貸倒損失とは?3つの要件と仕訳の方法を区分ごとに解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

貸倒損失の要件は、法人税基本通達が定める3つの区分のどれかに当てはまることです。債権が法的に切り捨てられた場合(9-6-1)、全額が回収できないことが明らかになった場合(9-6-2)、取引停止から1年以上たった売掛債権の場合(9-6-3)の3つで、損金の額に算入できる金額も、帳簿に費用として計上する「損金経理」が要るかどうかも区分ごとに違います。この記事では、区分ごとの要件、仕訳、消費税の扱いを、国税庁と e-Gov の公表資料(2026年10月時点)で整理します。

貸倒損失の要件は?

結論: 貸倒損失として損金の額に算入できるのは、法人税基本通達9-6-1から9-6-3までの3つの区分に当てはまる金銭債権だけです。回収できないという事実だけでは足りません。

3つの区分の早見表

区分ごとの場面と、損金経理が要るかどうかは次のとおりです。

区分 通達 当てはまる場面 損金経理 対象と金額
法律上の貸倒れ 9-6-1 再生計画の認可や書面による債務免除などで債権が切り捨てられた 不要 金銭債権。切り捨てられた金額
事実上の貸倒れ 9-6-2 債務者の資産状況や支払能力から、全額が回収できないことが明らか 必要 金銭債権。全額のみ
形式上の貸倒れ 9-6-3 取引停止から1年以上たった、または取立費用に満たない 必要 売掛債権のみ。備忘価額を引いた残額

損金経理が要るかどうかが分かれ目

損金経理とは、会計の帳簿に費用として計上することです。9-6-1は、通達が「その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する」と定めているため、帳簿に計上していなくても、申告書で調整して損金の額に算入できます。9-6-2は「損金経理をすることができる」、9-6-3は「損金経理をしたときは、これを認める」という書き方で、この2つは、その事業年度の決算で費用に計上していなければ損金の額に算入できません。

貸倒損失の処理でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、貸付金や単発の取引を1年たったから落とすこと、一部回収できそうな債権を全額回収不能として落とすこと、決算で仕訳を切り忘れることの3つです。どれも損金の額に算入できず、利益と税金がずれます。

入金が止まった売掛金を決算で落とそうとして、どの区分にも当たらないと気づき、相談に来られる方が少なくありません。

貸付金や単発の取引を1年たったから落とす

取引停止から1年以上という要件(9-6-3)は、売掛債権だけが対象で、貸付金は含まれません。売掛債権でも、たまたま1回だけ取引をした相手には適用できません。

一部回収できそうな債権を全額回収不能として落とす

9-6-2は全額が回収できないことが明らかな場合の区分です。たとえば100万円の売掛金のうち30万円は回収できそうなら、全額回収不能とは言えません(説明用の金額です)。この債権は貸倒損失ではなく、まだ貸倒れていない債権の将来の損失に備える貸倒引当金で見積もります。

決算で仕訳を切り忘れる

9-6-2と9-6-3は損金経理が要件です。翌期に気づいて仕訳を切っても、事実が明らかになった事業年度の損金の額には算入できません。

売掛金の元帳と取引先ごとの契約書、最後の入金日が分かる通帳をお持ちいただければ、3つの区分のどれに当たるかと、足りない資料を一緒に確かめます。

決算と申告はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

法律上の貸倒れの要件は?

結論: 法律上の貸倒れ(9-6-1)は、法的整理や関係者の協議決定、書面による債務免除で、債権が切り捨てられた場合です。切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。

切り捨てが決まる4つの事実

通達が挙げる事実は、次の4つです。

  • 更生計画認可の決定または再生計画認可の決定
  • 特別清算に係る協定の認可の決定
  • 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定(債権者集会の協議決定、または第三者のあっせんによる契約でこれに準ずるもの)
  • 債務超過の状態が相当期間続き弁済を受けられないと認められる場合の、書面による債務免除

4つめの債務免除は、裁判所も第三者も関わらないぶん、会社が自分で回収不能を説明できる状態が要ります。

書面による債務免除の2つの要件

要件は、債務超過の状態が相当期間続いていることと、免除を書面で明らかにすることです。口頭だけでは満たしません。相当期間は年数が決まっておらず、国税庁の質疑応答事例は、回収不能かどうかを判断するのに必要な合理的な期間で、個別の事情で異なるとしています。債務者の決算書を数期分そろえて判断します。

書面の形式と損金算入の時期

書面は、公正証書のように公証力のあるものである必要はありません。ただし国税庁の質疑応答事例は、渡した事実を明らかにするため、債務者から受領書を受け取るか、内容証明郵便などで交付するのが望ましいとしています。損金の額に算入する時期は、免除が書面で明らかにされた日の属する事業年度です。

事実上の貸倒れの要件は?

