固定資産税の勘定科目|損金にできる時期
「納税通知書が4期分まとめて届いたのですが、全額を今期の経費にしてよいのでしょうか」。「1期分しか払っていない年度の決算で、残りをどう扱えばよいですか」――決算の時期に、こうしたご質問をいただきます。
固定資産税の勘定科目は租税公課です。迷いやすいのは科目ではなく、どの事業年度の損金にするかのほうで、ここには選べる方法が3つあります。
税理士法人Light UPでは、3つのうちどれを選ぶかより一度選んだ方法を毎年続けることのほうが重要だと考えています。年によって変えると、期間の比較ができなくなります。
この記事では、科目の考え方、損金にできる時期の3つの方法、賦課決定の時期、未払計上の仕訳、個人事業主の場合、不動産を売買したときの精算金、償却資産税との関係までを整理します。
勘定科目は租税公課
結論: 固定資産税は租税公課で処理します。販売費及び一般管理費に含まれ、法人税や住民税とは扱いが分かれます。
販売費及び一般管理費に入る
租税公課は、税金と公的な負担金をまとめて処理する科目です。固定資産税のほか、都市計画税、自動車税、印紙税、事業所税などがここに入ります。
同じ税金でも、法人税・法人住民税・法人事業税の一部は租税公課にしません。これらは損金にならないため、法人税等という別の科目で処理します。ここを混ぜると、税務調整の段階で拾い直すことになります。
償却資産税も同じ科目
機械や器具備品などにかかる償却資産税も、固定資産税の一種です。勘定科目は同じく租税公課になります。
土地建物にかかる分と償却資産にかかる分で、科目を分ける必要はありません。分けたい場合は補助科目で持つほうが、試算表が見やすくなります。
同じ租税公課で処理します。区別したいなら補助科目で分けます。決算書の見え方は変わりません。
事業用と家事用が混ざる場合
自宅の一部を事務所として使っている場合、固定資産税のうち事業に対応する部分だけが経費になります。床面積などの合理的な基準で按分します。
按分の基準は毎年同じものを使います。年によって基準を変えると、説明が難しくなります。
自宅兼事務所の固定資産税は、面積の割合で按分します。按分の根拠は毎年同じものを使います。
損金にできる時期は3つから選べる
結論: 賦課決定のあった事業年度に全額を損金にする方法、納期の開始日の属する事業年度に納期ごとに損金にする方法、実際に納付した事業年度に損金にする方法の3つがあります。
| 方法 | いつ損金にするか | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 賦課決定日で全額 | 納税通知書を受け取った事業年度に、年税額の全額を損金にする | 処理が単純。期の途中で通知が届く事業年度に費用が集中する |
| 納期の開始日ごと | 各納期の開始日が属する事業年度に、その期分を損金にする | 期間に対応して費用が分かれる。決算期をまたぐ年度で差が小さい |
| 実際に納付した日 | 納付した事業年度に、納付した金額を損金にする | 現金の動きと一致する。未払計上をしないため処理が軽い |
この取扱いは法人税基本通達9-5-1に定められており、いずれの方法を選ぶかは事業者の判断に委ねられています。ただし選んだ方法は継続して適用することが前提になります。
賦課決定日で全額を計上する。納期の開始日ごとに計上する
最も単純な方法です。納税通知書が届いた事業年度に、年税額の全額を租税公課とします。
未納分は未払金として計上します。この方法では、通知が届く4月から6月を含む事業年度に費用が集中します。3月決算の会社であれば、翌期に全額が入ることになります。
各納期の開始日が属する事業年度に、その期分を計上する方法です。年4回の納期があれば、4回に分けて損金にします。
決算期をまたぐ場合でも、費用が期間に応じて分かれます。月次で損益を見ている会社では、こちらのほうが実態に近く見えます。
実際に納付した日で計上する
現金の動きと一致させる方法です。未払計上をしないため、処理としては最も軽くなります。
小規模な事業で、金額もそれほど大きくない場合には、この方法を選んでいることが多くあります。ただし納付が遅れた期は損金の時期もずれるため、期をまたぐと差が出ます。
