法人化の相談は誰に?税理士・司法書士の使い分けと費用
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
法人化の相談は、先に税理士にします。法人にしたほうがよいかどうかは、税金と社会保険料を並べて試算して決まり、その税務相談は税理士の業務だからです。設立の登記は司法書士、社会保険の手続きは社会保険労務士、許認可の書類は行政書士と、担当は分かれます。この記事では、誰にどの順で相談するか、いつ相談するか、何を持っていくか、設立の実費と税理士費用の見方を、国税庁・法務省などの公表資料(2026年10月時点)で整理します。
法人化の相談は誰にすればよい?
結論: 法人化の相談は、先に税理士にします。法人にすべきかは税の試算で決まり、税務相談は税理士の業務です。登記は司法書士、社会保険の手続きは社会保険労務士、許認可の書類は行政書士が担当します。
相談内容ごとの相談先
相談したい内容ごとに、相談先は次のとおりです。合同会社にする場合も、相談先は同じです。
| 相談したいこと | 相談先 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法人にしたほうがよいか、税金がどう変わるか | 税理士 | 税理士法2条1項3号(税務相談) |
| 決算月・資本金・役員の決め方、設立後の税務署への届出 | 税理士 | 同項2号(税務書類の作成) |
| 設立登記の申請 | 司法書士(本人が申請することもできる) | 司法書士法3条1項1号(登記手続の代理) |
| 社会保険・労働保険の届出 | 社会保険労務士(本人が届け出ることもできる) | 社会保険労務士法2条1項1号(申請書等の作成) |
| 建設業・飲食業・古物商などの許認可 | 行政書士(許可を出す窓口で先に確かめる) | 行政書士法1条の3(官公署に出す書類の作成) |
税理士でない人が税理士業務を行うことは、税理士法52条が禁じています。登記や社会保険の専門家に「法人にしたほうが得か」を聞いても、税額の試算に基づく相談には応じられません。
税理士を先にする理由
決算月、資本金、役員の構成、会社の形(株式会社か合同会社か)は、設立の登記と定款で決まります。形を変えるには別の手続きが要り、資本金や役員の変更も登記の手続きが要ります。
資本金は消費税にも関わります。設立1期目の期首の資本金が1,000万円以上だと、その期から消費税の課税事業者になります(国税庁タックスアンサーNo.6503、令和8年4月1日現在法令等)。登記の費用だけで決めると、納める税金が増えます。
無料で相談できる公的な窓口
国が各都道府県に置くよろず支援拠点は、中小企業・小規模事業者の経営相談を、何度でも無料で受け付けています(中小企業基盤整備機構)。税額の試算と届出は、税理士に分けて相談します。
法人化の相談でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、登記を済ませてから税理士を探す、見積りの月額だけで比べる、税の損得を登記の専門家に聞く、社長1人だから社会保険は要らないと考える、の4つです。間違えると、決算月や資本金の変更、余分な費用、届出の遅れが出ます。
登記を済ませてから税理士を探す
設立の日は、設立登記の日です。法人設立届出書や青色申告の承認申請書の期限は、その日から数えます(国税庁タックスアンサーNo.5100)。登記が終わってから相談を始めると、期限はすでに進んでいます。
決算月と資本金も、定款と登記で決まります。決算月が繁忙期と重なる、消費税の課税事業者になる、といった結果は、直すのに手続きが要ります。
見積りの月額だけで比べる
税理士の報酬は、税理士が自由に決めます(日本税理士会連合会)。同じ月額でも、記帳を誰が入力するか、決算の申告料が別かで、年間の総額と任せる範囲は変わります。
税の損得を登記の専門家に聞く
司法書士は登記の手続きの専門家です。法人にした場合の税額を試算して損得を答える相談は、税理士の業務です。
社長1人だから社会保険は要らないと考える
法人は、従業員がいなくても、社長1人で健康保険・厚生年金保険の対象になります。日本年金機構は、事業主のみの場合を含む法人事業所を対象とし、新規適用届を事実発生から5日以内に出すとしています。個人事業のときの国民健康保険・国民年金から切り替わります。
税理士が確認する順番
税理士は、法人化の相談を次の順に確かめます。
直近の確定申告書と今年の月ごとの売上・経費の一覧、いま入っている健康保険と年金の種類が分かるものをお持ちいただければ、法人にした場合の税と社会保険料の差、決算月と資本金の候補、設立後の届出の一覧を一緒に確かめます。
法人化の相談はいつすればよい?
結論: 法人化の相談は、設立の日(設立登記の日)を決める前にします。設立の日から数える期限が複数あり、決算月と資本金も設立の日までに決めるからです。
設立の日を決める前に
決算月、資本金、役員の構成、会社の形は、設立の日までに決めておく項目です。役員報酬の決め方と期限は別に決まりがあるため、あわせて確かめます。
設立後に迫る届出の期限
設立の日から動き出す届出は、提出先が分かれています。
| 届出 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 | 税務署 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで | 税務署 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の事実があった日から1か月以内 | 税務署 |
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 事実発生から5日以内 | 年金事務所 |
| 労働保険の保険関係成立届 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 | 労働基準監督署 |
出典は国税庁タックスアンサーNo.5100・No.2090(令和8年4月1日現在法令等)、日本年金機構、厚生労働省です。労働保険は従業員を雇う場合の手続きで、雇用保険はハローワークで別に行います。
許認可と取引先の確認
許認可を持つ事業は、法人にしたときに引き継げるかが業種ごとに違います。許可を出す窓口に、設立の前に確かめます。契約書、賃貸借、借入は、名義を変える必要があるかを一覧にします。
法人化の相談に何を持っていく?