結論: 事実上の貸倒れ(9-6-2)は、債務者の資産状況や支払能力から見て、債権の全額が回収できないことが明らかになった場合です。一部でも回収できるうちは適用できず、損金経理が要ります。

全額が回収できないことが明らか

通達は、「その全額が回収できないことが明らかになった場合」に、その事業年度で貸倒れとして損金経理をすることができると定めています。倒産したという事実だけでなく、回収の原資になる資産があるかを見ます。

事実上の貸倒れで確かめる3点
確かめること
回収できない範囲
担保物の有無
保証債務の状態
適用できる状態
全額が回収できないことが明らか
担保物が無い、または処分済み
保証を現実に履行している
適用できない状態
一部は回収できる見込みがある
担保物が処分されていない
保証をまだ履行していない

担保物は処分が先

担保物がある債権は、処分した後でなければ損金経理ができません。例外は、抵当権が名目だけで、実質的に全く担保されていないことが明らかな場合です。国税庁の質疑応答事例は、この場合は担保物が無いものとして取り扱って差し支えないとしています。

保証債務は履行した後

通達の注書きは、保証債務は現実に履行した後でなければ、貸倒れの対象にできないとしています。代わりに支払ったあとの求償権について、回収不能かどうかを判断します。

形式上の貸倒れの要件は?

結論: 形式上の貸倒れ(9-6-3)は、売掛債権について、取引停止から1年以上たったとき、または債権の総額が取立費用に満たず督促しても弁済がないときに、備忘価額を残して損金経理する区分です。貸付金は対象外です。

売掛債権だけが対象

対象は、売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権で、貸付金その他これに準ずる債権は含まれません(通達9-6-3)。同じ相手に両方があれば、落とせるのは売掛金だけです。

取引停止から1年以上

1つめの要件は、債務者との取引を停止した時から1年以上たったことです。最後の弁済期または最後の弁済の時が、取引を停止した時以後なら、その最も遅い時から数えます。担保物のある債権は除かれます。取引の停止は、継続的な取引をしていた債務者の資産状況が悪化して取引をやめた場合を指し、たまたま1回だけ取引をした相手には適用できません。

取立費用に満たない場合

2つめの要件は、同一地域の債務者についての売掛債権の総額が、取立てに要する旅費その他の費用に満たず、督促しても弁済がないときです。取引停止から1年がたっていなくても対象になります。

備忘価額を残して落とす

損金経理できるのは、債権の額から備忘価額を控除した残額です。備忘価額は、債権が残っていることを帳簿に記録しておく金額で、仕訳の例では1円とします。

貸倒損失の仕訳は?

結論: 貸倒損失の仕訳は、借方に貸倒損失、貸方に売掛金などの債権を置きます。形式上の貸倒れ(9-6-3)だけは、備忘価額を残して落とします。

区分ごとの仕訳の例

売掛金が100万円の場合の例です(説明用の金額です。消費税は考えません)。法律上の貸倒れでは、切り捨てられた金額だけを落とします。

場面 借方 貸方
法律上の貸倒れ・事実上の貸倒れで全額を落とす 貸倒損失 1,000,000円 売掛金 1,000,000円
形式上の貸倒れで備忘価額1円を残す 貸倒損失 999,999円 売掛金 999,999円

税抜経理の会社は、売掛金に含まれる消費税の分を、貸倒損失ではなく仮受消費税等の減少として処理します。

決算で処理するまでの順序

貸倒れを決算で処理する流れは次のとおりです。貸倒損失で当期が赤字になるなら、翌期以降への繰越しも確かめます。

貸倒れを決算で処理するまでの順序
1

債権を並べる
売掛金と未収入金を発生月ごとに並べ、動いていないものを抜き出す
2

区分を決める
9-6-1・9-6-2・9-6-3のどれで処理するかを、債権ごとに決める
3

資料を集める
区分に応じた書類を揃える
4

手続をする
債務免除なら書面の交付、担保があれば処分を先に済ませる
5

決算で仕訳を切る
9-6-2と9-6-3は、その事業年度の決算で損金経理する

消費税の貸倒れはどうなる?

