赤字決算でも融資は受けられる?決算書の見られ方と使える制度
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
赤字決算でも、融資を受けられる制度はあります。日本政策金融公庫(以下、公庫)の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、利用できる方の条件に、赤字幅が縮小しても損失が出ている会社まで入れており、赤字の会社が使うことを想定した制度です。融資を左右するのは赤字かどうかではなく、赤字の理由、返済に回せる現金、実質の純資産、改善の計画です。この記事では、使える公的な制度、決算書で見られる数字、用意する資料を、公庫と中小企業庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
赤字決算でも融資は受けられる?
結論: 赤字決算でも、公庫や信用保証協会の保証など、赤字の会社が使える融資制度があります。ただし、審査は業績や事業の見通しなどの総合判断で、制度の条件に当たっても借りられるとは限りません。
赤字のときの相談先と制度の早見表
| 窓口 | 制度 | 赤字との関わり |
|---|---|---|
| 公庫 | 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付) | 条件の中に、赤字幅が縮小した会社、前期の損失が残る会社が入っている |
| 公庫 | 企業再建資金(事業再生・企業再建支援資金) | 過剰債務の会社、借入の条件変更中の会社、経営改善計画の策定支援を受けている会社などが対象 |
| 信用保証協会 | セーフティネット保証5号 | 指定業種で売上高が減った会社が対象。赤字は要件に入っていない |
| 信用保証協会 | 経営改善サポート保証 | 経営サポート会議や中小企業活性化協議会などの支援で作った再生計画に基づく資金が対象 |
公庫は会社に直接貸し、信用保証協会は民間の金融機関が貸すときに保証を付けます。
赤字の程度と続き方が条件に使われている
セーフティネット貸付の条件のうち赤字に関わるものは、次の3つです。
- 最近の決算で赤字幅が縮小したものの、損失が出ている
- 前期は損失で、最近は利益が増えたが、利益準備金と任意積立金等の合計を超える繰越欠損金がある
- 前期は損失で、最近は利益が増えたが、債務償還年数が15年以上ある
赤字の有無でなく、赤字の程度、続き方、返済の見通しで線を引いています。赤字の理由と返済の見通しを説明する準備が、相談の中心になります。
融資の申込みでよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、減価償却を止めて黒字に見せる、赤字の理由と計画を用意せず申し込む、使える制度の条件を確かめない、の3つです。どれも、評価や使える制度を逃します。
黒字にしないと借りられないと考えて、決算の直前に減価償却を見送ってから、相談に来られる方が少なくありません。
減価償却を止めて黒字にする
減価償却費は、現金が出ていかない費用です。公庫は、返済に回せる現金(キャッシュフロー)を、経常利益に減価償却費を足して求めます。償却を止めると経常利益は増えますが、足す減価償却費は同じ額だけ減るため、キャッシュフローは変わりません。
変わるのは貸借対照表です。公庫の手引は、減価償却が行われていない固定資産があると、帳簿上は資産超過でも実質的に債務超過となるケースがあるとしています。実質の純資産が悪く見えるので、融資の評価はよくなりません。
赤字の理由と計画を用意せずに申し込む
公庫は、これまでの業績に加えて、これからの事業見通しを見るとしています。売上、粗利、固定費のどれが動いたかを分け、原因が続くのか一度きりなのかを数字で示します。
使える制度の条件を確かめない
通常の融資を申し込むだけでは、公庫の制度や保証協会の保証が選べません。セーフティネット貸付の条件8つに、先に当てはめます。
セーフティネット保証5号は、市区町村長の認定を受けてから、金融機関か保証協会に申し込みます。指定業種の一覧は3か月ごとの期間で公表されているため、申込みの時点の一覧で確かめます。
直近3期分の決算書と納税証明書、借入金の一覧をお持ちいただければ、公庫の条件8つのどれに当たるか、債務償還年数、実質の純資産を一緒に確かめます。
公庫の赤字向けの制度は?
