青色申告承認申請書の期限|出し忘れたときの扱い
「開業したのですが、青色申告の手続はいつまでですか」。「出したはずですが、承認の通知が来ていません」――青色申告承認申請書についてのご相談は、この2つに分かれます。
結論からお伝えすると、個人の場合の期限はその年の3月15日まで、ただし1月16日以後に業務を開始した場合は業務開始の日から2か月以内です。そして承認の通知は届きません。所得税法147条が、その年の12月31日までに承認または却下の処分がなければ承認があったものとみなすと定めているためです。通知がないことは、むしろ承認されている状態を意味します。
税理士法人Light UPでは、この手続のご相談を受けたとき、期限を過ぎているかどうかを最初に確認するようにしています。過ぎていれば、その年分については青色申告を選べず、翌年からになるためです。判明した時点で打てる手が変わります。
この記事では、個人と法人それぞれの期限、みなし承認の仕組み、出し忘れたときの扱い、開業届との関係、そして承認が取り消される場合までを、実際に個人事業主と法人の申告を扱っている立場から整理します。
個人の期限は3月15日か開業から2か月以内
結論: 所得税法144条により、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに申請します。ただし1月16日以後に業務を開始した場合は、開始の日から2か月以内です。
条文が定める2つの期限
e-Gov 法令検索で所得税法144条を引くと、「その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない」と定められています。1月16日が境目になっており、この日より前に開業していれば3月15日、この日以後に開業していれば開業から2か月以内という2本立てです。すでに何年も事業を営んでいて白色申告から切り替える場合は、前者の3月15日が期限になります。開業したばかりかどうかで期限の考え方が変わるということです。
適用されるのは申請した年の分から
3月15日までに申請すれば、その年分の所得税から青色申告になります。翌年からではありません。たとえば2027年分から青色申告にしたいのであれば、2027年3月15日までに申請します。2028年3月の確定申告のときに申請しても間に合わないということです。申告する年ではなく、対象となる年で考えるという点が、この手続のもっとも間違えやすい部分です。確定申告の時期に税務署へ行き、その場で申請書を出せば翌年からになります。3月15日は確定申告の期限でもあるため、この2つが同じ日であることが混乱の原因になっています。
1月16日という日付の意味
1月16日という中途半端な日付は、3月15日の2か月前という意味です。1月15日以前に開業した人は3月15日までに2か月以上の時間があるため原則どおり3月15日、1月16日以後の人は開業から2か月という個別の期限になります。どちらの期限も、開業から少なくとも2か月は確保されているという設計になっています。12月に開業した人は、翌年2月末ごろが期限です。年末に開業した場合、その年分の所得は1か月に満たないことになりますが、それでも申請すればその年分から青色申告になります。開業した年の所得が少なくても、申請しておく意味はあります。
法人は事業年度開始の日の前日まで
結論: 法人税法122条1項により、その事業年度開始の日の前日までに申請します。ただし設立第1期については別の期限が定められています。
2期目以降は事業年度が始まる前
法人税法122条1項は「当該事業年度開始の日の前日までに、当該事業年度開始の日その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない」と定めています。3月決算の会社が翌期から青色申告にしたいのであれば、3月31日までに提出することになります。始まってしまった事業年度については適用できないという点は、申告期限の延長や棚卸資産の評価方法の変更と同じ構造です。事業年度が始まる前に手続を済ませるという型が、法人税では繰り返し出てきます。決算月の3か月ほど前に、翌期に向けた届出の点検をする習慣にしておくと漏れません。
設立第1期は3か月と期末の早いほう
同条2項1号は、設立の日の属する事業年度について「同日以後三月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日」の前日を期限としています。設立から3か月と、第1期の決算日を比べて早いほうということです。4月1日に設立し3月末決算であれば7月1日の前日である6月30日、4月1日に設立し6月末決算であれば6月30日が期限になります。第1期が短い会社ほど期限も早く来るため、決算月の設定と合わせて確認が要ります。設立の日は登記の日であり、事業を始めた日ではありません。登記が完了してから実際の営業開始までに時間が空くと、その間に期限が近づいていることになります。設立の登記が終わった時点で日付を確認しておく必要があります。
