助成金と補助金の違い|相談先と税務の扱い
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
助成金と補助金の最も大きな違いは、要件を満たせば受給できるか、審査を経て採択される必要があるかです。助成金は主に厚生労働省が所管し、要件を満たせば原則として支給されます。補助金は経済産業省・中小企業庁が所管し、公募・審査を経て採択された事業者だけが交付を受けられます。相談先も、雇用系助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務である一方、補助金は税理士や認定支援機関が支援できます。
助成金と補助金は何が違うのか
結論:助成金は要件を満たせば原則として支給される制度、補助金は公募と審査を経て採択された事業者が交付を受ける制度です。
同じ「返さなくてよいお金」として語られることが多い2つですが、所管する省庁も、受け取れるかどうかの決まり方も異なります。この違いを押さえておくと、自社が使える制度を探すときの見当がつけやすくなります。
所管する省庁が違う
助成金は主に厚生労働省と都道府県労働局が所管しています。雇用の維持・人材育成・働き方改革など、労働政策の目的で設けられているものが中心です。財源には雇用保険料が充てられています。
補助金は主に経済産業省・中小企業庁が所管しています。設備投資・販路開拓・事業再構築など、産業政策の目的に沿った取り組みを後押しするものが中心です。自治体が独自に設ける補助金もあります。
採択の有無という違い
助成金は、定められた要件を満たしていれば原則として支給されます。予算が尽きて締め切られる場合はありますが、他社との比較で落とされるという性質のものではありません。
補助金は公募制で、申請すれば必ず受け取れるわけではありません。事業計画の内容が審査され、採択された事業者だけが交付決定を受けます。制度によって採択率には幅があり、申請したものの採択に至らないケースも珍しくありません。
金額の規模の違い
助成金は1人あたり・1件あたりで金額が定められているものが多く、数十万円から数百万円の範囲に収まる制度が中心です。要件と単価が明示されているため、受給できる金額を事前に見積もりやすい点が特徴です。
補助金は制度によって幅が大きく、数十万円のものから、設備投資を伴う制度では数千万円規模のものまであります。ただし補助率が定められており、かかった経費の全額が交付されるわけではありません。自己負担分をどう用意するかが、実務上の論点になります。
相談先が法律で分かれている
結論:雇用系助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務であり、税理士・行政書士・民間コンサルタントが代行することは社会保険労務士法に違反します。
助成金と補助金では、誰に相談できるかが法律で分かれています。ここを知らずに依頼先を選ぶと、依頼した側も不利益を被る可能性があります。
助成金の相談先
厚生労働省が所管する雇用関係の助成金について、申請書類の作成や提出を代行できるのは社会保険労務士に限られます。社会保険労務士法は「労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成」と「その提出に関する手続の代行」を社会保険労務士の業務と定めており、報酬を得てこれを行えるのは有資格者だけです。
税理士・行政書士・民間のコンサルタントがこの代行を行うと、社会保険労務士法違反となります。実際に、助成金の申請代行を掲げる無資格の事業者が問題視される例が報じられています。制度の情報提供や、社会保険労務士への橋渡しは可能ですが、申請そのものの代行はできません。
依頼する側にとっても、無資格者に任せた結果として申請が受理されない、あるいは不正受給と判断されるといった不利益が生じるおそれがあります。手数料の水準を比べる前に、資格の有無を確認しておくことが安全です。
補助金の相談先
経済産業省系の補助金は、社会保険労務士の独占業務には当たりません。申請の支援は、認定経営革新等支援機関・行政書士・中小企業診断士・税理士など、複数の立場の専門家が関われます。
制度によっては、認定経営革新等支援機関の確認書が申請要件になっているものがあります。この場合、認定を受けた機関に関与してもらうことが前提となります。
