源泉徴収とは|会社が給与から天引きして納めるまでの流れ

「毎月なんとなく天引きしていますが、この金額の根拠を聞かれると答えられません」。「従業員が1人増えたら、税務署に何か出すんでしょうか」――はじめて人を雇った経営者の方から、よくいただくご相談です。

結論からお伝えすると、源泉徴収とは、給与や報酬を支払う側が、支払いのたびに所得税を差し引いて、本人の代わりに国へ納める仕組みです。税金を納めるのは受け取った本人ですが、納付の手続きを負うのは支払った会社のほうです。ここが、他の税金といちばん違うところです。

税理士法人Light UPでは、源泉徴収は「税額の計算」よりも「期限の管理」でつまずく会社が多いと考えています。計算そのものは税額表を引けば済みますが、納付が1日遅れただけで不納付加算税の対象になります。

この記事では、誰が源泉徴収義務者になるのか、何を対象に、いくら差し引き、いつまでに納めるのかを、実際に給与計算と年末調整を代行している立場から順に整理します。令和7年度改正と令和8年度改正で変わった控除額も含めて解説します。

源泉徴収は税金の前払いを会社が代行する仕組み

結論: 源泉徴収とは、給与や一定の報酬を支払う者が、支払いの都度その金額に応じた所得税および復興特別所得税を差し引き、原則として翌月10日までに国へ納める制度です。

本人が納めるのではなく支払う側が納める

所得税は本来、収入を得た本人が確定申告をして納める税金です。ところが給与については、支払う会社が先に差し引いて納めます。国税庁のタックスアンサーNo.2502は、この立場にある者について「所得税および復興特別所得税を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者といいます」と説明しています。

義務を負うのは会社です。従業員が「自分で確定申告するので天引きしないでほしい」と言っても、その希望に応じることはできません。

差し引いた税金は会社のお金ではない

天引きした所得税は、会社の資産ではなく、従業員から一時的に預かっているお金です。会計上も預り金として処理します。

資金繰りが苦しい時期に、この預り金に手を付けてしまう会社があります。納付期限に残高が足りず、そこではじめて事態の重さに気づく。預り金は、いわば他人の財布を預かっている状態だと考えてください。

復興特別所得税が上乗せされている

源泉徴収する税額には、所得税に加えて復興特別所得税が含まれます。税率は所得税額の2.1%です。報酬の源泉徴収税率が10%ではなく10.21%になっているのは、この上乗せがあるためです。

税率は所得税額の2.1パーセントで、令和19年分まで続きます。実務では所得税と合わせた税率が税額表に織り込まれているため、別に計算する場面はほとんどありません。報酬から差し引く場合の10.21パーセントという率も、この上乗せを含んだ数字です。

源泉徴収義務者になるのは給与を支払うすべての事業者

結論: 会社・個人事業主を問わず、人を雇って給与を支払えば源泉徴収義務者になります。法人は例外なく該当し、個人事業主も従業員に給与を払った時点で義務を負います。

自分が源泉徴収義務者に当たるか
法人である
役員報酬を払っていれば社長1人の会社でも該当する。例外はない
個人で従業員を雇っている
給与を払いはじめた時点から義務が生じる。士業への報酬も源泉徴収の対象になる
個人で1人で事業をしている
給与を払っていなければ義務者にならない。弁護士や税理士へ報酬を払っても源泉徴収は不要

法人は給与を払った時点で該当する

株式会社・合同会社などの法人は、役員や従業員に給与を支払えば源泉徴収義務者です。社長1人だけの会社でも、その社長に役員報酬を払っていれば対象になります。

「役員報酬は給与ではないから源泉徴収は不要」と思われがちですが、実際は役員報酬も給与所得です。1人会社であっても、毎月の報酬から所得税を差し引いて納める必要があります。

個人事業主は雇った時点から

個人事業主の場合、1人で事業をしているうちは源泉徴収義務者ではありません。従業員を雇って給与を支払いはじめた時点で、義務が生じます。

ただし例外があります。国税庁No.2502は、常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その給与や退職金について源泉徴収をする必要がないとしています。家政婦を雇っている個人の家庭などが、これに当たります。

