赤字決算のメリット・デメリット|赤字でも払う税金を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
赤字決算のデメリットは、お金を借りるときの評価が下がること、赤字でも出ていく税金があること、役員報酬を期の途中で下げにくいことです。メリットは、法人税と事業税の所得割がかからず、その赤字を翌期以降の黒字から引くか、前期に納めた法人税を取り戻せる点です。赤字は結果であり、狙って作るものではありません。この記事では、デメリットとメリットの全体、赤字でも払う税金、赤字の使い方、融資や許認可への影響、赤字になりそうなときの手順を、国税庁などの公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
赤字決算のデメリットとメリットは?
結論: デメリットは、融資の評価、赤字でも出ていく税金、役員報酬の減額の制限、許認可の審査です。メリットは、法人税がかからず、赤字を翌期以降に引けることです。
デメリットとメリットの早見表
赤字決算の影響は、次のとおりです。
| 区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| デメリット | 融資の評価 | 決算書から返済の見通しを見られ、借入の審査や条件に響く |
| デメリット | 赤字でも払う税金 | 均等割・消費税・源泉所得税・固定資産税・社会保険料は出ていく |
| デメリット | 役員報酬 | 期の途中で下げると、下げた後の差額が損金にならない場合がある |
| デメリット | 許認可・入札 | 建設業の許可や公共工事の入札の審査で、決算の内容が見られる |
| メリット | 法人税 | 所得がマイナスなら法人税がかからない。事業税の所得割も同じ |
| メリット | 欠損金の使い道 | 翌期以降に繰り越すか、前期の法人税を取り戻すかを選べる |
決算書の赤字と申告書の欠損金は別
決算書の赤字(当期純損失)と、法人税の計算上の赤字は一致しません。法人税の計算では、益金(税金の計算上の収入)から損金(税金の計算上の経費)を引いた所得の金額がマイナスのとき、その額を欠損金額と呼びます。
交際費の一部などは、決算書では費用でも損金にならないため、決算書が赤字でも所得がプラスになる会社があります。「赤字なのに法人税が出た」というご相談は、この差から生まれます。見るべきは、会計の利益を税金の計算用に直す申告書の別表四です。
赤字決算の処理でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、申告書を出さない、青色申告の承認がない、繰戻しの請求を忘れる、役員報酬を期の途中で下げる、の4つです。どれも使えるはずの赤字が使えなくなります。
決算の直前に、赤字だから今期の申告は後回しにしたいと相談に来られる方もいます。赤字の期の申告が、その後の税金を左右します。
申告書を出さないと欠損金が使えなくなる
欠損金を翌期以降に引く繰越控除は、欠損金が生じた期に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を出している場合に使えます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。納める税額が0でも、申告書は毎期出します。提出が途切れると、繰越控除の対象から外れる場合があります。
青色申告の承認がないと繰り越せない
承認を受けていない期に出た赤字は、原則として繰り越せません(災害による損失など例外があります)。赤字が見えたら、承認の有無を真っ先に確かめます。
繰戻し還付の請求を申告と同時に出し忘れる
前期に納めた法人税を取り戻す繰戻し還付は、欠損が出た期の確定申告書と同時に、還付請求書を出す決まりです(法人税法80条1項)。申告書を出したあとから、請求だけを足す形ではありません。
役員報酬を期の途中で下げる
毎月同額で払う定期同額給与は、事業年度の途中で減額できるのが、経営状況が著しく悪化したことなどの業績悪化改定事由に当たるときに限られます。国税庁は「法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれません」としています(国税庁タックスアンサーNo.5211)。
減らすなら、期首から3か月以内に行う通常の改定にします。資金が心配で下げても、税務上は元の金額を払ったものとして扱われ、税金の負担だけが残ります。
直近2期分の申告書と今期の試算表をお持ちいただければ、青色申告の承認の有無、前期に納めた法人税、欠損金の残高から、繰越しと繰戻しのどちらが使えるかを一緒に確かめます。
赤字でも払う税金は?
