雑費とは?入れてよい3条件と迷わない仕訳の方法
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
雑費とは、ほかのどの勘定科目にも当てはまらない、少額でたまにしか発生しない事業の費用を入れる科目です。入れてよいのは、既存の科目に当てはまらない、金額が少ない、毎月続かない、の3つがそろった支出だけで、1つでも欠ければ別の科目を探します。金額の上限は法令にありません。この記事では、雑費に入れる支出と入れない支出、似た科目との違い、雑費が膨らんだときの見直し方、消費税の区分を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
雑費にはどんな支出を入れる?
結論: 雑費に入れるのは、ほかのどの科目にも当てはまらず、金額が小さく、毎月続かない事業の支出です。会社は販売費及び一般管理費、個人事業主は青色申告決算書の経費欄に表示します。
入れてよい3つの条件
雑費を使うかは、次の3つで判断します。
- 既存の科目に当てはまらない:消耗品費、旅費交通費、支払手数料などを一通り当たって、どれにも入らない
- 金額が少ない:決算書で雑費の中身を説明するときに、金額で目を引かない水準
- 毎月続くものではない:年に数回、あるいは単発の支出
1つでも欠ければ、内容が分かる科目に入れます。先に既存の科目を当たり、どれにも入らなかったものだけを雑費にします。雑費から考え始めると、本来の科目の金額が小さく出ます。
雑費に入れる支出の早見表
| 支出 | 雑費でよい場面 | 別の科目にする場面 |
|---|---|---|
| ごみ処理費・粗大ごみの処理券 | 事務所の片付けで年に数回かかる | 毎月回収を頼む契約がある(専用の科目を作る) |
| クリーニング代 | カーテンなどを不定期に出す | 毎月・毎週出す(専用の科目を作る) |
| 引越しや模様替えの小さな作業費 | 年に1度の単発で金額が小さい | 金額が大きい(内容が分かる科目へ。工事なら修繕費や固定資産の検討) |
雑費は科目名から中身が分かりません。会計ソフトの摘要欄には、支払った相手、何のための支出か、どの業務のためかを残します。
決算書での表示
会社の損益計算書では、雑費は営業利益の手前にある販売費及び一般管理費に入ります。個人事業主の青色申告決算書(一般用)は、経費欄の最後に雑費が印刷され、その手前に科目名を自分で書き込める空欄があります(令和7年分の様式)。国税庁の収支内訳書の書き方は、雑費を「事業(業務)上の費用で他の経費に当てはまらない経費」と説明し、特殊な経費は空欄に経費科目を設けて記入するよう案内しています。繰り返し出る支出は、空欄に専用の科目を作ります。
雑費に入れたかどうかは、経費になるかどうかと関係ありません。経費になるのは、事業のために使った支出だけです。
雑費の処理でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、雑費に紛れた交際費、課税と非課税が混ざる消費税の区分、個人事業主の生活費との混同の3つです。決算の直前に気づくと、納める税金の計算まで動きます。
決算の最後に雑費の総勘定元帳(科目ごとの取引の一覧)を開いたら、取引先への手土産や祝い金が入っていた、というご相談は少なくありません。
雑費に紛れた交際費
取引先への接待や贈答は、科目名が雑費でも税金の計算では交際費等です。法人税では、交際費等のうち経費として認められない額を申告書で計算します。雑費のまま申告すると、この計算から漏れ、税務調査で見つかれば修正申告で税金を追加で納めることになります。
課税と非課税が混ざる消費税の区分
雑費は、1つの科目の中に課税、非課税、不課税の取引が混ざります。雑費の税区分を課税で固定すると、非課税の手数料まで仕入れの消費税として差し引き、納める消費税が実際より少なくなります。後から指摘されれば追加で納めることになり、逆に課税の支出を非課税で入れていれば、差し引けるはずの消費税を取りこぼします。簡易課税制度を選んでいる事業者は仕入れの区分が納付額に影響しないため、問題になるのは原則課税の事業者です。
個人事業主の生活費との混同
個人事業主が生活のために使った支出は、どの科目に入れても経費になりません。事業と生活の両方に使う支出は、事業に使った割合を後から説明できる形で残しておく必要があります。割合の根拠がないと、調査で経費を取り消され、税金が増えます。
雑費が膨らんだ決算書の見え方
雑費が大きいと、販売費及び一般管理費の中身が読めず、銀行が決算書を見ても、本業のどこにお金がかかっているのか追えません。調査で確かめられるのは、科目名ではなく、事業に関係する支出かどうかです。
税理士が確認する順番
税理士は、雑費の総勘定元帳を次の順に確かめます。
雑費の元帳と主な領収書をお送りいただければ、交際費や生活費が紛れていないか、消費税の区分が合っているかを1件ずつ確かめます。
雑費に入れてはいけない支出は?
