事業承継とは|進め方の全体像とスケジュール
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
「まだ元気だから、あと数年してから考える」——事業承継のご相談で最も多くいただく言葉です。ところが実際には、あと数年待ったことで選べなくなる打ち手がいくつもあります。
結論からお伝えすると、事業承継は5年から10年の時間軸で進める仕事であり、しかも制度の期限が先に来ます。とりわけ事業承継税制の特例措置は、計画を出せる期限と、実際に株式を渡す期限が別々に定められているため、逆算しないと間に合いません。
税理士法人Light UPでは、事業承継のご相談を「誰に継がせるか」ではなく「自社株がいくらで、それを渡すのにいくらかかるか」から始めています。承継先が決まっていなくても、この2つは今日から把握できるためです。
この記事では、承継の3つの類型から、5段階のスケジュール、事業承継税制の特例措置の2つの期限、遺留分の民法特例、納税資金の準備、第三者承継の進め方までを、中小企業庁・国税庁・中小企業基盤整備機構の公表資料に沿って整理します。
事業承継が先送りされる理由
結論: 事業承継は緊急性が低く、成果も見えにくい仕事です。だからこそ着手が遅れ、選択肢が減ってから相談に来られる方が多くなります。
今日やらなくても困らない、何から手をつけるか、後継者の誤解、切り出しづらさ
売上が落ちれば翌月に困りますが、承継の準備をしなくても明日の業務は回ります。この構造が、着手を後ろに押し続けます。
税務・法務・経営権・後継者育成・金融機関との関係と、論点が多岐にわたります。全体像が見えないため、最初の一歩が踏み出せないというご相談は非常に多くあります。
後継者が未定でも進められる準備は多くあります。自社株の評価額を知る、財務を整理する、経営者個人と会社の資産を分ける——いずれも承継先に関係なく必要です。
親子であっても、株式や相続の話は切り出しにくいものです。第三者である税理士が同席する場を設けることで、話が前に進む場面は少なくありません。
数字で見る事業承継の現在地
結論: 経営者の高齢化は進み続けていますが、後継者不在率は改善しています。一方で、承継が間に合わなかったことによる倒産は増えています。
経営者の平均年齢は過去最高。後継者不在率は改善している
中小企業基盤整備機構の事業評価報告書によると、中小企業経営者の平均年齢は全国平均で63.8歳となり、前年の63.0歳を0.8歳上回って過去最高を更新しました。中小企業白書でも、60歳以上の経営者が過半数を占めると報告されています。
後継者不在率は2018年の67.2%をピークに減少し、2023年は54.5%(前年比3.5ポイント低下)となりました。改善は続いていますが、依然として半数以上の会社に後継者がいない状態です。
黒字のまま廃業している会社が半数を超える。後継者難倒産は過去最多
2023年の休廃業・解散件数は49,788件でした。このうち70歳以上の経営者の割合は66.6%、そして当期純利益が黒字だった企業が52%を占めます。事業が続けられないから畳んだのではなく、継ぐ人がいないから畳んだ会社が多いという構図です。
事業承継を円滑に進められなかったことを起因とする後継者難倒産は、2023年度に586件(前年度487件、20.3%増)発生し、年間で初めて500件を超えて過去最多を更新しました。業種別では建設業が約20%を占めます。
3つの承継先|親族内・従業員・第三者
結論: 承継先は親族内・従業員(役員含む)・第三者の3つです。どれを選ぶかで、資金の出し手・税金の種類・準備期間がまるごと変わります。
3つの類型の比較と、親族内承継
承継先は3つに分かれます。親族、従業員、第三者。どれを選ぶかで、税務も資金も手続きも変わります。まず全体を並べます。
| 項目 | 親族内承継 | 従業員承継 | 第三者承継(M&A) |
|---|---|---|---|
| 株式の渡し方 | 贈与・相続・売買 | 主に売買 | 売買(株式譲渡・事業譲渡) |
| 主な税金 | 贈与税・相続税 | 後継者は所得税、先代は譲渡所得税 | 先代は譲渡所得税 |
| 最大の課題 | 納税資金と遺留分 | 後継者の買取資金 | 相手探しと条件交渉 |
| 準備期間の目安 | 5〜10年 | 3〜5年 | 1〜3年 |
