中小企業省力化投資補助金|一般型とカタログ注文型の選び方
「人が採れないので機械に置き換えたいが、何から手を付ければいいのか」。「カタログから選ぶだけと聞いたのに、話が進まない」――人手不足の相談は、この2つの言葉のどちらかで始まります。
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業の省力化投資を支える制度です。類型は一般型とカタログ注文型の2つで、一般型は自社に合わせた設備を選べるかわりに詳細な事業計画が必要で補助上限は最大1億円、カタログ注文型は登録済みの製品に限られるかわりに手続きが簡素で補助上限は最大1,500万円です。
税理士法人Light UPでは、この補助金の相談を受けたとき、設備の話に入る前に、その工程で何時間の作業が減るのかを一緒に数えています。補助金の審査でも、経理の判断でも、結局そこが土台になるからです。
この記事では、2つの類型の違い、対象になる設備、申請の進め方、補助金と税制優遇を重ねるときの考え方、そして受け取った期の処理までを、中小企業庁と中小企業基盤整備機構の資料に沿って整理します。
一般型とカタログ注文型
結論: 中小企業省力化投資補助金は一般型とカタログ注文型の2類型で、自由度を取るか手続きの軽さを取るかで選び方が変わります。
中小企業基盤整備機構は、両者の位置づけを次のように整理しています。
| 項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 目的 | 企業ごとに最適な省力化設備の導入を支援 | 手続き簡素化。カタログに掲載された設備を選んで導入 |
| 補助上限額 | 最大1億円 | 最大1,500万円 |
| 補助率(中小企業) | 補助金額1,500万円までは1/2以下(最低賃金引上げ特例の場合2/3)、1,500万円を超える部分は1/3 | 1/2以内 |
| 補助対象 | 個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築 | 補助対象としてカタログに登録された製品 等 |
| 申請のポイント | 詳細な事業計画の作成が必要 | 販売事業者が導入と申請・手続きをサポート |
(出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金のご案内」)
一般型の補助率と上限
一般型の特徴は、補助率が金額の帯で分かれることです。中小企業の場合、補助金額1,500万円までの部分と、それを超える部分とで率が変わります。小規模事業者等については、1,500万円までの部分の補助率が3分の2とされています。
上限1億円という水準は、中小企業向けの補助金としては大きい部類です。ただし補助率の設計上、金額が大きくなるほど自己負担の割合も増えます。2億円の投資に対して1億円が出るわけではない、という点は最初に押さえておく必要があります。
カタログ注文型の手軽さ
カタログ注文型は、あらかじめ登録された省力化製品のなかから選ぶ方式です。事業計画の作り込みが求められず、販売事業者が導入と補助金申請・手続きをサポートします。
「補助金の書類が苦手だから諦めていた」という会社にとっては、現実的な入口になります。そのかわり、カタログにない製品は選べません。自社の工程に特殊な事情がある場合は、はまらないことがあります。
どちらを選ぶかの分かれ目
判断の目安は、置き換えたい作業が標準化されたものかどうかです。券売機や自動精算機で受付を減らす、厨房機器で調理の手を減らすといった話はカタログ注文型に向きます。
一方、自社の製品や現場に合わせて設備を作り込む必要があるなら一般型です。中小企業基盤整備機構は、一般型は企業ごとに最適な設備を選択できるが事業計画を策定し審査を通過する必要があると説明しています。
対象になる省力化投資
結論: 省力化投資補助金の対象は人手を減らす設備で、一般型では現場に合わせた設備導入とシステム構築、カタログ注文型では登録済みの製品に限られます。
一般型で認められた設備の例
中小企業基盤整備機構は、一般型の補助対象の具体例として2つを挙げています。1つは、通信販売事業者がオンラインショッピングの顧客数・購買量の増加に対応するため、自動梱包機と倉庫管理システムをオーダーメイドで開発・導入する事業。もう1つは、自動車関連部品製造事業者が検査が難しい微細な部品製造を効率的に行うため、現場に合わせて最新のデジタルカメラやAI技術を活用した自動外観検査装置を導入する事業です。