給与を払っていない個人は報酬の源泉徴収も不要

もう1つ、実務でよく誤解される点があります。給与の源泉徴収義務がない個人が、弁護士や税理士に報酬を支払っても、その報酬について源泉徴収をする必要はありません。会社員が確定申告のために税理士へ報酬を払う場合が、その典型です。

逆に、従業員を雇っている個人事業主は給与の源泉徴収義務者ですから、士業への報酬についても源泉徴収が必要になります。同じ「個人が士業に払う報酬」でも、従業員がいるかどうかで扱いが変わるわけです。

はじめて給与を払うときに出す届出

新たに給与の支払いを始めた場合、給与支払事務所等の開設届出書を、開設から1か月以内に所轄の税務署へ提出します。個人が新たに事業を始めた場合は、個人事業の開業等届出書を出せばこの開設届出書は不要とされていますが、令和8年1月1日以後に開業した場合はこの取り扱いから除かれます。

開業のタイミングによって出す書類が変わるところなので、開業年を確認してから判断してください。

源泉徴収の対象になる支払いは給与だけではない

結論: 源泉徴収の対象は給与・賞与・退職金のほか、税理士・弁護士などへの報酬、原稿料、講演料、デザイン料などの一定の報酬・料金にも及びます。

給与・賞与・退職金と、報酬・料金の主なもの

もっとも件数が多いのが給与と賞与です。退職金も対象ですが、給与とは計算方法がまったく異なります。退職所得は勤続年数に応じた控除があり、税負担が軽くなる設計になっています。

所得税法第204条は、源泉徴収の対象となる報酬・料金を列挙しています。実務でよく出てくるものを整理します。

支払いの内容 税率 備考
原稿料・デザイン料・講演料 10.21% 1回の支払が100万円を超える部分は20.42%
税理士・弁護士・司法書士などへの報酬 10.21% 司法書士は1回の支払につき1万円を差し引いた残額に課税
外交員・集金人への報酬 10.21% 月12万円の控除あり
講師・出演料 10.21% 同上の100万円超の区分あり
支払先が法人の場合 不要 原則として源泉徴収は不要(馬主である法人などを除く)

支払先が法人か個人かで扱いが分かれる点は、請求書を見ただけでは判断しにくいところです。屋号だけの請求書が届いたときは、法人格の有無を確認してから処理してください。

対象にならない支払い

外注費であっても、相手が法人であれば源泉徴収は不要です。また個人への支払いでも、所得税法204条に列挙されていないもの――たとえば一般的な業務委託の対価や商品の仕入代金は、源泉徴収の対象になりません。

「個人に払うものはすべて源泉徴収」と考えてしまうと、不要な天引きをして相手とのトラブルになります。列挙されたものだけが対象です。

毎月差し引く税額は源泉徴収税額表で決まる

結論: 給与から差し引く所得税は、社会保険料を控除したあとの金額と扶養親族等の数を、国税庁が公表する源泉徴収税額表に当てはめて求めます。会社が独自に計算するものではありません。

税額表のどの欄を使うかは、申告書の提出で決まる
01
甲欄
扶養控除等申告書の提出がある人。通常の従業員はこちら。年末調整の対象にもなる
02
乙欄
提出がない人。他社を主たる勤務先とする掛け持ちの人など。税額は甲欄よりかなり高い
03
丙欄
日雇いや短期のアルバイト。日額表を使う

税額表に当てはめる2つの数字と、甲欄と乙欄の分かれ目

必要な数字は2つだけです。1つは、その月の給与総額から社会保険料を差し引いた金額。もう1つは、扶養親族等の数です。この2つが交差するマス目に書かれた金額が、その月に差し引く所得税になります。

計算式を立てる必要はありません。表を引くだけです。

税額表には甲欄・乙欄・丙欄という区分があります。どれを使うかは、その従業員から扶養控除等申告書の提出を受けているかどうかで決まります。

  • 甲欄:扶養控除等申告書の提出がある人。通常の従業員はこちら
  • 乙欄:提出がない人。他社を主たる勤務先とする掛け持ちの人など
  • 丙欄:日雇いや短期のアルバイトなど、日額表を使う人