結論: 公庫には、一時的に業況が悪化した会社向けのセーフティネット貸付と、再建に取り組む会社向けの企業再建資金があります。使えるかどうかは、決算の数字で決まります。
セーフティネット貸付の条件8つ
対象は、社会的、経済的環境の変化など外的要因により、一時的に売上の減少などの業況悪化を来しているが、中長期的には回復し発展が見込まれる中小企業者で、次のいずれかに当たる会社です(公庫の案内)。
| 番号 | 条件 |
|---|---|
| 1 | 最近の決算期の売上高が、前期または前々期より5%以上減少している |
| 2 | 最近3か月の売上高が、前年同期または前々年同期より5%以上減少し、今後も減少が見込まれる |
| 3 | 最近の決算期の純利益額または売上高経常利益率が、前期または前々期より悪化している |
| 4 | 回収条件の長期化や支払条件の短縮などで、取引条件が0.1か月以上悪化している |
| 5 | 社会的な要因による一時的な業況悪化で、資金繰りに著しい支障を来している、またはそのおそれがある |
| 6 | 最近の決算期で、赤字幅が縮小したものの、税引前損益または経常損益で損失がある |
| 7 | 前期は損失で、最近は利益が増えたものの、利益準備金と任意積立金等の合計を超える繰越欠損金がある |
| 8 | 前期は損失で、最近は利益が増えたものの、債務償還年数が15年以上ある |
1から8のどれか1つに当たれば足りますが、前提があります。外的要因による一時的な悪化とは言えない赤字は、この制度の対象になりません。
貸付の限度額と返済期間
直接貸付の限度額は、中小企業事業が7億2千万円、国民生活事業が7,200万円です。返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、どちらも据置期間は3年以内です。担保は相談のうえ決まり、一定の要件に当たると、経営責任者の個人保証が要ります。
企業再建資金
再建に取り組む会社向けの別の制度です。中小企業事業の事業再生・企業再建支援資金は、過剰債務の状況にある、中小企業活性化協議会などの関与のもとで再生を行うなど、早急な再建が必要で、相応の債務償還能力と再建計画、金融機関の協力がある会社が対象です。認定支援機関による経営改善計画策定支援事業を利用している会社も対象です。限度額は直接貸付で20億円、返済期間は20年以内(うち据置期間5年以内)です。国民生活事業の企業再建資金の限度額は7,200万円(別枠)です。
信用保証協会の赤字向けの制度は?
結論: 民間の金融機関から借りるときは、市区町村長の認定を受けるセーフティネット保証5号や、再生計画に基づく経営改善サポート保証で、信用保証協会の保証を付けられます。
セーフティネット保証5号
業況が悪化している業種として指定された事業を営む中小企業者が、次のいずれかを満たすことについて、市区町村長の認定を受けると使えます(中小企業庁)。
- 指定事業のみを行っていて、会社全体の最近3か月の売上高等が前年同期より5%以上減少している
- 指定事業のみを行っていて、最近3か月の月平均の売上高営業利益率が前年同期より20%以上減少している
創業者等や、指定事業以外の事業も行う会社には、別の基準があります。赤字かどうかは、要件に入っていません。
手続きは、事業所の所在地の市町村(特別区)の商工担当課等に認定申請書を出して認定を受け、認定書を持って金融機関か信用保証協会に保証付き融資を申し込みます。指定業種の一覧は3か月ごとの期間で公表されています(令和8年10月1日から12月31日までの一覧は2026年9月16日更新)。保証割合と保証料は、信用保証協会で確かめます。
経営改善サポート保証
経営サポート会議や中小企業活性化協議会などの支援で作った再生計画等に基づく資金の保証です。中小企業庁の資料(令和8年3月2日)では、次の内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保証限度額 | 2億8,000万円(一般の普通・無担保保証とは別枠) |
| 保証割合 | 責任共有保証(80%保証)。保証付きの既往借入金の範囲内で借り換える場合には、100%保証の扱いもある |
| 保証期間 | 15年以内(据置期間は3年以内) |
| 保証料率 | 0.4%(国の補助前は原則0.8%または1.0%)。令和8年4月1日申込受付分以降 |
| 取扱期限 | 2027年3月31日まで |
決算書で見られる数字は?
