創業融資の基本と準備の進め方

「自己資金がほとんどないので、相談しても門前払いになる気がしている」。「事業計画書というものを作った経験がない」――創業融資の相談で最初に出てくるのは、この2つです。

先に結論をお伝えすると、自己資金の要件は制度上すでにありません。日本政策金融公庫が2024年4月に融資制度を拡充した際、それまで求められていた「創業資金総額の10分の1以上」という自己資金要件は撤廃されました。ただし、要件がなくなったことと、審査で自己資金を見られなくなったことは別の話です。

税理士法人Light UPでは、創業融資の準備は借入額の交渉ではなく、開業後の資金の流れを先に描く作業だと考えています。いくら借りられるかを起点にすると、返済が始まった後で苦しくなるからです。

この記事では、2024年に何が変わったのかを制度の資料で確認したうえで、審査で実際に見られること、創業計画書の9つの欄をどう埋めるか、申し込みまでの時間の使い方、つまずきやすい点までを、相談を受けている立場から整理します。

創業融資の中心は日本政策金融公庫

結論: 創業融資とは、決算実績のない事業者が開業前後に受ける融資を指し、日本政策金融公庫の融資と、信用保証協会の保証を付けた自治体の制度融資が二本柱です。

創業したばかりの会社には、判断材料になる決算書がありません。民間の金融機関は過去の数字で返済力を見ますから、その数字がない段階では審査の土俵に上がりにくい。ここを政策的に補っているのが日本政策金融公庫(以下「公庫」)です。

現在の中心的なメニューは「新規開業・スタートアップ支援資金」で、対象は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」と定められています。開業前でも、開業して数年経っていても、同じ枠で相談できます。

もう一つの柱が、都道府県や市区町村が用意する制度融資です。信用保証協会が保証を付け、自治体が利子や保証料の一部を補助する形が一般的で、窓口は民間の金融機関になります。公庫と制度融資は併用でき、両方から調達する創業者も珍しくありません。

2024年に変わった4つの点

結論: 公庫は2024年4月に創業者向けの融資制度を拡充し、自己資金要件の撤廃、融資限度額の引き上げ、運転資金の返済期間の延長、据置期間の延長という4つの変更を行いました。

新創業融資制度の廃止

以前は「新創業融資制度」という無担保・無保証人の特例があり、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金があることなどが要件とされていました。この制度は廃止され、内容は新規開業資金へ引き継がれています。

古い情報を載せたままの記事や書籍がまだ流通しています。自己資金要件について調べる際は、いつ時点の情報かを見ないと判断を誤ります。

拡充の内容

日本政策金融公庫の2024年4月1日付ニュースリリース「スタートアップサポートプラザの新設について」の別紙には、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が無担保・無保証人で利用する場合の条件が、次のように変わったと示されています。

項目 2023年度 2024年度以降
自己資金の要件 創業資金総額の10分の1以上 なし
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間(設備資金) 20年以内 20年以内
返済期間(運転資金) 7年以内(原則) 10年以内(原則)
据置期間 2年以内 5年以内

枠と限度額の両方が動いています。使える範囲が広がったぶん、要件も確認が要ります。

据置期間が2年から5年へ

限度額が2.4倍になった点に目が行きますが、実務で差が大きいのは据置期間です。据置期間とは、元金の返済を待ってもらい、利息だけを支払う期間のこと。これが2年から5年に延びたことで、売上が立ち上がるまでの資金繰りに余裕を作れるようになりました。

開業から数か月で軌道に乗る事業ばかりではありません。設備が仕上がって、客が付いて、リピートが生まれるまでの助走期間を、元金の返済に追われずに済ませられるかどうか。ここは事業の生死を分ける場面があります。

利率が下がる場合

利率は基準利率が原則ですが、女性の方、35歳未満または55歳以上の方などが必要とする資金には特別利率が適用されます。創業塾や創業セミナーの受講者、Uターン等により地方で事業を始める方も対象です。年齢や属性で条件が変わる制度は珍しく、該当するなら確認する価値があります。

対象になる要件を満たすかどうかで変わります。

自己資金がゼロでも申し込めるのか

結論: 制度上の自己資金要件は撤廃されているため申し込み自体は可能ですが、審査の実務では自己資金の額と貯め方が計画性を示す材料として引き続き確認されます。

要件と審査は別のもの
制度の要件
自己資金要件は撤廃されている
申し込み自体はできる
審査で見られること
自己資金の額と貯め方
計画性を示す材料として確認される
額よりも、どう貯めたかの経緯

