決算対策とは|法人税の仕組みと年間スケジュール
「決算の1か月前になって、税理士から利益が出そうだと言われた」「何かやっておくことはないかと聞いたら、もう打つ手は少ないと返された」――決算対策のご相談は、この時期に集中します。
結論からお伝えすると、決算対策で選べる手の数は、残っている時間にほぼ比例します。期首なら役員報酬から投資の時期まで動かせますが、決算1か月前に残っているのは、すでに決まっている支出をどの期に入れるかという判断がほとんどです。
税理士法人Light UPでは、決算対策は決算月の作業ではなく、月次で着地を見続ける習慣そのものだと考えています。着地が読めていれば、直前に慌てる場面は自然に減っていくからです。
この記事では、法人税がどう計算されるかという土台から、2026年度に始まった防衛特別法人税と少額減価償却資産の特例の見直し、そして期首から申告までの年間スケジュールまでを、国税庁と中小企業庁の公表資料に沿って整理します。
決算対策を3つの層に分けて考える
結論: 決算対策は、期首に決める層・期中に積む層・決算直前に打つ層の3つに分かれます。手の数がいちばん多いのは期首で、直前に残っているのは限られた選択肢だけです。
期首に決める層
事業年度が始まる時期に決めるものが、いちばん影響が大きく、かつ後から変えにくい部類です。役員報酬の額、設備投資の計画、採用の予定、決算月そのもの。どれも1年間の利益の形を決めます。
役員報酬は、原則として事業年度開始の日から3か月以内に決め、その後は同額で支給しないと損金にできません。期首を過ぎたら1年間動かせない項目だと考えておく必要があります。
期中に積む層と、決算直前に打つ層
月次で試算表を締め、着地の見込みを更新していく作業です。地味ですが、この層が機能していないと、そもそも決算対策という判断ができません。
利益がいくらで着地しそうか分からない状態では、投資すべきか見送るべきかも決められないためです。
決算日の3か月前から当日までに打てる手です。決算賞与、少額の資産の購入、修繕の実施、未払費用の計上など、実行の時期をこちらに寄せられるものに限られます。
直前だけでは選べる幅が狭くなる理由
直前に打てる手は、ほとんどが支出を伴います。税負担は減っても手元の現金も減るため、資金繰りとの兼ね合いで実行できないことが少なくありません。
期首から見ていれば、支出を伴わない選択肢――たとえば売上計上の基準を見直す、回収不能な債権を整理する――も検討の対象に入ります。時間があるほど、現金を減らさない手が選べるということです。
法人税の仕組み|何にいくら課されるのか
結論: 法人税は会計上の利益ではなく、税法上の所得に課されます。中小法人は年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%という2段構えです。
課税されるのは利益ではなく所得
決算書の当期純利益と、法人税の計算の基礎になる所得金額は一致しません。会計では費用でも税法では損金にならないもの(交際費の一部、過大な役員給与など)を足し戻し、逆に会計では収益でも益金にならないものを差し引いて所得を出します。
この調整を行うのが法人税申告書の別表四です。決算対策とは、この別表四での調整まで見越して打つ手のことだと理解すると、話が早くなります。
中小法人の税率15%と23.2%、所得10億円超で17%になる見直し
資本金1億円以下の普通法人などは、年800万円以下の所得に15%、それを超える部分に23.2%が適用されます。この15%は本則の19%を軽減する特例で、期限のある措置です。
| 区分 | 所得の区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 資本金1億円以下の普通法人など | 年800万円以下の部分 | 15%(所得10億円超の事業年度は17%) |
| 同上 | 年800万円超の部分 | 23.2% |
| 同上(適用除外事業者) | 年800万円以下の部分 | 19% |
| 上記以外の普通法人 | 所得の全額 | 23.2% |
出典:国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率(令和7年4月1日現在法令等)
国税庁の解説によると、「令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります」とされています。
規模の大きい中小法人には、軽減の幅が狭まる方向の見直しが入ったということです。あわせて確認したいのが適用除外事業者で、事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人は、年800万円以下の部分にも19%が適用されます。
