損益計算書の見方|5つの利益が示すもの
「利益の欄が5つもあって、どれを見ればいいのか分かりません」。「営業利益は出ているのに、経常利益で落ちているのはなぜですか」――決算書をお渡しするとき、この2つのご質問は必ずと言っていいほど出ます。
結論からお伝えすると、損益計算書の5つの利益は上から順に範囲が広がっていく構造になっています。売上総利益は商品そのものの力、営業利益は本業の力、経常利益は財務まで含めた実力、税引前当期純利益は臨時の出来事を反映した結果、当期純利益は税金を引いて最後に残った額です。
税理士法人Light UPでは、この書類の読み方はどの段階で利益が減ったかを見つけることだと考えています。1つの数字を見るのではなく、上から下へ落ちていく過程のどこで大きく削られたかが分かれば、打つ手が絞れるためです。
この記事では、5つの利益それぞれが何を示すのか、金額ではなく率で見る意味、そして段階の差に何が表れるのかを、実際に中小企業の決算を代行している立場から整理します。
損益計算書は1年間の成績を段階で示す
結論: 損益計算書は、事業年度の1年間にいくら稼ぎ、いくら使い、いくら残ったかを示す書類です。貸借対照表が一時点の断面を写すのに対し、損益計算書は期間の流れを表します。
区分は法令で決まっている
e-Gov 法令検索で会社計算規則88条1項を引くと、損益計算書等は「売上高/売上原価/販売費及び一般管理費/営業外収益/営業外費用/特別利益/特別損失」の7つの項目に区分して表示しなければならないと定められています。並び順も内容も、会社が自由に決められるものではありません。
この7つの区分を組み合わせることで、5つの利益が順に計算されます。どの会社の損益計算書も同じ順序で並んでいるのは、この規定があるためです。他社の決算書を見ても構造が同じなので、比較ができます。
上から下へ削られていく構造
いちばん上の売上高から始まり、原価が引かれ、経費が引かれ、利息が引かれ、臨時の損失が引かれ、最後に税金が引かれます。段階ごとに引かれるものの性質が違うのが要点です。
どの段階で大きく削られているかを見れば、問題の所在が絞れます。売上総利益の段階で薄ければ商品の値決めか仕入れ、営業利益で消えていれば固定費の重さ、経常利益で落ちていれば借入の負担。利益の金額ではなく、落ち方を見るというのがこの書類の読み方です。
貸借対照表とつながっている
当期純利益は、貸借対照表の純資産の部にある繰越利益剰余金へ積み上がります。損益計算書の一番下と、貸借対照表の右下がつながっているということです。
黒字を出し続ければ純資産が厚くなり、赤字が続けば削られていきます。2つの書類は別々のものではなく、1年ごとに接続する関係にあります。
いわば、損益計算書が1年分の流れを記録した動画で、貸借対照表がその年末に撮った写真のようなものです。動画の結末が、次の写真の一部になる。決算書を2枚組で見る理由は、この関係にあります。
5つの利益は計算の順序が決まっている
結論: 会社計算規則89条から94条までが、5つの利益の計算方法をそれぞれ定めています。順序も計算式も法令で決まっているため、会社ごとに違うことはありません。
条文が定めている計算式
| 利益 | 計算式 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 売上高 − 売上原価 | 会社計算規則89条 |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 同90条 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 同91条 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 同92条 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 同93条・94条 |
たとえば同規則89条は「売上高から売上原価を減じて得た額(以下「売上総損益金額」という。)は、売上総利益金額として表示しなければならない」と定めています。式が1つに決まっているので、読み手は計算方法を疑う必要がありません。
同様に、同規則91条は経常利益について「営業損益金額に営業外収益を加えて得た額から営業外費用を減じて得た額…は、経常利益金額として表示しなければならない」としています。加えるものと減じるものが条文で指定されているため、どの区分にどの取引を入れるかだけが実務の判断になります。逆に言えば、区分を誤ると利益の段階そのものが歪みます。
マイナスのときは名前が変わる
各条の2項には、金額がゼロ未満の場合の定めがあります。売上総損益金額がマイナスなら売上総損失、営業損益金額がマイナスなら営業損失として表示します。
