未払金と未払費用の違いとは?決算の仕訳と使い分けを解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
未払金と未払費用の違いは、決まった契約でサービスを受け続けている中の未払いかどうかです。家賃や給与のように、契約が続いていて受けた分がまだ払われていないものが未払費用、買った物や終わった工事のように取引が済んでいて代金だけが残っているものが未払金です。どちらも貸借対照表の流動負債(1年以内に払う負債)に入り、費用になる額は同じなので、取り違えても損益は変わりません。この記事では、見分け方、間違えやすい点、仕訳、計算、計上できる範囲、似た科目との違いを、企業会計原則注解と国税庁の公表資料(2026年10月時点)で整理します。
未払金と未払費用はどう見分ける?
結論: 継続して受けるサービスの契約のうち、すでに受けた分の未払いが未払費用です。物の購入や単発の工事のように、取引が終わって代金だけ残っているものは未払金です。
企業会計原則注解の定義
未払費用の定義は、企業会計原則注解の注5にあります。一定の契約に従って継続してサービス(会計の言葉で役務)を受けている場合に、すでに受けた分の対価をまだ払い終えていないものです。時間がたつにつれて当期の費用になっているので、当期の損益計算に入れ、負債に載せます。注解は、これをサービスの契約以外による未払金と区別するよう求めています。
具体例の分け方
迷ったときは、決算日の後も同じ契約が続く前提かどうかを見ます。
| 取引 | 科目 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月分の事務所家賃を4月に払う契約 | 未払費用 | 賃貸借契約が続き、期間に応じて発生する |
| 借入金の利息のうち決算日までの分 | 未払費用 | 借入契約が続き、日数に応じて発生する |
| 20日締めの給与のうち3月21日から31日までの分 | 未払費用 | 雇用契約が続き、働いた分に応じて発生する |
| 3月に納品された備品の代金 | 未払金 | 引渡しが済み、支払いだけが残っている |
| その都度発注した外注工事の代金 | 未払金 | 工事が終わり、取引が区切られている |
| クレジットカードで払った広告費の利用分 | 未払金 | 取引は終わり、カード会社への支払いが残っている |
| 納税通知書が届いた固定資産税の未納分 | 未払金 | サービスの対価ではなく、金額が決まった税金である |
固定資産税の計上時期は、別の記事で整理しています。
同じ相手でも契約の形で変わる
同じ会社への外注でも、毎月定額で作業を頼む契約なら、決算日の後も続く前提なので未払費用に近づきます。1回ごとに見積もりを取って発注するなら、作業が終われば関係が区切られるので未払金です。
実務では、請求書が届いて金額が決まった時点で、未払費用を未払金に振り替える会社もあります。損益は変わらないため、ルールを決めて毎期同じ運用を続けます。
未払金・未払費用の処理でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、締め日が決算日とずれている分の計上漏れと、社会保険料の日割り計算の2つです。間違えると利益と納める税金がずれます。
決算の直前に、締め日が決算日とずれている給与の未払分を入れていなかったと気づき、相談に来られる方が少なくありません。科目の選び方より、計上の漏れのほうが利益への影響は大きくなります。
締め日が決算日とずれている分の漏れ
20日締め翌月10日払いの給与で3月決算なら、3月21日から31日までの11日分は、働いてもらったのに3月中に払っていない費用です。この分を未払費用に入れないと、その期の人件費が少なく出て、利益が多く出ます。利益が多く出れば、納める法人税も多くなります。
水道光熱費や通信費、借入金の利息、保守料にも同じことが起きます。月次の仕訳は支払日で入れていることが多いので、決算のときに締め日と決算日を並べて拾います。
社会保険料を日割りで計上する
会社が負担する健康保険料と厚生年金保険料は、月の単位で決まります。給与の11日分に合わせた日割りの未払いは合いません。損金に算入できる時期は、保険料の計算の対象になった月の末日の属する事業年度です(法人税基本通達9-3-2)。
3月決算なら、3月分は4月末に納めても、3月末日を含む事業年度の損金に算入できます。決算日が月末でない会社は、決算日を含む月の分を、その事業年度に入れられません。国税庁の質疑応答事例は、月末が来ていない月の分を、前月の納付実績から見積もっても損金に算入できないとしています。
税理士が確認する順番
税理士は、決算の未払いを次の順で確かめます。
決算月の請求書と、給与の締め日・支払日が分かる資料をお持ちいただければ、未払費用の計上漏れと、社会保険料の会社負担分が入っているかを一緒に確かめます。
未払金と未払費用の仕訳はどうする?