現金主義に近い形で、いちばん簡単な方法です。期をまたぐ納期がある年は、費用が翌期にずれます。
方法を変えたいときはどうするか
一度選んだ方法を変えられないわけではありません。ただし変える場合には、変えた事業年度の損金が一時的に増えるか減るかのどちらかになります。
たとえば納付した日で計上する方法から、賦課決定日で全額を計上する方法へ変えた場合には、変えた年度に未納分がまとめて損金に入ります。逆の向きに変えた場合には、その年度の損金が減ります。利益の出方に合わせて方法を選び直すと、意図的な調整と見られかねません。
変えるのであれば、事業の実態が変わったときにします。保有する不動産が増えて金額が大きくなった、月次の損益を見るようになった、といった理由であれば説明が付きます。
賦課決定はいつか
結論: 賦課期日は毎年1月1日で、この日の所有者が納税義務者になります。納税通知書は4月から6月ごろに届き、この到達をもって賦課決定があったものとして扱います。
賦課期日は1月1日
e-Gov 法令検索の地方税法359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」と定めています。
そして同法343条1項は「固定資産税は、固定資産の所有者……に課する」としています。つまり、1月1日時点で登記簿などに所有者として記載されている人が、その年度の1年分を負担するという仕組みです。年の途中で売却しても、納税義務者は変わりません。
なお税率については、同法350条1項が「固定資産税の標準税率は、百分の一・四とする」と定めています。標準税率であるため、自治体によってはこれと異なる税率を定めている場合があります。
通知が届く時期は自治体で違う。年度をまたぐ場合
納税通知書が届く時期は、おおむね4月から6月です。同じ月に届くとは限らず、自治体によって差があります。
3月決算や4月決算の会社では、通知が決算日の前に届くか後に届くかで処理が変わります。届いていない時点では債務が確定していないため、いずれの方法でも計上しません。
第4期の納期が翌年の2月ごろに設定されている自治体があります。3月決算の会社であれば、4期すべてが同じ事業年度に収まります。
一方、12月決算の会社では第4期が翌事業年度になります。納期の開始日で計上する方法を選んでいる場合、第4期分は翌期の損金になります。
未払計上の仕訳
結論: 賦課決定日で全額を計上する方法では、通知を受けた時点で年税額を租税公課とし、未納分を未払金に計上します。納付時は未払金を取り崩します。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 通知を受けて年税額を計上(全額計上する方法) | 租税公課 200,000 | 未払金 200,000 |
| 第1期分を納付 | 未払金 50,000 | 普通預金 50,000 |
| 納期の開始日ごとに計上する方法で第1期分 | 租税公課 50,000 | 未払金 50,000 |
| 納付した日で計上する方法(納付時のみ) | 租税公課 50,000 | 普通預金 50,000 |
| 口座振替で引き落とされた場合 | 未払金 50,000 | 普通預金 50,000 |
未払金と未払費用のどちらか。期をまたぐときの確認
固定資産税の未払分は、未払費用ではなく未払金で処理します。未払費用は継続的な役務の提供に対して使う科目であるためです。
金額が確定した債務であり、支払いの時期も決まっています。この性質から未払金が適しています。
決算のときに確認するのは2点です。納税通知書が届いているか、そのうち未納の期がいくつあるか。
通知が届いていない年度の分を先に計上することはできません。賦課決定がなければ債務が確定していないためです。ここを取り違えると、翌期の損金を前倒しで落としたことになります。
口座振替にしている場合
口座振替を利用していると、納期ごとに自動で引き落とされます。処理としては楽ですが、未払計上をしている場合には仕訳を間違えやすくなります。
未払計上済みの分が引き落とされたときは、租税公課ではなく未払金の取り崩しです。通帳の摘要だけを見て租税公課で起票すると、同じ税金を二重に費用にしてしまいます。期末に未払金の残高が合わなくなるので、そこで気づくことになります。
