送料の勘定科目|荷造運賃と仕入諸掛の違い
「同じ宅配便なのに、売るときと仕入れるときで科目を変えるものなんですか」。「通販の送料を売上に入れるのか、預り金にするのかで毎回止まります」――送料の処理は、件数が多いわりに判断が分かれる論点です。
結論からお伝えすると、送料の勘定科目は何のために払ったかで決まります。商品を発送するために払ったなら荷造運賃、仕入れるために払ったなら仕入の取得価額に含める、資産を買うために払ったなら固定資産の取得価額に含める。同じ運送会社への支払いでも、目的が違えば行き先が変わります。
税理士法人Light UPでは、送料は科目より計上先を先に決めるのが実務だと考えています。費用として落とすのか、資産の取得価額に入れるのか。ここを外すと、期末在庫や減価償却の金額まで変わってしまうためです。
この記事では、売る側・買う側それぞれの処理と、顧客から受け取る送料の扱い、消費税とインボイスの論点までを、実際に通販や卸売業の記帳を代行している立場から整理します。
送料の科目は「何のために払ったか」で決まる
結論: 送料の勘定科目は、支払先や運送手段ではなく、その運送が何のためのものかで決まります。売るための送料は費用、買うための送料は取得価額。この2つを分けることが出発点です。
目的別の対応表と、支払先で分けても意味がないこと
送料は、支払先で分けても意味がありません。何のために払ったのかで科目が決まります。仕入なのか、販売なのか、資産の購入なのか。まず目的ごとの対応を見ます。
| 送料を払った場面 | 処理 | 損益への出方 |
|---|---|---|
| 商品を顧客へ発送した | 荷造運賃(販売費及び一般管理費) | 支払った期の費用 |
| 商品を仕入れた(引取運賃) | 棚卸資産の取得価額に含める | 売れた期の売上原価 |
| 機械・備品を購入した | 減価償却資産の取得価額に含める | 耐用年数にわたる減価償却費 |
| 消耗品を購入した | 取得価額に含めて金額判定 | 判定の結果に応じて費用か資産 |
| 書類・請求書を郵送した | 通信費 | 支払った期の費用 |
| 販売所間で商品を移管した | 原則は取得価額。3%以内なら費用にできる | 選択した処理による |
「宅配便は荷造運賃、郵便は通信費」と決めている会社がありますが、これは実態と合いません。同じヤマト便でも、商品を発送すれば荷造運賃、機械を運び込めば固定資産の取得価額です。
大切なのは、運送の目的で分けることです。
費用になるか資産になるか。科目名は会社ごとに決めてよい
売るための送料はその期の費用になります。買うための送料は、買った物と一緒に資産になります。仕入れた商品が期末に残っていれば、その分の送料も棚卸資産として残る、という関係です。
荷造運賃、発送費、支払運賃、荷造発送費。どれを使っても構いません。法令で科目名が指定されているわけではないためです。
ただし一度決めたら変えないこと。期ごとに科目名が変わると、前年比較ができなくなります。
商品を発送したときは荷造運賃
結論: 顧客へ商品を発送するために支払った運賃・梱包資材費は、荷造運賃として販売費及び一般管理費に計上します。売上に連動して増減する費用なので、変動費として扱うのが基本です。
荷造運賃に含めるものと、通信費と分ける基準
宅配便の運賃、チャーター便の代金、ダンボール・緩衝材・ガムテープなどの梱包資材、送り状の代金。これらは商品を届けるための費用として、まとめて荷造運賃に入れます。
梱包資材を消耗品費に入れている会社もありますが、発送量と連動して動く費用なので、荷造運賃にまとめたほうが分析しやすくなります。
書類・請求書・案内状の郵送は通信費です。商品の発送は荷造運賃。中身が売り物かどうかで分けると迷いません。
サンプル品の送付は判断が分かれます。販売促進の性質が強ければ広告宣伝費、通常の発送業務の一部として扱うなら荷造運賃。どちらでも構いませんが、社内で決めておく必要があります。
代引き手数料は荷造運賃に入れない。計上する時期
同じ運送会社への支払いでも、代金引換の手数料は運送の対価ではなく決済の対価です。支払手数料として分けて処理します。
運送会社からの請求書は、運賃と代引き手数料が1枚にまとまっていることが多いものです。明細を見ずに全額を荷造運賃に入れている会社は少なくありません。 決済にかかる費用がいくらかを把握するためにも、分けておく意味があります。
運賃は運送の役務が終わった時点で費用になります。月末締めで翌月請求という運送会社が多いため、決算月の分は未払計上が必要です。
