持株会社化・ホールディングス化のメリットとデメリット
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
「同業の社長が持株会社を作ったと聞いた。うちもやった方がよいのか、判断がつかない」。「株が親族4人に分かれていて、代替わりのたびにさらに散っていく。持株会社でまとめられると言われたが、本当に解決するのか」――ホールディングス化の相談は、この2つの入り口から始まります。
持株会社化は、株式を持つ会社と事業を行う会社を分ける組織の形です。議決権を一つにまとめられる、事業ごとに切り分けられる、グループ内の配当が課税されにくいといった特徴があり、承継の局面で検討されます。ただし、会社が1社増えるということは、申告も決算も2社分になるということです。
私たちが相談を受けたときに最初に確認するのは、何を解決したいのかという一点です。株式の分散を止めたいのか、後継者の資金負担を軽くしたいのか、複数事業を分けたいのか。目的が決まらないまま形だけ作ると、管理コストだけが増えます。株価対策として持ち出されることもありますが、持株会社化そのものが評価額を下げるとは限らず、むしろ評価方法が変わって不利になる場合があります。
この記事では、持株会社にする4つの方法から始め、4つのメリットと4つのデメリットを実務の視点で並べ、最後に向く会社と向かない会社を整理します。
持株会社とは、株式を持つことを目的にする会社
結論: 持株会社は、事業会社の株式を保有してグループを統括する会社です。自ら事業を行うかどうかで、純粋持株会社と事業持株会社に分かれます。
純粋持株会社と事業持株会社。中小企業で使われる場面
純粋持株会社は、事業を行わず子会社の株式を保有することだけを目的とします。収入は子会社からの配当と経営指導料が中心です。事業持株会社は、自ら事業を行いながら子会社の株式も持つ形で、既存の会社をそのまま親会社にする場合はこの形になります。
中小企業では、上場企業のようなグループ経営の効率化よりも、株式の集約と承継の設計を目的として使われることが多い手法です。分散した株式を持株会社に集め、後継者は持株会社の株式だけを引き継ぐという形が典型です。
会社が1社増えるということ
持株会社を作れば、決算も申告も2社分になります。顧問料も登記費用も社会保険の手続きも増えます。目的に見合う結果が得られるかどうかが、最初の関門になります。
申告も決算も2社分になります。作る前に、この負担を見込んでおくことです。目的がはっきりしないまま作ると、手間だけが残ります。何のために作るのかを1つに定めることです。
持株会社にする4つの方法
結論: 手法によって、必要な資金・課税関係・手続きの重さがまったく違います。目的に応じて選びます。
| 手法 | 概要 | 資金の要否 | 主な留意点 |
|---|---|---|---|
| 株式移転 | 既存会社の上に新会社を作り、株式を移す | 不要 | 適格要件を満たせば課税の繰延べ |
| 株式交換 | 既存の別会社を親会社にする | 不要 | 同上。既存会社を使う場合に適する |
| 会社分割 | 事業を新会社へ移し、元の会社を持株会社にする | 不要 | 許認可の承継可否を要確認 |
| 株式譲渡方式 | 新設した会社が既存会社の株式を買い取る | 必要 | 買取資金を借入で調達するのが通常 |
株式移転は資金が要らない。株式譲渡方式は資金が動く
もっとも使われるのが株式移転です。既存の会社の株主が、新しく設立する持株会社に株式を移し、代わりに持株会社の株式を受け取ります。現金のやり取りが生じないため、資金を用意する必要がありません。
新会社を設立し、その会社が金融機関からの借入でオーナーの株式を買い取る方法です。オーナーは株式を現金化でき、その譲渡益には申告分離課税が適用されます。ただし借入の返済原資は事業会社からの配当になるため、返済計画が成り立つかを先に確認する必要があります。
会社分割は許認可に注意
事業を新会社へ移し、元の会社を持株会社として残す方法です。建設業や運送業のように許認可が必要な事業では、新会社で許認可を取り直す必要があるかどうかを、先に調べておく必要があります。
事業を移す形になるため、許認可の取り直しが必要になる場合があります。建設業や運送業では、この点が実行の可否を分けます。分割の前に監督官庁へ確認しておくことです。
議決権を一つにまとめられる
結論: 分散した株式を持株会社に集めれば、事業会社の議決権は持株会社に一本化されます。承継のたびに株主が増えていく構造を止められます。
分散した株式の集約。後継者は持株会社の株式だけを持てばよい
親族に分かれた株式を持株会社が引き受け、少数株主には持株会社の株式を持ってもらう形にすれば、事業会社の株主は持株会社1社になります。事業の意思決定に少数株主が関与する場面がなくなります。