扶養控除等申告書は1か所にしか提出できません。副業で2社から給与を受け取っている人は、主たる勤務先で甲欄、もう一方で乙欄になります。

乙欄の税額は甲欄よりかなり高く設定されています。「同じ給与額なのに天引きが多い」という相談の多くは、申告書の提出漏れが原因です。

賞与は別の表を使う

賞与から差し引く税額は、月々の給与とは別の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。前月の給与額と扶養親族等の数から税率を求め、賞与の額に掛ける方式です。

前月に給与の支払いがない場合など、この方式が使えないケースもあります。判断に迷ったときは税理士へご確認ください。

使うのは、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表です。前月の給与から求めた率を、賞与から社会保険料を引いた金額に掛けます。前月に給与がない場合の扱いは、別に定められています。

給与・源泉・年末調整の判断に迷っていませんか。実際の数字を見ながらお答えします。初回のご相談は無料です。

控除額は2年続けて引き上げられた

結論: 令和8年度税制改正により、基礎控除の本則が62万円に、給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられました。令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。

2年続けて改正が入り、給与所得控除の最低保障額は74万円に

同じ論点の改正が2年続いているため、どちらの数字を見ているかで結論が変わります。整理すると次のとおりです。

改正 施行日 適用 主な内容
令和7年度改正 令和7年12月1日 令和7年分以後 基礎控除の本則58万円・給与所得控除の最低保障額65万円・特定親族特別控除の創設・扶養親族の所得要件58万円以下
令和8年度改正 令和8年12月1日 令和8年分以後 基礎控除の本則62万円・給与所得控除の最低保障額74万円・扶養親族の所得要件62万円以下

いま手元にある資料が令和7年度改正までのものだと、金額が1段階古いことになります。年末調整の前に、どの改正まで反映された資料かを確かめておく価値があります。

国税庁「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」は、この改正を「給与所得控除について、65万円の最低保障額が74万円に引き上げられました」と示しています。令和7年度改正で55万円から65万円になった直後に、さらに74万円まで上がった形です。

パート・アルバイトの収入が一定額以下なら所得税がかからない、という水準が2年続けて上がりました。

基礎控除は所得に応じた段階方式

基礎控除の本則は62万円ですが、合計所得金額が655万円以下の居住者には加算があります。令和8年度改正後の金額は次のとおりです。

合計所得金額 令和8年分・令和9年分 令和10年分以後
132万円以下 104万円 99万円
132万円超 489万円以下 104万円 62万円
489万円超 655万円以下 67万円 62万円
655万円超 2,350万円以下 62万円 62万円

加算は本則62万円に上乗せする形で、令和8年分と令和9年分は合計所得金額489万円以下で42万円、489万円超655万円以下で5万円です。令和10年分以後は132万円以下の人に37万円だけが残ります。

上乗せは期間を区切った措置なので、いまの水準がそのまま続くわけではありません。

源泉徴収税額表が変わるのは令和9年1月から

令和8年度改正では、源泉徴収税額表の改正が令和9年1月1日に施行されます。令和8年11月までの毎月の源泉徴収に変更はありません。

令和8年12月に行う年末調整で、改正後の基礎控除額と改正後の給与所得控除後の給与等の金額の表を使って1年分の税額を計算し、改正前の税額表で徴収してきた金額と精算します。毎月の天引きは去年のまま、年末に一度で調整するという流れです。

特定親族特別控除

19歳以上23歳未満の親族について、合計所得金額が一定の範囲であれば63万円を上限に控除できる特定親族特別控除が、令和7年度改正で創設されました。大学生の子がアルバイトで一定以上稼いだ場合に、親の側で使える控除です。

令和8年分の所得要件は、令和8年度改正により62万円超123万円以下(収入が給与だけなら136万円超197万円以下)になりました。年末調整で適用を受ける場合は、従業員から給与所得者の特定親族特別控除申告書の提出を受けます。

扶養親族の所得要件も上がった

扶養親族および同一生計配偶者の合計所得金額の要件は、48万円以下から58万円以下(令和7年度改正)、さらに62万円以下(令和8年度改正)へ引き上げられました。収入が給与だけなら136万円以下です。