第1期が3か月未満の場合
同条2項4号は、設立の日から第1期終了の日までの期間が3か月に満たない場合について、翌事業年度の期限も定めています。この場合は、設立の日以後3か月を経過した日と翌事業年度終了の日のうち早い日の前日までとされています。設立してすぐ決算を迎える会社への配慮です。第1期が極端に短い会社は、この規定を確認しておく必要があります。たとえば3月末決算の会社を2月に設立した場合、第1期は2か月しかありません。この場合、第2期についても設立の日から3か月を経過した日が基準になるため、通常より遅い期限が認められることになります。
承認の通知は届かない
結論: 申請が承認されても通知は届きません。所得税法147条と法人税法125条が、一定の日までに処分がなければ承認があったものとみなすと定めているためです。
個人のみなし承認
所得税法147条は「その年分以後の各年分の所得税につき……承認を受けようとする年の十二月三十一日(その年十一月一日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その年の翌年二月十五日)までにその申請につき承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす」と定めています。12月31日までに何も言われなければ、承認されているということです。通知が来ないことを不安に思う必要はありません。11月1日以後に業務を開始した場合は、翌年2月15日までに処分がなければ承認とみなされます。年末近くに開業した人については、判断の時間を確保するためにこの日付が設けられています。いずれにしても、待っていれば承認されるという構造です。
法人のみなし承認
法人税法125条1項も同様に、事業年度終了の日(中間申告書を提出すべき法人については事業年度開始の日以後6か月を経過する日)までに承認または却下の処分がなかったときは、その日において承認があったものとみなすと定めています。個人と同じく、通知は届かないのが通常です。却下されたときだけ通知が来るという仕組みだと理解しておけば、待つ必要がないことが分かります。中間申告書を提出すべき法人については、事業年度開始の日以後6か月を経過する日が基準になります。事業年度の途中で判断されることになりますが、この場合も通知は届かないのが通常です。
提出した記録は残しておく
通知が来ないため、申請したかどうかを後から確認する手段は自分の記録だけです。令和7年1月から申請書や届出書の控えへの収受日付印の押なつは行われていないため、書面で提出する場合は提出用と控え用の2部を用意し、控えは自分で保管しておきます。電子申告であれば受信通知を保管しておきます。提出の事実を示せるものが唯一の証拠になるため、他の届出とまとめて1つのファイルに保管しておくのが確実です。担当者が交代したときや税理士を変えたときに、この確認が必要になる場面があります。
期限を過ぎたらその年分は選べない
結論: 期限を過ぎて提出した申請書は、その年分または当該事業年度には適用されません。翌年分または翌事業年度からの適用になります。
個人の場合
3月15日を過ぎて提出すると、その年分は白色申告になります。翌年分からは青色申告が適用されるため、申請書自体は提出しておく意味があります。1年待つことになるが、出さなければ2年待つことになるという関係です。気づいた時点で提出しておけば、翌年からの適用は確保されます。翌年分としての提出であっても、書類の様式は同じです。適用を受けようとする年を正しく記載することだけ確認してください。
法人の場合
事業年度が始まってから提出した場合、その事業年度は白色申告になり、翌事業年度から青色申告になります。設立第1期に出し忘れた場合の影響はとくに大きく、創業期の赤字を繰り越せなくなります。第1期の赤字が繰り越せない影響は数年続くため、設立時の手続では優先して確認すべき届出の1つです。創業期は設備投資や採用が先行して赤字になりやすく、その赤字を将来の黒字と相殺できるかどうかで、数年後の税額が変わります。中小法人であれば10年間繰り越せる制度なので、失う金額は小さくありません。
| 状況 | その年・その事業年度 | 翌年・翌事業年度 |
|---|---|---|
| 期限内に提出した | 青色申告 | 青色申告 |
| 期限後に提出した | 白色申告 | 青色申告 |