決算書に「営業損失」と書かれていれば、本業で赤字だったということです。利益という言葉が損失に変わっているかどうかで、その段階の成否がすぐ分かります。数字を追う前に、言葉の並びを見るだけでも状況はつかめます。
中小企業でも作り方は同じ
会社計算規則は、株式会社であれば規模を問わず適用されます。従業員5名の会社でも、上場企業と同じ区分で損益計算書を作ります。
作り方が共通だからこそ、金融機関は初めて見る会社の決算書でも読めます。様式が揃っていることが、外部から評価を受けられる前提になっているということです。
「うちは小さい会社だから簡単な形でいい」と思われがちですが、実際は逆です。決まった様式で作っているからこそ、融資の審査でも補助金の申請でも、そのまま提出できます。独自の形で作ってしまうと、そのつど作り直しが必要になります。
売上総利益|商品やサービスそのものの力
結論: 売上総利益は売上高から売上原価を引いた金額で、粗利益とも呼ばれます。値決めと仕入れの結果が直接表れる段階です。
売上原価に何が入るか
小売業や卸売業であれば、売れた商品の仕入原価です。製造業であれば、製造にかかった材料費・労務費・経費を集計した製造原価になります。サービス業では、原価に何を入れるかが会社によって分かれます。
ここで注意したいのは、仕入れた金額ではなく売れた分の原価だという点です。期首の在庫に当期の仕入れを足し、期末の在庫を引いて計算します。在庫が増えた期は売上原価が小さくなり、売上総利益は大きく出ます。
率で見ると業種の性格が出る
売上高に対する売上総利益の割合を、売上高総利益率と呼びます。卸売業では10%台、小売業では20〜30%台、サービス業では50%を超えることもあります。業種によって水準がまったく違うため、他社と比べるなら同業でなければ意味がありません。
自社の推移で見るのが基本です。 率が前期より下がっていれば、値引きが増えたか、仕入価格が上がったか、商品構成が変わったかのいずれかです。金額が増えていても率が下がっていれば、売上の伸び方に無理が出ている可能性があります。
在庫の評価で数字が動く
期末の在庫をいくらで評価するかによって、売上原価は変わります。評価方法は届出によって決まり、一度選んだら継続して適用します。
棚卸を丁寧にやっていない会社では、この段階の数字が実態から離れます。売上総利益が毎期大きく振れる場合、商売そのものより棚卸の精度に原因があることも少なくありません。
「毎年12月30日に倉庫で数えているのですが、正直かなり概算です」というお声はよくいただきます。棚卸は面倒な作業ですが、ここが甘いと売上総利益も売上原価も信用できない数字になります。在庫を持つ業種では、棚卸の精度が決算書の精度そのものだとお考えください。
営業利益|本業で稼げているか
結論: 営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた金額です。会社が本業でどれだけ稼げているかを示す、いちばん重要な段階だと考えています。
販管費に入るもの
役員報酬、給料手当、地代家賃、水道光熱費、広告宣伝費、減価償却費、旅費交通費、通信費、接待交際費。事業を運営するために必要な費用のうち、売上原価に入らないものがすべてここに集まります。
金額としては人件費と家賃が大きくなりやすく、この2つで販管費の半分以上を占める会社も珍しくありません。販管費は一度上がると下げにくいという性質があるため、増やす判断は慎重にする必要があります。
営業利益が本業の実力を示す
営業利益がプラスであれば、本業だけで費用をまかなえているということです。マイナスであれば、商品の粗利では会社を維持できていない状態になります。
金融機関がまず見るのもこの段階です。営業利益が出ていれば、多少の借入があっても返済の原資があると判断されます。逆に営業損失が続いていると、他の数字が良くても評価は厳しくなります。
固定費と変動費で分けると別の見方ができる
販管費を固定費と変動費に分け直すと、売上がいくらあれば利益がゼロになるかを計算できます。損益計算書の区分とは別の切り口ですが、経営判断には有効な見方です。
この分け方については別記事に整理してあります。損益計算書をそのまま読む方法と、分解して読む方法の両方を持っておくと、判断の幅が広がります。
注意したいのは、固定費と変動費の区分に法令上の定めがないことです。対象となるのは自社で決めた基準であり、会社ごとに分け方が違います。損益計算書の区分が会社計算規則で決まっているのとは対照的で、比較の前提として同じ基準を使っているかを確認する必要があります。
経常利益|財務まで含めた実力
結論: 経常利益は営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた金額です。会社計算規則91条がその計算を定めています。借入の利息など、財務活動の負担がここで反映されます。
営業外に入るもの
営業外収益には受取利息、受取配当金、雑収入などが入ります。営業外費用には支払利息、手形売却損などです。本業ではないが毎期繰り返し発生するものが、この区分に集まります。