勤労学生の要件も、75万円以下から85万円以下、さらに89万円以下へ変わっています。これまで扶養から外れていた家族が対象に戻る場合があるため、令和8年12月の年末調整でも確認が要ります。

差し引いた税金は原則として翌月10日までに納める

結論: 源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国へ納めます。10日が土日祝日にあたる場合は、翌営業日が期限です。

月末締め・翌月25日払いの会社が納めるまで
1

9月30日|締める
ここは給与計算の締め日。納期限の起算日ではない
2

10月25日|支払う
実際に支払ったこの日が起算の基準になる
3

納付書を選ぶ
給与・退職金・士業報酬は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」。原稿料などは別の用紙
4

11月10日|納める
支払った月の翌月10日が期限。土日祝日なら翌営業日

支払った月が基準になる。納付書は税目ごとに分かれている

期限の起算は、給与計算の締め日ではなく実際に支払った日です。月末締め・翌月25日払いの会社であれば、9月分の給与を10月25日に支払った場合、納期限は11月10日になります。

締め日で数えて1か月早く納めようとする間違いが、たまに起こります。基準は支払日です。

納付書は、給与・退職金・税理士等の報酬をまとめて記載する「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」と、原稿料などの報酬に使う「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」が分かれています。用紙を取り違えると、納付先の税目が合わなくなります。

納付方法は窓口だけではない

金融機関や税務署の窓口のほか、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付が使えます。ダイレクト納付は、e-Taxで送信したあと預貯金口座から即時または期日指定で引き落とす方式で、月次の定型処理には向いています。

電子納税、口座振替、クレジットカード納付も選べます。期限に間に合わせやすいのは、事前に登録しておく方式です。窓口での納付だけを前提にしていると、金融機関が閉まる時期に間に合わなくなります。

従業員が10人未満なら納付を年2回にまとめられる

結論: 給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により源泉所得税の納付を年2回にまとめられます。これを納期の特例といいます。

半年分をまとめて納める

国税庁のタックスアンサーNo.2505は、この特例について「給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります」と説明しています。

対象期間 納付期限
1月〜6月に源泉徴収した分 7月10日
7月〜12月に源泉徴収した分 翌年1月20日

毎月10日の納付が年2回で済むため、少人数の会社では事務負担がはっきり軽くなります。

対象になる税目は限られる。承認されるタイミング

この特例が使えるのは、給与や退職金から源泉徴収した分と、税理士・弁護士・司法書士など一定の報酬から源泉徴収した分に限られます。原稿料やデザイン料などは対象外で、こちらは毎月10日までの納付が必要です。

特例を受けている会社が、デザイナーへの報酬まで半年分ためてしまう。この取り違えは実際によく起こります。

納期の特例申請書を提出すると、却下の通知がない場合、提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。適用が始まるのは、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分からです。

提出した当月分は、原則どおり翌月10日までに納めることになります。ここを取り違えると、初回から納付遅れになります。

10人以上になったとき

給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書を提出します。提出した日の属する期間から、特例の効力が失われます。

人員が増えたときに届出を失念し、半年分をまとめて納めたつもりが期限後納付になっていた、という事故が起こりやすいところです。採用計画と並べて管理しておくと安全です。

年末調整で1年分の税額を精算する

結論: 毎月の源泉徴収はあくまで概算のため、1年間の給与が確定した時点で正しい税額を計算し、差額を精算します。この手続きが年末調整です。

その従業員は年末調整の対象になるか
甲欄で源泉徴収している
扶養控除等申告書の提出がある人。年末調整の対象になる
乙欄で源泉徴収している
掛け持ちで他社が主たる勤務先の人。会社では精算せず、本人が確定申告する
給与が2,000万円を超える
年末調整の対象外。本人が確定申告する

概算と本来の税額がずれる理由と、対象になる人・ならない人

月々の税額表は、その月の給与が1年間続くと仮定した概算です。実際には賞与があり、昇給があり、扶養親族が増えることもあります。生命保険料控除のように、年末にならないと金額が確定しない控除もあります。

だから12月に精算します。毎月の源泉徴収が仮払い、年末調整が本清算という関係です。

国税庁のタックスアンサーNo.2662は、年末調整の対象について「年末調整の対象となる人は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人です」としたうえで、2,000万円を超える給与の支払を受ける人は対象にならないと示しています。