| 提出していない | 白色申告 | 白色申告 |
| 承認を取り消された | 通知に記載された年分まで遡って白色申告 | 再申請が必要 |
白色申告になると何が変わるか
青色申告特別控除が使えない、欠損金の繰越控除ができない、少額減価償却資産の特例が使えない、専従者給与の扱いが変わる。影響は複数の制度に及びます。とくに欠損金の繰越しは、赤字の年があった場合に将来の税額を左右します。税額だけでなく、使える制度そのものが減るという点が、この手続を軽視できない理由です。申請書は1枚の書類で、記載する内容も多くありません。それだけの手続で複数の制度が使えるようになるため、費用対効果という観点でも早く出しておく意味があります。
| 制度 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(個人) | 最大65万円 | なし |
| 欠損金の繰越控除 | 個人3年・中小法人10年 | できない |
| 少額減価償却資産の特例(30万円未満) | 使える | 使えない |
| 専従者給与(個人) | 届出の範囲で経費にできる | 事業専従者控除の定額のみ |
| 貸倒引当金(法人) | 中小法人の特例が使える | 使えない |
| 各種の税額控除 | 使えるものが多い | 使えないものが多い |
開業届とは期限が違う
結論: 開業届と青色申告承認申請書は別の手続で、期限も違います。同時に提出できますが、期限は青色申告承認申請書のほうが厳しくなります。
開業届の期限は確定申告期限まで
開業届は所得税法229条に基づく届出で、提出期限は事業を開始した年分の確定申告期限までとされています。よく言われる1か月以内という説明は国税庁の案内によるもので、1か月を過ぎても提出できます。一方、青色申告承認申請書は3月15日または開業から2か月以内という期限があり、こちらのほうが厳しいものです。急ぐべきなのは青色申告承認申請書のほうだということになります。開業届は1か月以内という説明が広く知られているため、そちらばかり意識してしまいがちですが、期限として厳しいのは青色申告承認申請書です。優先順位を逆に理解していると、間に合わなくなります。
同時に出すのが確実
2つの書類は同時に提出できます。開業のタイミングで両方を出しておけば、期限の管理も不要になります。あわせて、青色事業専従者給与に関する届出書や、給与支払事務所等の開設届出書も必要になる場合があります。開業時に出す書類を一覧にしておくと、後から慌てることがなくなります。開業届の書き方については、別の記事で詳しく扱っています。国税庁のウェブサイトからそれぞれの様式をダウンロードでき、電子申告でも提出できます。まとめて提出すれば、控えの管理も1回で済みます。
承認が取り消される場合
結論: 一度承認されても、帳簿の保存がない場合や、期限内に申告しない状態が続く場合には取り消されることがあります。
帳簿書類の保存が前提
青色申告は、法令に定める帳簿を備え付けて記録し、保存することが前提の制度です。帳簿を保存していない、記録が著しく不備であるといった場合は、承認が取り消される事由になります。制度の中身は帳簿と引き換えの優遇であり、帳簿がなければ前提が崩れるという構造です。電子帳簿保存法への対応も、この保存の一部として関係してきます。会計ソフトで記帳していれば帳簿の要件は満たしやすくなりますが、証憑の保存も別に求められます。データで受け取った請求書は、データのまま保存する必要があります。
期限内に申告しない状態が続いたとき
法人については、2事業年度続けて期限内に申告書を提出しなかった場合に承認が取り消される取扱いがあります。個人についても、期限内申告が要件になっている特典があります。期限の管理は制度の適用そのものに影響するということです。1年目の遅れの時点で対応しておけば、取消しには至りません。決算が間に合わないのであれば、申告期限の延長という制度もあります。何もせず期限を過ぎるのではなく、使える手続を検討することになります。
取り消されると遡って適用されない
承認が取り消されると、取消しの通知に記載された事業年度または年分まで遡って白色申告として扱われます。すでに適用を受けていた控除や特例が使えなくなるため、影響は当期だけにとどまりません。取消しは将来だけの話ではないという点は、帳簿の整備を後回しにしないための理由になります。過去に適用した特別控除や特例が否認されれば、修正申告と追加の納税が必要になります。取消しの通知を受けた後で帳簿を整えても、遡っての適用は受けられません。
出し忘れに気づいたときの動き
結論: まず期限を過ぎているかを確認し、過ぎていれば翌年分または翌事業年度分として提出します。同時に、その年に使えなくなる制度を把握しておきます。