資本金1億円以下でも中小法人にならない場合と、法人税以外の負担
資本金の額だけで決まるわけではありません。資本金5億円以上の大法人に完全支配されている法人などは、資本金が1億円以下でも軽減税率の対象から外れます。
グループ内に大きな親会社がある会社は、この点を先に確かめてください。前提が違うと、対策の設計そのものが変わります。
法人にかかるのは法人税だけではありません。地方法人税、法人事業税、特別法人事業税、法人住民税がそれぞれ課され、実際の負担はこれらの合計で見ることになります。
決算対策の効果を試算するときは、法人税の税率だけで計算すると実態とずれます。
2026年度から始まった防衛特別法人税
結論: 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が課されます。法人税額から年500万円を控除した金額に4%を掛けた額で、税額が0でも申告が必要です。
課税の対象と計算
国税庁は「令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、防衛特別法人税の納税義務者となり、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要となります」と案内しています。
計算は、所得税額控除などの一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額から、年500万円の基礎控除額を差し引き、残った金額に4%を掛けます。
年500万円の基礎控除が持つ意味と、中間申告の開始時期
法人税額が年500万円以下であれば、防衛特別法人税の税額は生じません。法人税額500万円は、中小法人でおおむね所得2,000万円台の水準に相当します。
つまり多くの小規模法人では税額が0になりますが、税額が0でも申告書の提出は必要です。ここが見落とされやすいところです。
中間申告書は、令和9年4月1日以後に開始する事業年度から提出することになります。最初の課税事業年度は確定申告のみで、翌年度から中間の資金手当ても要るという流れです。
3月決算の会社はすでに課税事業年度に入っている
令和8年4月1日以後に開始する事業年度が対象なので、3月決算の会社は2026年4月から始まった期がすでに最初の課税事業年度です。12月決算なら2027年1月開始の期から、9月決算なら2026年10月開始の期から始まります。
自社の1期目がいつなのかを、決算月から逆算して確かめておいてください。
初年度に確認しておきたいのは、申告書の様式と提出先です。法人税の申告に付随する形になるため、別の手続きが増えるわけではありません。税額が生じない会社でも提出は要りますので、申告の一覧に1行足しておくことです。
決算対策の年間スケジュール
結論: 期首の計画、期中の月次確認、決算3か月前の判断、決算日の手続き、申告期限までの5つの節目があります。どこか1つでも抜けると直前の選択肢が細ります。
期首(第1〜3月)と期中(第4〜9月)
前期の決算を振り返り、当期の利益計画を置きます。役員報酬はこの時期に決め、株主総会の議事録に残します。設備投資や採用の予定も、この段階で大枠を決めておくと後が楽です。
月次で試算表を締め、着地の見込みを更新します。四半期に一度は、計画との差がどこで生じているかを確認しておきたいところです。
上半期が終わった時点で当期の輪郭はかなり見えます。ここで「今期は利益が出そうだ」と分かれば、下半期に投資や採用を寄せるという判断ができます。
決算3か月前と、決算月・決算日
ここが実質的な最終判断の時期です。着地見込みをもとに、実行する対策を決めます。設備投資は、発注から納品・事業供用までの期間を逆算すると、3か月前が実行を決める限界になることが多いためです。
決算賞与の通知、棚卸、債権債務の確認など、期限のある手続きを終えます。決算賞与は通知の日が要件に関わるので、決算日をまたぐと翌期の損金になります。
決算後から申告期限まで
法人税の確定申告書は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、納付します。3月決算なら5月末、12月決算なら翌年2月末です。
- 決算日の翌日から2週間:試算表を確定させ、決算整理の論点を洗い出す
- 1か月目:申告書の作成と、税理士との最終確認
- 2か月目:申告・納付、そして翌期の計画づくり