どちらも、単に機械を買う話ではありません。既存の工程のどこに人手がかかっていて、それをどう置き換えるかが説明されています。ここが一般型の審査の中心です。
カタログに載る製品
カタログ注文型の対象は、カタログに登録された製品だけです。掲載例としては、店舗・施設向けセルフ対応型機器として券売機、自動精算機、自動チェックイン機、厨房サポートとしてスチームコンベクションオーブンや自動フライヤーなどが挙げられています。
飲食業や宿泊業、小売業のように、接客と調理に人手がかかる業種と相性のよい構成です。逆に製造業の専用機は、カタログには載りにくい領域になります。
一般型の申請と公募回
結論: 一般型は公募回ごとに申請期間が区切られており、第7回の公募要領は2026年6月5日に公開されました。
第7回までの流れ
中小企業庁の補助金公募情報によれば、一般型の第6回は2026年4月15日に申請受付が始まり5月15日まで、第7回は公募要領が同年6月5日に公開され、申請受付期間は7月上旬から7月下旬の予定とされていました。第5回の交付候補者は2026年6月5日に採択が公表されています。
なお中小企業庁は2026年7月31日、令和8年熊本地震の被害を受けた熊本県内の事業者について、第7回の申請受付を8月14日まで延長すると案内しました。災害時にはこうした個別の措置が入ることがあります。
公募回は年に数回のペースで回っています。1回逃しても次があるという意味では動きやすい一方、事業計画の作成には時間がかかるため、次回を狙って準備を始めるほうが結果的に早いこともあります。
事業計画の作り込みと、GビズIDの準備
一般型は詳細な事業計画の作成が必要です。中小企業基盤整備機構は、申請の流れの最初に、事業計画を策定し必要書類を準備して応募申請する段階を置いています。
計画で問われるのは、省力化の効果を数字で示せるかどうかです。何人分の何時間が減り、その時間をどこに振り向けるのか。「忙しいから機械を入れたい」では説明になりません。実際に相談を受けると、この作業時間の把握そのものができていない会社が少なくありません。
申請は電子申請のため、GビズIDプライムアカウントが必要です。中小企業基盤整備機構は、GビズIDの取得には時間がかかる場合があると注意を促しています。
締切から逆算すると、これが最初に着手すべき作業になります。事業計画は相談しながら直せますが、IDの発行日数だけは動かせません。
カタログ注文型の進め方
結論: カタログ注文型は、掲載製品を選んだあと販売事業者と共同で交付申請を行い、共同で事業を実施する仕組みです。
販売事業者と組む仕組み
流れとしては、カタログ掲載の省力化製品を選び、その製品を販売している販売事業者に連絡し、販売事業者と共同で交付申請を行います。審査を経て交付決定を受けたら、販売事業者と共同で製品を導入し、完了後に実績報告を行って補助金の振込を受けます。
事業者が単独で完結する形ではありません。相手の対応が滞ると、こちらの手続きも止まります。連絡が取りやすい販売事業者を選ぶことが、思っている以上に重要です。
製品の探し方
カタログは制度の公式サイトで公開されており、そこから製品と販売事業者を探します。同じカテゴリでも複数のメーカーが登録されているため、価格だけでなく保守体制まで含めて比べる余地があります。
導入したあとに故障して、修理まで2週間かかるという事態は現実に起こります。省力化のために入れた機械が止まると、人手で回していた頃より現場が混乱することもあります。
補助金と税制優遇の重ね方
結論: 補助金で取得した設備に圧縮記帳を適用すると取得価額が下がるため、特別償却や税額控除の計算の基礎になる金額も小さくなります。
圧縮記帳と特別償却の関係
補助金で固定資産を取得した場合、圧縮記帳という方法があります。e-Govで公開されている法人税法第42条第1項は、固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等について、その返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限って適用されると定めています。
ここで注意が要るのは、圧縮記帳が取得価額そのものを引き下げる仕組みだという点です。設備の税制優遇は取得価額を基礎に計算されますから、圧縮記帳を使うと、その後に受けられる特別償却や税額控除の額も連動して小さくなります。
補助金と税制優遇のどちらも使えるからといって、単純に足し算にはなりません。