複数の事業会社がある場合、後継者は各社の株式を個別に引き継ぐ必要がなくなります。持株会社の株式を承継すれば、その下にあるすべての会社が付いてきます。
将来の分散を止められる
株式が分散する原因は相続です。持株会社の株式に譲渡制限を付け、定款で買取りの仕組みを整えておけば、次の代での分散に一定の歯止めをかけられます。名義株や所在不明株主の整理と合わせて設計するのが実務です。
持株会社の定款で譲渡制限を置いておけば、次の代でも分散を防げます。事業会社の株式は持株会社が持ち続ける形になります。
後継者の資金負担を分散できる
結論: 株式譲渡方式では、株式の買取資金を持株会社が借入で用意します。後継者個人が多額の資金を用意する必要がなくなります。
後継者が現オーナーから直接株式を買い取ろうとすると、個人で数千万円から数億円の資金が必要になります。これが承継の実務でもっとも大きな壁です。
持株会社が借入で買い取る方式では、返済は事業会社からの配当や経営指導料で賄います。個人の借入ではなく法人の借入になるため、返済原資の作り方が変わります。
ただし、返済が続く間はグループ全体の資金繰りに負担がかかります。事業の利益が減れば返済が止まるという構造は変わりません。借入額を決めるのは、事業会社の利益水準からの逆算です。
事業ごとに切り分けられる
結論: 複数の事業を別法人に分けると、責任と損益が切り離されます。事業の売却や新規事業の立ち上げがしやすくなります。
責任の分離と、事業の売却がしやすいこと
一つの事業で大きな損失や訴訟が生じても、他の事業を行う会社への影響を限定できます。事業ごとにリスクの性質が違う場合、この分離には意味があります。
不採算事業を切り離す、あるいは特定の事業だけを売却するといった判断が、株式の譲渡で完結します。1社の中に事業が混在していると、事業譲渡や会社分割が必要になり、手続きが重くなります。
M&Aの受け皿になる
会社を買収する際、持株会社の下に置く形にすれば、既存事業と切り離して管理できます。買収した会社の簿外債務が既存事業に及ばない構造になります。買収後に想定と違う実態が出てきた場合も、その会社の中で処理を完結させやすくなります。
買収する会社を持株会社の下に並べる形が取れます。事業ごとに切り離しやすい構造になります。
グループ内の税務が変わる
結論: 完全支配関係にある子会社からの配当は、原則として全額が益金に算入されません。グループ通算制度を使えば、損益の通算も可能になります。
受取配当等の益金不算入
e-Gov法令検索の法人税法第23条は、受取配当等の益金不算入について、完全子法人株式等・関連法人株式等・非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等に係る配当等の額は「当該配当等の額の百分の五十に相当する金額」とし、非支配目的株式等については「当該配当等の額の百分の二十に相当する金額」とすると定めています。
同条第5項は完全子法人株式等を、配当等の額の計算期間を通じて完全支配関係がある他の内国法人の株式等と定義しており、この場合は配当の全額が益金に算入されません。持株会社が100%子会社から配当を受け取る形なら、この扱いになります。
関連法人株式等の場合と、グループ通算制度
発行済株式の3分の1を超えて保有する場合は関連法人株式等となり、配当等の額から負債利子に相当する金額を控除した金額が益金不算入となります。全額ではない点に注意が要ります。
100%の資本関係にあるグループでは、グループ通算制度を選択することで、各社の所得と欠損を通算できます。一方が赤字、他方が黒字という状況では、グループ全体の税負担が変わります。ただし選択には届出が必要で、いったん適用すると原則として継続適用になります。
株式等保有特定会社に該当すると、評価が変わる
結論: 持株会社は資産の大半が子会社株式になるため、株式等保有特定会社に該当しやすくなります。この場合、原則として純資産価額方式で評価され、想定と逆の結果になることがあります。
総資産の50%以上が株式等なら該当。類似業種比準方式が使えない
財産評価基本通達では、課税時期における総資産価額に占める株式等の価額の合計額の割合が50%以上である会社を、株式等保有特定会社としています。純粋持株会社は、この基準にほぼ確実に当たります。
通常の会社であれば、規模に応じて類似業種比準方式と純資産価額方式を併用できます。株式等保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式のみでの評価になります。含み益のある子会社株式を持っていれば、評価額はむしろ上がる可能性があります。
株価対策として持ち出されたら確認する
持株会社化を株価対策として提案された場合、その提案が株式等保有特定会社の判定を織り込んでいるかどうかが、最初に見る点になります。判定を回避するために不動産や事業資産を持たせる設計もありますが、今度は土地保有特定会社の判定が視野に入ります。どちらの判定にも当たらない形を作るには、具体的な資産構成の試算が要ります。
