従業員承継とMBO|資金をどう作るか

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

「番頭に継がせたいのですが、株を買う資金がありません」。後継者が親族内にいない会社で、最も多くいただくご相談です。任せたい人はいるのに、資金の壁で止まっているという状態です。

結論からお伝えすると、従業員承継で資金を作る方法は5つあります。個人の借入、持株会社を使う方式、公的な融資制度、信用保証協会の事業承継特別保証、そして段階的な移転です。多くの場合、これらを組み合わせて設計することになります。

税理士法人Light UPでは、まず株式の評価額と、後継者が用意できる金額の差を数字にすることをお勧めしています。差の大きさによって、選べる方法が変わるためです。

この記事では、なぜ資金が壁になるのか、5つの資金調達の方法、持株会社を使うときの仕組みと注意点、経営者保証の扱い、そして株式の分散を防ぐ設計までを整理します。承継先を選ぶ段階の議論は、別の記事にまとめています。

なぜ資金が壁になるのか

結論: 自社株の評価額は、後継者個人の資力とは無関係に決まるためです。会社が優良であるほど、この差は大きくなります。

評価額は業績と純資産で決まる

非上場株式の評価額は、業績と純資産の積み上げで決まります。長年黒字を続け、内部留保を厚くしてきた会社ほど評価額は高くなります。業績がよい会社ほど、承継の資金が必要になるという関係です。従業員が長年働いてきた会社であっても、その株式を買い取る資金を個人で用意できることはまずありません。数千万円から億の単位になることも珍しくありません。

親族内承継との違い

親族内であれば、贈与や相続という無償の移転が使えます。贈与税や相続税はかかりますが、株式の代金そのものは発生しません。従業員承継では、贈与という選択が現実的でない場合がほとんどです。現経営者にとっては、老後の資金として売却代金が必要という事情もあります。結果として、有償での移転が前提になります。

現経営者の側の事情

現経営者が株式を手放すとき、その代金は老後の生活資金や、他の相続人への配分の原資になります。安く譲れば後継者の負担は減りますが、現経営者と他の家族の生活に影響します。双方の事情が正面からぶつかるのが、従業員承継の資金の問題です。この構造を理解したうえで、無理のない金額と方法を探すことになります。

方法1:後継者個人の借入

結論: 最もわかりやすい方法ですが、返済の原資が役員報酬に限られるため、金額に上限があります。

仕組み

後継者が金融機関から個人で借り入れ、その資金で株式を買い取ります。返済は、役員報酬から行うことになります。役員報酬には所得税と社会保険料がかかるため、手取りから返済するという構造です。返済に充てられる金額は、手取りの一部に限られます。報酬を増やせば返済に回せる額も増えますが、増やした分にも所得税と社会保険料がかかるため、思ったほど手取りは増えません。会社の側でも人件費が増えるため、利益が圧迫されます。

金額の目安

たとえば返済に年間300万円を充てられるとして、10年で3,000万円です。これを超える評価額の会社では、この方法だけでは足りません。返済期間を延ばせば金額は増やせますが、後継者の年齢という制約があります。50代で承継する場合、15年や20年の返済計画は現実的ではないこともあります。従業員承継では後継者が現経営者と年齢が近いことも多く、この制約が重くなります。40代の後継者であれば選択肢は広がりますが、社内での支持を得るには年数が必要という別の事情もあります。

使いどころ

評価額が比較的小さい会社、あるいは他の方法と組み合わせて一部を賄う場合に向いています。手続が単純で、会社の資本構成を変えずに済むという利点があります。株式の一部を先に買い取り、残りを段階的に移すという形にすれば、この方法でも進められます。まず議決権の過半数だけを取得し、残りは数年に分けて買い増すという設計です。持株会社を作る手間もかからないため、規模の小さい会社では現実的な選択になります。

どの方法を選ぶか
株式の評価額と、後継者が用意できる金額の差はどれくらいか
→
数百万円から1,000万円程度
個人の借入で賄える範囲。公的融資も検討する
数千万円
持株会社方式か、段階的な移転を組み合わせる
1億円を超える
持株会社方式が現実的。株価を下げる対策も並行して検討する
後継者に返済能力がない
承継の方法そのものを見直す。第三者承継も選択肢に入る