納付は申告と同じ期限です。資金の手当ては、着地が見えた時点から始めておくほうが安全です。
着地利益の見込み方
結論: 着地の見込みは、試算表の数字に、まだ帳簿に載っていない費用と、これから確定する取引を足して作ります。売上だけを見て判断すると外れます。
月次で試算表を締め、帳簿に載っていない費用を拾う
決算対策の前提は、月次の数字が締まっていることです。請求書が溜まっている、通帳の記帳が追いついていないという状態では、そもそも着地が読めません。
「毎年、決算になってから利益が分かる」というお声をよくいただきますが、これは対策の問題ではなく経理の締めの問題です。
決算月に近づいたら、未払いの費用、まだ請求書が届いていない外注費、社会保険料の未払分などを拾います。これらは実際には当期の費用ですが、支払いが翌期になるため見落とされがちです。
予定している支出を織り込む
賞与、修繕、設備投資、広告の出稿など、実行するか迷っている支出を一覧にします。それぞれ「実行した場合」「見送った場合」の着地を並べると、判断がしやすくなります。
織り込むのは、金額と時期の両方です。同じ支出でも、決算日をまたぐかどうかで当期の損益が変わります。発注の段階で稼働や納品の予定日を確認しておけば、着地の見込みの精度が上がります。
黒字が見込まれる期の考え方
結論: 黒字期の選択肢は、費用を当期に寄せる手と、投資を当期に実行する手に大きく分かれます。どちらも現金が出ていくため、資金繰りとセットで判断します。
費用を当期に寄せる手と、その限界
未払費用の計上、修繕の前倒し、消耗品の購入など、支出の時期を当期に寄せる手があります。ただしこれは費用の帰属を動かしているだけで、翌期以降の費用が減るという裏返しがあります。
「今期の税金は減ったが、来期に同じ問題が来た」という状態になりやすいのはこのためです。繰り延べと圧縮は別物だと整理しておいてください。
決算賞与の3つの要件
決算賞与を当期の損金にするには、次の3つをすべて満たす必要があります。国税庁は1つ目の要件を「その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること」と定めています。
- 各人別に全員へ通知する:支給日に在職している人だけに支給する定めがある場合の通知は要件を満たしません
- 翌日から1か月以内に支払う:事業年度終了の日の翌日から1か月以内が期限です
- 通知した期に損金経理する:通知した日の属する事業年度で費用処理します
資産を買うときに見る指標と、手元資金を減らさない選択肢
節税を目的に資産を買うと、たいてい後で困ります。判断の基準は、その資産が事業のキャッシュフローを生むかどうかです。
減価償却を通じて費用になる資産は、当期に落ちるのは取得価額の一部だけです。全額が当期の費用になると誤解したまま高額の資産を買うと、資金だけが出ていきます。
支出を伴わない手もあります。回収不能な売掛金の処理、不良在庫の評価、貸倒引当金の計上といった、すでに起きている損失を帳簿に反映させる作業です。
少額減価償却資産の特例|40万円未満への引き上げ
結論: 令和8年度税制改正で、対象となる資産の取得価額が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。年300万円を限度に、取得した期の損金にできます。
引き上げの内容
中小企業庁は、この見直しについて「40万円未満の償却資産であれば、全額損金算入が可能」と案内しています。物価の上昇を踏まえた基準額の見直しという位置づけです。
30万円台の備品は、これまで法定耐用年数に沿って償却する必要がありました。改正後はその区分が当期の損金にできるようになり、経理の手間も減ります。
年300万円という上限と、対象になる法人の範囲
金額に上限があります。適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計が年300万円を超える場合、300万円に達するまでが限度です。事業年度が1年に満たない場合は月数で按分します。
つまり40万円の資産なら年7個分までが目安です。買えば買うほど落とせる制度ではありません。
青色申告書を提出する中小企業者等が対象で、常時使用する従業員数の要件があります。令和8年度税制改正を踏まえた中小企業庁の案内では、中小企業者は従業員数400人以下、出資金等が1億円を超える組合等は300人以下が対象とされています。
手続きと重複適用の制限、措置期間
確定申告書に明細書(別表16(7))を添付する必要があります。また、租税特別措置法上の特別償却・税額控除・圧縮記帳との重複適用はできません。
