減価償却費の計算方法をわかりやすく解説|定額法・定率法の計算例

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

減価償却費は、定額法なら取得価額(買った値段に据付費などを足した金額)に定額法の償却率を掛け、定率法なら取得価額から既償却額(前の期までに損金の額に算入した償却費の累計)を引いた残高に定率法の償却率を掛けて求めます。この記事では、算式と100万円の計算例、期の途中の月割り、償却方法の決まり方を、国税庁の公表資料(令和8年4月1日現在の法令等)と条文(2026年10月時点)に沿って整理します。

減価償却費の計算方法は?

結論: 計算方法は定額法と定率法の2つです。定額法は毎年同じ額、定率法は初めの年が大きく、年を追って小さくなります。

2つの算式の早見表

方法 1年分の算式 毎年の金額
定額法 取得価額×定額法の償却率 耐用年数の間、同じ額
定率法 (取得価額-既償却額)×定率法の償却率 初めが大きく、だんだん小さくなる。小さくなりすぎた年から算式が切り替わる

会計ソフトの数字が途中から増えるのは、この切り替えのためです。

計算に使う3つの数字

  • 取得価額:購入代価に、引取運賃・購入手数料など購入に要した費用と、据付費や試運転費など事業に使えるようにするために直接要した費用を足した金額です(法人税法施行令第54条)。
  • 耐用年数:資産が使える年数として国が決めた年数です。省令の別表に、資産の種類・構造・用途ごとに定められています。何年使うつもりかは関係ありません。
  • 償却率:耐用年数が決まれば別表で引けます。定額法は別表第八、定率法は平成24年4月1日以後の取得なら別表第十です。

計算が要らない少額の資産

取得価額が10万円未満の資産と、使用可能期間が1年未満の資産は、使い始めた事業年度に損金経理(帳簿に費用として計上すること)をすれば、全額を損金の額に算入できます(法人税法施行令第133条)。青色申告の中小企業者等は、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の資産に少額減価償却資産の特例を適用できます。従業員が常時400人を超える法人は対象外で、合計は年300万円までです。

減価償却の計算でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、耐用年数の選び方、取得した時期による率の違い、使い始めた日の3つです。どれも、毎年の費用がずれて利益と税金が変わります。

決算の直前に、固定資産台帳の年数が違っていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。掛ける数字を取り違えると、その資産の償却費が毎年ずれます。

耐用年数の選び方

同じ機械でも、設備の種類によって耐用年数が変わります。パソコンのように1台ずつ見れば分かる資産と違い、製造設備や店舗の内装は、どの設備に当たるかを決めるところから判断が要ります。

年数が長すぎれば毎年の費用が小さくなって利益が大きく見え、短すぎればその逆になります。どちらでも納める税金は本来の額からずれ、銀行に出す決算書の利益も実態と離れます。

取得した時期で変わる率

平成19年4月1日、平成24年4月1日、平成28年4月1日は、償却方法や率が変わる境目です。前任者の台帳をコピーして、新しい資産に古い率を入れたままの会社があります。同じ耐用年数でも率が違うため、ずれたまま毎年続きます。

使い始めた日の取り違え

償却の起点は、買った日や納品日ではなく、使い始めた日です。3月に納品されても、4月から使い始める設備の償却は4月からです。

中古資産の耐用年数

中古で買った資産は、使用可能期間を見積もることが難しいときに、簡便法で耐用年数を出せます。この算定ができるのは使い始めた事業年度だけで、後の事業年度では算定できません(国税庁タックスアンサーNo.5404)。

税理士が確認する順番

税理士は、次の順に確かめます。

償却費を確かめる順番
1

台帳の取得日と使い始めた日
納品日ではなく、使い始めた日になっているかを見る
2

耐用年数の根拠
別表のどの項目で引いたかを見る
3

償却方法の届出
届出書の控えがあるか、なければ法定の方法かを見る
4

取得時期ごとの率
平成24年4月1日の前後で、率が分かれているかを見る
5

申告書との照合
申告書の減価償却の明細(別表十六)と、決算書の減価償却費が合うかを見る

固定資産台帳と設備の請求書をご用意いただければ、耐用年数と償却率、使い始めた日を1件ずつ確かめます。

決算と申告はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

定額法の計算式は?

