個人事業主の経費はどこまで?自宅の家賃・住宅ローンの分け方を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
個人事業主の経費は、事業のために使った分までです。自宅で仕事をしている人は、家賃・電気代・通信費・固定資産税・住宅ローンの利息を、仕事に使った割合で分けて入れます(家事按分)。住宅ローンの元本の返済は経費に入りません。この記事では、経費に入る範囲、割合の決め方、住宅ローン控除との関係、家族への支払いの扱いを、所得税法・同施行令・基本通達と国税庁の公表資料(2026年10月時点)で整理します。
個人事業主の経費はどこまで?
結論: 経費に入るのは、事業の収入を得るために要した費用です。金額の上限はなく、生活のための費用は入りません。生活と仕事の両方に使う支出は、仕事の分だけを入れます。
経費に入れる範囲の判断
所得税法37条は、必要経費(事業の収入から差し引ける費用)を、売上原価と収入を得るために直接要した費用、そして販売費・一般管理費など業務について生じた費用と定めています。金額の上限を決めた規定はなく、基準は事業との関係だけです。
生活のための費用(家事上の費用)は、所得税法45条1項1号により経費に入りません。難しいのは、自宅の家賃や電気代のように、生活と仕事の両方に関わる費用(家事関連費)です。国税庁タックスアンサーNo.2210は、家事関連費のうち経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務に直接必要だったことを明らかに区分できる金額に限ると説明しています。
自宅の支出の早見表【表】
自宅で仕事をしている人がよく迷う支出の扱いは、次のとおりです。
| 支出 | 経費に入る範囲 | 注意 |
|---|---|---|
| 家賃(賃貸) | 仕事に使う部分 | 契約書と間取り図を残す |
| 住宅ローンの元本 | 入らない | 借りたお金を返しただけで、費用ではない |
| 住宅ローンの利息 | 仕事に使う部分 | 控除との重なりに注意 |
| 固定資産税 | 仕事に使う部分 | 事業用の部分に限る |
| 持ち家の建物の減価償却費 | 仕事に使う部分 | 土地は減価償却しない |
| 電気代・水道代 | 仕事で使った分 | 水道は仕事で使う実態が要る |
| インターネット・携帯電話 | 仕事で使った分 | 仕事専用の契約なら全額 |
| 車の費用 | 仕事で走った分 | 走行距離の記録が要る |
経費に入らないもの
所得税法45条1項は、所得税、住民税、延滞税・加算税、罰金・科料・過料などを経費に入れないと定めています。事業税は全額が経費で、固定資産税は仕事に使う部分だけが経費です(タックスアンサーNo.2210)。
経費の按分でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、家賃や光熱費を全額入れる、割合の根拠を残さない、持ち家の費用を取り違える、の3つです。間違えると、経費が認められず、修正申告で追加の所得税と住民税が出ます。
確定申告の前に、自宅の家賃を全額経費に入れていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。
家賃や光熱費の全額計上
生活にも使う自宅の家賃を全額入れるのは誤りです。所得税法施行令96条は、家事関連費のうち経費になるものを、仕事に必要な部分を明らかに区分できる場合のその部分などに限っています。自宅の一部屋を仕事に使っているなら、その部屋の分だけが対象です。
按分の根拠の不足
税務署に割合の根拠を聞かれたとき、間取り図も稼働の記録もなければ、仕事に使う部分を区分できると示せません。示せない分は、経費に入れられません。
持ち家の費用の取り違え
持ち家で多い間違いは2つです。1つ目は、住宅ローンの返済額をそのまま経費に入れることです。返済額には元本が含まれ、元本は経費に入りません。2つ目は、住宅ローン控除を受けている部分の利息まで経費に入れることです。仕組みは「持ち家の費用は経費に入る?」の節で説明します。
税理士が確認する順番
税理士は、自宅兼事務所の経費を次の順に確かめます。
賃貸の契約書か住宅ローンの返済予定表と、間取り図、直近の確定申告書をお持ちいただければ、按分の割合と、住宅ローン控除との切り分けを一緒に確かめます。
按分の割合に上限はある?
結論: 按分の割合に上限はありません。仕事に使う部分が50%以下でも、明らかに区分できる部分は経費に入ります。判定は、白色申告と青色申告で条文の作りが違います。
家事関連費の基本のルール
所得税法施行令96条1号は、家事関連費のうち、主たる部分が業務の遂行上必要で、その必要な部分を明らかに区分できる場合の、その部分を経費としています。この号は青色申告の人も含め、すべての人に当てはまります。
主たる部分かどうかは、所得税基本通達45-2が、支出のうち業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定すると定めています。ただし、50%以下でも、必要な部分を明らかに区分できるなら、その部分は経費に入れて差し支えないとしています。専用の仕事部屋のように、客観的に区分できる部分が当てはまります。判定は、業務の内容、経費の内容、家族や使用人の構成、店舗併用の家屋などの利用状況を合わせて行います(同通達45-1)。
青色申告に加わるルール
同施行令96条2号は、青色申告の承認を受けている人について、1号のほかに、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要だったと明らかにされる部分も経費にできると定めています。1号のように、主たる部分かどうかを問う文言がありません。記録で示せるかどうかが基準です。
按分の割合はどう決める?