税理士が関われる範囲
税理士が関われるのは、補助金の申請支援と、受け取った後の税務処理です。とくに後者は見落とされやすく、後述のとおり補助金・助成金は原則として課税対象になります。
顧問税理士がいる場合、自社の決算数値と事業計画を把握している立場から、補助金の事業計画づくりに関われる場面があります。雇用系助成金については、社会保険労務士へつなぐ形が実務では一般的です。
助成金と補助金の比較
結論:助成金は確実性が高く金額が読みやすい制度、補助金は金額が大きい一方で採択の不確実性がある制度です。
| 助成金 | 補助金 | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 厚生労働省・都道府県労働局 | 経済産業省・中小企業庁・自治体 |
| 目的 | 雇用の維持・人材育成・労働環境の改善 | 設備投資・販路開拓・事業再構築など |
| 受給の決まり方 | 要件を満たせば原則支給 | 公募・審査を経て採択 |
| 金額の目安 | 数十万円〜数百万円 | 数十万円〜数千万円 |
| 募集の時期 | 通年のものが多い | 公募期間が限られる |
| 申請代行ができる人 | 社会保険労務士(独占業務) | 認定支援機関・行政書士・税理士など |
| 財源 | 雇用保険料が中心 | 税金 |
目的に応じて使い分けるものと考えるほうが実態に合います。人を雇う・育てる場面では助成金、設備を入れる・新しい取り組みを始める場面では補助金、という整理がわかりやすい入口になります。
受け取ったお金にかかる税金
結論:補助金・助成金はいずれも法人税・所得税の課税対象となり、原則として受け取った事業年度の益金または収入金額に算入します。
制度を調べる段階では見落とされやすいものの、実務で必ず問題になるのが税務の扱いです。返さなくてよいお金であっても、税金がかからないわけではありません。
益金に計上する時期
補助金・助成金は、原則として交付決定があった事業年度の益金または収入金額に算入します。国税庁は補助金等の収益計上時期について「その交付を受けるべき金額が具体的に確定した日」を基準とする考え方を示しており、交付が決まった時点で判定します。
決算期をまたぐ場合、交付決定は当期、入金は翌期という状況が生じます。この場合は当期に未収入金として計上することになり、現金がないのに課税所得が増える形になります。現金が入る前に、納税資金だけを別に確保しておく必要があります。
個人事業主の場合も考え方は同じで、事業に関連して受け取った補助金・助成金は事業所得の総収入金額に算入します。ただし制度によっては一時所得や非課税として扱われるものもあるため、受け取った制度ごとに区分を確認する必要があります。
圧縮記帳という方法
設備投資に対する補助金などでは、圧縮記帳という制度を使える場合があります。取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額だけ減らすことで、その事業年度の課税所得を抑える方法です。
たとえば1,000万円の機械を導入し、500万円の補助金を受けたとします。圧縮記帳を使わなければ、補助金500万円がそのまま益金となり、その期の課税所得が増えます。圧縮記帳を使えば機械の帳簿価額を500万円に引き下げ、同額を損金に算入することで、その期の課税を抑えられます。
ただしこれは税金がなくなる制度ではありません。帳簿価額を下げたぶん、その後の減価償却費が小さくなるため、課税が後の年度へ繰り延べられる仕組みです。適用には要件があり、対象とならない補助金もあります。とくに雇用系の助成金は固定資産の取得を伴わないため、圧縮記帳の対象になりません。
消費税の扱い
補助金・助成金は、消費税法上は課税の対象となる取引に当たらないため、不課税として扱います。売上に係る消費税は生じません。
一方で、補助金を使って購入した資産や役務にかかった消費税は、原則として仕入税額控除の対象になります。ただし補助金などの対価性のない収入(特定収入)がある場合の調整など、事業者の区分によって扱いが変わる部分があるため、処理の前に確認が必要です。
2026年度に動いている主な制度
結論:補助金は年度ごとに再編・名称変更が行われるため、前年度の情報のまま探すと制度そのものを見落とします。
