貸倒引当金の法定繰入率とは?中小企業の業種の判定と計算方法

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

貸倒引当金の法定繰入率は、会社が主として営む事業の業種で決まる率です。卸売業・小売業は1,000分の10、製造業は1,000分の8、金融業・保険業は1,000分の3、割賦販売小売業などは1,000分の7、建設業やサービス業を含むそれ以外の事業は1,000分の6です。複数の業種を営んでいても、事業ごとに率を分けず、主たる事業の率を1つだけ使います。この記事では、業種の判定、複数の業種を営むときの決め方、計算の流れ、適用できる会社の条件を、国税庁と e-Gov の公表資料(2026年10月時点)で整理します。

法定繰入率はいくつ?

結論: 法定繰入率は、会社が主として営む事業の業種で決まり、1,000分の10・8・3・7・6の5通りです。建設業やサービス業は「その他の事業」に当たり、1,000分の6です。

業種ごとの率の早見表

率を定めているのは、租税特別措置法施行令33条の7第4項です。業種と率は次のとおりです。

主たる事業 法定繰入率 該当する業種の例
卸売及び小売業(飲食店業・料理店業を含み、割賦販売小売業を除く) 1,000分の10 卸売業、小売業、飲食店、料理店
製造業(電気業・ガス業・熱供給業・水道業・修理業を含む) 1,000分の8 工場、メーカー、電気・ガス・水道の事業、修理業
金融及び保険業 1,000分の3 銀行、保険会社など
割賦販売小売業、包括信用購入あっせん業、個別信用購入あっせん業 1,000分の7 分割払いで売る小売業、クレジット会社
上記以外の事業 1,000分の6 建設業、不動産業、運送業、情報通信業、サービス業

割賦販売小売業などの1,000分の7は、令和3年4月1日以後に開始する事業年度の率です。それより前に開始した事業年度分は1,000分の13です(国税庁タックスアンサーNo.5501)。

建設業・サービス業・不動産業は1,000分の6

条文が個別に率を定めているのは、卸売及び小売業、製造業、金融及び保険業、割賦販売小売業等の4つだけです。それ以外はすべて「前各号に掲げる事業以外の事業」に入り、1,000分の6になります。

建設業は、請負工事の未収金が多いため卸売業に近く見えますが、条文に建設業の区分はなく、1,000分の10は適用できません。サービス業、不動産業、運送業、情報通信業も同じです。

業種の判定でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、建設業を卸売業と同じ率にすること、複数の業種を事業ごとに分けて計算すること、前期の率を確かめずに使い回すことの3つです。率が違うと、繰り入れられる額がそのまま変わります。飲食店や修理業のように条文が振り分けた業種も、見落としやすい所です。

決算の直前に、前期の計算書の率をそのまま使っていたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。

建設業を卸売業と同じ率にする

建設業の会社が1,000分の10で計算していると、繰入限度額は本来の約1.7倍になります。たとえば債権が3,500万円(実質的に債権とみられない金額を引いたあと)なら、1,000分の10で35万円、1,000分の6で21万円です(説明用の金額です)。

繰入額が大きすぎると、税務調査で多い分が否認され、修正申告で追加の税金を納めることになります。過去の期も同じ率なら、その期の分も見直しが要ります。

複数の業種を事業ごとに分ける

卸売業と建設業の両方を営んでいる会社が、卸売の債権には1,000分の10、工事の債権には1,000分の6を掛ける、という計算は誤りです。率は会社に1つだけです(措置法通達57の9-4)。

前期の率を判定し直さずに使い回す

新しい事業が育って売上の中心が入れ替わったのに、数年前に決めた率のままの会社があります。割賦で売る形を始めたのに、小売業の1,000分の10のまま、というのも同じ型の誤りです。前期と事業の形が変わっていないかを、決算のたびに確かめてください。

前期の計算書と直近2期分の売上の内訳をお持ちいただければ、主たる事業の判定と、使っている率が合っているかを一緒に確かめます。

決算対策は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

業種はどう判定する?

