補助金と消費税|仕入税額控除との関係
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
「補助金を受け取ったら、消費税はどうなりますか」。補助金の申請を進めている段階で、いただくご質問です。受け取る側の処理と、補助金で買ったものの処理は別なので、混乱しやすい部分です。
結論からお伝えすると、補助金そのものに消費税はかかりません。対価性のない収入なので、不課税取引です。ただし、補助金で購入した設備の消費税は、通常どおり仕入税額控除の対象になります。この2つが組み合わさると、消費税の分だけ得をする形になるため、多くの補助金では返還の仕組みが置かれています。
税理士法人Light UPでは、補助金の申請をされる場合、交付要綱に消費税等仕入控除税額に関する定めがあるかを先に確認するようお伝えしています。実績報告の段階で、その報告が必要になるためです。
この記事では、補助金の消費税上の扱い、仕入税額控除との関係、返還の仕組み、免税事業者や簡易課税の場合、そして法人税での取扱いを整理します。
補助金そのものは不課税
結論: 消費税は資産の譲渡や役務の提供の対価に課されます。補助金には対価性がないため、課税の対象外です。課税でも非課税でもなく、不課税という扱いになります。課税売上割合の計算にも入りません。
対価性がないという意味
消費税の課税の対象になるのは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡等です。補助金は、特定の政策目的のために交付されるもので、何かを引き渡した対価ではありません。そのため、課税の対象そのものに当たりません。課税でも非課税でもなく、不課税という扱いになります。受け取った金額に消費税は含まれていません。
課税売上割合にも影響しない
不課税の収入は、課税売上割合の計算に入りません。分子にも分母にも算入されないということです。補助金を受け取っても、課税売上割合は動きません。この点は、非課税売上げと違うところです。土地の売却のような非課税売上げは分母に入るため課税売上割合を下げますが、補助金にはその作用がありません。金額が大きい補助金を受け取っても、仕入税額控除の計算には影響しないということです。
助成金や給付金も同じ
雇用に関する助成金、事業の継続を支援する給付金、感染症の影響に対応する支援金。名称は違っても、対価性がないという性質は同じです。いずれも不課税として扱われます。会計ソフトに入力するときは、税区分を対象外または不課税に設定します。ここを課税として処理すると、消費税の計算が誤ります。雑収入として計上する場合、通常の雑収入は課税の税区分になっていることが多いため、補助金だけ別の補助科目にしておくと間違いが減ります。
補助金で買ったものは控除できる
結論: 補助金を財源にしていても、課税仕入れであることに変わりはありません。仕入税額控除の対象になります。
財源は関係ない
仕入税額控除の可否は、その仕入れが課税仕入れに当たるかどうかで判断します。支払いの財源が自己資金なのか、借入なのか、補助金なのかは問いません。補助金で購入した設備でも、通常どおり控除できます。この点は、消費税の仕組みとして自然な結論です。仕入れの相手方は消費税を預かって納付しているため、こちらで控除できなければ税が二重に負担されることになります。財源によって控除の可否が変わる仕組みにはなっていません。
だから消費税の分が残る
補助金が消費税を含めた金額で交付され、その支払いに含まれる消費税を控除すると、その分だけ手元に残ることになります。たとえば税込1,100万円の設備を購入し、その全額の補助を受けたとします。支払いに含まれる消費税100万円を控除すれば、実質的に100万円が手元に残る計算です。補助金の趣旨から見て、この状態は想定されていません。そのため、多くの補助金では返還の仕組みが置かれています。
交付要綱に定めがある
補助金の交付要綱には、消費税等仕入控除税額に関する定めが置かれていることが一般的です。実績報告の段階で控除される消費税額を報告し、確定した後に返還するという流れになります。制度は補助金ごとに違うため、要綱の確認が必要です。定めがない補助金もあれば、報告の時期や方法が細かく指定されているものもあります。国の補助金では置かれていることが多く、自治体の補助金では制度によって分かれます。要綱の目次から、消費税という語を探すのが早い確認の方法です。