要件と審査は別のもの

要件がなくなったという情報だけが独り歩きして、準備をせずに窓口へ行く方がいます。ここは分けて考える必要があります。要件とは「これを満たさないと申し込めない」という入口の条件で、審査とは「返済できるか」を個別に判断する作業です。入口が広がっても、判断の中身が変わったわけではありません。

制度上は認められていても、審査で見られる点は別です。

実際の自己資金の水準

実際の水準を知っておくと、判断の目安になります。日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、その内訳は金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9パーセント)、自己資金が平均279万円(22.9パーセント)と報告されています。両者で調達額の90.7パーセントを占めます。

開業費用そのものは平均975万円、中央値は600万円。分布を見ると250万円未満が20.1パーセント、250万〜500万円未満が21.7パーセントで、4割以上が500万円未満に収まっています。長期的には少額化の傾向が続いています。

つまり、平均的な創業者は開業費用の2割前後を自分で用意し、残りを借りている。この形が標準です。自己資金がまったくない状態で全額を借りようとすると、標準から外れる分だけ、なぜそれで返せるのかを説明する責任が重くなります。

額よりも貯め方

もう一点、金額そのものより貯め方を見られます。毎月コツコツ積み立てた通帳と、申し込みの直前にまとまった額が振り込まれた通帳とでは、意味が違うためです。後者は見せ金ではないかと確認されます。親族からの贈与や借入であれば、隠さずにその旨を書いたほうが通ります。出所を説明できる資金は、説明できない資金よりも評価されます。

融資の種類と使い分け

結論: 創業期の資金調達には公庫の融資、自治体の制度融資、経営者保証を求めないスタートアップ創出促進保証があり、それぞれ限度額と手続きの重さが異なります。

種類 主な窓口 限度額の目安 特徴
新規開業・スタートアップ支援資金 日本政策金融公庫 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 原則として無担保・無保証人。据置期間は5年以内
自治体の制度融資 民間金融機関+信用保証協会 自治体により異なる 利子や保証料の補助がある。手続きに関係先が多く時間がかかる
スタートアップ創出促進保証 民間金融機関+信用保証協会 3,500万円 経営者保証を求めない。保証料率が0.2パーセント上乗せ

3つ目のスタートアップ創出促進保証は、中小企業庁が2023年3月15日に開始した制度です。創業予定者や創業から5年未満の法人を対象に、経営者の個人保証を不要とする点が特徴で、既存の創業者向け保証制度の保証料率に0.2パーセントを上乗せした料率が適用されます。融資後は原則として創業3年目と5年目に、専門家によるガバナンス体制のチェックを受けることが求められます。

個人保証を外せる代わりに、保証料の負担とチェックの手間が増える。どちらを取るかは、事業のリスクの大きさと、経営者個人の資産状況で変わります。飲食店のように設備投資が先行する業種と、在宅で始められる業種とでは、判断が変わって当然です。

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審査で確認される5つのこと

結論: 創業融資の審査では、経験と事業内容の整合性、計画の数字の根拠、自己資金の準備状況、資金使途の具体性、代表者個人の信用情報の5点が確認されます。

審査で確認される5つ
01
経験と事業内容の整合
これまでの経験と、始める事業がつながっているか
02
計画の数字の根拠
売上の見込みを、どう積み上げたか
03
自己資金の準備状況
額と、通帳に残る貯め方の経緯
04
資金使途と個人の信用情報
何にいくら使うか。代表者個人の返済の履歴も見られる

経験と事業内容の整合性

これから始める事業が、これまでの職歴とつながっているか。前掲の2025年度新規開業実態調査では、開業者のうち勤務経験のある人が97.6パーセント、斯業経験(現在の事業に関連する仕事の経験)のある人が81.1パーセントを占め、斯業経験の平均年数は15.3年でした。経験のある分野で始めるのが多数派です。

未経験の分野で始める場合、それだけで断られるわけではありません。ただ、経験の代わりになる根拠――共同経営者の存在、修業期間、取引先の確約――を用意しておく必要があります。

計画の数字の根拠

売上をどう見積もったのか。席数×回転数×客単価×営業日数のように、分解して説明できる形になっているかを見られます。前年比や業界平均から逆算しただけの数字は、根拠として弱いと判断されがちです。