結論: 法人税と事業税の所得割は、所得がなければかかりません。均等割・消費税・源泉所得税・固定資産税・社会保険料は、赤字でも出ていきます。
赤字のときの税金・保険料の一覧
| 税金・保険料 | 赤字のとき |
|---|---|
| 法人税・防衛特別法人税 | かからない |
| 法人事業税(所得割) | かからない |
| 法人住民税の法人税割 | かからない。法人税額に応じて課されるため |
| 法人住民税の均等割 | かかる。標準税率で最小でも年7万円 |
| 法人事業税(付加価値割・資本割) | 外形標準課税の対象の会社は、赤字でもかかる |
| 消費税 | 利益と関係なく計算するため、納付が生じる場合がある |
| 源泉所得税 | 給与等から預かった分を納める |
| 固定資産税・償却資産税 | 資産を持っている限りかかる |
| 社会保険料 | 給与を払っている限りかかる |
外形標準課税は、原則として資本金1億円を超える会社が対象です。多くの中小企業は所得割だけで、赤字なら事業税は出ません。
均等割は赤字でも毎年かかる
法人住民税の均等割は、所得の有無に関係なく、資本金等の額と従業者数で決まる定額の税金です。標準税率では、資本金等の額が1,000万円以下の会社の道府県民税が年2万円(地方税法52条1項)、従業者数が50人以下の会社の市町村民税が年5万円(同法312条1項)で、合わせて年7万円が最小です。自治体によっては標準より高い税率です。
消費税は利益と関係なく計算する
国税庁は消費税を、「課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除」して計算すると説明しています(国税庁タックスアンサーNo.6101)。利益を見て決まる税金ではないため、赤字でも売上の消費税が仕入の消費税を上回れば、差額を納めます。
欠損金の繰越しと繰戻しの違いは?
結論: 欠損金は、翌期以降の黒字から引く繰越控除と、前期に納めた法人税を取り戻す繰戻し還付の2通りに使えます。繰戻しは中小企業者等だけの制度です。
繰越控除は最長10年使える
欠損金額は、その後10年以内に開始する事業年度の所得から引けます(法人税法57条1項)。複数の期に欠損金があるときは、古い期のものから順に使います。
引ける額は、中小法人等は所得の全額までです(同法57条11項)。資本金1億円以下の普通法人(大法人の完全子会社などを除く)が当たります。それ以外の法人は、所得の50%が上限です。
1,000万円の欠損金がある会社が、翌期に800万円の所得を出した場合は、800万円の所得がゼロになり、残りの200万円はさらに翌期以降へ回ります(説明用の金額です)。
繰戻し還付は前期の法人税が戻る
繰戻し還付は、前期の法人税額に、前期の所得に占める欠損金額の割合を掛けた額の還付を請求する制度です(法人税法80条1項。附帯税の額は計算に含めません)。前期の所得が800万円、法人税額が120万円、当期の欠損金額が400万円なら、還付の額は120万円×400万円÷800万円で60万円です(説明用の金額です)。使える条件は次のとおりです。
- 欠損が出た期の申告書が青色申告書であること
- 前期から連続して、青色申告書を出していること
- 欠損が出た期の確定申告書を期限内に出し、同時に還付請求書を出すこと
- 中小企業者等であること(資本金1億円以下の普通法人など。大法人の完全子会社などを除く)
(法人税法80条1項・3項、国税庁タックスアンサーNo.5763)
還付請求書が出ると、税務署長は請求の基礎になった欠損金額などを調べたうえで、還付するか、理由がない旨を通知します(同法80条10項)。実地の調査が必ず入るという意味ではありません。
繰越しと繰戻しの選び方
選ぶ基準は、前期の納税額と、いまの資金です。前期に法人税を納めていて現金が先に要るなら、繰戻しで現金が戻ります。前期が赤字か納税が少なければ、戻す先の税額がないため、繰越しになります。前期の法人税額を超える部分も、繰越しに回ります。
金額が大きいときは、申告の前に両方の試算を並べて決めます。
融資や許認可への影響は?