仕入れたときの送料は取得価額に含める
結論: 商品を仕入れる際に負担した引取運賃は、棚卸資産の取得価額に含めます。法人税法施行令32条が、購入代価に加算すべき費用として引取運賃を明示しているためです。
条文が定めていることと、仕入諸掛という呼び方
e-Gov 法令検索で法人税法施行令32条1項1号を引くと、購入した棚卸資産の取得価額について「当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税…その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)」と定められています。
引取運賃は「加算した金額」に含まれる、と条文が名指ししている形です。ここは選択の余地がありません。
引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料などをまとめて仕入諸掛と呼びます。会計ソフトによっては仕入諸掛という科目が用意されており、期末に仕入高へ振り替える運用になっているものもあります。
小規模な会社では、仕入時に仕入高へ直接含めてしまう処理が一般的です。
3%以内なら外せる、は誤解。期末在庫がなければ影響は小さい
「付随費用が3%以内なら費用にできる」という説明を見かけますが、これは範囲を取り違えています。
法人税基本通達5-1-1が3%以内であれば取得価額に算入しないことができるとしているのは、①買入事務・検収・整理・選別・手入れ等に要した費用 ②販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃・荷造費 ③特別の時期に販売するため長期にわたって保管するために要した費用――の3つです。
仕入時の引取運賃はこの3つに含まれません。 金額が小さくても取得価額に含めるのが原則になります。
実務上、仕入れた商品がその期にすべて売れていれば、送料を仕入高に入れても費用に落ちるので結果は変わりません。差が出るのは期末に在庫が残る場合です。
在庫を持たない業種であれば、この論点はそれほど重くありません。逆に在庫が売上の数か月分ある会社では、送料の扱いが利益に影響します。
固定資産を買ったときの送料
結論: 機械や備品を購入した際の運賃・据付費は、その資産の取得価額に含めます。法人税法施行令54条1項1号が、減価償却資産についても引取運賃を購入代価に加算すると定めています。
条文の書き方は棚卸資産と同じ。10万円・20万円の判定に影響する
同施行令54条1項1号イは、購入した減価償却資産の取得価額を「当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税…その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)」と定めています。棚卸資産の条文とほぼ同じ書き方です。
さらに同号ロで「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」も加算するとされているため、据付費や試運転費用も取得価額に入ります。
ここが実務でいちばん影響する場面です。本体価格98,000円のパソコンに送料3,000円がかかれば、取得価額は101,000円。10万円未満に収まらず、消耗品費で落とせません。
送料を別の科目に切り離してしまうと、判定を誤ることになります。
引き取りに行った場合のガソリン代
自社の車で引き取りに行った場合、そのガソリン代を取得価額に含めるかという論点があります。厳密には購入のために要した費用ですが、金額を特定しにくいため、実務では車両費として処理することが多いです。
自社で運んだ場合の費用は、取得価額に含めないのが通常です。外部に払った運送料とは扱いが分かれます。判断に迷う場合は、金額の大きさで決めても差し支えありません。
顧客から受け取る送料は原則として売上高になる
結論: 顧客から受け取る送料は、原則として売上高に含めます。ただし、配送料を対価の額と明確に区分して収受し、預り金または仮受金等として処理している場合は、対価の額に含めないことができます。
通達が認めている扱いと、実務では売上に含めることが多いこと
消費税法基本通達10-1-16は「事業者が、課税資産の譲渡等に係る相手先から、他の者に委託する配送等に係る料金を課税資産の譲渡の対価の額と明確に区分して収受し、当該料金を預り金又は仮受金等として処理している場合の、当該料金は、当該事業者における課税資産の譲渡等の対価の額に含めないものとして差し支えない」と定めています。