| 経営者保証 | 引き継ぐことが多い | 引き継ぐことが多い | 解除されることが多い |
中小企業白書によると、法人企業の約3割が親族内承継を考えていると回答しています。株式を無償または低い価額で渡せる一方、贈与税・相続税と、他の相続人の遺留分という2つの論点が同時に出ます。
従業員承継|資金をどう作るかが要/第三者承継|選択肢としての位置づけ
役員や従業員に継ぐ場合、後継者は自社株を買い取るのが原則です。個人でまとまった資金を用意できないことが多く、持株会社を設立して借入で買い取る方法などが検討されます。
後継者が見つからない場合の受け皿として定着してきました。事業承継・引継ぎ支援センターでは、令和5年度に事業引継ぎの成約件数が2,023件、譲渡相談が8,950件に達しています。
承継で移すもの|経営・資産・知的資産
結論: 事業承継で移すのは株式だけではありません。経営の権限、事業用資産、そして数字に表れない知的資産の3つを、それぞれ別に設計します。
経営|代表権と意思決定、資産|株式と事業用資産、知的資産
代表取締役の交代、取締役会の構成、金融機関や主要取引先への引き継ぎが含まれます。株式を渡す時期と代表を交代する時期は、必ずしも同じでなくてよいという点は押さえておく価値があります。
自社株のほか、経営者個人が所有して会社に貸している土地・建物、経営者から会社への貸付金なども対象です。個人名義の事業用不動産は、相続で分散すると事業継続に直結します。
取引先との関係、技術やノウハウ、従業員の信頼、許認可の維持要件などです。移転に最も時間がかかるのはここで、後継者育成に数年を要する主な理由になっています。
全体スケジュール|5〜10年の時間軸
結論: 現状把握・方向性の決定・株式移転の設計・実行・承継後の管理という5段階で進みます。株価対策と後継者育成は、いずれも数年単位で効果が現れる仕事です。
段階ごとの目安
- 現状の見える化(3〜6か月):自社株評価、財務、個人資産と会社資産の切り分け
- 承継先と方法の決定(6か月〜1年):親族内・従業員・第三者の選択と後継者の合意
- 株式移転の設計(1〜3年):評価の水準を踏まえた移転方法、税制の適用可否、資金の手当て
- 実行(半年〜1年):贈与・売買の実行、代表交代、金融機関・取引先への周知
- 承継後の管理(5年以上):税制を使った場合の報告、経営体制の定着
並行して走る2つの仕事、期限が先に来ること、年齢からの逆算
後継者育成と株価対策は、上の段階と並行して進めます。特に後継者育成は最も時間がかかるため、方向性が決まった時点で着手します。
事業承継税制を使う場合、計画の提出期限が自社の準備状況とは無関係に到来します。制度の期限から逆算する視点を、早い段階で入れておく必要があります。
代表交代の目標年齢を決め、そこから5年から10年を引くと着手時期が出ます。63.8歳という平均年齢を踏まえると、50代半ばには全体像を描き始めている状態が望ましいことになります。
第1段階|現状の見える化
結論: 最初にやるのは自社株の評価額を知ることです。金額が分からなければ、贈与するのか売るのか、税制を使うのかも判断できません。
自社株の評価額を出す。株主名簿を確認する
非上場株式は、財産評価基本通達に沿って評価します。評価額は決算内容で毎年動くため、一度出して終わりではなく、対策の前後で比較できる状態にしておきます。
創業時の名義株、相続で分散した株式、連絡が取れない株主がいないかを確認します。所在不明株主がいると、承継の実行段階で手続きが止まります。
個人と会社の資産を切り分ける。相続税の概算を出す
経営者個人が所有する事業用不動産、会社への貸付金、会社からの借入金を洗い出します。ここが混ざっていると、相続の場面で事業と家族の両方に影響が出ます。
相続税の基礎控除は、国税庁の説明によると3,000万円+600万円×法定相続人の数です。自社株を含めた財産全体でいくらになるかを概算し、納税資金の不足額を把握します。
第2段階|承継先と方法の決定
結論: 承継先が決まると、必要な準備がほぼ確定します。逆に決まらないまま対策だけ進めると、途中で作り直しになります。
後継者候補と話をする。継がない選択も検討に入れる
継ぐ意思があるか、いつなら継げるか、何が不安かを聞きます。承継の話は一度で決まらないため、複数回に分けて進める前提で場を設けます。