貸付けの用に供する資産も対象外です。節税商品として持ちかけられる形の一部は、この除外に当たります。
中小企業庁の案内では、措置期間は令和10年度末(2029年3月31日)までとされています。期限のある制度なので、投資の時期を決めるときは残り期間も見ておいてください。
設備投資に使う税制
結論: 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制は、いずれも適用期限が2027年3月31日です。経営強化税制は事前に計画の認定が必要で、設備を買ってからでは間に合いません。
中小企業投資促進税制
対象設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却か7%の税額控除を選べます。税額控除を使えるのは、個人事業主と資本金3,000万円以下の法人です。
対象は機械装置が1台160万円以上、一定のソフトウェアが70万円以上、車両総重量3.5トン以上の貨物自動車などです。電子計算機や複合機は対象から外れています。
中小企業経営強化税制と、期限・手続き期間の確認
こちらは即時償却か10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)を選べます。ただし中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けることが前提です。
手続きの順番を間違えると使えません。工業会等の証明書や経済産業大臣の確認書は設備の取得前に申請する必要があり、計画の認定を受けてから設備を取得するのが原則の流れです。
どちらの制度も期限が決まっています。経営強化税制は証明書の取得から計画認定まで数か月かかることもあるため、決算3か月前に思いついても間に合わない場合があります。
投資の計画があるなら、税制の適用可否は投資を決める段階で確認しておくのが現実的です。
交際費の扱い
結論: 資本金1億円以下の法人は、交際費のうち年800万円までを損金にできます。1人あたり1万円以下の飲食費は、そもそも交際費から除かれます。
800万円の定額控除限度額
交際費等は原則として全額が損金不算入ですが、資本金1億円以下などの法人は、年800万円までの部分を損金にできます。事業年度が1年に満たない場合は月数按分です。
または、飲食費の50%を超える部分を損金不算入とする計算を選ぶこともできます。中小法人では800万円の枠を使うほうが有利になる場合が多くなります。
1人あたり1万円以下の飲食費と、保存する書類の要件
国税庁は交際費等から除かれるものとして、飲食等の費用で「その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が10,000円以下である費用」を挙げています。この基準額は令和6年4月1日以後に支出する分から、5,000円以下から引き上げられました。
社内の役員・従業員だけの飲食は対象外です。あくまで社外の関係者を含む飲食が前提になります。
この取扱いを使うには、日付、参加した相手方の氏名・名称と関係、参加人数、金額と店名・所在地などを記載した書類を保存している必要があります。
領収書だけでは足りません。会食の直後にメモを残す習慣がある会社と、後から思い出そうとする会社で、期末の手間はまったく変わってきます。
赤字が見込まれる期の考え方
結論: 赤字の期に無理な支出は不要です。青色申告で欠損金を繰り越せる状態を保ち、翌期以降の黒字と相殺できるようにしておくことが対策になります。
欠損金の繰越控除は10年、中小法人等は所得の全額と相殺できる
青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度のものまで繰り越して損金に算入できます。平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた分は9年です。
古い事業年度に生じたものから順に使っていきます。
資本金1億円以下の中小法人等は、繰越欠損金を所得の全額まで使えます。中小法人等以外の法人は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度で所得の50%が限度です。
この差は大きく、中小法人であることの実務上の利点のひとつと言えます。
青色申告と連続提出という条件、繰り戻して還付を受ける選択肢
繰越控除を使えるのは、欠損金が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を提出し、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人です。