条件は2つです。明確に区分して収受していることと、預り金または仮受金として処理していること。どちらか一方では足りません。
通販サイトの多くは、送料を含めた合計額を売上として計上しています。区分と預り金処理の両方を満たす運用は手間がかかるためです。
売上に含める場合、支払った運賃は荷造運賃として費用に立ちます。売上と費用の両方が増える形になり、利益への影響はありません。
送料無料の扱い
送料を顧客に請求せず自社で負担する場合は、単純に荷造運賃が増えるだけです。売上には何も立ちません。
送料無料は値引きと同じ性質を持ちます。限界利益を直接削るため、1件あたりの利益を計算してから決める話です。
値引きとして処理するのか、荷造運賃として費用に立てるのか。粗利の見え方が変わります。どちらでも税額は変わりません。
消費税とインボイスの扱い
結論: 国内の運送は消費税の課税取引で、税率は10%です。国際輸送は輸出免税の対象になります。郵便については、切手を対価とする一定の郵便サービスにインボイスの特例があります。
| 送料の種類 | 消費税の扱い | 仕入税額控除の証憑 |
|---|---|---|
| 国内の宅配便・路線便・チャーター便 | 課税10% | 適格請求書または適格簡易請求書 |
| 国際輸送(輸出入) | 輸出免税 | 輸出取引の証明書類 |
| 郵便切手を貼ってポストに投函 | 課税10% | 一定の記載をした帳簿のみで可 |
| 郵便局の窓口で現金払い | 課税10% | 領収書などの適格請求書等が必要 |
| 軽減税率対象の食品と一体で収受する送料 | 8% | 区分記載した請求書等 |
国内の運送は課税10%、国際輸送は輸出免税
宅配便も路線便もチャーター便も、国内の運送であれば課税仕入れです。軽減税率の対象にはなりません。食品を運んでも、運送という役務の提供に対する対価なので10%です。
国内と国外では、税率そのものが変わります。
国内から国外、または国外から国内への輸送は輸出免税の対象になります。輸出取引の証明書類の保存が要件です。
郵便切手のインボイス特例と、宅配便の領収書
郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、適格請求書の交付義務が免除されています。買手側は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます。
注意したいのはポストへの投函に限られる点です。郵便局の窓口で差し出す場合や、料金を現金で支払う場合は、この特例の対象になりません。
コンビニや営業所で発行される受領証は、記載事項が適格簡易請求書の要件を満たしていれば仕入税額控除に使えます。登録番号の記載があるかを一度確認しておくと安心です。
送料を区分するかで税率が変わる場面
軽減税率の対象食品を販売する場合、送料の請求のしかたで税率が分かれます。商品代金と送料を一体の対価として受け取っていれば全体が8%、送料を別途区分して収受していればその部分は10%です。
請求書の書式を決める段階で、どちらの扱いにするかを固めておく必要があります。後から変えると、過去の請求書と整合しなくなります。
科目を決めるときの実務ルール
結論: 送料の処理は、判断の分かれ目を先に決めて文書に残すことで安定します。決めるべきは、科目名・売上に含めるかどうか・仕入諸掛の処理方法の3つです。
担当者ごとに判断が違うと、月ごとに数字がぶれます。荷造運賃という科目名を使うのか発送費にするのか、まずここを固定します。
荷造運賃のなかに、宅配便・チャーター便・梱包資材を補助科目で分けておくと、コストの分析ができます。運送会社を切り替えたときの効果も見えます。
処理方法を期の途中で変えると、前年同月比が意味を持たなくなります。変えるなら期首からにします。
業種によって重みが違う
結論: 送料が損益に与える影響は業種で大きく異なります。通販では売上比で数%から10%を超えることもあり、値決めに直結します。
通販・ECは、売上比で見ると送料は最も重い費用のひとつです。送料無料のラインをいくらに置くかで、粗利が大きく動きます。
卸売業は、まとめて出荷するため1件あたりの送料負担は軽くなります。ただし取引先ごとに送料負担の条件が違うことが多く、契約内容の把握が必要です。
製造業では、原材料の引取運賃は取得価額に含まれ、製造原価を構成します。製品の出荷運賃は販売費です。同じ運賃でも入りと出で行き先が違う点は、原価計算の精度に影響します。