結論: 赤字決算は、金融機関の審査と、建設業の許可・入札の審査で見られます。赤字の原因と返済の見通しを説明できれば、赤字というだけで決まるとは限りません。
金融機関は返済の見通しを見る
金融機関が決算書で見るのは、借りたお金を返せるかです。赤字の額より、原因が一時的か続くのか、営業利益に減価償却費(現金が出ていかない費用)を足した額がプラスかを見ます。
翌期に繰り返さない赤字(役員退職金の支給など)は、内容と金額を別に整理しておくと説明が通ります。続く赤字なら、翌期の計画にその前提を入れます。
債務超過になっているか
赤字が積み重なって、貸借対照表の純資産の部の合計がマイナスになると、債務超過です。単年度の赤字とは別の問題として扱われるため、解消までの金額と期間の計画を数字で持っておきます。
建設業の許可と入札の審査
建設業の許可には、財産的基礎の基準があります(国土交通省「許可の要件」)。一般建設業は、自己資本が500万円以上、500万円以上の資金調達能力、許可の申請の直前5年間の継続営業の実績のいずれか1つを満たします。特定建設業は、次の3つをすべて満たします。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上で、自己資本が4,000万円以上であること
赤字で自己資本が減ると、これらの基準に近づきます。公共工事の入札に参加する建設業者が受ける経営事項審査でも、決算書をもとに経営状況が点数になり、売上高経常利益率や利益剰余金などの比率が使われます(国土交通省の審査の資料)。
わざと赤字にするのは得か?
結論: わざと赤字にしても、得にはなりません。経費を使って減る税金は、使った金額より小さいため、手元の現金が先に減ります。
使った金額より減る税金は小さい
仮に法人税などを合わせた税率を30%とすると、100万円の経費を使って減る税金は30万円で、手元の現金は70万円減ります(説明用の数字です)。税金を減らすためだけの支出は、現金を減らします。決めるのは、税金の額ではなく、事業に必要かどうかです。
赤字になりそうなときの手順は?
結論: 決算日の2〜3か月前に着地を読み、原因の切り分け、申告方法の選択、資金繰りの確認、金融機関への説明の順に進めます。決算日を過ぎると選べる手が減ります。
決算の2〜3か月前に着地を読む
期末を過ぎるとできることは少なく、前もって赤字が見えていれば、売掛金の回収の前倒しや資産の整理が間に合います。
赤字の原因を売上・粗利・固定費に分ける
前期と当期の損益計算書を並べて、売上高、売上総利益、販売費及び一般管理費の差額を出します。売上が変わらず粗利が減っていれば、仕入価格や値引きの問題です。粗利が同じで赤字なら、固定費が増えています。固定費の増加は、翌期も続く前提で計画を立てます。
税理士が確認する順番
税理士は、赤字が見えた会社で次の順に確かめます。
よくある質問
赤字でも確定申告は必要ですか?
赤字が続くと融資は受けられませんか?
繰戻し還付を請求すると、税務調査が入りますか?
まとめ:赤字は使い方まで決めよう
- 赤字決算のデメリットは、融資の評価、赤字でも出ていく税金、役員報酬の減額の制限、許認可の審査です
- メリットは、法人税がかからず、欠損金を繰越し(最長10年)か繰戻し還付に使えることです
- 申告書を毎期出し、青色申告の承認を保つことが、赤字を使うための条件です
- 繰越しか繰戻しかは、申告書と同時に決めます。前期の納税額と資金で選びます
- 税金を減らすためだけの支出は、減る税金より大きい現金を失います
赤字になりそうな方、繰越しと繰戻しのどちらを使うか決められない方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。前期と今期の申告書、試算表、借入の一覧を確認し、欠損金の使い方と資金繰りの見通しを整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「欠損金の繰越控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員給与の損金算入」
- 国税庁 タックスアンサー No.6101「消費税のしくみ」
- 国税庁「防衛特別法人税が創設されました」
- 法人税法 第57条(欠損金の繰越し)、第80条(欠損金の繰戻しによる還付)
- 地方税法 第52条、第312条(法人住民税の均等割の標準税率)
- 総務省「法人住民税・法人事業税」の税率の資料
- 東京都主税局「外形標準課税に関するQ&A」
- 国土交通省「建設業の許可の要件」
- 国土交通省「経営事項審査」の審査項目の資料