結論: 売掛金が貸倒れになると、法人税とは別に、貸倒れの税込金額に含まれる消費税額を、売上げに対する消費税額から控除できます。免税事業者は対象外です。

控除の対象と金額

対象は、課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権です(消費税法39条1項)。貸付金には消費税がかからないため対象になりません。控除額は、貸倒れとなった税込金額に110分の7.8(軽減税率の対象は108分の6.24)を掛け、1円未満を切り捨てた金額です(国税庁タックスアンサーNo.6367、令和8年4月1日現在法令等)。

法人税と判定が別

消費税の貸倒れの事実は、施行令59条と施行規則18条に定められ、法人税の3区分と似ていますが同じではありません。施行令59条3号は、債務者の財産の状況から債務の全額を弁済できないことが明らかなときを挙げ、貸倒れとして経理することを求めていません。法人税の9-6-2は損金経理が要件ですが、消費税は帳簿の処理に関係なく、事実があれば控除の対象です。一方、取引停止から1年以上の場合(施行規則18条3号)は、備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理することが要件です。

書類の保存と回収したときの扱い

貸倒れの事実が生じたことを証する書類を保存していない場合、控除は適用されません(39条2項)。裁判所の決定書、債務免除の通知書の控えと受領書、取引停止と最後の入金が分かる帳簿などが、区分に応じた書類です。控除を受けた債権を後から回収したときは、回収した税込金額に含まれる消費税額を、回収した課税期間の消費税額に加算します(39条3項、国税庁タックスアンサーNo.6631)。

債権放棄が寄附金になる場面は?

結論: 回収できる債権を放棄すると、貸倒損失に当たらず、寄附金に当たる場合があります。回収不能が明らかでない債権の放棄は、経済合理性があれば寄附金になりません。

回収できる債権の放棄は貸倒れにならない

国税庁の質疑応答事例は、弁済を受けられるのに債務免除をして、債務者に実質的な利益の供与を図ったと認められるときは、免除額は貸倒損失に当たらないとしています。督促の記録も相手の財務資料も無いまま免除すると、この見方をされやすくなります。請求書の再送や内容証明郵便での督促、相手の決算書があれば、回収を図ったうえでの判断だったと説明できます。

経済合理性があるときの例外

貸倒れに当たらない債権放棄でも、経済合理性があれば寄附金に当たりません。国税庁の質疑応答事例は、法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)と9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)で検討するとしています。

よくある質問

回収できない売掛金は、何年たてば貸倒損失にできる?
年数で決まるのは形式上の貸倒れ(9-6-3)だけで、取引停止から1年以上が要件です。売掛債権であること、継続的な取引の相手であること、担保物がないことも要ります。
一部だけ回収できない場合は、貸倒損失にできる?
事実上の貸倒れ(9-6-2)は全額が回収できないことが要件なので、一部だけでは適用できません。書面による債務免除(9-6-1)なら免除した金額が対象ですが、債務超過が相当期間続いていることが要ります。
貸倒処理した債権が後から入金されたら、どうなる?
法人税では、回収した金額を回収した事業年度の収益に計上します。消費税は、回収した税込金額に含まれる消費税額を、回収した課税期間の消費税額に加算します。

まとめ:区分を決めてから資料を集めよう

  • 貸倒損失は、法人税基本通達9-6-1から9-6-3の3つの区分のどれかに当てはまる債権だけが対象です
  • 9-6-1は損金経理が不要で、9-6-2と9-6-3は損金経理が要ります
  • 形式上の貸倒れ(9-6-3)は売掛債権だけが対象で、貸付金や1回限りの取引には適用できません
  • 消費税の控除は法人税とは別に判定し、事実を証する書類の保存が条件です

売掛金の処理に迷っている方、債務免除や債権放棄を検討している方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。売掛金の元帳と取引の記録を確認し、どの区分で処理できるかと、決算までに必要な資料を整理します。

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出典

  • 国税庁「法人税基本通達」第9章第6節第1款(9-6-1、9-6-2、9-6-3)
  • 国税庁 タックスアンサー No.5320「貸倒損失として処理できる場合」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6367「貸倒れに係る税額の調整」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6631「貸倒債権を回収したときの消費税額の計算」
  • 国税庁 質疑応答事例「第三者に対して債務免除を行った場合の貸倒れ」
  • 国税庁 質疑応答事例「担保物がある場合の貸倒れ」
  • 国税庁 質疑応答事例「貸倒れに該当しない債権放棄の検討」
  • 国税庁「消費税法基本通達」14-2-4
  • e-Gov 法令検索「消費税法」第39条
  • e-Gov 法令検索「消費税法施行令」第59条
  • e-Gov 法令検索「消費税法施行規則」第18条

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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