結論: 割合は、面積・使用時間・走行距離のように、数えられる実態で決めます。基準と計算を書いた資料を残し、実態が変わらない限り毎年同じ割合を使います。
面積で分ける支出
家賃、火災保険料、固定資産税、住宅ローンの利息、持ち家の建物の減価償却費は、床面積の割合で分けるのが一般的です。家全体が60平方メートルで、仕事専用の部屋が12平方メートルなら、割合は20%です(説明用の数字です)。間取り図に仕事に使う部屋の範囲を書き込み、面積を残します。
使用時間で分ける支出
電気代やインターネットの料金は、仕事に使った時間の割合で分けます。標準的な1週間の使い方を書き出し、仕事の時間を168時間で割ります(説明用の考え方です)。書き出した資料が、割合の根拠になります。
走行距離で分ける支出
車のガソリン代・自動車税・保険料・車検費用は、1年間の走行距離のうち仕事で走った距離の割合で分けます。日付・行き先・距離の走行記録が、そのまま根拠になります。
基準と残す資料
| 基準 | 当てはまる支出 | 残す資料 |
|---|---|---|
| 床面積 | 家賃・火災保険料・固定資産税・ローンの利息・建物の減価償却費 | 間取り図、面積の計算式 |
| 使用時間 | 電気代・インターネット・携帯電話 | 1週間の使い方の書き出し |
| 走行距離 | ガソリン代・自動車税・保険料 | 日付・行き先・距離の記録 |
割合を変えるのは、引っ越しや仕事部屋の増減のように、実態が変わったときだけです。変えた年は、理由と新しい間取り図などを記録に残します。
持ち家の費用は経費に入る?
結論: 持ち家では、住宅ローンの元本は経費に入らず、利息・固定資産税・建物の減価償却費は仕事に使う部分が入ります。住宅ローン控除は、居住用の部分だけが対象です。
住宅ローンの元本と利息
住宅ローンの返済額は、元本と利息の合計です。元本の返済は、借りたお金を返しただけで費用ではないため、経費に入りません。タックスアンサーNo.2210は、業務のための借入金の利息は必要経費になると説明しています。自宅の住宅ローンは生活と仕事の両方のための借入金なので、利息のうち仕事に使う部分だけが経費です。その年に払った利息の額は、金融機関の返済予定表で確かめます。
固定資産税と建物の減価償却費
固定資産税は、業務の用に供する資産に係るものが必要経費で、自宅は仕事に使う部分に限ります(タックスアンサーNo.2210・2215)。建物は、取得にかかった金額を使える期間にわたって少しずつ経費にします(減価償却)。土地は減価償却しません。平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、定額法だけです(タックスアンサーNo.2100)。
住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、自分の居住の用に供する部分が対象です。国税庁の質疑応答事例「店舗併用住宅を新築した場合」では、1階の店舗と2階の住居が同じ面積の家屋で、家屋の借入金2,000万円のうち、控除の対象は住居部分の1,000万円と計算されています。仕事に使う部分に対応する借入金は控除の対象になりません。
床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供することも、控除を受ける要件です(タックスアンサーNo.1211-1)。事務所にする部分が半分を超える家は、控除そのものを受けられません。
家族への支払いは経費に入る?
結論: 生計を一にする親族に払う家賃や給与は、経費に入りません。例外は、青色申告の青色事業専従者給与と、白色申告の事業専従者控除です。
家賃と給与の扱い
生計を一にする配偶者その他の親族に払う家賃や給与は、経費に入りません。受け取った人も、所得として扱いません(タックスアンサーNo.2210)。家族が所有する建物を事務所に使う場合も、家賃は経費に入りません。ただし、生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物の固定資産税などは、借りた子の経費に入ります。
青色事業専従者給与
青色申告の人は、生計を一にする15歳以上の親族で、その年に6か月を超える期間、専ら事業に従事している人に払う給与を、相当と認められる金額まで経費にできます。「青色事業専従者給与に関する届出書」を、給与を経費にしたい年の3月15日までに出す必要があります。年の途中で事業を始めた場合や、新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内です。専従者が増える場合や給与を増やす場合は、変更届出書を遅滞なく出します(タックスアンサーNo.2075)。
白色申告の事業専従者控除
白色申告の人は、専従者への給与を経費にできませんが、事業専従者控除を経費として差し引けます。上限は、配偶者が86万円、ほかの親族が1人50万円です。ただし、控除する前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額が、これより低ければ、その金額が上限です(同No.2075)。
よくある質問
自宅の家賃は何割まで経費にできますか?
住宅ローンの返済額は経費になりますか?
携帯電話やインターネットの料金は全額経費にできますか?
一人で食べた昼食は経費になりますか?
まとめ:按分の根拠を残して経費に入れよう
- 経費に入るのは、事業のために使った分で、金額の上限はない
- 生活と仕事の両方に使う支出は、仕事の分だけを入れる。住宅ローンの元本は入らない
- 仕事に使う部分が50%以下でも、明らかに区分できる部分は経費に入る
- 割合は面積・使用時間・走行距離で決め、資料を残して毎年同じ割合を使う
- 住宅ローン控除の対象は居住用の部分だけで、仕事に使う部分とは重ねない
自宅の一部を仕事に使っていて、按分の割合や住宅ローン控除との切り分けに不安のある方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。契約書や返済予定表、間取り図と直近の申告書を確認し、経費に入れる範囲と割合の根拠を整理します。
出典
- 所得税法37条(必要経費)、45条(家事関連費等の必要経費不算入等)
- 所得税法施行令96条(家事関連費)
- 国税庁 所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」
- 国税庁 タックスアンサー No.2215「固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合」
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」
- 国税庁 タックスアンサー No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁 質疑応答事例(所得税)「店舗併用住宅を新築した場合」





