補助金申請は税理士に頼める?税理士が見る範囲とよくある間違い
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
補助金の申請を税理士に頼んでも、申請書を代わりに書いてもらえるとは限りません。事業計画の作成と電子申請は申請者自身が行うことが、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金などの公募要領に定められているからです。税理士に頼めるのは、事業計画の数字の裏づけ、決算書との整合の確認、認定支援機関としての確認書、採択後の会計処理と税務までです。この記事では、頼める範囲と頼めない範囲の線引き、依頼でよくある間違い、認定支援機関の確認書、費用の決まり方を、事務局の公募要領と法令の原文(2026年10月時点)に沿って整理します。
補助金の申請は税理士に頼める?
結論: 税理士に頼めるのは、事業計画の数字の裏づけ、決算書との整合、認定支援機関の確認書、採択後の税務です。事業計画の作成と電子申請は、申請者自身が行います。
頼める範囲の早見表
何を誰に頼めるかは、次のとおりです。
| 頼みたいこと | 税理士に頼めるか | 補足 |
|---|---|---|
| 事業計画の数字の組み立て、決算書との整合の確認 | 頼める | 助言として受ける |
| 事業計画書の作成、電子申請の入力 | 申請者自身が行う | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領 |
| 申請書類の作成を報酬で請け負うこと | 行政書士の業務 | 行政書士法1条の3・19条 |
| 認定支援機関の確認書 | 認定を受けた税理士なら頼める | 要る補助金は限られる |
| 採択後の会計処理、圧縮記帳、申告 | 頼める | 税理士の業務 |
| 雇用関係の助成金の申請書の作成と手続きの代行 | 頼めない | 社会保険労務士の業務 |
事業計画は申請者自身が作る
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領(中小企業基盤整備機構・2026年9月28日変更)は、認定支援機関を含む外部支援者の助言を受けることは差し支えないとしたうえで、事業計画は必ず申請者自身で作成するよう求めています。作成自体を申請者以外が行ったことが分かると、不採択、採択取消、交付決定取消のいずれかになります。電子申請も申請者自身が行い、この補助金の電子申請システムには代理申請の機能がありません。
事業計画の中身を語れるのは経営者だけです。税理士は、計画の数字を決算書と照らし、投資の回収が数字で説明できる形にするところで関わります。
申請書類の作成と行政書士法
行政書士法は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを、行政書士の業務としています(1条の3)。行政書士でない者は、これを業として行えません(19条1項)。令和8年1月1日に施行された改正で、この制限は報酬の名目を問わず及ぶことが条文に書き込まれました。
事業承継・M&A補助金の16次公募(事業承継促進枠)の公募要領は、行政書士でない者が申請者に代わって有償で申請を作成することは、行政書士法違反に該当する可能性があると記し、行政書士に委任する場合は、行政書士証票の写しと委任契約書の提出を求めています。
税理士法2条2項は、財務書類の作成などの付随業務を認めていますが、他の法律で業として行うことが制限されている事項は除いています。依頼する側は、申請書の作成まで任せる契約になっていないかを最初に確かめます。税理士に頼む中身は、助言、数字、確認書、税務に置きます。
雇用関係の助成金は社会保険労務士
社会保険労務士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、雇用保険法などの労働保険の法令に基づく申請書の作成と提出手続きの代行を、業として行えません(社会保険労務士法2条1項・27条)。雇用関係の助成金は社会保険労務士に頼みます。
税理士への依頼でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、申請書の作成まで任せる契約、支援者の名前を書かないこと、交付決定前の発注、補助金の税金の見落とし、報酬の取り決めの5つです。
申請書の作成まで任せる契約
事業計画の作成を申請者以外が行うと、採択後でも取り消されます。事業承継・M&A補助金も、正当な事由なく申請者自身による申請と認められない場合は、不採択か交付決定の取消です。補助金は入らず、費用だけが残ります。
支援者の名前を申請書に書かない
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画作成支援者がいる場合、支援者名、支援内容、報酬の予定額、契約期間を電子申請システムに入力します。支援を受けているのに入力がないと、不採択、採択取消、交付決定取消のいずれかです。作成支援者の名前を書かないよう求めることも、公募要領は不適切な行為の例に挙げています。
交付決定前の発注
補助事業の実施期間は、交付決定日から数えます。この補助金の公募要領は、補助対象経費の欄で、交付決定後の発注と契約が前提であることを書いています。採択の通知の段階で設備を発注すると、その代金は補助の対象になりません。採択は交付決定とは別の段階です。
補助金の税金の見落とし
補助金は、支払いを受けた事業年度の収入として計上し、法人税等の課税対象になります(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領)。たとえば1,000万円の補助金が入っても(説明用の金額です)、手元に残る額は、税金の分だけ小さくなります。圧縮記帳を使えば課税を先に送れますが、免税ではありません。申請の前に手残りを計算しておかないと、納税資金が足りなくなります。
報酬の取り決めが曖昧
事務局は、提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬を請求すること、金額や条件が不透明な契約を結ぶことを、不適切な行為の例に挙げています。事業計画作成支援者が認定支援機関なら、認定支援機関名の公表、業務改善命令、認定取消に至る可能性があるとも書いています。
使いたい補助金の公募要領と直近2期分の決算書をお持ちいただければ、事業計画の数字が決算書と食い違っていないか、申請者が行う範囲と税理士に頼む範囲をどこで分けるかを、一緒に確かめます。
税理士は申請の前後で何を見る?