結論: 業種は、日本標準産業分類(総務省)の分類を基準に、おおむね判定します。そのうえで、飲食店業は卸売及び小売業に、電気業・ガス業・熱供給業・水道業・修理業は製造業に、条文で振り分けられています。

日本標準産業分類を基準にする

国税庁の措置法通達57の9-3は、法人の営む事業がどの区分に当たるかは、別に定めるものを除き「おおむね日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する」としています。

分類の大分類では、建設業、製造業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、運輸業・郵便業などが別々に立っています。自社の事業がどの大分類に入るかを調べ、条文の4つの区分に当たるかを見ます。どれにも当たらなければ、1,000分の6です。

条文が振り分けを変えている業種

分類のとおりに当てはめると、率を誤る業種があります。

分類のままの業種と、条文で振り分けられる業種
分類のとおりに判定する
卸売業・小売業は1,000分の10
製造業は1,000分の8
金融業・保険業は1,000分の3
建設業・不動産業・運送業・サービス業は1,000分の6
条文が振り分ける
飲食店業・料理店業は卸売及び小売業と同じ1,000分の10
電気業・ガス業・熱供給業・水道業は製造業と同じ1,000分の8
修理業は製造業と同じ1,000分の8
割賦販売小売業は1,000分の7

売り方や作り方で区分が変わる事業

小売業でも、割賦販売法2条1項1号の割賦販売の方法で行う小売業は、割賦販売小売業として1,000分の7です。

自己の計算で原材料を買い、あらかじめ指示した条件で加工を委託し、完成品として販売する、いわゆる製造問屋の事業は製造業に該当します(措置法通達57の9-5)。卸売業と見て1,000分の10を掛けると、率が高すぎます。

複数の業種を営むときの率は?

結論: 複数の事業を営んでいても、法定繰入率は主たる事業の率を1つだけ使います。事業ごとに区分して計算しません(措置法通達57の9-4)。主たる事業は、売上だけでなく規模と債権も合わせて判定します。

主たる事業の決め方

通達57の9-4は、どの事業が主たる事業かを、次の材料を総合的に勘案して判定するとしています。

判定の材料 見るもの
収入金額又は所得金額の状況 事業ごとの売上と利益
使用人の数等、事業の規模を表す事実 事業ごとの従業員数など
経常的な金銭債権の多寡 事業ごとの売掛金や貸付金の残高

売上の一番大きい事業を主たる事業とする、という決め方は通達にありません。従業員も債権も売上の小さい事業に偏っている会社では、結論が変わります。

率は1つで、事業ごとに分けない

主たる事業が卸売業と決まれば、会社全体の一括評価金銭債権に1,000分の10を掛けます。建設業が主たる事業なら、卸売の債権を含めて全体に1,000分の6です。

判定は続けてよいが、変動したら見直す

通達57の9-4の注は、判定の基礎となった事実に著しい変動がない限り、継続して同じ事業を主たる事業とすることができる、としています。

事業の売却や新規事業の拡大で比率が大きく動いた期は、判定し直します。

主たる事業の判定から率の選択まで
1

事業ごとの数字を並べる
売上、所得、従業員数、売掛金・貸付金の残高
2

事業の区分を当てる
日本標準産業分類と条文の振り分けで、4つの区分かその他かを決める
3

主たる事業を1つ決める
3つの材料を総合して判断する
4

率を1つ選ぶ
会社全体の債権にその率を掛ける
5

判定の根拠を残す
翌期に事業が変わっていないか見直せるようにする

法定繰入率でいくら繰り入れられる?

結論: 繰入限度額は、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額から、実質的に債権とみられない金額を引き、その残額に法定繰入率を掛けて出します。完全支配関係のある法人への債権は計算に入れません。

計算の流れと数字の例

計算の順は、債権を集める、実質的に債権とみられない金額を引く、率を掛ける、の3段階です。建設業の会社の例を示します(説明用の金額です)。

項目 金額
期末の売掛金(一括評価金銭債権) 4,000万円
同じ相手に対する買掛金の相当額(実質的に債権とみられない金額) 500万円
引いたあとの残額 3,500万円
法定繰入率(建設業は1,000分の6)を掛けた繰入限度額 21万円

この限度額まで、損金経理によって貸倒引当金勘定に繰り入れた金額を、損金の額に算入できます(法人税法52条2項)。帳簿に載せていない金額は算入できません。

実質的に債権とみられない金額を引く

措置法施行令33条の7第2項は、債務者から受け入れた金額があるために、全部または一部が実質的に債権とみられない金銭債権は、その部分を引くと定めています。措置法通達57の9-1は、次のような金額を挙げています。

  • 同じ相手に対する売掛金や受取手形と買掛金や支払手形があるときの、買掛金等の額に相当する金額
  • 同じ相手に対する完成工事の未収金と、その相手から受け入れた未成工事の受入金があるときの、受入金の額に相当する金額