分解しておけば、面談で数字の一部を突かれても、どの前提が動くのかをその場で答えられます。積み上げの式そのものが、説明の道具になります。

自己資金の準備状況と、資金使途の具体性

前述のとおり、額と貯め方の両方です。通帳の写しの提出を求められることがあります。

資金使途については、何にいくら使うのかを見積書の裏付けとともに示せるかを見られます。内装工事や車両購入といった設備資金は、見積書を添付するのが前提です。運転資金についても、人件費と広告宣伝費のように内訳へ分けて書きます。

代表者個人の信用情報

税金や公共料金の滞納、クレジットカードやローンの延滞は、事業の計画とは別に確認されます。個人の借入残高と年間返済額は創業計画書の記入欄そのものにあり、隠せる項目ではありません。心当たりがあるなら、事前に整理しておくほうが話は早く進みます。

延滞や債務整理の記録があると、事業の内容にかかわらず難しくなります。事前に自分で開示して確かめておくことです。

創業計画書の9つの欄

結論: 公庫の創業計画書は9つの欄で構成され、創業の動機から事業の見通しまでを1枚で説明する様式になっています。埋めにくいのは7番の資金と8番の見通しです。

公庫が公表している創業計画書の様式は、次の順に並んでいます。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係等
  5. 従業員
  6. お借入の状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し(月平均)
  9. 自由記述欄

2番の欄には「略歴については、勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください」という注記が印刷されています。会社名と在籍年数だけを並べた略歴では、審査する側が何もわからない、ということです。

7番の必要な資金と調達方法は、左に設備資金と運転資金、右に自己資金や借入の内訳を書き、左右の合計を一致させます。記入例には「金額は一致します」と明記されています。ここが合っていない計画書は、面談の前の段階で戻されます。

8番の事業の見通しは、創業当初と1年後(または軌道に乗った後)の2列で、売上高・売上原価・経費・利益を書きます。記入例では、人件費の欄に従業員数がわかる形で内訳を書くこと、支払利息は借入金×年利率÷12ヵ月で算出することが注記されています。個人営業の場合、事業主分の人件費はここに含めません。

計算の順序が逆になっている計画書をよく見ます。利益から逆算して売上を置くのではなく、売上の積み上げ方を先に決めて、そこから経費を引く。この順で作ると、面談で数字の根拠を聞かれたときに答えられます。

9番の自由記述欄は空欄のまま出す方が多いのですが、アピールポイントや、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスを書く欄です。悩みを書いて不利になることはありません。

創業計画書で埋めにくいのは2か所
9つの欄
前半の欄
創業の動機、経験、取扱商品、取引先。事実を書けば埋まる
7番の資金
設備資金と運転資金の内訳、調達の方法。見積りがないと書けない
8番の事業の見通し
創業当初と軌道に乗った後の売上と利益。根拠が要る
埋め方
見積りを先に取り、売上を単価と数量に分解する

準備の進め方と時間の目安

結論: 創業融資の準備は、自己資金の積み立て、事業計画の作成、必要書類の収集、申し込みと面談の4段階に分かれ、申し込みから融資実行までは1か月前後を見ておくと安全です。

準備の時間の目安
1

半年前から
自己資金を積み立てる。通帳に経緯が残る形で
2

3か月前から
事業計画の骨格を作る。売上の根拠を集める
3

1か月前
書類をそろえて申し込む
4

申し込み後
面談と現地確認。融資の実行まで1か月前後を見ておく

半年前から:自己資金と実績の準備

自己資金は、直前に用意するほど説明が難しくなります。可能なら半年以上前から、事業用の口座へ毎月積み立てておくと説明が通ります。この期間に、許認可の要件や物件の相場も調べておきます。

通帳に残る形で貯めておくこと、取引の実績があれば契約書や請求書を残しておくこと。この2つが半年でできる準備です。急に用意した資金は、出どころを聞かれます。

3か月前から:計画の骨格を作る

売上の見積もり方を決め、設備の見積書を取り、開業後の毎月の支出を並べます。ここで初めて、必要な借入額が決まります。借りたい額を先に決めてから計画を合わせるのは、順序が逆です。

売上の積み上げと、資金使途の内訳。この2つを先に固めます。数字が決まらないと、借入額も決められません。経験と事業内容のつながりも、この段階で言葉にしておきます。

1か月前:書類を揃えて申し込む

創業計画書のほか、見積書、許認可の書類、通帳の写し、本人確認書類などを準備します。法人の場合は履歴事項全部証明書も必要です。申し込みは、公庫の支店窓口のほかインターネットからも行えます。