方法2:持株会社を使う方式

結論: 後継者が設立した会社が借入で株式を買い取り、事業会社からの配当などで返済する方法です。金額が大きい場合の現実的な選択肢になります。

仕組み

後継者が新たに会社(持株会社)を設立し、その会社が金融機関から借り入れて、現経営者から事業会社の株式を買い取ります。返済の原資は、事業会社から持株会社への配当や、事業会社からの経営指導料などです。返済を法人の資金で行えるという点が、個人の借入との最大の違いです。事業会社が生み出す利益を、そのまま返済に充てられるということです。個人の給与を経由しないため、途中で所得税と社会保険料が引かれません。この差が、返済に必要な原資の大きさを変えます。

個人の借入より有利になる理由

個人が返済する場合、役員報酬に所得税と社会保険料がかかった後の手取りから返します。法人が返済する場合、事業会社から持株会社への配当は受取配当等の益金不算入の対象になることがあり、税負担が軽くなります。同じ返済額でも、必要な原資が小さくて済むという構造です。ただし、益金不算入の割合は持株比率によって変わるため、事前に確認が必要です。完全子法人株式等に当たる場合は全額が益金不算入になりますが、持株比率が低いと不算入の割合も下がります。全株を取得するかどうかで、返済の設計そのものが変わることになります。

注意すべき点

持株会社は借入だけを抱えた会社になるため、事業会社の業績が落ちると返済が滞ります。また、グループ全体の借入が増えるため、金融機関の評価にも影響します。事業会社の収益力が返済を支えられるかどうかが、成立の条件です。加えて、租税回避と見られない実態が必要になります。持株会社を作る目的と、その後のグループの運営方針を説明できる形にしておくことが求められます。

個人の借入と持株会社方式
個人の借入
手続が単純で会社の資本構成が変わらない
返済原資は役員報酬の手取り
所得税と社会保険料を負担した後の資金で返す
金額の上限が低い
持株会社方式
返済を法人の資金で行える
受取配当等の益金不算入が使える場合がある
グループ全体の借入が増える
目的と運営方針を説明できる実態が要る

方法3:公的な融資制度

結論: 日本政策金融公庫には、事業承継に関する融資制度があります。個人でも法人でも利用の対象になります。

制度の位置づけ

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、事業承継や事業の再編に取り組む事業者を対象とした融資制度です。株式の取得資金も対象になるという点が、この制度の実務上の価値です。民間の金融機関では、株式取得のための融資は判断が分かれることがあります。事業の設備や運転資金と違い、株式は直接的に収益を生む資産ではないためです。公的な制度に事業承継のための枠があることは、資金計画の土台になります。

利用の要件

制度の対象になるかどうかは、事業承継計画の内容や、承継の形態によって判断されます。詳細な要件と金額の上限は制度によって違い、改定もあるため、利用を検討する段階で公庫の窓口に確認する必要があります。制度の名称と内容は改定されることがあるため、古い情報をそのまま前提にしないでください。事業承継に関する支援策は、この10年ほどで何度も見直されています。ウェブ上の解説記事には旧制度の内容が残っていることも多く、金額や要件がそのまま使えるとは限りません。

民間金融機関との併用

公的な融資だけで全額を賄えるとは限りません。民間の金融機関からの借入と組み合わせることが一般的です。メインバンクには早い段階で相談しておくことが、資金計画を立てるうえで有効です。承継の計画を共有していれば、金融機関の側でも準備ができます。後継者を紹介し、面談の機会を重ねておくことにも意味があります。融資の判断では、後継者本人が事業をどう見ているかという点も見られます。

事業承継・相続・M&Aは私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

方法4:信用保証協会の保証

結論: 事業承継に関連する保証制度があり、経営者保証を不要とする枠組みも設けられています。

事業承継特別保証

一定の要件を満たす事業者について、経営者保証を不要とする保証制度が設けられています。承継の際に後継者が保証を引き受けることへの抵抗が、承継を妨げる要因になっているという背景があります。保証を求められないことが、承継を決断する材料になるという制度の趣旨です。要件には財務の状態に関する基準が含まれます。会社の借入が数億円ある状況で、個人がその保証を負うかどうかは重い決断です。制度の枠組みがあることを知らずに、承継そのものを断念している例もあります。