サービス業は、送料が発生する場面自体が限られます。書類の郵送が中心であれば通信費でまとめて構いません。
間違えやすい5つの場面
結論: 送料の処理でよく起きる誤りは、費用と取得価額の混同、そして受取送料の扱いです。実務で多い5つを挙げます。
仕入の送料を荷造運賃に入れている/資産購入の送料を分けてしまう
最も多い誤りです。仕入に伴う引取運賃は取得価額に含めるものなので、荷造運賃として費用に落とすと期末在庫が過少になります。
取得価額に含めるかどうかは、仕入でも資産でも同じ考え方です。分けてしまう誤りは、どちらでも起きます。
10万円の判定に影響します。本体価格だけで判定して消耗品費に落とすと、資産計上すべきものを費用にしてしまうことになります。
受取送料を売上から除いている/期末の運賃を未払計上していない
区分収受と預り金処理の両方を満たしていなければ、売上高に含めます。片方だけで除外すると、課税売上高が過少になります。
受け取る側と、期をまたぐ側。どちらも計上のずれが起きます。金額が小さいぶん、放置されやすい部分です。
決算月の運賃は翌月請求です。未払計上しないと、その月の売上に対応する費用が翌期にずれます。
送料無料を値引きとして見ていない
会計上は荷造運賃ですが、経営判断としては値引きです。1件あたりの限界利益から差し引いて考える必要があります。
実際には送料を自社で負担しています。売上から引くのか費用に立てるのかを決めておかないと、粗利の水準が期によって動きます。通販の会社では、この扱いが利益率の見え方を大きく変えます。最初に決めて、変えないことです。
事例:送料の科目を分けて粗利が見えるようになった通販の会社
「粗利率が落ちているのは分かるのですが、原因がどこにあるのか分からなくて」。年商1億円ほどの食品通販の会社からのご相談でした。
帳簿を見ると、仕入に伴う引取運賃も、顧客への発送運賃も、すべて荷造運賃に入っていました。さらに顧客から受け取った送料は売上に含まれています。この状態では、送料が利益をどれだけ削っているかが読めません。
このときに行ったのは、①引取運賃を仕入高へ移す ②荷造運賃に補助科目を立てて発送運賃と梱包資材を分ける ③受取送料を売上高の内訳として集計する、という3つでした。
分けてみると、発送運賃が売上の8.2%を占めていて、受取送料でカバーできているのは6割ほどでした。差額が粗利を削っていたわけです。その後、送料無料のラインを引き上げ、地域別の運賃契約を見直しています。数字が見えたことで、打つ手が具体的になったのがこの件の成果でした。
よくある質問
荷造運賃と発送費のどちらの科目名を使えばよいですか?
仕入の送料を仕入高に入れるのと、荷造運賃にするのでは何が違いますか?
通販の送料は売上に入れるべきですか?
切手を買ったときはどの科目ですか?
梱包資材は消耗品費ではないのですか?
送料込みで販売した場合、消費税の税率はどうなりますか?
まとめ:科目より先に、費用か取得価額かを決める
- 送料の科目は支払先ではなく、何のための運送かで決まる
- 売るための送料は荷造運賃、仕入れるための引取運賃は棚卸資産の取得価額に含める
- 資産購入の送料は取得価額に含める。10万円などの金額判定にも影響する
- 顧客から受け取る送料は原則として売上高。区分収受と預り金処理の両方を満たせば除外できる
- 3%以内で取得価額から外せるのは、買入事務・移管運賃・長期保管費用の3つで、引取運賃は含まれない
優先順位をつけるなら、まず仕入の送料と発送の送料を分けることです。科目名の統一より先にここを直したほうが、決算の数字が実態に近づきます。
そのうえで、荷造運賃に補助科目を立てる。送料が売上の何%かが見えるようになると、送料無料のラインや運賃契約の見直しが具体的な議論になります。
税理士法人Light UPでは、記帳から決算・申告まで一貫してお引き受けしています。勘定科目の設計や、送料が粗利に与える影響の可視化も含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(第32条・第54条)
- 国税庁「法人税基本通達」5-1-1(購入した棚卸資産の取得価額)
- 国税庁「消費税法基本通達」10-1-16(別途収受する配送料等)
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。個別の取引の処理については税理士にご確認ください。