結論: 返済に回せる現金で見る債務償還年数と、帳簿を実態に直した純資産が中心です。債務償還年数は、借入金等を、経常利益に減価償却費を足した額で割った年数です。
債務償還年数の求め方
債務償還年数 = 要償還債務 ÷ キャッシュフロー
公庫の手引によると、要償還債務は借入金に手形(割引・裏書)と社債を足した額、キャッシュフローは経常利益に減価償却費を足した額です(厳密には税金の支払額も考慮します)。説明用の金額で計算します。
| 項目 | 減価償却を計上した決算 | 減価償却を止めた決算 |
|---|---|---|
| 経常利益 | マイナス100万円 | 400万円 |
| 減価償却費 | 500万円 | 0円 |
| キャッシュフロー | 400万円 | 400万円 |
| 借入金 | 4,000万円 | 4,000万円 |
| 債務償還年数 | 10年 | 10年 |
経常利益がマイナスでも、減価償却費が大きければ、返済に回せる現金は残ります。償却を止めて黒字にしても、年数は変わりません。公庫の手引は、経営改善計画が終わる時点の目標の目安に、債務償還年数10年から15年程度を挙げています。
実質の純資産
帳簿の純資産がプラスでも、実態が違うことがあります。公庫の手引は、回収が難しい売掛金、減価償却が行われていない固定資産、貸借対照表に載っていない借入金等があると、実質的に債務超過となることがあると述べています。経営改善計画の目標の目安は、最終利益の黒字化と資産超過です。
赤字のときに用意する資料は?
結論: 用意する中心は、5年程度の経営改善計画書と、返済を続けられることを示す資金繰り表です。公庫は国民生活事業の手引を公開しています。
経営改善計画書
公庫の手引によると、経営改善計画書は、将来の数年間(5年程度)の予想損益計算書です。売上、粗利益率、経費、借入金の返済を、具体的な改善策とともに数字に落とします。
手引は、無理な計画は実行が難しくなるため、借入金の返済を含めた資金繰りを考えて、実行できる計画にする必要があるとしています。
赤字の原因の分け方と現状把握
手引は、経営課題を外部環境によるもの(取引先の減少など)と内部環境によるもの(人員の余剰、無駄な経費など)に分けるよう勧めています。外部環境によるものは自社だけでは解決できませんが、内部環境によるものは経営者の意思で解決できます。
現状把握の項目には、借入金の内容、不良在庫や不良債権の有無、各種税金と社会保険料の納付状況、個人名義の借入金の有無などが挙がっています。返済額がキャッシュフローの範囲に収まるかも見ます。
よくある質問
赤字が何期続くと、融資は受けられなくなりますか?
債務超過でも、公庫の制度は使えますか?
税金や社会保険料を滞納していても、申し込めますか?
まとめ:赤字の数字を整理して制度を選ぼう
- 赤字決算でも、公庫のセーフティネット貸付や企業再建資金、保証協会のセーフティネット保証5号、経営改善サポート保証などが使えます
- セーフティネット貸付の条件8つのうち、6から8は赤字の程度と続き方を使っています
- 決算書では、債務償還年数(借入金等÷(経常利益+減価償却費))と実質の純資産が中心です
- 減価償却を止めても、返済に回せる現金は変わりません
赤字決算で融資を考えている方、公庫の条件に当たるかどうか分からない方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近3期分の決算書と借入金の一覧を確認し、債務償還年数と実質の純資産を計算して、使える制度と用意する資料を整理します。
出典
- 日本政策金融公庫 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)中小企業事業・国民生活事業
- 日本政策金融公庫 事業再生・企業再建支援資金(企業再建・経営改善支援関連)、企業再建資金
- 日本政策金融公庫 よくあるご質問(中小企業の方)
- 日本政策金融公庫 国民生活事業「経営改善計画書策定の手引」
- 中小企業庁 セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種)
- 中小企業庁「中小企業者の経営状況の変化の予兆を早期に把握することを後押しする新たな保証制度等の取扱を行います」(令和8年3月2日)
- 中小企業庁「中小企業者に対する早期の経営改善や事業再生を後押しするための信用保証制度の要件を拡充します」(令和6年7月4日更新)