中小企業経営強化税制との併用
省力化投資は、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制の対象設備と重なることがあります。即時償却か税額控除かを選ぶ制度ですから、補助金の圧縮記帳と組み合わせると、どの順番でどれを使うかで納税額が変わります。
判断の材料になるのは、今期の利益水準、翌期以降の見通し、そして資金繰りです。今期に大きく損金を立てたいのか、税額控除で手元資金を残したいのかで答えが変わります。ここは机上の比較だけで決められる話ではありません。
取得価額が変わる影響
取得価額は、その後の減価償却費にも、固定資産税の償却資産の申告にも、そして設備を売却したときの損益にも関わります。圧縮記帳をした資産は帳簿価額が小さいため、数年後に売却すると売却益が大きく出ることがあります。
つまり、圧縮記帳は税金を消す方法ではなく、課税のタイミングを後ろにずらす方法です。「圧縮記帳をすれば税金がかからない」という理解は正確ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。
補助金を受け取った期の処理
結論: 補助金は益金に算入され、返還を要しないことが確定した事業年度の収益として法人税の課税対象になります。
益金算入の時期
国税庁の法人税基本通達10-2-1は、返還を要しないことが確定したかどうかの判定について、次のように注記しています。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条《補助金等の額の確定等》の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する。
区切りになるのは額の確定通知です。交付決定の通知とは別物で、届く時期も違います。決算月をまたぐ場合、どちらの通知がいつ届いたかで処理する期が変わります。
なお、返還不要が期末までに確定していない場合には、法人税法第43条の特別勘定という方法もあります。
消費税の仕入控除税額の返還
補助対象経費に含まれる消費税のうち、仕入税額控除の対象になった部分については、事務局へ報告して相当額を返還する取扱いがあります。設備の金額が大きい省力化投資では、この消費税相当額も無視できない規模になります。
課税事業者か免税事業者か、簡易課税を選んでいるかで扱いが変わります。自社の立場を先に整理しておくと、後の作業が軽くなります。
都道府県の上乗せ補助
結論: 国の省力化投資補助金の交付決定を受けた事業者を対象に、都道府県が独自の上乗せ補助を設けている場合があります。
中小企業基盤整備機構は、補助金の案内ページに都道府県の上乗せ補助金情報を掲載しています。国の指定補助金の交付決定を受けていることを条件に、県が追加で補助するという形が典型です。
賃上げを条件にした上乗せが多く、対象従業員1人あたりの定額で計算する制度もあります。金額としては数百万円規模になることもあり、見逃すには惜しい水準です。
多くの場合、国の補助金の交付決定が前提になります。順番を逆にすると使えません。制度によっては、国の補助金に申請する前に県への事前登録が必要なものもあります。
自治体ごとに条件も締切も違うため、自社の所在地の情報を1つずつ確認する作業が要ります。商工会議所や自治体の産業振興課で聞くのが早道です。
補助対象から外れるもの
結論: 省力化投資補助金では、省力化に直接つながらない支出や、事業に必要でも汎用性が高いものは補助対象から外れます。
対象外になりやすい支出
補助対象になるかどうかは、省力化の効果と結び付いているかで判断されます。実務で外れやすいのは、次のような支出です。
- 事務用のパソコン、タブレット、プリンターなど汎用性の高い機器
- 車両の購入費、事務所や店舗の家賃、水道光熱費
- 従業員の人件費、既存設備の単なる修繕費
- 交付決定を受ける前に契約・発注した支出
- 中古品や、金額の妥当性を証拠書類で示せないもの
「工場で使うのだから機械と同じでは」と聞かれることがありますが、汎用の機器は目的外にも使えるため線が引かれています。中小企業基盤整備機構も、対象となる経費や設備は公募要領で詳細を確認するよう案内しています。
見積書の取り方で変わる部分
同じ設備でも、見積書の書き方で扱いが分かれることがあります。据付工事費や運搬費が一式でまとめられていると、どこまでが補助対象なのか判断できないためです。