継いでもらう前提だけで進めないことです。
子が継がないと決めた場合、従業員承継か第三者承継に切り替えます。この判断が遅れるほど、企業価値が下がってから相手を探すことになります。
承継の時期を仮に置く。支援機関を決める
代表交代の目標時期を仮決めします。仮でも置くことで、株式移転の設計と税制の期限を突き合わせられるようになります。
時期を置いたら、誰と進めるかを決めます。1社で完結する話ではありません。
税理士、弁護士、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなど、誰に何を頼むかを整理します。全体のコーディネートは税理士が担うことが多くなります。
第3段階|自社株の移転設計
結論: 株式の移転は、贈与・相続・売買の3つの方法を組み合わせて設計します。評価額の水準と後継者の資金力によって、選ぶ組み合わせが変わります。
暦年贈与で少しずつ渡す。相続時精算課税を使う
毎年少しずつ贈与する方法です。時間はかかりますが、株価が低い時期に集中して渡すことで負担を抑えられます。ただし、相続開始前の一定期間内の贈与は相続財産に加算される点に注意が必要です。
一定の要件のもとで選択でき、贈与時の価額で相続財産に加算されます。将来値上がりが見込まれる自社株では、価額を固定できる意味があります。国税庁の説明によると、令和6年1月1日以後の贈与については、贈与を受けた年分ごとに基礎控除額を控除した残額が相続税の課税価格に算入されます。
売買で渡す、株価が下がる場面を使う、持株会社を使った整理
後継者または持株会社が買い取る方法です。先代には譲渡所得課税が生じますが、代金が納税資金や引退後の生活資金になるという利点があります。
役員退職金の支給や、設備投資による利益の圧縮などで、一時的に評価額が下がる場面があります。実行の順序を誤ると想定した効果が出ないため、事前の試算が必要です。
複数の事業や不動産を持つ場合、持株会社を置いて経営と資産を分ける方法があります。資金調達や将来の分割を見据えた設計が可能になる一方、設立と維持のコストが発生します。
事業承継税制(特例措置)の中身
結論: 一定の要件のもとで、自社株に係る贈与税・相続税の全額の納税が猶予されます。中小企業庁が所管し、都道府県知事の認定を受けて使う制度です。
猶予割合は100%。対象者が広い
中小企業庁は特例措置について、対象株式数の上限を撤廃し猶予割合を100%に拡大したことで「承継する株式に係る贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象となりました」と説明しています。一般措置は対象が総株式数の3分の2まで、猶予割合は相続税で80%です。
一般措置は先代経営者一人から後継者一人への贈与・相続だけが対象でした。特例措置では親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象になります。
雇用要件が実質的に緩和されている。将来の売却・廃業時の減免
事業承継後5年間平均で雇用の8割を維持するという要件は、特例措置では満たせなかった場合でも納税猶予が継続できる形に見直されています。経営悪化等が理由の場合は、認定経営革新等支援機関の指導助言が必要です。
将来、事業を売却または廃業する際に株価が下落していた場合、その株価をもとに納税額を再計算し、承継時の株価で計算された納税額との差額が減免されます。猶予が取り消されたら承継時の高い株価で払う、という最悪の想定を和らげる仕組みです。
使い始めた後の義務と、後継者の役員就任要件
適用を受けた後は、都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を、いずれも年1回提出します。税務申告後5年間はこれを毎年繰り返し、6年目以後は税務署にのみ継続届出書を3年に一度提出します。
本来、後継者は株式の贈与時に役員就任後3年以上を経過している必要がありました。中小企業白書によると、令和7年度税制改正において特例措置に限って役員就任要件が事実上撤廃され、後継者が贈与直前に役員に就任した場合にも適用が認められることになりました。
「息子を役員にしていなかったので、あと3年は動けない」という制約が外れたため、残る期限に間に合う会社が増えたという意味を持つ改正です。
個人事業主には個人版がある