相手先ごとに突き合わせる方法のほかに、平成27年4月1日に存する法人は簡便法を選べます(措置法施行令33条の7第3項)。平成27年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に開始した各事業年度終了の時の、債権額に占める債権とみられない部分の割合(小数点以下3位未満は切り捨て)を、期末の債権額に掛けて控除額にする方法です。

完全支配関係のある法人への債権は外す

法人税法52条9項2号は、完全支配関係がある他の法人に対する金銭債権を、一括評価金銭債権に含めないとしています。租税特別措置法57条の9第1項も、法定繰入率を掛ける債権から、この債権を除いています。

実績繰入率との選択と翌期の戻し入れ

一括評価金銭債権の繰入限度額は、原則として、過去3年間の貸倒れの実績から求める実績繰入率で計算します。法定繰入率は、中小法人などがこの原則に代えて選べる計算です(国税庁タックスアンサーNo.5501)。貸倒れがほとんど無い会社では実績繰入率が小さくなるため、法定繰入率のほうが大きな額になります。

繰り入れた金額は、法人税法52条10項により、翌事業年度に益金の額に算入します。毎期同じ規模の債権が残っていれば、損益に出るのは前期との差額です。回収不能が確定した債権は、引当金ではなく貸倒損失の話になります。

申告書では、別表十一(一の二)に法定繰入率を使った計算を記載します。

法定繰入率を適用できる会社は?

結論: 法定繰入率を適用できるのは、資本金1億円以下の中小法人、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等です。中小法人でも、大法人の完全支配関係にある会社や、適用除外事業者は適用できません。

中小法人の条件

中小法人は、各事業年度終了の時に資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人、または資本や出資を有しない普通法人です(投資法人と特定目的会社を除く)。

大法人の完全支配関係にある会社は外れる

資本金が1億円以下でも、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社、外国相互会社、受託法人のいずれかとの間に、その法人による完全支配関係がある普通法人は、対象から外れます(国税庁タックスアンサーNo.5501)。

グループに入った年度は、この条件から確かめてください。

適用除外事業者は適用できない

事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人は、適用除外事業者となり、法定繰入率を適用できません(租税特別措置法57条の9第1項)。

申告書への記載が必要

法人税法52条3項は、確定申告書に貸倒引当金勘定へ繰り入れた金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、この規定を適用するとしています。

よくある質問

建設業の貸倒引当金の法定繰入率はいくつですか?
1,000分の6です。租税特別措置法施行令33条の7第4項が個別に率を定めているのは、卸売及び小売業、製造業、金融及び保険業、割賦販売小売業等の4つだけで、建設業はそれ以外の事業として1,000分の6になります。
法定繰入率と実績繰入率は、どちらを使えますか?
中小法人などは、原則の実績繰入率に代えて法定繰入率を選べます。実績繰入率は、過去3年間の貸倒れの実績から求める率です。適用除外事業者は法定繰入率を適用できないため、実績繰入率で計算します。
業種の判定は、定款に書いた事業目的で決まりますか?
定款の目的だけでは決まりません。通達は、日本標準産業分類を基準に、実際に営んでいる事業で判定するとしています。

まとめ:主たる事業を決めて率を1つ選ぼう

  • 法定繰入率は、主たる事業の業種で決まります。卸売業・小売業は1,000分の10、製造業は1,000分の8、金融業・保険業は1,000分の3、割賦販売小売業等は1,000分の7、それ以外は1,000分の6です
  • 建設業・サービス業・不動産業は、いずれも1,000分の6です
  • 業種は日本標準産業分類を基準に判定し、飲食店業は卸売及び小売業に、電気業・ガス業・熱供給業・水道業・修理業は製造業に振り分けられます
  • 複数の事業を営む会社は、主たる事業の率を1つだけ使い、事業ごとに分けません。主たる事業は、売上・使用人の数・債権の多寡を総合して判定します
  • 繰入限度額は、実質的に債権とみられない金額を引いた残額に率を掛けて出します。損金経理と、確定申告書への明細の記載も要件です

複数の事業を営んでいて主たる事業の判定に不安のある方、前期から率を使い回している方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。事業ごとの売上・従業員数・債権の内訳を確認し、主たる事業と使う率を整理します。

決算対策は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5501「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」
  • 国税庁 タックスアンサー No.5500「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」
  • 国税庁 租税特別措置法関係通達(法人税編)57の9-1、57の9-2、57の9-3、57の9-4、57の9-5
  • 国税庁 法人税申告書 別表十一(一の二)の記載要領
  • 租税特別措置法 第57条の9
  • 租税特別措置法施行令 第33条の7
  • 法人税法 第52条
  • 総務省「日本標準産業分類」

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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