結論: 税理士が見るのは、申請前の事業計画の数字と決算書の整合、資金繰り、採択後の会計処理と圧縮記帳です。
事業計画の数字と決算書の整合
補助金の審査では、投資によって売上や利益がどう変わるかを数字で説明します。過去の決算の売上、原価、人件費の推移から外れた数字を置くと、実現できるのかを疑われます。税理士は、試算表と決算書を見ているため、計画の数字を過去の実績に照らせます。
申請に添える決算書や確定申告書の数字と、事業計画の数字が食い違うこともあります。売上の集計期間や従業員数の数え方といった細部で起きるため、提出前に突き合わせます。
資金繰りとつなぎの融資
補助金は後払いです。事業承継・M&A補助金の公募要領は、額が確定した後の精算払いと記しています。対象経費はいったん全額を支払うため、支払いから入金までの資金をどう用意するかが課題になります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、金融機関から資金提供を受けるとき、その金融機関の確認書の提出を求めます。融資の資料と補助金の計画は、同じ数字から作ります。
採択後の会計処理と圧縮記帳
法人税法42条は、固定資産の取得に充てるための国や地方公共団体の補助金について、一定の要件を満たすと、固定資産の帳簿価額の減額(圧縮記帳)を損金に算入できるとしています。要件は、補助金の返還が不要と事業年度の終了時までに確定していること、交付の目的に合う固定資産を取得していること、損金経理か積立金の経理をしていること、確定申告書に明細を書くことです。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、技術導入費や専門家経費のように固定資産の取得以外に充てられる部分は、圧縮記帳が認められないと書いています。採択時に相談しておくと、決算で慌てません。
認定支援機関の確認書は要る?
結論: 確認書が要るかは補助金ごとに違います。事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠は認定支援機関の確認書が要り、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、金融機関から資金提供を受けるときだけ金融機関の確認書が要ります。
補助金ごとの確認書
認定支援機関とは、中小企業支援の専門的な知識と実務経験が一定の水準以上にあるとして、国の認定を受けた機関です。税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会、商工会議所、金融機関などが認定を受けています。
| 補助金 | 必要な確認書 | 出典 |
|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠・16次公募) | 認定経営革新等支援機関による確認書 | 公募要領、必要書類の一覧 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回) | 金融機関から資金提供を受けるときだけ、その金融機関による確認書 | 公募要領 |
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、認定支援機関は事業計画を見直すための助言者の位置づけで、提出書類の一覧に認定支援機関の確認書はありません。補助金を選ぶたびに、その回の公募要領の提出書類の欄を読みます。
顧問税理士が認定を受けているかの確認
事業承継・M&A補助金の公募要領は、締切の直前に確認を依頼しても間に合わない場合があるため、余裕をもって依頼するよう求めています。顧問税理士が認定支援機関かどうかは、認定経営革新等支援機関検索システムで調べられます。認定には有効期間があるため、期限も見ます。外部を探す前に、顧問税理士に聞くのが早道です。
依頼の費用は何で決まる?
結論: 費用は事務所との契約で決まります。金額の大小より先に、引き受ける範囲、報酬の計算の基礎、不採択や減額のときの扱いを、書面で確かめます。
報酬の形と確かめる項目
この記事では金額の相場を書きません。公募要領が注意を促しているのは、提供するサービスの内容とかい離した高額な報酬と、金額や条件が不透明な契約です。
費用の形は、依頼したときに払うもの、顧問料に含めるもの、結果に応じて払うものに分かれます。どの形でも、契約の前に次の3点を書面で確かめます。
- 報酬の計算の基礎:交付決定額か、実際に入金された確定額か。実績報告で減額されたときの扱いが変わります
- 支払いの時期:採択のときか、補助金が入金されたあとか。採択のときに払うと、入金の前に支出が出ます
- 引き受ける範囲:申請前の相談だけか、交付申請と実績報告、決算の処理まで含むか
補助の対象にならない支援費用
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と事業承継・M&A補助金(16次公募)の公募要領は、書類の作成や手続きの代行の費用を補助の対象外としています。前者は事業計画書の作成支援者に払う経費を専門家経費の対象外とし、後者は税務申告や決算書の作成のために税理士に払う費用も対象外です。この2つの補助金では、申請の支援費用は全額が自己負担です。手元に残る額は、補助金から差し引いて計算します。
よくある質問
補助金の申請は、税理士に頼まないとできませんか?
申請書を税理士に書いてもらえますか?
助成金の申請も税理士に頼めますか?
支援に払った費用は、補助金の対象になりますか?
まとめ:頼むのは、数字と確認書と税務
- 事業計画の作成と電子申請は申請者自身が行います。税理士に頼めるのは、数字の確認、確認書、採択後の税務です
- 申請書類の作成を報酬で請け負うことは、行政書士の業務とされています。雇用関係の助成金は社会保険労務士に頼みます
- 認定支援機関の確認書が要る補助金は、事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠など、限られます
- 申請の前に、手残りの額と、報酬の計算の基礎、引き受ける範囲を書面で確かめます
補助金の公募が見えていて、事業計画の数字と決算書を整えたい方、採択後の処理まで見る税理士を探している方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。使いたい補助金の公募要領と直近の決算書を確認し、頼む範囲と、採択後の税務の流れを整理します。
出典
- 中小企業基盤整備機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回 公募要領(2026年9月28日変更)
- 中小企業基盤整備機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 事務局サイト(認定支援機関について)
- 事業承継・M&A補助金事務局 事業承継・M&A補助金(16次公募)事業承継促進枠 公募要領、申請手続きのページ
- 行政書士法(第1条の3、第19条)
- 総務省 行政書士法の一部を改正する法律要綱(令和8年1月1日施行)
- 税理士法(第2条)
- 社会保険労務士法(第2条、第27条、別表第一)
- 法人税法(第42条)
- 認定経営革新等支援機関の認定制度の案内(中小企業庁・認定経営革新等支援機関検索システム)