制度は毎年度の予算で組み直されます。名称が変わったり、統合されたり、要件が入れ替わったりするため、探し方にも注意が要ります。
名称が変わった制度もある
2026年度は再編と名称変更が目立ちます。たとえばIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変わりました。以前の名称で検索していると、現行の公募情報にたどり着けません。
制度を探すときは、名称ではなく「何に使いたいか」から入るほうが確実です。設備投資なのか、販路開拓なのか、人材の採用・育成なのかで、当たるべき所管が変わります。
自治体の制度も確認する
国の制度だけでなく、都道府県や市区町村が独自に設ける補助金があります。金額は国の制度より小さいものが多い一方、対象が絞られているぶん採択されやすい傾向があります。
国の補助金と自治体の補助金は、対象経費が重ならなければ併用できる場合があります。事業所の所在地の自治体で、どのような制度が用意されているかは一度確認しておく価値があります。
情報の探し方
補助金は中小企業庁の「ミラサポplus」、助成金は厚生労働省のサイトで一覧が公開されています。いずれも公募要領が一次情報であり、まとめ記事の要約だけで判断すると要件を読み違えるおそれがあります。
公募期間は数週間から1、2か月程度に限られる制度が多く、公募開始を知ってから準備を始めると間に合いません。関心のある制度は、前年度の公募時期を確認しておくと備えやすくなります。
申請から入金までの流れ
結論:補助金は交付決定の前に発注や契約をすると対象外になることがあり、入金は事業完了後の精算払いが原則です。
制度そのものよりも、手続きの順序を誤って対象外になる例が実務では目立ちます。流れを把握しておくと、避けられる失敗が減ります。
- 公募要領の確認:対象者・対象経費・補助率・スケジュールを確認します
- 申請書と事業計画の提出:補助金では事業計画の内容が審査されます
- 採択・交付決定:ここで初めて発注・契約に進めます
- 事業の実施:交付決定後に発注し、期限内に完了させます
- 実績報告:領収書・成果物などの証拠書類を添えて報告します
- 確定・入金:報告内容が確認された後、精算払いで入金されます
とくに3番目が重要です。交付決定の前に発注や契約をした経費は、対象外とされるのが原則です。急いで設備を入れたあとで補助金の存在を知り、申請できないと分かるという相談は少なくありません。
対象外と判定される基準は、支払いの時期ではなく発注・契約の時期です。交付決定を待たずに見積書へ押印した、あるいは口頭で発注を済ませていた、といった事実があると対象から外れる場合があります。判断に迷う場面では、公募要領の該当箇所を確認するか、事務局へ照会してから動くほうが確実です。
助成金の場合は流れが異なります。制度によっては、計画の届出を先に行い、その計画に沿って取り組みを実施してから支給申請するという二段構えになっています。この場合も、届出の前に着手した取り組みは対象外とされるのが一般的です。
つまずきやすい点
結論:資金繰り・書類の保存・事業完了後の報告義務の3点で、申請時に想定していなかった負担が生じることがあります。
入金までのつなぎ資金
補助金は精算払いが原則のため、まず自社で経費を支払い、その後に交付を受けます。申請から入金まで1年近くかかる制度もあり、その間の資金は自社で用意する必要があります。
たとえば補助率2分の1・上限1,000万円の制度で2,000万円の設備を導入する場合、まず2,000万円を全額支払い、実績報告と確定を経てから1,000万円が入金されます。手元に必要なのは自己負担分の1,000万円ではなく、いったん2,000万円である点が見落とされやすいところです。
補助金の入金を前提とした資金計画を組んでいると、事業の実施期間中に資金が不足する事態を招きます。つなぎの資金をどう確保するかを、申請の段階で検討しておくことをおすすめします。金融機関によっては、交付決定通知を確認したうえで、入金までのつなぎ融資に応じる場合があります。
保存が必要な書類
実績報告では、経費の支出を裏づける見積書・発注書・請求書・領収書などの提出を求められます。証拠書類が揃わない経費は、対象外とされることがあります。
書類は報告後も一定期間の保存義務があり、後日の調査で提示を求められる場合があります。制度ごとに保存すべき期間が定められているため、公募要領の記載を確認しておく必要があります。