管理コストと事務負担が増える
結論: 会社が増えれば、決算・申告・登記・社会保険のすべてが増えます。年間で数十万円から百万円単位の追加コストになるのが通常です。
申告と決算が2社分。会計処理が複雑になる
法人税・地方税・消費税の申告が会社ごとに必要です。顧問税理士の報酬も、原則として社数分かかります。均等割は赤字でも発生するため、持株会社自体に所得がなくても最低7万円程度は毎年出ていきます。
グループ間の取引を消去する作業、債権債務の照合、経営指導料の計上。経理の手間は単純に2倍になるわけではなく、グループ間の整合を取る作業が上乗せされます。
許認可と契約の見直し
事業を移す形をとる場合、許認可の取り直し、取引先との契約の巻き直し、賃貸借契約の名義変更が発生します。この作業量を軽く見積もると、想定した時期に稼働できません。
契約の名義が事業会社のままか、持株会社に移すか。整理が要ります。許認可は事業を行う会社が持ち続けるのが通常です。移す必要があるかを、事前に確かめておくことです。
グループ内の資金移動には制約がある
結論: 親会社と子会社は別の法人です。資金を自由に動かせるわけではなく、配当か対価性のある取引かのいずれかの形をとる必要があります。
配当で吸い上げる。経営指導料は対価性が問われる
子会社が利益を出したら配当として持株会社に移すのが基本です。ただし配当は分配可能額の範囲内であり、株主総会の決議も必要です。資金が必要なときに即座に動かせるものではありません。
持株会社が子会社から経営指導料を受け取る形はよく使われますが、実際にどのような役務を提供しているのかが問われます。実態のない金額を設定すると、寄附金として扱われる可能性があります。契約書と、提供した業務の記録が要ります。
貸付けにも条件が要る
グループ内の貸付けであっても、利息の設定が必要です。無利息や低すぎる利率では、経済的利益の供与として扱われる場合があります。金銭消費貸借契約書を作り、返済の計画と実際の入出金を合わせておく必要があります。帳簿上の貸付金が何年も動かないまま残っていると、実質的な資本の払い戻しではないかという見方をされます。
組織再編税制の適格判定を外さない
結論: 株式移転や株式交換は、適格要件を満たせば課税が繰り延べられますが、外れると時価での譲渡があったものとして課税されます。設計の段階で判定が必要です。
完全支配関係にあるグループ内での再編では、金銭等が交付されないことが基本の要件になります。支配関係にとどまる場合や共同事業を行う場合には、従業者の引継ぎ、事業の継続、株式の継続保有といった要件が加わります。
要件を外すと、子会社株式の含み益に対して課税が生じます。組織再編の直後に株式を売却する予定がある場合など、後の行動が判定に影響することもあります。実行の前に、税理士の判定を挟むことになります。
持株会社と資産管理会社は別のもの
結論: 相談の場でこの2つはよく混同されますが、目的も持つ資産も違います。自社が必要としているのがどちらかを、先に切り分ける必要があります。
持株会社は事業会社の株式を持つ。資産管理会社は個人の資産を持つ
持株会社が保有するのは、グループの事業会社の株式です。目的はグループの統括と株式の集約であり、収入は子会社からの配当と経営指導料になります。
資産管理会社は、オーナー個人が保有する不動産や有価証券を法人名義に移して管理する会社です。目的は個人の資産の管理と、相続時の分けやすさの確保にあります。事業会社との資本関係は必須ではありません。
兼ねさせると判定が複雑になる
一つの会社に子会社株式と賃貸不動産の両方を持たせると、株式等保有特定会社と土地保有特定会社の両方の判定を毎年見ることになります。管理も評価も煩雑になるため、目的が違うなら会社も分けるのが実務では扱いやすくなります。
株式等保有特定会社の判定にも影響します。目的ごとに会社を分けておくほうが、判断は単純になります。
検討の手順
結論: 目的の確認から始め、評価と資金と管理コストを並べたうえで、手法を選びます。順番を守れば判断は難しくありません。
- 何を解決したいのかを1つに絞ります。株式の分散、後継者の資金、事業の切り分け、そのどれかです。
- 現在の株主構成と自社株の評価額を確定させます。ここが出ていないと、どの結果も試算できません。
- 持株会社化した場合の評価額を、株式等保有特定会社の判定を含めて試算します。
- 増える管理コストを年額で出し、目的に見合うかを判断します。
- 手法(株式移転・株式交換・会社分割・株式譲渡方式)を選び、適格判定と資金計画を詰めます。
3を飛ばして進めると、評価額が上がったことに事後で気づくことになります。この工程は省略できません。
向く会社・向かない会社
結論: 規模が小さく、事業が1つで、株主も1人という会社では、持株会社化の結果より管理コストの方が大きくなります。