結論: 計上するときは、借方に費用、貸方に未払金か未払費用を入れます。払ったときに借方の未払金を消し、貸方を預金にします。未払費用は翌期首に費用へ戻す方法が一般的です。
未払金の仕訳
備品や広告費のように、取引が済んで代金が残っているときの仕訳です(税抜経理の例で、説明用の金額です)。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 備品を買い、代金を後払いにした | 消耗品費 85,000 | 未払金 85,000 |
| 翌月に代金を払った | 未払金 85,000 | 普通預金 85,000 |
| カードで広告費を払った | 広告宣伝費 100,000 仮払消費税等 10,000 |
未払金 110,000 |
| カード代金が口座から引き落とされた | 未払金 110,000 | 普通預金 110,000 |
払うときは、計上済みの費用をもう一度入れず、未払金を消します。
未払費用の仕訳
3月決算の会社が、3月分の事務所家賃を4月に払う契約のときの仕訳です(消費税は省略した、説明用の金額です)。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 3月の決算で、3月分の家賃を計上した | 地代家賃 200,000 | 未払費用 200,000 |
| 翌期首(4月1日)に戻した | 未払費用 200,000 | 地代家賃 200,000 |
| 4月に3月分の家賃を払った | 地代家賃 200,000 | 普通預金 200,000 |
翌期首に戻す方法と、払うときに消す方法
未払費用を計上した翌期に、払ったときの仕訳で費用をもう一度入れると、同じ費用が二重に入ります。これを防ぐ消し方は2つあります。1つは、翌期首に計上時の仕訳を逆にして戻し、払ったときは全額を費用として入れる方法です。もう1つは、戻さずに、払ったときに借方へ未払費用を入れて消す方法です。
どちらでも構いませんが、毎期同じ方法を続けます。戻す方法は、払うときの仕訳が普段の仕訳と同じ形になるので、入れ間違いが少なくなります。
未払費用の金額はどう計算する?
結論: 契約の対象期間のうち、決算日までに過ぎた分を日数か月数で按分して出します。給与は締め日の翌日から決算日まで、利息は前回の利払日の翌日から決算日までが対象です。
借入金の利息の計算
給与や利息は日割り、家賃は月割りが一般的です。利息は、前回の利払日の翌日から決算日までの日数で出します。借入金1,000万円、年利1.2%、前回の利払日が2月末、決算日が3月31日なら、3月分は次のとおりです(説明用の金額です)。
10,000,000円 × 1.2% × 31日 ÷ 365日 = 約10,191円
年365日で割るか360日で割るかは契約書の記載に従います。360日なら約10,333円です。
決算で計上できる未払いはどこまで?
結論: 決算日までに債務が確定している分だけ計上できます。契約を結んだだけで、サービスをまだ受けていない分は、未払金でも未払費用でも計上できません。
債務確定の3つの条件
法人税では、販売費や一般管理費は、事業年度の終了の日までに債務が確定したものだけを損金に算入できます(法人税法22条3項2号)。債務が確定したといえる条件は、法人税基本通達2-2-12が次の3つで示しています。
- 事業年度終了の日までに、その費用に係る債務が成立している
- 事業年度終了の日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
- 事業年度終了の日までに、金額を合理的に算定できる
未払金も未払費用も、この3つを満たしていることが前提です。国税庁のタックスアンサーNo.5387は、修繕を発注し、事業年度の末までに業者が完了して金額が客観的に分かる状態なら、未払金に計上できるとしています。
契約しただけの分は計上できない
3月に年間の保守契約を結んでも、サービスが4月から始まるなら、3月末には2番目の条件を満たしません。3月発注で4月完了の工事も同じです。
似た科目とはどう違う?
