繰越欠損金とは?繰越期間は何年か、繰越控除の限度額を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
欠損金(税金の計算上の赤字)を繰り越せる期間は、原則として10年です。平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は、赤字が出た期の翌期から数えて10期目の黒字まで、所得から引けます。引ける額は、中小法人等(資本金1億円以下の普通法人など)なら所得の全額、それ以外の法人は所得の50%までです。この記事では、期限の数え方、控除を受けるための要件、青色申告の承認が取り消されたときの扱い、残高の確認方法を、国税庁と法令の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
欠損金は何年繰り越せる?
結論: 平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は、10年間繰り越せます。それより前の分は9年です。古い年度の分から順に控除し、期限を過ぎた分は控除できません。
繰越期間は10年
法人税法57条1項は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で生じた欠損金額を、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できると定めています。国税庁のタックスアンサーNo.5762は、平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた欠損金額の繰越期間を9年としています。
繰り越せるのは、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金です。決算書の赤字と、税金の計算上の欠損金は一致しません。交際費の損金不算入など、申告書の別表四で調整した後の所得がマイナスの額が、欠損金額です。
期限の数え方
期限は、欠損金が生じた期の翌期を1期目として数えます。3月決算の会社なら、次のとおりです。
| 欠損金が生じた期 | 繰越期間 | 控除できる最後の期 |
|---|---|---|
| 令和8年3月期(令和7年4月1日〜令和8年3月31日) | 10年 | 令和18年3月期 |
| 平成30年3月期(平成29年4月1日〜平成30年3月31日) | 9年 | 令和9年3月期 |
平成30年3月期以前の欠損金が残っている会社は、年度ごとに期限が違います。期限は、決算の月数ではなく、事業年度の開始日で数えます。
古い年度の分から順に使う
欠損金が2つ以上の事業年度に残っているときは、最も古い年度の分から順に損金の額に算入します(国税庁タックスアンサーNo.5762)。使う年度を選ぶことはできません。
欠損金の繰越控除の処理でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、青色申告書を出していない年の赤字を繰り越す、申告書の提出が途切れる、帳簿書類を早く処分する、の3つです。どれも、控除できるはずの欠損金が控除できなくなります。
赤字の決算を前に、税金は出ないから今期の申告は後回しにしたい、と相談に来られる方が少なくありません。赤字の期の申告が、その後10年間の税金を左右します。
青色申告書を出していない年の赤字
繰り越せるのは、青色申告書である確定申告書を提出した事業年度に生じた欠損金です(法人税法57条1項)。青色申告の承認を受ける前の期や、白色申告の期に生じた赤字は、原則として繰り越せません。
例外は、災害による損失です。青色申告書を提出しなかった事業年度でも、棚卸資産などの災害による損失の部分は欠損金として繰り越せます(同法58条)。売上が減ったことによる赤字は、この例外に含まれません。
申告書の提出が途切れた年
法人税法57条10項は、欠損金が生じた事業年度に確定申告書を提出し、その後も連続して提出している場合に限り、繰越控除を適用すると定めています。納める税額が0の期も、申告書は出します。
ここでいう確定申告書には、期限後に出した申告書も含まれます(法人税法2条31号)。税金が出ない年に申告書を出していなかった期が見つかったときは、控除を受ける前に、その期の申告書を期限後でも出して連続した提出の状態を整えます。それより前の年度の欠損金は、これで控除の対象に残ります。
帳簿書類を7年で処分する
帳簿書類の保存期間は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年です。青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じたときは、その事業年度の帳簿書類を10年間保存します(国税庁タックスアンサーNo.5930)。
57条10項は、欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を保存していることも要件にしています。7年たった帳簿を処分すると、残高が別表に載っていても、控除の裏づけを失います。
直近の法人税申告書の別表七(一)と、過去の申告書の控え、保存している帳簿の一覧をお持ちいただければ、欠損金が生じた年度ごとに、青色申告書の提出、申告の連続、帳簿の保存が揃っているかを一緒に確かめます。
欠損金はいくらまで控除できる?
結論: 中小法人等は、繰越控除をする前の所得の全額まで控除できます。それ以外の法人は、所得の50%までです。
中小法人等は所得の全額
法人税法57条11項1号は、事業年度終了の時に中小法人等に当たる法人について、所得の50%という上限を外し、所得の金額まで控除できると定めています。繰越欠損金が残っている間は、所得がゼロになり、法人税がかかりません。
中小法人等の中心は、期末の資本金が1億円以下の普通法人です。ただし、資本金5億円以上の大法人と完全支配関係がある法人は、資本金が1億円以下でも除かれます(国税庁タックスアンサーNo.5800)。
判定は期末の状態で行います。期中に増資をして資本金が1億円を超えると、その事業年度から所得の50%が上限です。
それ以外の法人は所得の50%
中小法人等以外の法人は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度で、繰越控除をする前の所得の50%が上限です(国税庁タックスアンサーNo.5762)。所得の半分には、欠損金が残っていても課税されます。
計算例
繰越欠損金が1,500万円で、当期の繰越控除前の所得が400万円の場合は、次のとおりです(説明用の金額です)。
| 区分 | 控除額 | 課税される所得 | 翌期へ繰り越す欠損金 |
|---|---|---|---|
| 中小法人等 | 400万円 | 0円 | 1,100万円 |
| それ以外の法人 | 200万円 | 200万円 | 1,300万円 |
控除しきれなかった欠損金は、期限の範囲で翌期以降に回ります。
青色申告の承認が取り消されたら?