消費税等仕入控除税額の返還
結論: 補助金で購入したものについて控除した消費税額を、補助金の交付元へ返還する仕組みです。実績報告と消費税の申告の時期がずれるため、事務が2段階になります。担当者が変わると引き継ぎが漏れやすい部分です。
報告の時期
多くの補助金では、事業の完了後に実績報告を行います。その時点では消費税の申告が済んでいないため、控除される消費税額が確定していないことがあります。この場合、消費税の申告後に改めて報告するという流れになります。実績報告と、消費税の報告の時期がずれるということです。補助金の事務が2段階になるため、担当者が変わると引き継ぎが漏れやすくなります。事業の完了から消費税の申告まで、1年近く空くこともあります。事業が終わった感覚と、手続が残っている状態にずれが生じます。
計算の方法
補助金の対象になった経費に含まれる消費税のうち、実際に控除された金額を計算します。課税売上割合が95パーセント未満の場合は、按分の後の金額になります。全額を控除できていない場合は、その分だけ返還する額も小さくなります。計算の方法は補助金ごとに指定されていることが多いため、要綱と様式を確認する必要があります。個別対応方式を採用している場合は、その補助対象の資産がどの区分に該当するかによっても金額が変わります。
返還しないとどうなるか
交付要綱に定めがあるのに報告や返還を行わなければ、補助金の交付の条件に違反することになります。将来の申請に影響する可能性もあります。金額の大小にかかわらず、定められた手続は行っておく必要があります。事業が完了した時点で気が緩みやすい部分ですが、手続はまだ残っています。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にも、交付の決定の内容や条件に従う義務が定められています。
免税事業者や簡易課税の場合
結論: 仕入税額控除を受けていなければ、返還すべき消費税額は生じません。免税事業者と簡易課税を選択している事業者が該当します。ただし、返還する金額がゼロであっても、報告そのものは必要とされることが一般的です。
免税事業者
免税事業者は消費税の申告をしないため、仕入税額控除もありません。補助金で購入した設備に含まれる消費税は、そのまま自社の負担になります。返還すべき消費税等仕入控除税額はゼロです。実績報告では、免税事業者である旨を報告することになります。ただし、その後に課税事業者になった場合の扱いは制度によって違います。補助事業の期間中に登録して課税事業者になった場合などは、要綱で確認してください。
簡易課税を選択している場合
簡易課税では、売上に含まれる消費税にみなし仕入率を乗じて控除額を計算します。実際の課税仕入れをもとにした計算ではないため、補助金で購入した設備の消費税を個別に控除しているわけではありません。この場合も、返還すべき金額は生じないと扱われるのが一般的です。ただし、補助金ごとに考え方が違う可能性があるため、要綱で確認する必要があります。簡易課税を選択している旨の報告を求められることもあります。届出書の写しを求められる場合に備えて、控えを残しておいてください。
課税売上割合が低い場合
本則課税でも、課税売上割合が95パーセント未満であれば、課税仕入れに係る消費税の全額を控除できません。個別対応方式または一括比例配分方式で按分することになります。控除できなかった部分については、返還の対象にもなりません。実際に控除した金額を基礎に計算するためです。課税売上割合が変動する会社では、年によって返還すべき金額も変わります。補助事業を行った期の申告書で確認することになります。
報告は必要
返還すべき金額がゼロであっても、報告そのものは必要とされることが一般的です。ゼロという報告をするという形になります。報告を省略すると、手続が完了しません。事業の完了後に残る作業として、一覧に入れておく必要があります。返還する金額がないからといって、報告そのものが不要になるわけではありません。この点は取り違えやすい部分です。
法人税での扱い
結論: 補助金は益金です。ただし、固定資産の取得に充てた場合は圧縮記帳で課税を繰り延べられます。返還を要しないことが事業年度終了の時までに確定していることが要件で、繰延べであって税負担が減るわけではありません。
益金に算入される