報告義務が続く期間
補助金によっては、事業が完了した後も数年にわたって事業化の状況を報告する義務が課されます。取得した設備を処分する際に届出が必要となる制度もあります。
受け取って終わりではないという点を、申請前に理解しておくと計画が立てやすくなります。報告の担当者を決めずに進めると、担当者の異動や退職とともに義務そのものが引き継がれないという事態が起こります。誰が何年まで報告するのかを、交付決定の時点で書き残しておくことをおすすめします。
申請を代行業者に頼むとき
結論:助成金の申請代行は社会保険労務士、補助金の申請支援は認定経営革新等支援機関などが担います。資格のない業者による代行には注意が必要です。
誰が代行できるかと、手数料の水準を確認すること
雇用に関する助成金の申請書類の作成と提出代行は、社会保険労務士の業務です。資格のない業者がこれを行うことは認められていません。
補助金の申請支援については、この制限がありません。ただし、認定経営革新等支援機関の関与が要件となっている制度もあります。
成功報酬として受給額の一定割合を求める形が一般的です。割合と、着手金の有無を契約前に確認してください。
受給額の3割を超えるような水準を提示された場合は、他社にも相談することをお勧めします。
実態のない申請に加担しない。顧問税理士に相談する
受給の要件を満たしていないのに、書類上だけ整えて申請する。こうした提案を受けた場合は断ってください。
不正受給と判断されれば、返還に加えて事業主名の公表などの措置がとられます。
外に頼む場合でも、判断そのものは自社に残ります。
制度の情報だけでも、顧問税理士に確認する価値があります。会社の状況を把握している立場から、そもそも対象になるかを判断できます。
よくある相談事例
助成金の代行業者から営業を受けた例
助成金の申請代行を持ちかけられ、依頼してよいか迷って相談に来られるケースです。まず確認するのは、その事業者が社会保険労務士の資格を持っているかという点です。
雇用系助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務であるため、無資格の事業者による代行は法律に反します。手数料の水準だけで判断せず、資格の有無から確認することをおすすめしています。
設備を入れた後に補助金を知った例
先に設備を発注し、支払いも済ませた後で補助金の存在を知ったというご相談も多く寄せられます。交付決定前の発注は対象外とされるのが原則のため、この段階では申請できない制度がほとんどです。
このような場合は、次の設備更新や別の取り組みに向けて、公募のスケジュールを先に押さえる形に切り替えます。制度は毎年度の予算で動くため、翌年度の動きを早めに追う体制をつくることが対策になります。設備投資の計画が持ち上がった段階で顧問税理士に共有してもらえれば、使える制度がないかを先に確認できます。
決算期をまたいで課税が生じた例
補助金の交付決定が期末近くにあり、入金は翌期という状況で、想定外の課税所得が生じたというのが相談の中身でした。交付決定の時点で益金に算入するため、現金がないまま納税が発生する形になります。
圧縮記帳が使えるかどうか、使えない場合に納税資金をどう用意するかを、交付決定の段階で確認しておくと慌てずに済みます。
入金の前に納税の期限が来る形です。
よくある質問
助成金と補助金は、両方同時に使えますか?
税理士に助成金の申請を頼めますか?
補助金は本当に返さなくてよいのですか?
採択されやすくなる方法はありますか?
どの制度が自社に合うのか、どうやって絞り込めばいい?
まとめ:目的に応じて使い分け、相談先を間違えない
- 助成金は要件を満たせば原則支給、補助金は審査を経て採択される制度です
- 雇用系助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務で、税理士は代行できません
- 補助金・助成金はいずれも課税対象で、交付決定のあった事業年度に益金算入します
- 交付決定の前に発注すると対象外になるため、手続きの順序を守る必要があります
- 精算払いが原則のため、入金までのつなぎ資金を申請段階で検討しておきます
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