結論: 買掛金は本業の取引、前払費用は先に払った分、未払法人税等は税金の未払いです。未払金と未払費用は、それ以外の未払いを、契約が続くかどうかで分けます。
科目ごとの違いの早見表
| 科目 | 入れるもの | 未払金・未払費用との分かれ目 |
|---|---|---|
| 買掛金 | 商品の仕入れ、材料の購入、製造の外注など、本業の取引の未払い | 本業の取引かどうか。備品や広告費は未払金 |
| 前払費用 | 先に払ったサービスの対価のうち、決算日より後の分 | 後払いなら未払費用、先払いなら前払費用 |
| 未払法人税等 | 法人税・住民税・事業税の未払い | 税金は専用の科目で持つ |
| 未収収益・未収入金 | 受け取る側の未収。未払費用の反対が未収収益、未払金の反対が未収入金 | 払う側か受け取る側か |
買掛金との違い
買掛金は、商品の仕入れや材料の購入、製造の外注など、本業に直結する取引の未払いです。小売業なら、商品の仕入れが買掛金、店舗の備品の購入が未払金です。広告代理店が受ける制作の外注費は買掛金になりますが、一般の会社が出した広告費は未払金です。
どちらを使うかは、その会社の本業が何かで決まります。銀行は買掛金の残高から仕入れの規模を読むので、本業以外の未払いを混ぜないようにします。法人税・住民税・事業税の未納分は、未払金ではなく未払法人税等に入れます。
前払費用とは払うタイミングが逆
家賃のように、同じ契約でも、払う時期で科目が変わります。後払いなら決算日までに過ぎた分が未払費用、先払いなら決算日より後の分が前払費用です。
先払いには特例があります。支払った日から1年以内にサービスを受けるものは、毎期継続して払った期の損金に算入するなら、払った期の損金に算入できます(法人税基本通達2-2-14)。
科目を取り違えると何が変わる?
結論: 取り違えても、利益の額と税額は変わりません。変わるのは、貸借対照表の科目の並びと、前の期との比べ方です。計上漏れは、利益そのものがずれます。
変わらないものと変わるもの
どちらの科目でも、費用として計上する額は同じです。当期の利益、法人税・住民税・事業税の計算、資金の動きは変わりません。厳密に分けていない会社があるのは、このためです。
変わるのは貸借対照表の見え方です。金融機関に決算書を出すときや外部の監査を受けるときは、区分を整えておくと説明がしやすくなります。前期と今期で使い方が違うと、実態は同じでも残高が増減して見えるので、運用を変えたら理由を残します。
会計ソフトの自動仕訳が科目を決めている
会計ソフトの自動仕訳のルールや過去の設定で、同じ取引先の請求がいつも未払金で起票されることがあります。担当者の判断ではなく、設定がそう動いている状態です。
見直すなら期首にします。期中に変えると、同じ取引が期の前半と後半で別の科目に入ります。
よくある質問
未払金と未払費用は、どちらを使えばよいですか?
給与の未払いは、未払金と未払費用のどちらですか?
未払金を消す仕訳はどうしますか?
未払金の反対は何ですか?
まとめ:契約が続くかで未払いを分けよう
- 未払費用は、継続する契約で受けた分の未払い。未払金は、取引が済んだ代金の未払い
- どちらも流動負債で、費用の額は同じ。取り違えても損益と税額は変わらない
- 計上できるのは、決算日までに債務が確定した分だけ。契約しただけの分は入れられない
- 給与は締め日の翌日から決算日まで、利息は前回の利払日の翌日から決算日までを計算する。社会保険料は月の単位で見る
- 買掛金は本業の取引、税金は未払法人税等など専用の科目
決算の未払いの漏れが心配な方、前期と科目の使い方が揃っているか確かめたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。契約の一覧、決算月の請求書、給与の締め日と前期の仕訳を確認し、未払いの計上漏れと科目の使い方を整理します。
出典
- 企業会計原則注解(注1、注5)
- 国税庁 法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)
- 国税庁 法人税基本通達2-2-14(短期前払費用)
- 国税庁 法人税基本通達9-3-2(社会保険料の損金算入の時期)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」
- 国税庁 質疑応答事例「社会保険料の損金算入時期について」
- e-Gov 法令検索「法人税法」(第22条第3項)