要件の確認

財務要件として、資産超過であること、返済に一定の余裕があることなどが求められます。これらを満たすには、承継の数年前から準備が必要です。役員貸付金の整理や、不要な資産の処分といった作業が、要件を満たすための実務になります。決算を何期か経ないと形が整わないため、早めの着手が必要です。役員貸付金は一度に解消できるものではなく、報酬から返済する形を数年続けることになります。承継の話が出てから始めても間に合いません。

制度は変わる

保証制度の内容や要件は改定されます。利用を検討する段階で、信用保証協会または取引金融機関に最新の内容を確認してください。過去に聞いた条件をそのまま前提にすると、計画が崩れます。とくに保証を不要とする枠組みは、対象となる要件が細かく定められています。自社が該当するかどうかは、決算書を示して具体的に確認するのが確実です。

方法 返済の原資 向く規模 主な留意点
個人の借入 役員報酬の手取り 数百万円〜1,000万円程度 所得税と社会保険料の後の資金で返す
持株会社方式 事業会社からの配当・経営指導料 数千万円以上 グループ全体の借入が増える。実態の説明が要る
公的な融資制度 事業の収益または役員報酬 併用が前提 要件と金額は改定される。窓口で確認する
信用保証協会の保証 同上 併用が前提 財務要件を満たすのに数年かかる
段階的な移転 その時々の資力 すべての規模 移し終えるまでの期間、株式が分かれた状態が続く
資金計画を作る順番
1

株式の評価額を測る
ここが分からないと必要な金額が決まらない
2

後継者が用意できる金額を確認する
自己資金と、返済に充てられる年額
3

差額を埋める方法を選ぶ
個人の借入・持株会社方式・公的融資・保証制度の組合せ
4

金融機関に早めに相談する
メインバンクと公庫の両方。要件を整える時間を確保する
5

経営者保証の扱いを決める
現経営者の保証を外せるか、後継者が引き受けるか

方法5:段階的な移転

結論: 一度に全株を移さず、数年に分けて買い取る方法です。資金の負担を平準化できます。

議決権を先に確保する

経営に必要なのは議決権であり、全株の保有ではありません。まず過半数を確保し、残りは時間をかけて買い取るという設計が可能です。3分の2を確保できれば、定款変更などの特別決議も単独で行えます。全株の取得を前提にすると資金の壁が高くなりますが、必要な議決権に絞れば金額は下がります。評価額8,000万円の会社なら、3分の2で約5,300万円、過半数なら約4,000万円です。この差は資金計画に直接影響します。

現経営者が一部を保有し続ける

現経営者が少数株主として残る形もあります。ただし、この場合は将来の相続で株式が分散する可能性が残ります。残す期間と、その後どうするかを最初に決めておく必要があります。買取りの時期と価格を、あらかじめ合意しておく方法もあります。決めないまま時間が経つと、現経営者に相続が発生したときに、その相続人と交渉することになります。当事者が変われば、話は最初からやり直しです。

種類株式を使う

議決権のない株式を発行し、現経営者にはそちらを保有してもらうという設計もあります。配当は受け取れるが経営には関与しないという形です。資金の負担を抑えながら、経営権を確実に移せるという利点があります。ただし、種類株式の設計には定款の変更と登記が必要で、内容によっては複雑になります。将来その株式をどう処理するかも決めておかないと、結局は同じ問題が先送りされるだけになります。取得条項を付けて、一定の事由が生じたら会社が取得できる形にしておく方法もあります。

議決権の割合で何ができるか
01
過半数(50%超)
取締役の選任・解任、決算の承認など、通常の決議を単独で行える
02
3分の2以上
定款の変更、事業譲渡、組織再編などの特別決議を単独で行える
03
3分の1超
特別決議を阻止できる。少数株主に残ると経営の障害になり得る
04
全株
完全に自由な経営ができるが、取得に必要な資金は最も大きい

