法人の節税対策は何から?優先順位の付け方と主な方法を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
法人の節税対策は、現金が出ていかない対策から順に進めます。順番は、今期の利益の着地を出す、計上漏れなど現金が動かない対策を拾う、期首に決める役員報酬を確かめる、買う予定の設備を制度に合わせる、共済や保険は出口を決めてから入る、の5つです。支出から入ると、税金より先に手元の現金が減ります。この記事では、優先順位と間違えやすい点を、令和8年度の税制改正を含めて国税庁などの公表資料(2026年10月時点)で整理します。
法人の節税対策は何から始める?
結論: 現金が動かない対策から始め、支出を伴う対策は最後に回します。税金の減る額より出ていく現金のほうが大きい対策は、節税になりません。
優先順位の早見表
| 順位 | 対策 | 現金の動き | 動く時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 今期の利益の着地を出す | 動かない | 決算の前から |
| 2 | 未払費用・決算賞与・貸倒れ・除却を拾う | 動かない | 決算日まで |
| 3 | 役員報酬・社宅・出張旅費を整える | 動かない | 期首から3か月以内など |
| 4 | 買う予定の設備を制度に合わせる | 出る | 取得して使い始めるまで |
| 5 | 共済・保険に入る | 出る(将来戻る) | 加入の前に出口を決める |
現金が動かない対策を先にする理由
100万円の備品を買うと、100万円が経費になります。税率を仮に3割とすると、減る税金は30万円、減る現金は100万円です(説明用の金額です)。不要な買い物では、会社の現金が70万円減るだけです。
一方、決算日までに債務が確定している未払費用の計上は、現金が動きません。先に手を付けるのはこちらです。
対策の3つの型
対策は、税金の出方で3つに分かれます。
- 課税の繰延べ:税金を払う時期をずらすだけです。短期前払費用や法人保険が当たります
- 税額を直接減らすもの:税額控除です。適用の要件と期限があります
- 現金が動かない損金の計上:計上漏れや除却の整理です。最初に確かめます
法人の節税対策でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、現金を減らして税金を減らすこと、期限を過ぎてから動くこと、今期の着地を見ずに対策を決めることの3つです。どれも手元の現金に響きます。
決算の直前に保険の加入を決めたあとで、役員報酬の期限が過ぎていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。
支払って税金を減らす間違い
利益が出そうだから備品を買う、保険に入る、という動き方では、出ていく現金が減る税金を上回ります。必要な投資かどうかを先に決めます。
期限を過ぎてから動く間違い
役員報酬を損金の額に算入するには、期首から3か月以内に決めた金額を毎月同額で払い続けます。決算賞与は決算日までに各人へ通知します。
今期の着地を見ない間違い
今期の利益が分からないまま対策の大きさを決めると、やりすぎか足りないかのどちらかになります。
直近の試算表と前期の申告書をお持ちいただければ、今期の利益の着地と、期限に間に合う対策、現金を減らさない順番を一緒に確かめます。
今期の着地はどう出す?
結論: 試算表から今期の利益を見込み、法人税率の段差をまたぐかどうかを見ます。中小法人は年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。
法人税率の段差
資本金1億円以下の中小法人の法人税率は、次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.5759、令和8年4月1日現在法令等)。
| 所得の区分 | 法人税率 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円を超える部分 | 23.2% |
所得が年10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分が17%です。ここに地方法人税、法人住民税、法人事業税が加わります。
着地の出し方
月次の試算表に残りの月の利益を足して、今期の所得を見込みます。年800万円の前後なら、1円の損金が減らす税額が段差で変わります。赤字の見込みなら、後述の赤字の年の扱いに進みます。
現金が動かない対策は?
結論: 未払費用、決算賞与、短期前払費用、貸倒れ、使わない資産の除却が代表です。どれも、決算日までに要件を満たせば現金を出さずに損金の額に算入できます。
未払費用と決算賞与
決算日までに債務が確定している費用は、支払いが翌期でも当期の損金の額に算入できます。社会保険料の会社負担分や未払いの外注費が当たります。
従業員への決算賞与は、次の3つをすべて満たすと、未払いのまま当期の損金の額に算入できます(国税庁タックスアンサーNo.5350)。
- 支給額を各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知している
- 通知した金額を、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っている
- 通知した事業年度で損金経理をしている
短期前払費用と貸倒れ、除却
継続的に役務の提供を受ける契約で、支払った日から1年以内に提供を受ける費用は、支払った事業年度の損金にできます。家賃や保守料が典型で、毎期同じ処理を続けることが前提です。
回収できない売掛金は、貸倒れの要件を満たせば損金の額に算入できます。使うのをやめた固定資産は、除却して帳簿から落とせます。処分した証拠(廃棄業者の証明書など)を残します。
交際費と会議費の整理
資本金1億円以下の中小法人は、年800万円までの交際費等を損金の額に算入できます。さらに、1人当たりの金額が1万円以下の飲食費は、交際費等から除かれます(国税庁タックスアンサーNo.5265、令和8年4月1日現在法令等)。使うには、飲食日、参加者、人数、費用額を書いた書類を残します。
役員報酬はいつ決める?
