年間の繰越しを使えません(国税庁タックスアンサーNo.2070)。
給与支払事務所等の開設届出書の出し忘れ
人を雇って給与を払うなら、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を、開設の日から1か月以内に出します(国税庁タックスアンサーNo.2090)。開業届の期限が確定申告期限までなのに対し、こちらは1か月で、開業届より先に期限が来ます。
税理士が確認する順番
税理士は、期限が先に来る届出から順に確かめます。
事業を始める日と、人を雇う予定があるかを伺えれば、開業届と一緒に出す書類と、それぞれの期限を確かめます。
開業届はいつまでに出す?
結論: 提出期限は、事業を始めた日の属する年分の確定申告期限までです。令和8年に始めた方の期限は令和9年3月15日で、土日祝日にあたるときは翌日になります。
法律が定める期限
所得税法229条が、事業を始めた日の属する年分の確定申告期限までに出すよう定めています。国税庁の手続案内(A1-5)とタックスアンサーNo.2090も同じ期限です。
開業から1か月以内という説明
ほかのサイトでは「開業から1か月以内」と書かれていることがあります。現在の所得税法と国税庁の案内に、開業届を1か月以内とする定めはありません。1か月以内は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の期限です。
期限を過ぎたとき
所得税法の罰則の条文に、開業届を出さなかった場合を対象にしたものはありません。ただし、届出の有無にかかわらず、事業の所得は確定申告が要り、記帳と帳簿書類の保存も求められます(国税庁の記載要領)。期限を過ぎていても、気づいた時点で納税地の税務署に出します。迷っている間に、青色申告承認申請書の期限が先に過ぎるほうが損失は大きくなります。
開業届はどこへどう出す?
結論: 納税地を管轄する税務署へ、窓口への持参、郵送、e-Taxのどれかで出します。書面では個人番号の本人確認書類が要り、e-Taxでは要りません。
提出先の税務署
提出先は、納税地を管轄する税務署です。所在地は国税庁のホームページで調べられます。窓口の受付時間は、令和8年10月1日から、全ての税務署で原則として午前9時から午後3時までです。土日祝日と年末年始は閉庁です。
窓口と郵送で出す場合
様式と記載要領は、国税庁のホームページからダウンロードして、入力して印刷できます。書面で出すときは、正本だけを窓口に出すか郵送で送ります。個人番号を書くので、本人確認書類の提示か写しの添付が要ります。
e-Taxで出す場合
国税庁は、パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成して、e-Taxで提出する方法を案内しています。初めて使う方は、利用者識別番号を取得します。本人確認書類の提示も写しの添付も要りません。
提出した記録はどう残す?
結論: 令和7年1月から、税務署は申告書や届出書の控えに収受日付印を押しません。提出するのは正本だけにして、控えは自分で作り、提出した日も自分で記録します。
収受日付印の廃止
国税庁は、令和7年1月から、申告書や届出書の控えに収受日付印を押さないことにしました。国税当局は、金融機関や補助金・助成金を担当する行政機関にも、収受日付印の押された控えを求めないよう要請しています。
窓口と郵送で提出日を残す方法
窓口では、希望すると、受付日と税務署名を書いたリーフレットを渡してもらえます。郵送では、切手を貼った返信用封筒を同封すると、同じ内容のリーフレットが返送されます。どちらも当分の間の対応です。返ってくるのはリーフレットで、日付印を押した控えではありません。
e-Taxの受信通知
e-Taxで送ると、受付番号と受付日時が分かる受信通知がメッセージボックスに入り、これが提出の記録になります。個人が内容を見るには、マイナンバーカードなどの電子証明書が要ります。
控えの作り方
控えは、提出前にコピーを取って自分で作ります。国税庁の記載要領は、控えに個人番号を書かないよう求めています。コピーで作るときは、個人番号の部分が写らないようにします。
開業届と一緒に出す書類は?
結論: 開業届と一緒に検討する書類は、青色申告承認申請書、給与を払う場合の届出、消費税とインボイスの届出の3つです。都道府県の届出は、自治体ごとに期限が違います。
書類ごとの期限の早見表
| 書類 | 期限 | 出す場合 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業を始めた日の属する年分の確定申告期限まで | 事業を始めたとき |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 3月15日まで。1月16日以後に始めたときは、始めた日から2か月以内 | 青色申告にするとき |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 3月15日まで。1月16日以後に始めたときや、専従者が増えたときは、その日から2か月以内 | 青色申告で家族に給与を払うとき |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 開設の日から1か月以内 | 人を雇って給与を払うとき |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時。提出した日の翌月に払う給与から適用される | 給与の支給人員が常時10人未満のとき |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 事業を始めた年は、その年の12月31日まで | 免税事業者が課税事業者を選ぶとき |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 登録を受けたい日(提出日から15日以降)を書いて出す | インボイスを発行するとき |
青色申告承認申請書
青色申告にするなら、開業届と同じ日に出してしまうのが確実です。期限は開業日から数え、3月20日に始めたなら5月20日です(説明用の日付です)。
給与を払うときの届出
源泉所得税を毎月納める代わりに年2回にまとめる納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満のときに申請できます。家族に給与を払って青色申告の必要経費にするなら、青色事業専従者給与に関する届出書が要ります。開業届の給与等の支払の状況の欄と、納期の特例の提出の有無の欄は、これらの届出と内容をそろえます。
消費税とインボイスの届出
開業した年は、通常は消費税の納税義務がない免税事業者です。課税事業者を選ぶなら課税事業者選択届出書を、インボイスを発行するなら登録申請書を出します。どちらも、出す前に消費税の負担と取引先の求めを並べて決めます。
都道府県への事業開始等申告書
個人事業税は、都道府県が課す税金です。東京都は、事業開始の日から15日以内に、事業開始(廃止)等申告書を都税事務所へ出すよう案内しています。期限と書式は都道府県ごとに違うため、所在地の県税事務所で確かめます。
よくある質問
開業届の提出期限を過ぎてしまいました。もう出せませんか?
開業届を出すと税金は増えますか?
会社員が副業で始める場合も、開業届は必要ですか?
まとめ:開業日を決めて書類を同時に出そう
- 開業届は、様式の上から順に書き、納税地を管轄する税務署へ出す
- 提出期限は、事業を始めた日の属する年分の確定申告期限まで
- 開業日は事業を始めた日で、ほかの届出の期限を数える起点になる
- 窓口・郵送は正本だけを出し、控えと提出日は自分で残す。e-Taxは受信通知が記録になる
- 青色申告承認申請書は別の書類で、期限は3月15日か開業日から2か月以内
開業日が近い方や、青色申告と給与の届出の期限をまとめて確認したい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。開業日と事業の内容、給与を払う予定を伺い、出す書類と期限を一覧にして整理します。
出典
- 国税庁 手続案内 A1-5「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」の様式と記載要領
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」
- e-Gov 法令検索「所得税法」(第229条)
- 東京都主税局「事業開始(廃止)等申告書」の案内