防ぐには、未払計上した金額と納期の一覧を残しておきます。引き落としのたびにその一覧と突き合わせれば、二重計上は起きません。
個人事業主の場合
結論: 個人事業主も租税公課として必要経費にします。損金算入時期の考え方は法人と同様ですが、事業用と家事用の按分が必要になる場面が多くあります。
必要経費になる時期と、家事按分の考え方
個人事業主の場合も、賦課決定のあった年に全額を必要経費にする方法と、納期の開始日ごとに必要経費にする方法があります。所得税基本通達37-6に定めがあります。
暦年で判定するため、通知が届く時期と納期が同じ年に収まることがほとんどです。法人ほど期またぎの問題は生じません。
自宅の一部を事務所として使っている場合、事業に使っている割合だけが必要経費になります。床面積で按分する方法が一般的です。
たとえば延べ床面積100平方メートルのうち20平方メートルを事務所として使っているなら、固定資産税の20%が必要経費です。按分の基準は記録に残し、毎年同じ基準を使います。
賃貸物件の場合
賃貸で事業を行っている場合、固定資産税は所有者である大家が負担します。事業者が支払うのは家賃であり、租税公課ではなく地代家賃です。
契約によっては、共益費とは別に固定資産税相当額を求められることがあります。この場合も税金として払っているのではなく賃料の一部であるため、地代家賃で処理します。
借りている側は固定資産税を直接は納めません。
不動産を売買したときの精算金
結論: 年の途中で不動産を売買したとき、買主から売主へ渡す固定資産税の精算金は、租税公課ではありません。買主側は取得価額に含め、売主側は譲渡収入として扱います。
買主が払う分は取得価額に入る
年の途中で不動産を買ったとき、引渡日以降の期間に対応する固定資産税を売主へ支払う慣行があります。これを精算金と呼びます。
この精算金は税金の支払いではありません。納税義務者は1月1日の所有者である売主のままで、買主は売主に対して代金の一部を支払っているという整理になります。したがって租税公課ではなく、土地建物の取得価額に含めます。建物分であれば、以後は減価償却を通じて費用になっていきます。
売主が受け取る分は収入になる
反対に、売主が受け取った精算金は譲渡収入に含めます。固定資産税が減ったわけではないためで、実質は買主から受け取る代金の一部です。
ここを租税公課のマイナスとして処理すると、譲渡の損益が正しく出ません。売買のときは契約書で精算金の有無と金額を確認しておきます。納税義務者は1月1日の所有者のままで変わらない、という前提を押さえておけば、どちらの側でも整理を誤りません。
償却資産税との関係
結論: 機械や器具備品にかかる固定資産税を償却資産税と呼びます。土地建物と違い、所有者が自分で申告する必要があります。
申告が要る点が違う。免税点がある
土地建物にかかる固定資産税は、自治体が把握しているため申告が不要です。一方、償却資産は所有者が申告しなければ把握されません。
申告の期限は1月31日です。前年中に取得した資産と、除却した資産を記載します。申告を怠ると、後から遡って課税されることがあります。
償却資産の課税標準額の合計が150万円未満であれば、固定資産税は課されません。これを免税点といいます。
この免税点は令和8年度の税制改正で引き上げられました。地方税法等の一部を改正する法律(令和8年3月31日法律第2号)により、令和9年度分以後の固定資産税では180万円未満となります。家屋の免税点も20万円から30万円に上がります。設備の入替えを検討している場合は、どちらの年度分にかかるかで判定が変わります。
ただし免税点未満であっても申告は必要です。申告しなければ、自治体は判定ができません。ここは誤解されやすい点です。
減価償却の計算とは別物
償却資産の評価額は、法人税や所得税の減価償却とは別の方法で計算されます。耐用年数は同じでも、計算の仕組みが違います。
そのため、帳簿上の簿価と償却資産税の評価額は一致しません。帳簿価額が1円になっていても、償却資産税の対象からは外れない点は押さえておきます。