結論: 役員報酬は、期首から3か月以内に金額を決め、毎月同じ額を払い続けます。この期限を過ぎると、1年間は変えられません。
3か月以内の改定
毎月同額の役員報酬(定期同額給与)を損金の額に算入するには、期首から3か月を経過する日までに改定します。4月1日が期首の会社なら、6月30日です。期の途中で変えられるのは、役職の変更や、経営状況が著しく悪化した場合の減額などに限られます(国税庁タックスアンサーNo.5211)。
役員報酬は会社の損金であり、本人の給与所得でもあります。上げれば法人の所得が減る一方、本人の所得税、住民税、社会保険料が増えるため、合計で決めます。
社宅と出張旅費
会社が借りた住宅を役員に貸す社宅は、賃貸料相当額を受け取れば家賃の一部を会社の費用にできます。徴収額が足りないと、差額が給与として課税されます。出張旅費規程を整えると、日当を実費精算とは別に支給できます。
設備投資の制度はどう選ぶ?
結論: 買う予定の設備は、取得価額で使える制度が決まります。令和8年4月1日以後に取得する資産から、少額減価償却資産の特例は40万円未満が対象です。
少額減価償却資産の40万円未満
青色申告書を出す中小企業者等は、取得価額が40万円未満の資産を、事業に使い始めた年度に全額、損金の額に算入できます。令和8年4月1日以後の取得から、基準が30万円未満から40万円未満に上がりました(国税庁タックスアンサーNo.5408、令和8年4月1日現在法令等)。
条件は次の3つです。
- 1事業年度の合計は、300万円までです
- 常時使用する従業員が400人以下の法人が対象です(改正前は500人以下)
- 令和11年3月31日までに取得して使い始めた資産が対象です
投資促進税制と経営強化税制
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制は、対象の設備を取得すると、特別償却か税額控除を選べる制度です。令和8年4月1日以後の取得から、工具の取得価額の要件が30万円以上から40万円以上になりました。少額減価償却資産の「40万円未満」とは上下が逆です。経営強化税制は経営力向上計画の認定が前提で、設備を買う前に手続きを始めます。
賃上げ促進税制の現状
令和8年度の税制改正で、大企業向けの措置は令和8年3月31日で廃止されました。中堅企業向けは、見直しのうえ令和9年3月31日に廃止されます。教育訓練費に係る上乗せ措置も廃止です。中小企業向けの基本の仕組みは維持されています(財務省「令和8年度税制改正の大綱」概要)。「賃上げ促進税制が廃止」と聞いても、中小企業向けまで終わったわけではありません。
共済と保険はどう考える?
結論: 共済や保険は、加入するときより解約する年の課税を先に見ます。掛金が損金や所得控除になっても、受け取る側で課税される場面が来ます。
経営セーフティ共済
掛金月額は5,000円から20万円まで選べます。自己都合の解約でも、12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上なら全額が戻ります(中小企業基盤整備機構)。
令和6年10月1日以後に解約して再加入した場合は、解約の日から2年を経過する日までに払う掛金を、損金の額に算入できません。解約手当金は法人の収入になるため、赤字の年や退職金を払う年に合わせて解約する設計が要ります。
小規模企業共済
経営者や役員、個人事業主のための退職金の制度です。払った掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれます(国税庁タックスアンサーNo.1135)。法人の損金にはなりません。
法人保険
法人保険は、保険の種類と最高解約返戻率に応じて、保険料を損金の額に算入できる割合が決まります。解約返戻金は収入になるため、課税の時期がずれるだけです。保障は、万一のときに必要な運転資金や返済額から逆算して決めます。
赤字の年はどうする?
結論: 赤字は将来の利益と相殺できる資産です。青色申告書を期限内に出しておくことが、すべての前提になります。
欠損金の繰越控除
青色申告書を出した事業年度に生じた欠損金は、その後10年間、繰り越して所得から差し引けます。中小法人等なら、控除前の所得の全額までです(国税庁タックスアンサーNo.5762、令和8年4月1日現在法令等)。その後の各年度も、連続して確定申告書を出していることが条件です。
繰戻し還付
中小企業者等は、欠損金が生じた年度の開始前1年以内に開始した事業年度に法人税を納めていれば、その還付を請求できます。その間、青色の確定申告書を連続して出していることが条件です(国税庁タックスアンサーNo.5763)。
赤字の年に費用を前倒しにしても、その年の税額は動きません。
やりすぎの対策は?
結論: 事実と異なる処理は節税ではなく脱税で、重加算税などの対象です。制度の要件を満たす使い方と、形だけを整える使い方は別のものです。
事実と異なる処理
売上の計上を翌期に回す、実体のない外注費を計上する、といった処理は認められません。勤務の実態がない親族への役員報酬も、損金の額に算入できません。
実態のない支出
決算間際に不要な備品を買っても、事業に使い始めていなければ減価償却は始まりません。借入金で設備を買い、その償却で税負担を抑えても、返済が残るだけです。
よくある質問
決算の直前に高額な備品を買えば、税金は下がりますか?
令和8年4月から、新しい法人の税金が増えましたか?
節税と脱税は、どこで線が引かれますか?
まとめ:現金が動かない順に進めよう
- 対策は、今期の着地、現金が動かない対策、役員報酬、設備投資、共済と保険の順に進めます
- 税金の減る額より出ていく現金が大きい対策は、節税になりません
- 役員報酬は期首から3か月以内、決算賞与は決算日までと、期限が先に来る対策が多くあります
- 少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後の取得から40万円未満が対象です
決算までの時間が少ない方、役員報酬や設備投資の順番に迷っている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の試算表と前期の申告書から今期の着地を出し、期限の近い対策から優先順位をつけて整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
- 国税庁 タックスアンサー No.5350「使用人賞与の損金算入時期」
- 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」
- 国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」
- 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(概要)
- 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済」