相見積もりを取る段階で、費目を分けて記載してもらうよう伝えておくと後が楽になります。実績報告のときに内訳の再提出を求められ、業者に連絡し直すという手戻りは、この一手間で防げます。「見積は一式でもらっておけばいいと思っていた」というお声は本当に多いところです。
つまずきやすい点
結論: 省力化投資補助金でつまずくのは、交付決定前の発注と、省力化の効果を数字で説明できないことの2つに集中します。
交付決定前の発注
一般型の流れは、審査を経て補助金交付候補者として採択され、業者選定や相見積もりを準備して交付申請を行い、交付決定後に設備を発注して補助事業を開始する、という順です。採択と交付決定は別の段階で、発注できるのは交付決定の後です。
「採択されたので機械を頼みました」という連絡を受けて、慌てて確認する場面があります。順番を1つ飛ばすと、その支出は自己負担になります。納期の長い設備ほど、先に押さえたくなる誘惑が強いところです。
人手不足の中身を数字にする
もう1つは、省力化の効果を示す部分です。事業計画では、どの工程で何人が何時間かけているのかが出発点になります。
現場に聞くと「だいたい半日くらい」という答えが返ってくることが多いのですが、それでは計画になりません。1週間でよいので実測すると、思っていた工程と違うところに時間が溶けている、ということがよくあります。数字を取る作業が、結果として設備の選定そのものを変えることもあります。
よくある相談事例|業種別の受け止め方
飲食業|ホールの人手が採れない
「求人を出しても応募がない」という状態からの相談でした。券売機の導入を考えていましたが、補助金の存在を知らずに自己資金で進めようとしていました。
まず整理したのは、置き換えられる作業の範囲です。注文と会計を機械に移せる一方、配膳と片付けは残ります。カタログ注文型に該当する製品があったため、販売事業者との共同申請で進める形になりました。導入後は、レジ締めの時間が短くなったことで、閉店後の残業が減っています。
製造業|検査工程の属人化
熟練の担当者1人が目視で検査をしており、その人が休むと出荷が止まるという相談です。設備の話より先に、退職リスクの話が出てきました。
このケースでは、カタログにあてはまる製品がなく、一般型で自社の製品に合わせた検査装置を組む方向になりました。時間がかかったのは事業計画のほうです。検査にかかる時間と不良の見逃し率を2週間かけて記録し、そこから投資回収の見通しを立て直しました。数字が揃うまで申請を待った結果、計画の説明そのものが変わっています。
よくある質問
一般型とカタログ注文型は両方申請できる?
補助金をもらったら税金はかかる?
中古の機械でも対象になる?
人を減らさないと使えない?
まとめ:作業時間の実測から始めよう
中小企業省力化投資補助金は、人手不足の現場に直接届く制度です。ここまでの要点を整理します。
- 類型は一般型とカタログ注文型の2つ
- 一般型は上限1億円だが詳細な事業計画が必要
- カタログ注文型は上限1,500万円・補助率1/2以内で手続きが簡素
- 発注できるのは交付決定の後。採択とは別の段階
- 圧縮記帳を使うと取得価額が下がり、特別償却や税額控除も連動して小さくなる
- 都道府県の上乗せ補助は国の交付決定が前提になることが多い
本文で触れなかった優先順位を1つ。設備を探す前に、1週間だけ作業時間を記録してみることをおすすめしています。数字が出ると、補助金を使うかどうかより前に、そもそもどの工程を変えるべきかが見えてきます。申請書はそのあとで書けば間に合います。
設備投資の税務と補助金の組み合わせを整理したい場合は、税理士法人Light UPの無料相談からお声がけください。今期の利益水準と資金繰りを見たうえで、どの順番で使うのが自社に合うかを一緒に検討します。
出典
- 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金のご案内」
- 中小企業庁「補助金公募情報」(中小企業省力化投資補助事業(一般型)第5回〜第7回、令和8年熊本地震に伴う申請受付延長)
- 国税庁「法人税基本通達 第10章第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」10-2-1
- e-Gov法令検索「法人税法」第42条・第43条
【メタディスクリプション】
中小企業省力化投資補助金の一般型とカタログ注文型の違い、補助率と上限、申請の流れ、圧縮記帳と特別償却を重ねるときの考え方までを一次情報に沿って整理します。