結論: 定額法の1年分の償却費は、取得価額に定額法の償却率を掛けた金額です。耐用年数の間、毎年同じ額になります。

取得価額×償却率で求める

国税庁のタックスアンサーNo.5410は、定額法の償却限度額(その年に損金の額に算入できる償却費の上限)を、取得価額×定額法の償却率としています。掛け算は1回だけです。

償却率は、耐用年数5年なら0.200、8年なら0.125、10年なら0.100です。

100万円・8年の計算例

取得価額100万円・耐用年数8年の資産は、償却率が0.125なので、1年分は1,000,000円×0.125で125,000円です。説明用の金額です。

1〜7年目は毎年125,000円で、7年目の期末の未償却残高は125,000円です。8年目は計算上125,000円ですが、全額を償却すると帳簿価額が0円になるため、124,999円にして1円を残します(同No.5410)。

定率法の計算式は?

結論: 定率法の1年分の償却費は、取得価額から既償却額を引いた残高に定率法の償却率を掛けた金額です。小さくなりすぎた年から算式が切り替わります。

2つの算式と切り替え

No.5410は、定率法の算式を2つ示しています。

  • 算式1: (取得価額-既償却額)×定率法の償却率。この金額を調整前償却額と呼び、通常はこれが償却限度額です。
  • 算式2: 調整前償却額が償却保証額に満たないときは、改定取得価額×改定償却率が償却限度額になります。

償却保証額は取得価額に保証率を掛けた金額、改定取得価額は調整前償却額が初めて償却保証額を下回った事業年度の期首の未償却残高です。算式2に変わると毎年同じ額になります。

定率法は計算上、残高がゼロになりません。耐用年数のうちに償却を終えるため、償却費が小さくなりすぎた年から、定額法に近い計算へ切り替わります。

償却率・改定償却率・保証率

平成24年4月1日以後に取得した資産は200%定率法で、率は別表第十に定められています。

耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
5年 0.400 0.500 0.10800
6年 0.333 0.334 0.09911
8年 0.250 0.334 0.07909
10年 0.200 0.250 0.06552

平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した資産は250%定率法で、同じ耐用年数でも率が違います。

100万円・8年の計算例

国税庁が示す200%定率法の例を追います。取得価額100万円・耐用年数8年で、償却率0.250・改定償却率0.334・保証率0.07909です。償却保証額は1,000,000円×0.07909で79,090円になります。

年 償却限度額 期末の未償却残高
1年目 250,000円 750,000円
2年目 187,500円 562,500円
3年目 140,625円 421,875円
4年目 105,468円 316,407円
5年目 79,101円 237,306円
6年目 79,260円 158,046円
7年目 79,260円 78,786円
8年目 78,785円 1円

1年目から5年目は、前の期末の残高に0.250を掛けます。6年目からは、237,306円に改定償却率0.334を掛けます。8年目は、計算上79,260円ですが、1円を残すため78,785円です。

5年目の調整前償却額79,101円は、償却保証額79,090円をわずかに上回ります。6年目は237,306円×0.250で59,326円となり、償却保証額を初めて下回るため、算式2に切り替わります。この年の期首の未償却残高237,306円が改定取得価額です。

事業年度の途中で使い始めたら?

結論: 事業年度の途中で使い始めた資産は、1年分の償却限度額を事業年度の月数で割り、使い始めた日から期末までの月数を掛けます。1か月に満たない端数は1か月です。

月数で按分する

法人税法施行令第59条は、事業年度の中途で使い始めた資産の償却限度額を、定額法でも定率法でも次のように定めています。月数は暦に従って数えます。

償却限度額=1年分の償却限度額÷事業年度の月数×使い始めた日から期末までの月数

10月に使い始めた設備の例

3月決算(12か月)の会社が、100万円・耐用年数8年の設備を10月1日から使い始めた場合です。10月から3月までの6か月分を計上します。

償却方法 1年分 初年度(6か月分)
定額法 125,000円 62,500円
定率法 250,000円 125,000円

定率法の2年目は、875,000円(取得価額から初年度の既償却額を引いた額)に0.250を掛け、218,750円です。2年目以降は12か月分の計算になります。

減価償却の方法は選べる?