赤字だから申告しなくてよい、ということにはなりません。1年でも申告を落とすと、繰越の前提が崩れます。
前期が黒字で当期が赤字の場合、欠損金を前期に繰り戻して法人税の還付を受ける制度もあります。繰り越すか繰り戻すかは、翌期以降の見通しと手元資金の状況で判断が変わります。
納税の時期を年間で見る|中間申告と決算月
結論: 税金が出ていく時期は、確定申告のときだけではありません。法人税も消費税も中間申告があり、決算月の置き方でその時期が変わります。
法人税の中間申告が必要になる基準
前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で割り、6を掛けた金額が10万円を超える場合、中間申告が必要になります。提出と納付の期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。
前期が黒字だった会社は、当期の業績にかかわらず期の途中で納税が発生します。前期並みに稼げていない年ほど、この負担は重く感じられます。
消費税の中間申告は年11回になることもある
消費税は、直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を除く年税額)が48万円を超えると中間申告が必要です。回数は税額に応じて変わり、48万円超400万円以下で年1回、400万円超4,800万円以下で年3回、4,800万円を超えると年11回になります。
売上規模が大きい会社では、ほぼ毎月納税があるという状態になります。法人税より先に消費税で資金が詰まるケースは珍しくありません。
決算月をずらすという選択肢と、納税資金を月次で積むこと
決算月は定款で定めますが、株主総会の決議で変更できます。繁忙期と決算作業が重なっている、納税の時期に売上の谷が来ているといった状態なら、変更を検討する価値があります。
ただし変更した期は事業年度が12か月未満になり、少額減価償却資産の年300万円や交際費の年800万円といった枠も月数で按分されます。単年で見ると不利に働く年があることは織り込んでおいてください。
法人税・地方税・消費税を合わせると、納付の総額は利益の3割から4割程度になります。着地が見えた段階で、毎月いくら残しておくかを決めておくと、申告期限に慌てずに済みます。
決算対策の相談で最後に結果を分けるのは、この現金の準備ができているかどうかです。
決算対策で踏み外しやすい線
結論: 実態のない取引、期のずれ、出口を考えていない繰り延べの3つが、後から問題になりやすい類型です。いずれも決算直前に急ぐと起きやすくなります。
実態のない取引と、期のずれ
役務の提供を受けていない外注費、納品されていない仕入れ、使う予定のない資産の購入。税負担を減らす目的だけで作られた取引は、税務調査で否認される可能性があります。
決算日をまたぐ取引の帰属を誤ると、当期に落としたつもりの費用が翌期のものと判断されます。納品日、検収日、通知日といった要件が制度ごとに違うため、確認しないまま処理すると起こりがちです。
出口を考えていない繰り延べ
保険や共済を使った繰り延べは、解約したときに収益が立ちます。そのタイミングで受け皿になる費用がなければ、先送りした利益がまとめて表に出るだけです。
経営セーフティ共済については、令和6年10月1日以後に解約した場合、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は損金に算入できないという措置が設けられています。加入と解約を繰り返す使い方は、制度の側で塞がれたということです。
決算書は税務署だけのものではない
結論: 決算書は金融機関の融資判断の材料であり、経営者自身の意思決定の材料でもあります。税負担だけを見て決算を作ると、別のところで代償を払うことがあります。
金融機関は、利益の水準、自己資本比率、債務償還年数などを見ます。税負担を減らすために利益を圧縮し続けると、融資を受けにくくなることがあります。
「税金は減ったが、借入の枠が下がった」という結果は、総額で見れば損をしていることもあります。どちらを優先するかは、その会社が次の1年で何をしたいかによって変わります。
決算書からは、粗利率の推移、固定費の水準、在庫の回転、現金の残り方が読み取れます。決算対策の検討は、これらを見直す機会でもあります。
顧問税理士との進め方
結論: 税理士に伝える時期が早いほど、選べる手は多くなります。逆に決算1か月前に相談しても、その時点で残っている選択肢しか提示できません。