期限を確認する
個人であれば、その年の3月15日を過ぎているか、開業から2か月を過ぎているか。法人であれば、事業年度が始まっているか、設立から3か月を過ぎているか。日付を確認するだけで、次にやることが決まります。過ぎていれば翌期分として提出し、過ぎていなければすぐ提出します。判断に必要なのは、個人なら開業日、法人なら設立日と事業年度の期間だけです。登記事項証明書や開業届の控えを見れば分かります。
その年に使えない制度を把握する
白色申告になる年については、少額減価償却資産の特例が使えないため、30万円未満の資産も通常の減価償却になります。赤字が出た場合も繰り越せません。設備投資や赤字の見込みがある年ほど影響が大きいため、その年の計画を見直す材料になります。設備の取得時期を翌期にずらすといった判断もあり得ます。ただし事業の都合を税務の都合で曲げることが常に正しいわけではないので、影響額を出したうえで判断してください。
帳簿は最初から整えておく
その年が白色申告になるとしても、帳簿は複式簿記で付けておくほうがよいでしょう。翌年から青色申告になったときにそのまま続けられますし、白色申告でも記帳と保存の義務はあります。記帳の習慣は青色か白色かにかかわらず必要であり、青色申告になったときの準備にもなります。白色申告でも記帳と帳簿の保存は義務づけられているため、記帳しない選択肢はありません。同じ手間をかけるのであれば、青色申告の要件を満たす形で記帳しておくほうが合理的です。
事例:設立第1期の期限を過ぎていた会社
7月に設立した会社から、翌年の決算の相談をいただきました。決算月は6月で、第1期は7月から翌年6月までの12か月です。
青色申告承認申請書の提出を確認したところ、提出した記録がありませんでした。
設立から3か月後の10月が、期限でした。
法人税法122条2項1号により、設立の日以後3か月を経過した日と事業年度終了の日のうち早い日の前日が期限です。この会社の場合は10月上旬が期限で、すでに過ぎていました。第1期は白色申告になります。
第1期は創業期の投資が先行して赤字でした。青色申告であれば10年間繰り越せた欠損金が、繰り越せないことになります。金額は約380万円でした。
対応として、まず第2期からの適用を確保するため、第2期開始の日の前日である6月30日までに申請書を提出しました。あわせて、第1期の帳簿は複式簿記で整えたまま継続し、第2期からそのまま青色申告に移行できる状態にしています。設立時の届出を一覧にして確認する手順を、その後の運用に入れました。
よくある質問
青色申告承認申請書の期限はいつですか?
承認の通知はいつ届きますか?
期限を過ぎて提出したらどうなりますか?
開業届と一緒に出せばよいですか?
承認が取り消されることはありますか?
まとめ:日付を確認するところから
青色申告承認申請書でつまずくのは、書き方ではなく期限です。個人はその年の3月15日まで、1月16日以後の開業なら開業から2か月以内。法人は事業年度開始の日の前日まで、設立第1期は設立から3か月と期末の早いほうの前日。まずこの日付を確認してください。
そして、承認の通知は届きません。所得税法147条と法人税法125条が、一定の日までに処分がなければ承認があったものとみなすと定めているためです。通知が来ないことは、承認されている状態を意味します。不安であれば、提出した控えや受信通知を確認してください。
期限を過ぎていた場合は、その年分または当該事業年度は白色申告になります。ただし提出しておけば翌年からは適用されるため、気づいた時点で出す意味があります。1年待つことになりますが、出さなければ2年待つことになります。
設立第1期の出し忘れは影響が大きく、創業期の赤字を繰り越せなくなります。設立時に出す書類を一覧にして、まとめて確認する手順にしておいてください。
税理士法人Light UPでは、開業や設立の際の届出についてご相談を承っています。提出済みかどうかの確認から、出し忘れが判明した場合の対応まで、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号)第143条、第144条、第147条、第150条、第229条
- e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第121条、第122条、第125条、第127条
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(昭和三十二年法律第二十六号)第25条の2、第67条の5
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」