中小企業で金額が大きくなるのは支払利息です。借入が多い会社では、営業利益で出た黒字が支払利息で削られ、経常利益が薄くなります。営業利益と経常利益の差が大きい会社は、借入の負担が重いと読めます。
経常という言葉の意味
経常とは、毎期繰り返し起こるという意味です。臨時の出来事を除いた、会社の通常の状態での実力を示す段階になります。
このため、外部から会社を評価するときによく使われるのが経常利益です。売上高経常利益率という指標も、収益力を測る代表的なものとして定着しています。1年だけの特殊な事情を除いた姿を見たいときに使う数字だとお考えください。
業種によって水準が違う
中小企業庁の2021年版「中小企業白書」では、業種別の売上高経常利益率について、宿泊業や飲食サービス業では低く、建設業や情報通信業では高くなっていると分析されています。同じ経常利益率でも、業種が違えば評価は変わるということです。
自社の数字を判断するときは、まず同業の水準を確認します。そのうえで、自社の3期分の推移を見る。この2段階で見ると、良し悪しの判断がぶれにくくなります。
税引前当期純利益|臨時の出来事を反映した結果
結論: 税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加えて特別損失を差し引いた金額です。その期だけに起きた臨時の損益が、ここで初めて反映されます。
特別損益に入るもの
会社計算規則88条3項は、特別損失について「固定資産売却損、減損損失、災害による損失、前期損益修正損その他の項目の区分に従い、細分しなければならない」と定めています。特別利益についても同様に、固定資産売却益や負ののれん発生益といった区分が示されています。
共通しているのは、臨時に発生し、かつ金額が大きいという点です。毎期出てくるものは営業外に入れます。臨時であることと金額が重要であることの両方が求められる区分だと考えておくと、判断を誤りません。
経常利益との差を見る
経常利益と税引前当期純利益の差が大きい期は、何か特別なことが起きています。工場を売った、大きな設備を除却した、災害で損害を受けた。そうした出来事が数字に表れているわけです。
この差が大きい年の決算書だけを見て会社を評価すると、実態を見誤ります。金融機関が3期分を求めるのは、こうした一時的な変動を均して見るためです。単年度の当期純利益だけで判断しないという姿勢が要ります。
特別損失は悪いこととは限らない
不良在庫の処分や、使わなくなった設備の除却は特別損失になります。数字としてはマイナスですが、実態としては懸案を片づけた結果です。
翌期以降の負担が消えるという意味で、前向きな損失もあります。決算書を説明するときは、何によって生じた特別損失なのかを添えることで、受け取られ方が変わります。
金融機関への説明でも同じです。「不良在庫を処分したことによる特別損失で、来期以降は発生しません」と一言添えるかどうかで、評価は変わってきます。数字だけを渡して読み取ってもらおうとすると、悪い方に解釈されることもあります。説明は決算書の一部だと考えておくとよいでしょう。
当期純利益|最後に会社へ残る額
結論: 当期純利益は、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた金額です。この金額が貸借対照表の繰越利益剰余金に積み上がり、会社の純資産を厚くします。
法人税等の内訳
会社計算規則93条は、税引前当期純利益金額の次に法人税等と法人税等調整額を表示すると定めています。法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税がここに集まります。
中小企業の税負担は所得のおおむね3割です。税引前当期純利益が1,000万円であれば、当期純利益は700万円前後になる計算になります。この関係を知っておくと、決算書を見た瞬間に整合性の見当がつきます。
純資産へ積み上がる
当期純利益は、株主への配当を行わなければ全額が繰越利益剰余金へ振り替えられます。翌期の貸借対照表では純資産が増えている、という形です。
黒字を積み重ねれば自己資本が厚くなり、財務の安全性が高まります。当期純利益は1年の成績であると同時に、会社の体力を積み上げる原資でもあるということです。
繰越利益剰余金がマイナスの状態を繰越利益剰余金の欠損といい、過去の赤字の累積を意味します。純資産の合計がマイナスになれば債務超過です。1年の当期純利益はわずかでも、10年積み上がれば会社の姿は変わります。
現金の増加とは一致しない
当期純利益が700万円あっても、預金が700万円増えるわけではありません。売掛金として残っていたり、在庫に変わっていたり、借入の返済に使われていたりするためです。
利益と現金のずれについては、貸借対照表を並べて見ることで原因が見えてきます。損益計算書だけでは追いきれない部分なので、2つの書類を同時に開く習慣を持っておくと安心です。