法人の株式ではなく、個人事業者の事業用資産を対象とする個人版事業承継税制もあります。青色申告に係る事業(不動産貸付事業等を除く)を行っていた事業者が対象で、贈与税・相続税の100%が納税猶予されます。
こちらも令和7年度税制改正で事業従事要件が事実上撤廃されました。加えて令和8年度税制改正大綱では、個人事業承継計画の提出期限を2年6月延長する方針が示されています。法人版とは期限が異なる点に注意が必要です。
特例措置の期限が2つある
結論: 特例措置には計画の提出期限と、贈与・相続の実行期限という2つの期限があります。提出期限は延長されましたが、実行期限は動いていません。
特例承継計画の提出期限と、実行期限は令和9年12月31日のまま
中小企業庁は特例措置について「平成30年4月1日から令和9年9月30日までに『特例承継計画』を都道府県に提出してください」と案内しています。令和8年度税制改正大綱では、この提出期限を1年6月延長する方針が示されました。
一方で、対象になるのは「平成30年1月1日から令和9年12月31日までに、贈与・相続により会社の株式を取得した経営者」です。中小企業庁の手続き説明も、令和9年9月30日までに申請し、令和9年12月31日までに事業承継を行う必要があるとしています。
2つの期限の差は3か月しかない。計画に書くこと
計画の提出期限が延びたことで、提出から実行までに残された期間は約3か月まで縮まりました。計画を出してから承継の準備を始めるのでは間に合いません。実行の目処が立っている状態で計画を出すという順序に変わったと考えるべきです。
特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画を記載します。加えて、認定経営革新等支援機関による指導および助言を受ける必要があります。商工会・商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが認定を受けています。
事業承継税制を使わない判断もある
結論: 事業承継税制は納税の猶予であって、免除が確定する制度ではありません。要件を外すと猶予が取り消され、利子税とともに納付することになります。
猶予は5年で終わらない。取消事由に触れるリスク
報告期間の5年が過ぎても、後継者は対象株式を継続して保有する必要があります。次の世代へ渡すまで、または後継者が亡くなるまで続く制度だという理解が要ります。
代表者を退任した、対象株式を譲渡した、資産保有型会社に該当したといった事由で猶予は取り消されます。事業の形を変える予定がある会社では、慎重な検討が必要です。
株価が低いなら使わない選択。判断は試算を並べてから
自社株の評価額がもともと低い、あるいは対策で下げられる場合、通常の贈与や売買で渡したほうが管理は簡単です。制度を使わずに済むなら、そのほうが自由度は高くなります。
税制を使った場合と使わない場合で、納税額・手続きの負担・将来の制約を並べて比べます。金額だけで決めると、10年後の身動きの取りにくさを見落とします。
遺留分でもめないための民法特例
結論: 後継者に自社株を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。経営承継円滑化法の民法特例を使えば、事前の合意で回避できます。
遺留分という問題の構造と、除外合意と固定合意
自社株が財産の大半を占める会社では、後継者に株式を集中させた結果、他の相続人が受け取る財産が遺留分を下回ることがあります。請求されれば、後継者は株式を手放すか、代償金を払うかの選択を迫られます。
中小企業庁の経営承継円滑化法による支援では、遺留分権利者全員との合意と所要の手続きを前提に、民法の特例が使えます。後継者が取得した自社株を遺留分の算定から除外する合意と、算定に含める価額を合意時点の価額に固定する合意の2種類があり、組み合わせて使うこともできます。
固定合意が向いている場面と、手続きの流れ
後継者の努力で株価が上がった場合、その上昇分まで遺留分の計算に入るのは不合理です。固定合意は、この上昇分を後継者の取り分として確保するための仕組みです。
推定相続人全員の合意を書面で得たうえで、中小企業庁の確認を受け、その後に家庭裁判所の許可を得ます。税制支援・金融支援・所在不明株主の特例は都道府県が認定しますが、民法特例だけは中小企業庁が確認する点が異なります。