結論: 既存の科目に当てはまる支出、交際費や寄附金に当たる支出、事業に関係しない生活費、中身の分からない支出は、雑費に入れません。
既存の科目に当てはまる支出
文房具は消耗品費、電車代は旅費交通費、振込手数料は支払手数料です。迷ったときに雑費へ逃がすと、前年と比べても増減の理由が分からなくなります。毎月発生する支出は、内容が定まっています。専用の科目を作るか、既存の科目にまとめます。
交際費や寄附金に当たる支出
国税庁のタックスアンサーNo.5265は、交際費等を「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と説明しています。範囲を決めるのは、何のために支出したかです。
期末の資本金が1億円以下の法人などは、損金不算入額(経費として認められない額)を、次のどちらかの方法で計算します。
- 年800万円(事業年度が12か月の場合)を超える部分が損金不算入
- 飲食費の50%を超える部分が損金不算入(専ら役員・従業員やその親族に対する飲食等を除く)
1人あたり1万円以下の飲食費は、飲食日・参加者・費用額・店舗の名称などを記載した書類を保存していれば、交際費等から除かれます(令和6年4月1日以後の支出)。
寄附金は、国税庁のタックスアンサーNo.5281によると、いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与です。対価のない寄付は、経費に認められる限度額の計算に入ります。
事業に関係しない生活費
個人事業主の青色申告決算書の書き方では、生活費その他の家事上の費用は、事業所得の必要経費にならない支出として「事業主貸」に記入します。事業と生活の両方に使う支出(家事関連費)は、所得税基本通達45-2により、事業に必要な部分が50%を超えるかで判定します。50%以下でも、事業に必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分を必要経費にできます。
中身の分からない支出
領収書の内容が分からないまま雑費にすると、後から追えません。内容が判明するまでは仮払金などの仮勘定に置き、判明した時点で正しい科目へ振り替えます。
雑費と似た科目はどう違う?
結論: 雑費と迷いやすいのは、消耗品費、支払手数料、雑損失の3つです。物を買ったのか、サービスを受けたのか、営業の費用か営業外の損失かで分けます。
消耗品費と支払手数料
| 科目 | 主な内容 | 雑費との分かれ目 |
|---|---|---|
| 消耗品費 | 文房具、少額の備品 | 物を買ったなら消耗品費 |
| 支払手数料 | 振込手数料、専門家への報酬、サービスの利用料 | サービスを受けて払った対価なら支払手数料 |
| 雑費 | ほかのどれにも当てはまらない少額の費用 | 該当なしのときだけ |
消耗品費に入れる備品は、取得価額が10万円未満のものが基本です。中小企業者等は、令和8年4月1日以後に取得した資産から、40万円未満(合計は年300万円まで)の特例を使えます(国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」)。
雑損失と雑支出
雑損失は、本業とは別に生じた臨時の損失で、ほかの科目に当てはまらないものを入れます。損益計算書では営業外費用に表示する会社が多く、営業利益には含まれません。雑支出という名前の科目が使われることもあります。
名前が似ている言葉
- 雑損控除:個人の所得税の所得控除です。国税庁のタックスアンサーNo.1110によると、災害、盗難、横領による損害が対象で、棚卸資産や事業用固定資産は対象外です
- 諸経費:見積書や請求書の言葉で、勘定科目ではありません。帳簿には中身を見て分けて入れます
- 生活雑費・万雑費:家計簿や学校の費用の区分で、会計の科目ではありません
雑費の上限はいくら?
結論: 雑費の上限を定めた法令や通達は、国税庁の公表資料に示されていません。上限がない分、大きくなるほど決算書から中身が読めなくなるため、毎年同じ物差しで見直します。
毎年同じ物差しで見る
見直しの物差しは、自社で決めて運用します。前の年と比べて雑費が増えていないか、販売費及び一般管理費に占める割合が動いていないかを、決算のたびに同じ見方で確かめます。物差しを超えたら、先に示した確認の順番で内訳を開き、繰り返し出ている支出を専用の科目へ移します。
雑費の消費税の区分は?
結論: 雑費は、科目ごとに税区分を決められません。同じ雑費の中に課税、非課税、不課税の取引が混ざるため、1件ずつ判定します。
雑費に混ざる区分
| 雑費に入れやすい支出 | 消費税の区分 | 分かれ目 |
|---|---|---|
| クリーニング代・ごみ処理費 | 課税 | 民間の事業者が提供するサービスの対価 |
| 国や地方公共団体の証明書の発行手数料 | 非課税 | 法令に基づいて行う一定の事務に係る手数料 |
国税庁のタックスアンサーNo.6201は、非課税となる取引の1つに、国や地方公共団体などが法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料を挙げています。一定の事務の例は、登記、登録、許可、検査、証明、公文書の交付などです。
インボイスの少額特例
雑費は少額の支出が多く、少額特例が関わります。税込1万円未満の課税仕入れは、インボイスがなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。対象は、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者で、令和11年9月30日までの課税仕入れです。
1万円未満かどうかは、1回の取引で判定します。月まとめの請求書のように複数の取引をまとめた単位では判定しません。
よくある質問
雑費に上限はありますか?
雑費と消耗品費はどう違いますか?
雑費と雑損失の違いは何ですか?
個人事業主は、確定申告で雑費に何を入れますか?
雑費が多いと税務調査で見られますか?
まとめ:該当なしのときだけ使おう
- 雑費は、既存の科目に当てはまらず、少額で、毎月続かない費用を入れる科目
- 既存の科目に当てはまるもの、交際費や寄附金、生活費、中身の分からないものは入れない
- 上限を定めた法令はなく、前の年からの増減などの物差しを自社で決めて、動いたら内訳を開く
- 雑費の消費税の区分は1件ずつ判定する。課税、非課税、不課税が混ざる
- 雑損失は営業外の損失で、雑費から付け替えると営業利益が変わる
雑費の内訳が膨らんでいる方、交際費や税区分の拾い漏れが心配な方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の決算書と雑費の総勘定元帳を確認し、勘定科目の振り替えと税務上の扱いを整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」
- 国税庁 タックスアンサー No.1110「雑損控除」
- 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」
- 国税庁 所得税基本通達45-2(家事関連費)
- 国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」
- 国税庁 インボイスQ&A 問112「少額特例における1万円未満の判定単位」
- 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」