経営者保証をどう扱うか

結論: 現経営者の保証を外し、後継者に二重には求めないという方向で協議します。要件を整えるには時間がかかります。

二重には求めない扱い

経営者保証に関するガイドラインには、事業承継時の取扱いに関する特則があります。前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則とする考え方が示されています。前の代表の保証を外すことと、後継者に求めないことは別の論点として扱われます。金融機関との協議では、この2つを分けて話すことになります。前の代表の保証は外れたが後継者が新たに保証を提供した、という結果になることもあります。それでは承継の障害は解消されていません。

要件を整える

法人と個人の資産が明確に分離されていること、財務基盤が強化されていること、金融機関への情報開示が適切に行われていること。この3つが基本的な要件です。役員貸付金や個人名義の事業用資産があると、資産の分離という要件を満たしません。承継の3年から5年前から整理を始める必要があります。工場や店舗の土地建物が経営者個人の名義になっている会社は少なくありません。会社が買い取るか、賃貸借の契約を明確にするかという整理が要ります。

後継者の判断材料になる

保証を引き受けるかどうかは、従業員が承継を受けるかどうかの判断に直接影響します。会社の借入が数億円ある場合、その保証を個人で負うことは大きな決断です。保証の扱いが決まらないと、承継の話そのものが進まないことがあります。資金計画と同じ優先度で扱う必要があります。後継者の家族が反対する理由も、多くは保証にあります。株式の取得資金と保証の2つが同時に個人に乗るため、負担が重く見えるということです。

株式の分散を防ぐ設計

結論: 従業員承継では、複数の役員で分けて持つという形になりやすく、将来の分散のリスクが生じます。

分散を防ぐために先に決めておくこと
1

誰が何株持つか
後継者に集中させるか、複数で分けるか
2

譲渡制限を定款に置く
会社の承認がなければ第三者に譲渡できない形にする
3

退職時・死亡時の扱いを決める
買い取るのか、相続を認めるのか
4

価格の決め方を合意する
決算書のどの数字を使うかまで文書にしておく
5

買取りの資金源を決める
会社が買うのか個人が買うのか。財源規制も確認する

複数人で持つ場合の問題

資金の負担を分散するために、複数の役員が株式を持ち合うという形が取られることがあります。当面は問題なく回りますが、そのうちの1人が退職したり、相続が発生したりすると、株式が社外に出る可能性があります。後継者に集中させられないなら、退職時の買取りを定めておく必要があります。当面の資金負担を軽くするために分散させた結果、10年後に株式が社外に出るということが実際に起きます。分けること自体が悪いのではなく、出口を決めていないことが問題です。

譲渡制限と買取りの定め

定款で株式の譲渡制限を設けておくことは基本です。あわせて、株主間契約で退職時や死亡時の買取りの条件を定めておく方法があります。価格の決め方まで含めて合意しておくと、実際に事態が生じたときの争いを避けられます。買取りの資金をどう用意するかも、あわせて考えておく必要があります。会社が買い取る場合は財源規制があり、後継者個人が買い取る場合はまた資金の問題が生じます。誰がどの資金で買うのかまで決めておくのが確実です。

自己株式として買い取る

会社が自己株式として買い取るという方法もあります。会社法156条以下の手続に従い、株主総会の決議と財源規制の確認が必要です。分配可能額を超える取得はできないという制約があるため、会社の財務状況によっては使えません。買取りの資金を計画的に積んでおく必要があります。また、特定の株主から取得する場合は、他の株主が自分も売主に加えるよう請求できる仕組みがあります(会社法160条3項)。この請求を避けるには定款の定めが要るため、あらかじめ確認しておく必要があります。

分散を防ぐための手立て
後継者以外にも株式を持たせるか
→
後継者に集中させる
資金の負担は大きいが、将来の分散リスクは最も小さい
複数の役員で分ける
譲渡制限と、退職時・死亡時の買取りの定めを先に置く
現経営者が一部を残す
残す期間と、その後の買取りの条件を最初に決めておく
会社が自己株式として保有
財源規制がある。分配可能額の範囲でしか取得できない