結論: 青色申告の承認が取り消されても、青色申告の年に生じた欠損金は、申告と帳簿の要件が揃っていれば控除できます。白色申告の年に生じた欠損金は繰り越せません。
取り消されても残る欠損金
承認の取消しで繰り越せなくなるのは、取り消された事業年度以後に生じる赤字です。それより前に、青色申告の年に生じていた欠損金を消すものではありません。国税庁は、欠損金が生じた事業年度が青色申告であれば、その後の事業年度の申告が白色申告でも、その欠損金は繰越控除の対象になると説明しています(タックスアンサーNo.5762)。
控除を受ける年に青色申告を続けている必要はありません。要件は、欠損金が生じた事業年度の青色申告書の提出、その後の連続した提出、帳簿書類の保存の3つです。
取り消された後の赤字は繰り越せない
税務署長は、帳簿書類の備付けや保存が規則に従っていないとき、帳簿に取引を隠したり仮装して記載したとき、税務署長の指示に従わないとき、確定申告書を期限までに出さないときに、承認を取り消せます(法人税法127条1項)。取消しは、取消しの理由に当たる事業年度にさかのぼって効力が生じ、その事業年度以後の申告書は白色申告として扱われます。
白色申告の年に赤字が出ても、繰り越せません。取り消された事業年度の赤字も同じです。
白色が続く期間
取消しの通知を受けた日から1年以内に出した承認の申請は、却下される場合があります(同法123条3号)。申請は、適用を受けたい事業年度の開始の日の前日までに出す決まりです(同法122条1項)。
この2つが重なるため、取り消された事業年度を含めて、少なくとも3事業年度は白色申告になります。その間に出た赤字は、災害による損失を除き、繰り越せません。
繰越欠損金の残高はどこで確認する?
結論: 残高は、法人税申告書の別表七(一)「欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書」で、欠損金が生じた事業年度ごとに確認します。決算書には載りません。
別表七(一)で見るところ
別表七(一)には、欠損金が生じた事業年度ごとに、当期に控除した額と、翌期へ繰り越す額を書きます。どの年度の分がいくら残っているかは、この表で分かります。申告書の控えが手元にないと確かめられないため、控えは欠損金が残る間、保管しておきます。
税理士が確認する順番
税理士は、決算のたびに次の順に確かめます。
期限が近い欠損金があるときは、当期の所得の見込みと並べて、どの年度の分をいつ使うかを決めます。控除の順番は選べないため、見通しを持って決算に臨むことになります。
繰戻し還付との違いは?
結論: 繰越控除は翌期以降の所得から欠損金を引く制度、繰戻し還付は前の期に納めた法人税を戻してもらう制度です。繰戻しに使った欠損金は、繰越控除の対象になりません。
繰戻し還付の条件
繰戻し還付は、原則として中小企業者等が対象です。欠損が生じた事業年度の確定申告書を期限までに出し、同時に還付請求書を出します。青色申告書である確定申告書を、前の期から連続して出していることも要件です(国税庁タックスアンサーNo.5763)。
中小企業者等以外の法人は、令和10年3月31日までに終了する事業年度に生じた欠損金について、清算中の事業年度や災害損失欠損金などを除き、適用されません。
どちらを選ぶか
前の期に法人税を納めていて、現金が先に要るなら、繰戻し還付で戻せます。前の期が赤字か納税が少なければ、戻す先の税額がないため、繰越控除になります。使った欠損金は両方には使えないため、申告の前に両方の試算を並べて決めます。
よくある質問
繰越欠損金を使う年度は選べますか?
赤字で税額が0の期も、申告書を出す必要がありますか?
白色申告になると、それまでの欠損金は消えますか?
資本金1億円以下なら、必ず所得の全額まで控除できますか?
まとめ:期限と要件を確かめよう
- 欠損金は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた分が10年、それ以前の分が9年繰り越せます
- 古い年度の分から順に控除し、期限を過ぎた分は控除できません
- 控除の限度は、中小法人等が所得の全額、それ以外の法人が所得の50%です
- 青色申告の承認が取り消されても、青色申告の年の欠損金は控除できます。白色申告の年の赤字は繰り越せません
- 申告書の連続した提出と、10年間の帳簿書類の保存が、控除を受ける条件です
繰越欠損金の期限が近い方、青色申告の承認の取消しや申告書の出し忘れが心配な方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。別表七(一)と過去の申告書を確認し、年度別の期限と要件、当期の所得の見通しを整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」
- 国税庁 タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」
- 国税庁 タックスアンサー No.5800「一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について」
- 法人税法 第57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)、第58条(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)
- 法人税法 第122条(青色申告の承認の申請)、第123条(青色申告の承認申請の却下)、第127条(青色申告の承認の取消し)