見積書、賃貸借契約書、許認可の写し。事業によって要るものが違います。窓口で確認してからそろえると、二度手間になりません。

申し込み後:面談と現地確認

面談では、計画書に書いた内容を自分の言葉で説明できるかが見られます。書類を作った人と話す人が違うと、そこで齟齬が出ます。税理士に作成を手伝ってもらう場合でも、数字の根拠は経営者本人が把握している必要があります。

融資実行までは、申し込みから1か月前後が一つの目安です。書類の不足があると、そのぶん後ろへずれます。開業日から逆算して、余裕を持って動くのが現実的です。

借入額と返済期間の決め方

結論: 借入額は限度額から考えるのではなく、開業後の毎月の返済額が利益の範囲に収まるかどうかから逆算して決めます。

返済額から逆算する順序と、据置期間の考え方

限度額は7,200万円ですが、この額を借りられるという意味ではありません。創業融資で実際に決まる金額は、自己資金や計画の内容を踏まえた個別の審査によります。

判断の順序はこうです。まず開業後の月々の利益を見積もる。次に、そこから無理なく払える返済額を置く。返済額に返済期間を掛けたものが、借りられる範囲です。運転資金を10年で借りれば月々の負担は軽くなりますが、利息の総額は増えます。

据置期間の使い方も同じ発想で決めます。5年まで置けるからといって、最大限に取る必要はありません。売上が立ち上がる時期の見込みに合わせて、必要な長さだけを取る。据置期間中は元金が減らないため、その後の返済額が重くなる点も含めて考えます。

創業時に借りすぎるとどうなるか。手元の資金は厚くなりますが、返済が始まると毎月の固定支出が増えます。逆に借りなさすぎると、売上が計画どおりに立たなかったときに手詰まりになる。前掲の2025年度新規開業実態調査では、予想月商の達成率が50パーセント未満だった開業者が10.5パーセント、100パーセント以上だった開業者が58.7パーセントでした。約4割は計画に届いていません。

計画どおりにいかないことを前提に、数か月分の運転資金を上乗せしておく。これが実務的な落としどころです。

借入額をどこから決めるか
限度額から考える
借りられる上限まで借りる
返済額が利益を超えることがある
返せる額から考える
毎月の返済額が利益の範囲に収まるか
据置期間の後に返済が始まることを織り込む
運転資金と設備資金で期間を分ける

あわせて考えたい、個人か法人か

創業融資の相談は、個人事業として始めるか法人を設立するかの判断と重なります。法人で申し込む場合は履歴事項全部証明書が必要になるため、設立の登記を先に済ませる段取りになります。設立費用そのものも創業資金に含めて計画しておく必要があり、資金の準備時期に影響します。

一方で、開業当初の売上が小さいうちは、法人にすると社会保険料や均等割の負担が先に立ちます。融資の可否だけで決める話ではありません。

つまずきやすいところ

結論: 創業融資でつまずくのは、税金の滞納、資金の出所の説明不足、計画と経験の不一致、開業後の資金繰りの4点に集中します。

税金や社会保険料の滞納は、その事実だけで話が止まります。分納の手続きを取っているかどうかで扱いが変わるため、心当たりがあるなら、先に管轄へ相談しておく必要があります。

資金の出所については、前述のとおりです。親からの援助を自己資金として書き、後から借入だとわかると、書類全体の信頼性が下がります。

計画と経験の不一致は、飲食店で特に多く見られます。調理の経験はあっても、原価や人件費の管理をしたことがない場合、計画の数字が実態から離れます。

そして開業後です。前掲の調査では、開業時に苦労したこととして「資金繰り、資金調達」を挙げた人が56.9パーセントと最多で、次いで「顧客・販路の開拓」が49.9パーセント、「財務・税務・法務に関する知識の不足」が36.4パーセントでした。融資が下りた時点が終わりではなく、そこから資金繰りの管理が始まります。

つまずきやすいところ
01
税金の滞納
理由を問わず影響が大きい。先に整理しておく
02
資金の出所を説明できない
通帳に突然入った資金は、経緯を聞かれる
03
計画と経験が合っていない
未経験の分野で大きな売上を置くと、根拠を求められる
04
開業後の資金繰り
借りた後に回らないと、次の借入が難しくなる

相談事例|創業融資の4つの場面

結論: 実際のご相談では、金額の多寡よりも、説明の準備が足りていないことがつまずきの原因になっています。

自己資金が50万円だった飲食業の方。 要件が撤廃されたと聞いて相談に来られました。開業費用の見積もりは900万円。全額を借りる前提の計画でしたが、家賃と人件費を積み上げると、開業当初の返済が利益を上回っていました。物件の規模を一段下げ、開業時期を半年遅らせて自己資金を積み増す方向で計画を作り直しています。