納税資金をどう用意するか
結論: 自社株は換金しにくい財産です。相続税が課される場面で現金が用意できないと、株式を売るか、会社に買い取らせるかの判断を迫られます。
会社による自己株式の取得。生命保険の活用
会社が後継者から自社株を買い取り、その代金を納税に充てる方法です。相続により取得した株式を一定期間内に会社へ譲渡した場合の課税の特例が用意されており、要件の確認が必要です。
先代経営者を被保険者とする保険で、会社または後継者に資金が入る設計にしておく方法です。納税の期限に間に合う形で現金が入るかが判断の分かれ目になります。
役員退職金による準備。延納・物納という最後の手段
勇退時の役員退職金は、先代の手元資金になると同時に、会社の利益を圧縮して株価を下げる効果もあります。金額の相当性が問われるため、事前の試算が欠かせません。
退職金で作る方法のほかに、最後の手段も用意されています。
一括で納められない場合、延納や物納の制度があります。ただし要件が厳しく、あらかじめ準備しておく代わりにはなりません。
経営者保証と個人資産の切り分け
結論: 経営者保証が付いたままでは、後継者が承継をためらう要因になります。承継の前後は、保証を見直す交渉ができる数少ない機会です。
保証を引き継ぐかどうか、会社に貸している不動産、会社への貸付金
金融機関との交渉次第で、承継時に保証を解除できる場合があります。経営者保証に関するガイドラインには、法人と経営者の資産・経理の明確な区分・分離を含む3つの要件が示されています。
経営者個人が所有し会社に貸している土地・建物は、相続で分散すると事業継続に直結します。承継の設計と同時に、名義をどうするかを決めておきます。
経営者が会社に貸しているお金は、相続財産として課税されます。現金化できないのに課税されるため、承継前に整理しておく価値が高い項目です。
従業員承継で起きること
結論: 従業員承継の最大の壁は、後継者が株式を買う資金です。加えて、経営者保証を個人で引き受けられるかという問題も同時に出ます。
買取資金をどう作るか。段階的に渡す方法
後継者個人の資金、金融機関からの借入、持株会社を設立しての買収などが選択肢になります。経営承継円滑化法では、事業承継の際に代表者個人が必要とする資金の融資を受けられる金融支援が用意されており、会社および個人事業主には信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が設けられています。
いきなり全株を渡さず、代表交代を先に行い、株式は数年かけて移すという進め方があります。経営の実績を見てから株式を渡せるため、双方にとって現実的です。
他の従業員への説明。先代の関わり方を決める
社内から後継者を出す場合、選ばれなかった人への説明が必要になります。承継の理由と今後の体制を、経営者自身の言葉で伝える場を設けます。
周囲への説明と、先代の立ち位置。どちらも決めておく必要があります。
代表を退いた後、会長として残るのか完全に離れるのかを先に決めます。曖昧なままだと、後継者が意思決定できない状態が続きます。
第三者承継(M&A)を選ぶ場合
結論: 第三者への譲渡は、後継者不在の受け皿として定着しました。ただし、相手探しには時間がかかり、企業価値が高いうちに動くほど条件は良くなります。
公的な相談窓口がある。仲介業者を選ぶときの確認事項
事業承継・引継ぎ支援センターが全国に設置されています。令和5年度の相談件数は10,507件(前年比110%)、事業承継診断の実施件数は230,907件に達しています。
中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)では、仲介者やフィナンシャル・アドバイザーは契約締結前に、手数料の詳細な算定基準、提供する具体的な業務、担当者の保有資格、経験年数、成約実績を説明することが求められています。
手数料の仕組みを理解する。売り手側の税務
同ガイドラインは、実務で多く用いられるレーマン方式について依頼者が留意すべき点を明記し、設定されることが多い最低手数料の金額の分布状況や適用事例も紹介しています。必要に応じてセカンド・オピニオンを取ることも選択肢とされています。
株式譲渡か事業譲渡かで、課税される主体も税目も変わります。手取り額に大きな差が出るため、基本合意の前に税務の試算をしておく必要があります。