| 確認項目 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 事業の数 | 複数ある | 1つだけ |
| 株主の構成 | 分散している | オーナー1人 |
| 承継の相手 | 決まっている | 未定 |
| 今後のM&A | 買収・売却の予定あり | 予定なし |
| 管理コストの負担力 | 年間100万円程度を吸収できる | 負担が重い |
| 自社株の評価 | 事業会社の株価が高い | 評価額が小さい |
事例|持株会社化で分かれた4つの判断
結論: 実際の相談では、目的が明確だった会社は前に進み、株価対策だけを目的にした会社は見送りになっています。典型を4つ挙げます。
株式が5人に分散していた製造業。 先代の相続で株式が兄弟に分かれ、事業の意思決定に時間がかかる状態でした。株式移転で持株会社を設立し、事業会社の議決権を一本化。少数株主には持株会社の株式を持ってもらう形で整理しています。
後継者の資金が用意できなかった卸売業。 株式の評価額が2億円を超え、後継者が個人で買い取れませんでした。持株会社を設立し、金融機関からの借入で株式を取得。返済は事業会社からの配当で賄う計画としています。
株価対策を目的に検討し、見送った小売業。 提案を受けて試算したところ、株式等保有特定会社に該当し、純資産価額方式での評価になることが判明。子会社株式の含み益が大きく、評価額はむしろ上がる見込みでした。持株会社化は行わず、別の方法で承継を進めています。
複数事業を切り分けた建設業。 建設と不動産賃貸の2事業を1社で行っていました。会社分割で不動産部門を新会社へ移し、元の会社を持株会社に。建設業許可の承継を先に確認したうえで実行しています。
よくある質問
Q. 持株会社化すると自社株の評価は下がりますか?
A. 下がるとは限りません。持株会社は資産の大半が子会社株式になるため、株式等保有特定会社に該当し、原則として純資産価額方式で評価されます。子会社株式に含み益があれば評価額が上がる可能性もあります。
Q. 持株会社を作るのにいくらかかりますか?
A. 手法によって変わります。株式移転であれば登記費用と専門家報酬が中心です。株式譲渡方式では株式の買取資金が別に必要になります。加えて、設立後は決算と申告が2社分になり、毎年の管理コストが増えます。
Q. 子会社からの配当に税金はかかりますか?
A. 完全支配関係にある子会社からの配当は、原則として全額が益金に算入されません。持株比率が3分の1超100%未満の場合は、負債利子相当額を控除した金額が益金不算入となります。
Q. 従業員は持株会社と事業会社のどちらに所属させますか?
A. 事業会社に置くのが一般的です。管理部門だけを持株会社に集約する形もありますが、社会保険や労働保険の手続きが会社ごとに必要になるため、実態に合わせて決めてください。
Q. 1人で経営している会社でも持株会社化する意味はありますか?
A. 事業が1つで株主も1人なら、管理コストの増加に見合う結果は出にくくなります。将来の事業拡大やM&Aの予定が具体的にある場合を除き、現時点での必要性は低いことが多いです。
Q. 持株会社化はどれくらいの期間で完了しますか?
A. 株式移転であれば、設計から登記まで3か月から半年程度が目安です。会社分割で許認可の取り直しが伴う場合は、さらに時間がかかります。承継の時期から逆算して着手してください。
まとめ:目的が1つに定まってから、手法を選ぶ
持株会社化は、株式の分散を止める、後継者の資金負担を分散する、事業を切り分ける、という目的に対しては現実的な手段です。完全支配関係にある子会社からの配当が全額益金不算入になる点や、グループ通算制度を選べる点も、グループ経営には意味があります。
一方で、会社が1社増えることの負担は毎年続きます。申告も決算も2社分、均等割も社数分。グループ内の資金移動にも配当か対価性のある取引かという制約がかかります。
特に注意が必要なのは、株価対策として提案された場合です。持株会社は株式等保有特定会社に該当しやすく、原則として純資産価額方式での評価になります。想定と逆に評価額が上がる場合があるため、実行の前に必ず試算してください。
自社の場合に持株会社化が向くのか、評価額がどう動くのかを確認したい方は、Light UPの無料相談をご利用ください。株主構成と直近の決算書をもとに、判定を含めた試算をお出しします。
出典
- e-Gov法令検索 法人税法 第23条(受取配当等の益金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法 第2条(定義)、第64条の9(通算承認)
- 国税庁「財産評価基本通達」189(特定の評価会社の株式)
- 国税庁「グループ通算制度に関するQ&A」
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン」