結論: 建物は定額法しか選べません。機械装置・車両運搬具・器具備品などは定額法か定率法を選べ、届出をしなければ法人は定率法、個人事業主は定額法です。

資産ごとに選べる方法

償却方法は、資産の区分ごとに選びます。法人税法施行令第48条の2は、平成19年4月1日以後に取得した資産について、選べる方法を次のように定めています。

資産 選べる方法 届出をしない場合
建物 定額法のみ 定額法
建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後に取得) 定額法のみ 定額法
建物附属設備・構築物(平成28年3月31日以前に取得) 定額法・定率法 定率法
機械装置・車両運搬具・工具器具備品 定額法・定率法 定率法

選定の届出と変更の承認

法人は、設立した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、償却方法を税務署へ書面で届け出ます。事業年度の途中で新しい区分の資産を取得したときは、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までです。仮決算で中間申告書を出す期は、その提出期限までです(同第51条)。

一度選んだ方法を変えるには、届出ではなく承認が要ります。新しい方法を使いたい事業年度の開始の日の前日までに、変更の理由を書いた申請書を出します(同第52条)。現在の方法を採用してから3年を経過していないと、原則として承認されません。合併や分割に伴う変更など、特別な理由がある場合は例外です(国税庁タックスアンサーNo.5407)。

償却費を少なく計上してよい?

結論: 法人は、償却限度額の範囲内であれば計上額を決められます。個人事業主は計算した金額を必要経費に算入するので、計上額を選べません。

法人は限度額の範囲で決める

法人税法第31条は、損金の額に算入できる償却費を、損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額と定めています。限度額が上限なので、赤字の期に償却費を少なくすることも、制度の上ではできます。

ただし、計上しなかった分が取り戻せるわけではなく、未償却残高として残り続けます。償却を止めた期の決算書は、実態より利益が大きく出ます。限度額を超えて計上した部分は、損金の額に算入できないため、申告書の別表四で加算します。

個人事業主は計上額を選べない

法人と個人事業主の違いは次のとおりです。

償却費の計上額の決まり方
法人
償却限度額の範囲内で計上額を決められる
少なく計上してもよい
限度額を超えた部分は損金の額に算入できない
法人税法第31条
個人事業主
計算した金額を必要経費に算入する
計上額を選べない
赤字の年も償却費を計上する
所得税法第49条

よくある質問

定率法の償却費が途中の年から増えたのはなぜ?
償却保証額による切り替えが起きたためで、正しい動きです。100万円・耐用年数8年なら、5年目の79,101円が6年目に79,260円へ増えます。
3月に買った設備は、どれだけ費用になる?
使い始めた日から期末までの月数分です。3月決算で3月20日に使い始めれば1か月分で、100万円・耐用年数8年の設備を定率法で計算すると約2万円です。
償却方法の届出をしていないと、定額法と定率法のどちらになる?
法人は、機械装置・車両運搬具・器具備品などが定率法、建物は定額法です。個人事業主は定額法です(所得税法施行令第125条)。法人が方法を変えるには、承認の申請が要ります。

まとめ:2つの算式と切り替えを押さえよう

  • 定額法は取得価額×定額法の償却率、定率法は(取得価額-既償却額)×定率法の償却率で求めます
  • 定率法は、調整前償却額が償却保証額に満たない年から、改定取得価額×改定償却率に切り替わります
  • 建物は定額法のみで、機械装置や器具備品は届出がなければ、法人は定率法・個人事業主は定額法です
  • 法人は償却限度額の範囲で計上額を決められ、個人事業主は選べません

固定資産台帳の耐用年数や取得時期ごとの率に不安がある方、決算前に償却費の見積りを整理したい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の固定資産台帳と前期の申告書を確認し、耐用年数・償却方法・限度額の計算を順に整理します。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5410「減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」
  • 国税庁 タックスアンサー No.5407「減価償却資産の償却方法の変更手続」
  • 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」
  • e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第八・第十
  • e-Gov法令検索「法人税法」第31条、「法人税法施行令」第48条の2・第51条・第52条・第54条・第59条・第133条、「所得税法」第49条、「所得税法施行令」第125条

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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