情報を渡す時期と、決めるのは経営者であること
決算の3〜4か月前に、着地の見込みと、検討している投資や採用を共有しておくのがひとつの目安です。この時期なら、税制の適用可否を確認する時間も残っています。
税理士は制度の説明と試算を担いますが、投資するかどうか、賞与を出すかどうかは経営の判断です。ここを丸ごと預けようとすると、話が進みません。
私たちがご相談の場で最初に確認するのも、税金の話ではなく、この1年で何をしたいかという点です。
月次で締められる体制
決算対策が回るかどうかは、結局のところ月次の締めが安定しているかで決まります。記帳が遅れがちな会社では、そこを整えることが最初の対策になります。
体制といっても、特別な仕組みは要りません。証憑を月ごとにまとめて渡す、通帳の記帳を月1回にそろえる、請求書の締めを固定する。この3つがそろえば、翌月中に試算表が出る形になります。早く出ることそのものが、選べる打ち手の数を決めます。
決算対策のご相談事例
建設業|工期のずれで着地が読めなかった例
「毎年、期末になるまで利益が分からない」というご相談でした。工事の完成基準と入金の時期がずれるため、試算表の数字が実感と合わない状態が続いていたケースです。
進行中の工事について、原価の投入状況を月次で拾う形に変えたところ、期の中盤で着地の幅が読めるようになりました。翌期からは、投資の時期を利益の出る期に寄せる判断ができています。
飲食業|設備投資を決算直前に思い立った例
厨房設備の入れ替えを決算1か月前に相談されたケースです。経営強化税制の適用を検討しましたが、計画の認定に要する期間から当期の適用は難しいと判断しました。
結果として、投資そのものは翌期に回し、当期は少額減価償却資産の特例で対応できる範囲にとどめています。制度を使う投資は、思い立った時期が結論を左右するという例です。
運送業|赤字期に申告を落としかけた例/小売業|交際費の記録がなかった例
赤字だから申告しなくてよいと考え、申告書の提出が遅れそうになったケースです。繰越欠損金は連続して確定申告書を提出していることが条件になるため、この年に落としていれば翌期以降の相殺ができなくなるところでした。
赤字の期こそ、申告の手続きは丁寧に進める必要があります。
飲食費の記録が領収書だけだったため、1人あたり1万円以下の判定ができない支出が積み上がっていたケースです。参加者と人数のメモを残す運用に変えたところ、翌期からは判定ができるようになりました。
制度を使えるかどうかは、期末の判断ではなく日々の記録で決まります。
よくある質問
決算対策はいつから始めればよいですか?
決算対策は税理士に任せておけばよいですか?
防衛特別法人税は小さな会社にも関係しますか?
赤字なら何もしなくてよいですか?
30万円台の備品は今期から全額落とせますか?
節税と決算対策は同じ意味ですか?
まとめ:決算対策は決算月の作業ではない
- 決算対策は期首に決める層・期中に積む層・直前に打つ層に分かれます。手の数がいちばん多いのは期首です
- 中小法人の法人税率は年800万円以下が15%、超える部分が23.2%です。令和7年4月1日以後に開始する事業年度で所得が10億円を超える場合、800万円以下の部分は17%になります
- 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税が課されます。法人税額から年500万円を引いた額に4%で、税額が0でも申告が必要です
- 少額減価償却資産の特例は対象が40万円未満に引き上げられました。年300万円が上限で、措置期間は令和10年度末までです
- 赤字の期は、青色申告と連続した申告書の提出を守ることが最大の対策になります。中小法人等は繰越欠損金を所得の全額と相殺できます
やらないほうがよいことを1つ挙げるなら、決算直前に慌てて支出を作ることです。現金が減り、翌期に同じ問題が残るだけになりがちです。
次の一歩としておすすめしたいのは、月次の締めを1か月早めることです。地味ですが、着地が早く見えるようになるだけで、選べる手は目に見えて増えます。
自社の決算対策をどこから見直せばよいか分からないという段階でも構いません。税理士法人Light UPでは、直近の試算表と決算月を確認するところから、年間のスケジュールを一緒に組み立てています。まずはお気軽にご相談ください。
【メタディスクリプション】
決算対策の全体像を、法人税の仕組み、2026年度に始まった防衛特別法人税、少額減価償却資産の特例の40万円未満への引き上げ、期首から申告までの年間スケジュールまで整理します。