結論: 持っていくのは、直近の確定申告書と青色申告決算書、今年の月ごとの売上と経費、加入中の健康保険と年金が分かるもの、許認可と契約の写し、設立の希望のメモです。数字の資料があれば、初回の相談で試算まで進みます。
税理士に渡す資料
| 持っていくもの | 税理士が確かめること |
|---|---|
| 直近3年分の確定申告書と青色申告決算書(e-Taxで出した場合は、受信通知と申告データ) | 所得の水準と推移、青色申告をしているか |
| 今年の月ごとの売上と経費が分かる帳簿 | 今年の所得の見込み、法人にする月の候補 |
| 加入中の健康保険と年金の種類、保険料の通知書 | 法人で加入する健康保険・厚生年金保険との差 |
| 家族の状況(扶養に入っている人、給与を払っている人) | 扶養や給与の払い方が変わるか |
| 許可証、取引先・賃貸借・借入の契約書の写し | 取り直しや名義変更が要るもの |
設立の希望のメモ
商号、事業目的、会社の形、資本金、役員、決算月の案を、決まっていない部分は空欄のままメモにします。
設立の実費はいくらかかる?
結論: 設立の実費は、登録免許税、定款の認証手数料、定款の印紙税です。登録免許税は株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円。定款の認証は株式会社だけに要り、合同会社は不要です。
登録免許税と定款の費用
| 費目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金の額の1000分の7。計算した額が15万円に満たないときは15万円 | 資本金の額の1000分の7。計算した額が6万円に満たないときは6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金の額等が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外は5万円 | 認証は不要で、手数料はかからない |
| 定款の印紙税 | 紙の定款は4万円 | 紙の定款は4万円 |
出典は法務省、日本公証人連合会、国税庁タックスアンサーNo.7141(令和8年4月1日現在法令等)です。株式会社の登録免許税は、資本金が約2,143万円を超えるまで最低額の15万円です。合同会社は、約858万円を超えるまで6万円です。
認証手数料が1万5,000円になる場合
令和6年12月1日から、資本金の額等が100万円未満の株式会社は、発起人が全員自然人で3人以下、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨があり、取締役会を置く旨がない、の3つをすべて満たすと、認証手数料が1万5,000円になります(日本公証人連合会、令和6年政令353号)。
株式会社と合同会社の差の見方
実費の差は、登録免許税の最低額で9万円、定款の認証手数料で1万5,000円から5万円です。費用の差だけで決めず、取引先や金融機関への見え方も並べて選びます。電子データで作る定款は、国税庁が電磁的記録を印紙税の課税文書に含めないと整理しているため、印紙税がかかりません。
税理士費用はどう決まる?
結論: 税理士費用に決まった相場表はありません。2002年4月1日から税理士会の報酬規定が廃止され、金額は各税理士が自由に決めています。比べるときは、月額ではなく、任せる範囲と年間の総額を並べます。
相場表がない理由
日本税理士会連合会は、改正税理士法で報酬規定が廃止され、税理士は自由な意思のもと、自己責任と説明責任に基づいて報酬を算定すると案内しています。事務所によって金額が変わるのはこのためです。
金額だけを並べた一覧は、売上の規模や任せる範囲が揃っているかが分かりません。見積りは、同じ範囲を書いた依頼で複数の事務所から取ると比べられます。
費用を分ける区分
税理士費用は、月額顧問料、決算申告料、記帳代行料、法人化の試算のようなスポットの業務に分かれます。事務所によって、どこまでが月額に入るかが違います。
見積りで確かめる項目
日本税理士会連合会は、税理士に委嘱するときは、委嘱の範囲と報酬額を契約書で結ぶよう勧めています。見積りでは、次の項目を並べます。
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 記帳 | 自社で入力するか、事務所が入力するか。使う会計ソフトは何か |
| 決算申告 | 月額に含まれるか、別の料金か |
| 年に1回の業務 | 年末調整、法定調書、償却資産の申告を含むか |
| 設立後の届出 | 設立直後の届出書の作成を含むか |
法人化の相談だけを頼む場合
法人化の試算だけを頼む場合は、その相談が無料か有料か、顧問契約が前提かを、相談の前に確かめます。顧問契約を結ぶかどうかは、試算の内容を見てから決められます。
よくある質問
法人化の相談は誰から始めればよいですか?
合同会社にする場合も、税理士に相談しますか?
設立の登記は自分でできますか?
税理士費用の相場はいくらですか?
相談は無料でできますか?
まとめ:設立日を決める前に税理士へ相談しよう
- 法人化の相談は、先に税理士にします。登記は司法書士、社会保険は社会保険労務士、許認可は行政書士です
- 決算月と資本金は、設立の前に決めます。資本金1,000万円以上は、設立1期目から消費税の課税事業者になります
- 設立の実費は、登録免許税が株式会社で最低15万円、合同会社で最低6万円。合同会社は定款の認証が要りません
- 税理士費用に相場表はありません。月額ではなく、任せる範囲と年間の総額で比べます
個人事業の法人化を考え始めた方、登記や社会保険の相談先で迷っている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。確定申告書と月ごとの売上・経費をもとに、法人にした場合の税と社会保険料、決算月と資本金の候補、設立後の届出の一覧を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.5100「新設法人の届出書類」
- 国税庁 タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁 タックスアンサーNo.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
- 国税庁 タックスアンサーNo.7141「印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
- 国税庁 質疑応答事例(印紙税)「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
- 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」
- 法務省「合同会社の設立手続について」
- 日本公証人連合会「会社の定款認証手数料の改定」
- 日本年金機構「新規適用の手続き」
- 厚生労働省「労働保険の成立手続」
- 日本税理士会連合会「税理士に相談する」
- e-Gov法令検索 税理士法2条・52条、司法書士法3条、社会保険労務士法2条、行政書士法1条の3
- 中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」