金額でなく率で読む
結論: 損益計算書は金額のまま比べても意味を持ちにくい書類です。売上高に対する各利益の割合を出すことで、規模が違う年や会社どうしでも比較できるようになります。
主要な率と計算式
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 売上高総利益率 | 売上総利益 ÷ 売上高 | 商品やサービスそのものの収益力 |
| 売上高営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 | 本業としての稼ぐ力 |
| 売上高経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上高 | 財務まで含めた通常の実力 |
| 販管費率 | 販売費及び一般管理費 ÷ 売上高 | 固定費の重さ |
この4つを3期分並べるだけで、会社の状態はかなり見えてきます。表計算ソフトで作れば10分ほどの作業です。
作る手順は次のとおりです。
- 決算書から4つの金額を書き出す:売上高・売上総利益・営業利益・経常利益・販管費を3期分
- それぞれを売上高で割る:小数第1位まで出せば十分。1桁目の動きを見る
- 横に並べて増減を見る:上がっているか下がっているかだけを確認する
- 同業の水準と比べる:業種によって適正な水準が違うので、比較は同業に限る
この表は一度作れば、翌期からは1行足すだけで済みます。
売上が伸びても率が下がる場面
売上高が前期より2割伸びたのに営業利益率が下がっている、という決算書はよくあります。値引きをして数量を取ったか、人を増やして販管費が先行したかのどちらかです。
金額だけを見ていると「売上が伸びたから良い年だった」と判断してしまいます。率を並べて初めて、伸ばし方の質が見えるということです。
逆に、売上が減っているのに営業利益率が上がっている年もあります。採算の悪い取引をやめた結果であれば、これは前向きな変化です。売上の増減だけで良し悪しを決めない。ここが率で見ることのいちばんの利点になります。
業種の水準を確認してから判断する
営業利益率5%という数字が良いのか悪いのかは、業種によって答えが変わります。卸売業では十分な水準でも、ソフトウェア業では物足りないかもしれません。
まず同業の水準を調べ、次に自社の推移を見る。この順序を守れば、他社と比べて落ち込む必要も、根拠なく安心することもなくなります。
業種の水準は、中小企業庁の中小企業実態基本調査などで確認できます。ただし平均値は規模の大きい会社に引っ張られることがあるため、自社と近い売上規模の区分を見るのが実用的です。同業でも年商1億円の会社と50億円の会社では、費用の構造そのものが違います。
販管費を分解すると打ち手が見える
結論: 営業利益が薄い会社では、販管費の中身を分解することで手を打てる場所が見えてきます。金額の大きい順に並べ、上位3つで全体の何割を占めるかを確認するのが早道です。
上位3科目で半分を超えることが多い
多くの中小企業では、役員報酬を含む人件費、地代家賃、そして減価償却費や広告宣伝費のいずれかで、販管費の半分以上を占めます。残りの科目をいくら削っても、全体への影響は限定的です。
削る順番は金額の大きい順です。細かい経費の節約から始めると、労力に対して効果が出ません。まず上位3科目を確認し、そこに手が入るかを考えるところから始めます。
減価償却費は現金が出ていかない
販管費のなかで減価償却費だけは、費用として計上されても現金が出ていきません。過去に支払った設備の代金を、期間に配分しているだけだからです。
営業利益が薄くても減価償却費が大きい会社は、現金の面では余裕があることがあります。営業利益に減価償却費を足し戻した金額を見ると、返済に回せる原資の目安になります。金融機関が簡易キャッシュフローとして見ているのもこの数字です。
人件費は率で管理する
人件費は金額で見ると増える一方になりがちです。売上高人件費率として率で管理すれば、売上の伸びに見合った増え方かどうかが分かります。
業種によって適正な水準は変わりますが、自社の過去3期と比べるだけでも判断はできます。率が上がり続けているなら、採用のペースが売上の伸びを上回っているということです。
ただし、率が上がること自体が悪いとは限りません。先行して人を採り、育ってから売上が伸びる業種もあります。見るべきは1年の率ではなく、上がった率が翌期に戻るかどうかです。2期続けて上がり、売上が追いついてこないなら、そこで初めて手を打つ判断になります。
読み違えやすい4つの場面
結論: 損益計算書の読み違いは、在庫・役員報酬・減価償却・特別損益の4か所で起きやすくなります。いずれも数字が動きやすい項目です。
在庫が増えると利益が増えて見える
売上原価は、期首在庫に当期仕入を足して期末在庫を引いて計算します。期末の在庫が増えれば売上原価は小さくなり、売上総利益は大きく出ます。