事例:資金の壁で3年止まっていた会社

金属加工業の会社から、事業承継のご相談をいただきました。後継者は勤続22年の工場長で、経営者と従業員の双方から支持されていました。

株式の評価額は約8,000万円でした。

工場長の自己資金は300万円ほどでした。

個人の借入だけでは到底届かず、この時点で3年間話が止まっていました。役員報酬から返済できる金額を計算すると、年200万円が上限でした。8,000万円を返すには40年かかります。

設計を組み直しました。まず、現経営者への役員退職金を支給して純資産を圧縮し、株式の評価額を下げました。次に、工場長が持株会社を設立し、公庫と民間金融機関からの借入で株式を取得する形にしました。返済は事業会社からの配当と経営指導料で賄います。

あわせて、経営者保証については、承継後2年をかけて要件を整え、保証を不要とする方向で金融機関と協議しています。

この事例では、個人の資力で解けない問題を、法人の仕組みに置き換えました。3年止まっていた理由は資金そのものではなく、個人の借入という前提から離れられなかったことにありました。

よくある質問

従業員に承継するとき、株式の資金はどう作りますか?
個人の借入、持株会社(SPC)方式、日本政策金融公庫の融資、信用保証協会の保証制度、そして段階的な移転の5つが基本です。評価額が数千万円を超える場合、個人の借入だけでは足りないことがほとんどで、複数を組み合わせて設計します。
持株会社方式とはどういう仕組みですか?
後継者が設立した会社が金融機関から借り入れ、その資金で現経営者から事業会社の株式を買い取る方法です。返済は事業会社からの配当や経営指導料で行います。個人の借入と違い、所得税と社会保険料を負担した後の手取りから返す必要がありません。
全株を買い取る必要はありますか?
ありません。経営に必要なのは議決権で、過半数を確保すれば通常の決議、3分の2以上を確保すれば特別決議を単独で行えます。まず必要な議決権を確保し、残りは段階的に買い取るという設計で資金の壁は下がります。
経営者保証はどうなりますか?
経営者保証に関するガイドラインには事業承継時の特則があり、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則とする考え方が示されています。要件を整えるには、法人と個人の資産の分離や財務基盤の強化が必要で、3年から5年の準備期間を見ておいてください。
複数の役員で株式を分けてもよいですか?
資金の負担は分散できますが、退職や相続で株式が社外に出るリスクが生じます。定款で譲渡制限を設けたうえで、株主間契約に退職時や死亡時の買取りの条件と価格の決め方を定めておくことをお勧めします。
株価を下げてから移すことはできますか?
役員退職金の支給などで純資産が減れば、評価額は下がります。ただし退職金の額は功績倍率などで説明できる範囲に収める必要があり、株価を下げる目的だけで決めると損金として認められない可能性があります。評価額の引下げは、実態のある行為の結果として生じるものです。

まとめ:個人の資力で解こうとしない

従業員承継で資金が壁になるのは、自社株の評価額が後継者個人の資力とは無関係に決まるためです。業績のよい会社ほど、この差は大きくなります。

方法は5つあります。個人の借入、持株会社方式、公的な融資制度、信用保証協会の保証、そして段階的な移転です。評価額が数千万円を超えるなら、個人の借入だけでは届きません。持株会社方式や段階的な移転を組み合わせることになります。

考え方として重要なのは、全株を一度に買い取る前提を外すことです。経営に必要なのは議決権で、過半数、あるいは3分の2を確保できれば経営はできます。必要な議決権に絞れば、必要な資金は大きく下がります。

そして、経営者保証の扱いは資金計画と同じ優先度で進めてください。保証を引き受けるかどうかは、従業員が承継を受けるかどうかの判断に直接影響します。要件を整えるには3年から5年かかるため、早い着手が必要です。

複数の役員で株式を分ける場合は、退職時と死亡時の買取りの条件を先に定めておいてください。当面は回っても、10年後に株式が社外へ出るという事態は避けられます。

税理士法人Light UPでは、従業員承継の資金計画と、株式の移転の設計についてのご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

事業承継・相続・M&Aは私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • e-Gov 法令検索「会社法」(平成十七年法律第八十六号)第107条、第156条、第309条、第461条
  • e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第23条
  • e-Gov 法令検索「中小企業信用保険法」(昭和二十五年法律第二百六十四号)第3条
  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン」
  • 経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」
  • 日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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