補助金を受け取れば、その金額は益金に算入されます。消費税では不課税でも、法人税では収益です。補助金を受け取った期に、そのまま課税されることになります。設備の取得に充てた場合、その設備は減価償却によって数年かけて費用になるため、補助金の収益と費用の計上の時期がずれます。この結果、受け取った期に税負担が集中します。
圧縮記帳という仕組み
e-Gov 法令検索で法人税法42条1項を確認すると、固定資産の取得または改良に充てるための国または地方公共団体の補助金等の交付を受け、その交付の目的に適合した固定資産を取得した場合に、「その交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額…の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法…により経理したとき」は、その金額を損金に算入すると定められています。受け取った期の課税を繰り延べる仕組みです。
返還を要しないことが確定していること
同項は括弧書きで「その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る」としています。返還の要否が確定していなければ、その期には圧縮記帳を使えません。補助金の交付決定と、実際の入金、そして返還不要の確定の時期がずれることがあるため、どの期に処理するかの確認が必要です。確定していない場合は、特別勘定を設ける方法もあります。
繰延べであって減額ではない
圧縮記帳で帳簿価額を減額すると、その後の減価償却費も小さくなります。将来の損金が減るということです。税負担がなくなるのではなく、時期が後ろにずれるという理解が必要です。受け取った期の資金繰りには効果がありますが、通算すれば同じになります。補助金を受け取った期に大きな税負担が生じることを避けるための仕組みで、その期の資金を事業に回せるという点に意味があります。
| 場面 | 消費税 | 法人税 |
|---|---|---|
| 補助金を受け取った | 不課税。課税売上割合にも影響しない | 益金に算入される |
| 補助金で設備を買った | 課税仕入れとして控除できる | 固定資産として計上し、減価償却する |
| 圧縮記帳を使う | 影響しない | 補助金の額まで帳簿価額を減額できる |
| 消費税等仕入控除税額を返還した | 返還した期の処理を確認する | 返還した金額の処理を確認する |
補助金が入金される時期
結論: 多くの補助金は精算払いです。先に支出し、後から受け取る流れになるため、その間の資金を手当てしておく必要があります。補助金の額を当てにして発注すると、入金までの期間に資金が不足します。
先に支払う
補助金は、事業を実施して実績報告を行い、確定した後に交付されるのが基本です。設備の代金は先に支払うことになります。手元の資金か借入で立て替える期間が生じるということです。補助金の額を当てにして発注すると、入金までの期間に資金が不足します。申請の段階で、この立替えの期間も見込んでおく必要があります。
概算払いという制度もある
補助金によっては、事業の途中で一部を受け取れる概算払いの制度が置かれていることがあります。ただし、要件と手続があり、すべての補助金にあるわけではありません。使えるかどうかは、交付要綱で確認することになります。使える場合でも、申請から入金までに期間がかかります。概算払いを受けた後は、精算の手続も別に必要になります。事務の量が増えるため、立替えの負担と手続の手間を比べて判断することになります。
つなぎの資金
立替えの期間について、金融機関から借り入れる方法があります。補助金の交付決定通知があれば、返済の見込みを示す材料になります。交付決定の前に相談しておけば、入金の時期に合わせた借入ができます。設備投資の資金計画では、補助金の入金時期と借入の返済の時期を並べて確認しておく必要があります。補助金が入金された時点で繰上返済するという計画も立てられます。ただし、入金の時期は事務の進み方によって前後することがあります。
実務での進め方
結論: 申請の段階で要綱を確認し、事業の完了後に報告する。この2つを予定に入れておきます。
申請の前に要綱を読む
消費税等仕入控除税額に関する定めがあるか、報告の時期と方法はどうなっているか。申請の段階で確認しておけば、後の作業も見込めます。補助金の額から、返還する見込みの金額を差し引いて考えるという視点も持てます。設備投資の資金計画を立てるとき、この差は無視できません。補助率が3分の2の設備投資で、対象経費が3,000万円という規模になれば、返還の金額も100万円を超えることがあります。