準備しておくと交渉が楽になるもの
決算書の整合性、簿外債務の有無、個人と会社の資産の切り分け、許認可の状況、主要取引先との契約書。買い手はこれらを必ず確認するため、先に整えておくと交渉が進みやすくなります。
決算書3期分、株主名簿、許認可の写し、主要な契約書。求められてから探すと時間がかかります。先にそろえておけば、交渉の期間そのものが短くなります。
承継後の5年間にやること
結論: 株式と代表を移して終わりではありません。特に事業承継税制を使った場合は、5年間の報告義務と要件の維持が続きます。
報告と届出を止めない、関係を作り直す、先代の役割、次の承継
都道府県への年次報告書と税務署への継続届出書を、5年間は毎年提出します。提出を忘れると猶予が取り消されるため、担当者と提出時期を決めて管理します。
代表が変わると、与信の見方も変わります。決算後の報告を後継者自身が行う習慣をつけると、関係の作り直しが早く進みます。
会長として残る場合も、決裁の範囲を書面で決めておきます。曖昧な二頭体制が、承継後の混乱で最も多い原因です。
事業承継税制を使った場合、猶予は後継者が次の世代へ渡すまで続きます。承継が終わった時点で、次の承継の入口に立っていると考えておきます。
事業承継のご相談事例
結論: 実際のご相談は、税制の適用可否より前に、株価と資金の把握から始まることがほとんどです。ここでは典型的な4つの場面を紹介します。
製造業|株価を知らないまま暦年贈与/建設業|遺留分でもめる可能性
10年以上、毎年少しずつ株式を贈与していた会社です。評価額を出したところ、贈与済みの割合は全体の1割強にとどまっていました。このペースでは代表交代までに移せないことが分かり、相続時精算課税と売買を組み合わせる設計に切り替えました。
財産の8割超が自社株という会社です。長男に集中させると、他の2人の相続人の遺留分を下回る見込みでした。民法特例の除外合意を検討するとともに、代償金の原資として生命保険を組み合わせる方向で進めています。
小売業|第三者承継に切り替えた/調剤薬局|事業承継税制を使わない判断
子が継がないと判断した時点で、事業承継・引継ぎ支援センターに相談しました。業績が落ちる前に動いたため、複数の候補と比較検討ができました。決算書の整合性と個人資産の切り分けを先に整えたことが、交渉の短縮につながっています。
株価が想定より低く、通常の贈与と売買で移せる水準でした。税制を使えば納税は猶予されるものの、5年の報告義務と将来の制約が残ります。手続きの負担と自由度を並べて比較し、使わない選択をしました。
よくある質問
事業承継の準備は、何年前から始めればいいですか?
後継者がまだ決まっていませんが、今できることはありますか?
事業承継税制の特例措置は、いつまでに何をすればいいですか?
事業承継税制を使えば、税金は払わなくて済みますか?
子ども以外に株式を渡すと、他の相続人ともめませんか?
従業員に継がせたいのですが、株式を買う資金がありません。どうすればいいですか?
相続税が払えない場合、会社に株式を買い取ってもらうことはできますか?
事業承継は誰に相談すればいいですか?
まとめ:事業承継は自社株の評価額から始める
- 経営者の平均年齢は63.8歳と過去最高を更新し、休廃業・解散した企業の52%は黒字でした。事業が続けられないのではなく、継ぐ人がいないことが課題になっています
- 承継先は親族内・従業員・第三者の3つで、資金の出し手・税金・準備期間がそれぞれ異なります
- 全体は5段階で進み、株価対策と後継者育成は数年単位で並行して走らせます
- 事業承継税制の特例措置は、計画の提出期限が令和9年9月30日、贈与・相続の実行期限が令和9年12月31日です。両者の差は約3か月しかありません
- 税制は納税の猶予であり、5年の報告義務と継続保有が続きます。使わない判断が合理的な場合もあります
- 遺留分は経営承継円滑化法の民法特例で回避できます。除外合意と固定合意を組み合わせて使えます
- 後継者が未定でも、自社株評価・株主名簿・個人資産の切り分け・相続税の概算は今日から始められます
事業承継は、決めることが多い一方で、最初の一歩は自社株の評価額を出すことだけです。後継者が決まっていない段階でも構いません。税理士法人Light UPの無料相談で、現状の見える化からお手伝いします。