売れ行きが悪くて在庫が積み上がった期に、利益だけは前期より増えている。この現象は珍しくありません。在庫の増減を確認せずに売上総利益を評価しないことが要点です。
役員報酬の水準で営業利益が動く
一人社長の会社では、役員報酬をいくらに設定するかで営業利益が大きく変わります。報酬を高くすれば営業利益は減り、低くすれば増えます。
会社の稼ぐ力そのものは変わっていないのに、数字だけが動くわけです。同族会社の損益計算書を評価するときは、役員報酬の水準もあわせて見る必要があります。
金融機関も同じ見方をします。営業利益に役員報酬を足し戻した金額で、会社の実質的な収益力を測ることがあるためです。役員報酬は費用であると同時に、経営者への利益配分でもあるという二面性を持っています。
減価償却を止めると利益が出る
法人税法上、減価償却費は限度額まで計上すればよく、それより少なくても構いません。償却を止めれば費用が減り、利益が出ているように見えます。
ただし金融機関はこの操作を見抜きます。償却不足がある決算書は、実質的には赤字だと評価されることが一般的です。利益を作るために償却を止めるのは、短期的にも得策ではありません。
特別損益を毎期出していないか
臨時に発生するはずの特別損益が毎期計上されている場合、区分そのものが適切でない可能性があります。本来は営業外に入れるべきものが特別に入っていると、経常利益が実態より良く見えます。
3期分を並べたときに、特別損益の欄が毎年埋まっているなら中身を確認します。区分の誤りは、外部からの評価を歪める原因になります。
事例:営業利益は伸びたのに経常利益が横ばいだった建設業
「今期は現場も順調で、営業利益は前期より400万円増えました。なのに経常利益がほとんど変わっていないんです」。年商4億円ほどの建設業の会社から、決算の説明の場でご相談をいただきました。
3期分を並べて率を出したところ、売上高営業利益率は3.2%から4.1%へ改善していました。本業としては明らかに良くなっています。ところが経常利益率は1.8%から1.9%とほぼ横ばいでした。
差は営業外費用にありました。設備投資のために前期から借入を増やしており、支払利息が年間で380万円ほど増えていたのです。営業利益の増加分が、そのまま利息に消えていた形になります。
このときお伝えしたのは、この結果は失敗ではないということでした。設備投資の効果が営業利益に表れ始めており、借入は返済が進めば利息も減っていきます。いま見るべきは経常利益の水準ではなく、営業利益の改善が続くかどうかだと整理しました。
その後は月次で営業利益率を追う運用に変えています。段階を分けて見ることで、良くなっている部分と負担になっている部分を切り分けて話せるようになりました。
よくある質問
5つの利益のうち、どれをいちばん重視すればよいですか?
営業利益と経常利益の差が大きいのは問題ですか?
売上総利益率は何%あればよいですか?
当期純利益が出ているのに現金が増えないのはなぜですか?
減価償却費を計上しないと利益は増えますか?
損益計算書は何期分を見比べればよいですか?
まとめ:どの段階で削られたかを見る
- 損益計算書の区分は会社計算規則88条で決まっており、どの会社も同じ順序で並ぶ
- 5つの利益は上から順に範囲が広がる。売上総利益は商品の力、営業利益は本業の力
- 経常利益は財務まで含めた通常の実力。営業利益との差に借入の負担が表れる
- 特別損益は臨時かつ金額が大きいもの。毎期出ているなら区分を確認する
- 金額ではなく売上高に対する率で見る。3期分を並べると傾向が読める
先に手を付けるなら、4つの率を3期分並べることです。売上高総利益率・営業利益率・経常利益率・販管費率。表計算ソフトで10分の作業ですが、これだけで会社の状態はかなり見えてきます。
やらなくてよいのは、細かい経費科目を1つずつ眺めることです。販管費は上位3科目で半分以上を占めるため、そこに手が入らなければ全体は動きません。見る順番を金額の大きい順にするだけで、時間の使い方が変わります。
税理士法人Light UPでは、月次の記帳から決算・申告まで一貫してお引き受けしています。決算書の読み方をご説明する場や、率の推移を追う仕組みづくりも含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。
出典
- e-Gov 法令検索「会社計算規則」(第88条・第89条・第90条・第91条・第92条・第93条・第94条)
- 中小企業庁「2021年版 中小企業白書」第2部第1章(業種別の売上高経常利益率)
- 中小企業庁「中小企業実態基本調査」
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。記載した率の水準は業種・規模により大きく異なります。個別の分析については税理士にご相談ください。