会計処理を分ける
補助金の対象になった経費と、そうでない経費を区分して記帳しておくと、後の計算が楽になります。補助事業ごとに補助科目を設けるか、摘要に記載しておく方法があります。後から抽出しようとすると、金額の集計に時間がかかります。とくに複数の補助金を同時に受けている場合、この区分は必須になります。補助事業ごとに対象経費の範囲が違うため、後からまとめて仕分けることはできません。取引を記帳する時点で分けておいてください。
完了後の予定を残す
事業が完了した時点で、残る作業を一覧にしておきます。実績報告、消費税等仕入控除税額の報告、返還。担当者が変わっても引き継げる形にしておくことが実務上の備えです。補助金の事務は年をまたぐことが多く、記憶だけに頼ると漏れます。交付要綱の該当箇所に付箋を貼り、作業の一覧と一緒に保管しておく方法が簡単です。事業の完了と、手続の完了は別だという認識を共有しておいてください。
事例:返還の存在を知らなかった会社
製造業の会社から、補助金の事務についてご相談をいただきました。設備の導入に対する補助金を受け取り、事業は完了していました。
補助金の額は約900万円でした。
実績報告も済んでいました。
その後、交付元から消費税等仕入控除税額の報告を求める連絡がありました。しかし社内では、その手続の存在が把握されていませんでした。
交付要綱を確認すると、消費税の申告後に報告し、確定した金額を返還する旨が定められていました。補助金の対象経費に含まれる消費税のうち、実際に控除した金額が返還の対象になります。
計算したところ、返還すべき金額は約80万円でした。
この事例では、補助金の額を、そのまま使える資金として計画していました。申請の段階で要綱を確認していれば、返還の分を見込んだ計画になっていました。以後は、申請の時点で要綱の該当箇所を確認する手順にしています。
よくある質問
補助金に消費税はかかりますか?
補助金で買った設備の消費税は控除できますか?
消費税等仕入控除税額の返還とは何ですか?
免税事業者でも返還が必要ですか?
法人税ではどう扱いますか?
圧縮記帳を使えば税金は減りますか?
まとめ:申請の段階で要綱を確認する
補助金と消費税の関係は、2つの論点に分かれます。
まず、補助金そのものは不課税です。対価性がないため課税の対象に当たらず、課税売上割合の計算にも入りません。会計ソフトの税区分は、対象外または不課税に設定します。
次に、補助金で購入したものは通常どおり仕入税額控除の対象になります。財源が補助金であることは、控除の可否に影響しません。
この2つが組み合わさると、消費税の分だけ手元に残る形になります。そのため、多くの補助金では消費税等仕入控除税額を報告して返還する仕組みが交付要綱に置かれています。免税事業者や簡易課税を選択している場合は、控除を受けていないため返還すべき金額は生じませんが、報告そのものは必要とされることが一般的です。
法人税では、補助金は益金に算入されます。固定資産の取得に充てた場合は、法人税法42条の圧縮記帳で受け取った期の課税を繰り延べられます。ただし、返還を要しないことが事業年度終了の時までに確定していることが要件です。
実務では、申請の段階で交付要綱の該当箇所を確認してください。返還の見込みを差し引いた金額で資金計画を立てておけば、後から想定が狂うことはありません。
税理士法人Light UPでは、補助金の会計処理と、圧縮記帳の適用についてのご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「消費税法」(昭和六十三年法律第百八号)第2条、第4条、第30条、第60条
- e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第42条、第43条、第44条
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第79条、第80条
- e-Gov 法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和三十年法律第百七十九号)第7条、第15条
- 国税庁「消費税の仕組み」