通帳の入金を説明できなかった小売業の方。 申し込みの2週間前に300万円の入金があり、面談でその出所を聞かれました。実際には配偶者の親からの援助でしたが、計画書には自己資金と書いていました。最初から贈与として書いていれば済んだ話です。

「勤めていた業界だから大丈夫だと思っていた」――サービス業で独立された方からのご相談です。斯業経験は12年ありましたが、計画書の売上根拠が前職の店舗の実績をそのまま置いたものでした。立地も席数も違う以上、同じ数字にはなりません。自分の店の条件で積み上げ直したところ、必要な借入額が変わりました。

据置期間を最大で取った建設業の方。 5年の据置を設定し、その間は利息だけを払っていました。元金の返済が始まった6年目に月々の負担が跳ね上がり、資金繰りが厳しくなっています。据置期間は返済の免除ではなく、後ろ倒しです。

よくある質問

自己資金がゼロでも創業融資は受けられますか?
制度上の自己資金要件は2024年4月に撤廃されているため、申し込み自体は可能です。ただし審査では、自己資金の額と貯め方が計画性を示す材料として確認されます。2025年度新規開業実態調査では自己資金の平均は279万円で、調達額の22.9パーセントを占めています。
開業前と開業後では、どちらが申し込みやすいですか?
「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方と、事業開始後おおむね7年以内の方の両方が対象です。開業前は計画だけで判断されますが、開業後は実際の売上が判断材料に加わります。数字が計画を上回っているなら、開業後のほうが説明しやすい場面もあります。
公庫と制度融資は同時に申し込めますか?
併用できます。それぞれ審査が別に行われるため、両方に申し込む創業者もいます。ただし合計の返済額が過大にならないよう、開業後の資金繰りから逆算して決めてください。
創業計画書は税理士に作ってもらえますか?
作成の支援は可能です。ただし面談で説明するのは経営者本人ですので、数字の根拠は必ず共有したうえで進めます。当社では、売上の積み上げ方を一緒に決めるところから入っています。
融資を断られた場合、すぐに再申し込みできますか?
一般には、断られた直後に同じ内容で申し込んでも結果は変わりません。断られた理由を整理し、計画や自己資金の状況を改めたうえで、期間を置いて相談するのが現実的です。
補助金と組み合わせて使えますか?
使えます。補助金は原則として後払いのため、支出の時期と入金の時期にずれが生じます。そのつなぎを融資でまかなう組み合わせは、実務でよく見られます。

まとめ:借りられる額でなく、返せる額から決める

創業融資の自己資金要件は、2024年4月の制度拡充で撤廃されました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)に引き上げられ、据置期間も5年以内まで延びています。制度としては、以前よりはるかに使いやすくなりました。

一方で、審査で見られる中身は変わっていません。経験と事業の整合性、数字の根拠、自己資金の準備状況、資金使途、代表者個人の信用情報。この5点は、要件の有無にかかわらず確認されます。

準備の順序を間違えないことが、いちばんの近道です。借りたい額を先に決めて計画を合わせるのではなく、開業後の毎月の利益から返せる額を置き、そこから逆算する。据置期間も、取れるだけ取るのではなく、売上が立ち上がる時期に合わせて必要な長さだけを設定してください。

最後に、この記事で触れなかったことを一つ。融資が実行された日は、資金繰り管理の初日でもあります。開業時に苦労したこととして最も多く挙がるのが資金繰りである以上、借りた後にどう回すかまで含めて設計しておくべきです。

創業計画書の作り方や、借入額と返済期間の組み立てについては、税理士法人Light UPの無料相談で一緒に整理します。開業予定時期と必要な資金の見積もりをお持ちいただければ、そこから順に見ていきます。

補助金・助成金のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(制度概要・2026年8月時点)
  • 日本政策金融公庫 ニュースリリース「スタートアップサポートプラザの新設について」別紙(2024年4月1日)
  • 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)
  • 日本政策金融公庫「創業計画書」記入例(国民生活事業)
  • 中小企業庁「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します」

【メタディスクリプション】
創業融資の自己資金要件は2024年4月に撤廃されました。制度改正で変わった4点、審査で確認される5つのこと、創業計画書9欄の書き方、準備の時間の目安、借入額の決め方までを一次情報をもとに整理します。

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