税務上の償却方法と、償却資産税の評価は別に計算されます。
借りている物件の内装工事は誰が申告するか
賃借している事務所や店舗に内装工事をした場合、その資産を誰が申告するかで迷う場面があります。
原則としては、工事の費用を負担して資産として計上している側が申告します。賃借人が自分で内装を入れて資産計上しているなら、賃借人が償却資産として申告することになります。建物と一体になっているように見えても、費用を負担した側の資産です。
判断が分かれるのは、内装が建物本体と区分できない場合です。この場合は建物の所有者が固定資産税を負担している可能性があるため、二重に課税されていないかを確認します。工事の内容と契約の内容から判断することになるため、迷う場合は所在地の自治体か税理士に確認するのが確実でしょう。
事例:損金算入の方法を毎年変えていた会社
不動産を保有している従業員15名の会社からのご相談でした。「決算のたびに顧問税理士から確認されるのですが、どう答えるのが正しいのか分からずにいます」というお話です。
過去3期の処理を確認したところ、年度ごとに方法が変わっていました。利益が出た年度は全額を計上し、利益が薄い年度は納付済みの分だけを計上する。結果として、期ごとの租税公課の額が実態と関係なく動いていました。
金額としては年間で約180万円です。処理の方法によって、事業年度の損金が最大で3期分の約135万円ずれる計算になります。前期と当期を比べたときに、この差が損益の変動として見えてしまいます。
そこで、納期の開始日ごとに計上する方法へ統一しました。この会社は3月決算で、納期が4月・7月・12月・翌2月に設定されている自治体でした。4期すべてが同じ事業年度に収まるため、結果として年税額の全額が毎期の損金になります。
方法を固定したことで、決算時の確認事項が1つ減りました。担当の方からは「毎年迷っていたことが、決めておくだけで消えた」というお言葉をいただいています。
よくある質問
固定資産税の勘定科目は何になりますか?
納税通知書が届いた年度に全額を経費にしてよいのでしょうか?
決算日までに納付していない分はどう扱いますか?
年の途中で不動産を売却した場合、税金の負担はどうなりますか?
償却資産の申告をしていないとどうなりますか?
自宅の一部を事務所にしています。全額を経費にできますか?
まとめ:迷うのは科目ではなく時期
- 勘定科目は租税公課。償却資産税や都市計画税も同じ科目で処理する
- 損金にできる時期は3つから選べる(賦課決定日で全額/納期の開始日ごと/実際に納付した日)
- 選んだ方法は継続して適用する。年によって変えると期間の比較ができなくなる
- 賦課期日は1月1日。この日の所有者が1年分の納税義務を負う(地方税法359条・343条)
- 売買のときの精算金は租税公課ではない。買主は取得価額に含め、売主は譲渡収入に含める
- 償却資産は1月31日までに申告が必要。課税標準額150万円未満でも申告そのものは要る(令和9年度分以後は180万円未満)
決算のたびに迷うのであれば、方法を1つ決めて社内の手順に書いておくのが確実です。3つのうちどれを選んでも認められています。
決めておけば、決算時の確認事項が1つ減ります。金額の大きい会社ほど、期ごとの損益の見え方が安定します。
税理士法人Light UPでは、記帳から決算・申告まで一貫してお引き受けしています。処理の方法をどう固定するか、過去の処理をどう整理するかも含めて、無料相談で一緒に確認するところからお手伝いします。
出典
- e-Gov 法令検索「地方税法」(第343条、第349条の2、第350条、第359条、第383条、第351条)
- 総務省「令和8年度地方税制改正等について」(事務連絡・令和8年1月21日)/地方税法等の一部を改正する法律(令和8年3月31日法律第2号)
- 国税庁「法人税基本通達」9-5-1(租税の損金算入の時期)
- 国税庁「所得税基本通達」37-6(その年分の必要経費に算入する租税)
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。税率や納期は自治体によって異なる場合があるため、具体的な取扱いは所在地の市町村または税理士にご確認ください。