つまり甲欄で源泉徴収している人が対象で、乙欄の人は対象外です。乙欄の人は自分で確定申告をします。

年末調整では扱えない控除

医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3つは、年末調整では扱えません。従業員が確定申告をする必要があります。ふるさと納税をした従業員から「年末調整でお願いします」と言われることがありますが、ワンストップ特例を使っていない限り、本人の確定申告が必要になります。

医療費控除、寄附金控除、雑損控除の3つは、本人が確定申告で申告することになります。会社としては、対象になりそうな従業員に案内しておく程度で足ります。年末調整の書類に含めて集める必要はありません。

年末調整のあとに提出する書類

結論: 年末調整が終わったあと、翌年1月末までに源泉徴収票の交付、法定調書合計表の提出、給与支払報告書の提出という3つの手続きが続きます。

1月31日に3つの提出先が重なる
01
従業員本人へ|源泉徴収票
年末調整の結果を記載して交付する。年の途中で退職した人には退職から1か月以内
02
税務署へ|法定調書合計表
給与・退職金・報酬などの支払額をまとめる。一定額を超える支払いは個別の法定調書も添付
03
市区町村へ|給与支払報告書
従業員が1月1日時点で住む市区町村へ。これをもとにその年の住民税額が決まる

従業員への源泉徴収票の交付と、税務署への法定調書合計表

年末調整の結果を記載した源泉徴収票を、従業員本人に交付します。期限は翌年1月31日です。年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に交付します。

本人に渡すものとは別に、税務署へ出す書類があります。

給与・退職金・報酬などの支払額をまとめた法定調書合計表を、翌年1月31日までに税務署へ提出します。一定額を超える支払いについては、個別の法定調書も添付します。

市区町村への給与支払報告書

従業員が1月1日時点で住んでいる市区町村へ、給与支払報告書を提出します。期限は同じく1月31日です。これをもとに、その年の住民税額が決まります。

1月は、この3つが同じ期限で重なります。しかも納期の特例を使っている会社は、1月20日に半年分の納付も控えています。12月のうちに準備を進めておくほうが現実的です。

住民税は源泉徴収ではなく特別徴収

結論: 給与から差し引くもう1つの税金である住民税は、源泉徴収ではなく特別徴収と呼ばれ、前年の所得に対する税額を市区町村が計算して通知します。

同じ給与明細に並ぶ2つの税金は、動き方が違う
1

所得税|会社が税額表で求める
当年の所得に対する概算を毎月差し引く
2

所得税|年末に精算する
年末調整で本来の税額との差額を返すか、追加で徴収する
3

住民税|市区町村が計算して通知する
前年の所得に対する確定額。会社は通知書の金額をそのまま差し引くだけ
4

住民税|6月から翌年5月まで12回で引く
精算はない。新卒1年目の6月から手取りが減るのはこの前年課税のため

所得税は当年の所得に対する概算を毎月差し引き、年末に精算します。住民税は前年の所得に対する確定額を、6月から翌年5月までの12回に分けて差し引きます。

会社が税額を計算するかどうかも違います。所得税は会社が税額表で求めますが、住民税は市区町村から届く特別徴収税額の決定通知書に書かれた金額を、そのまま差し引くだけです。

前職から転職してきた従業員については、住民税の徴収方法を切り替える手続きが必要です。退職者については、退職した月によって一括徴収か普通徴収かが変わります。

新卒1年目の6月から住民税が引かれ始めて手取りが減る、というのは、この前年課税の仕組みによるものです。

納付が遅れると加算税と延滞税がかかる

結論: 源泉所得税を期限までに納めなかった場合、不納付加算税と延滞税が課されます。1日の遅れでも対象になる点が、他の税金と比べて厳しいところです。

遅れたときにかかる2つと、かからない場合
かかるもの
不納付加算税は原則10%。指摘を受ける前に自主的に納めれば5%へ軽減
延滞税は納期限の翌日から日数に応じて別に発生(令和8年は2か月まで年2.8%、以降年9.1%)
課されない扱いがある場合
正当な理由があると認められる場合
直前1年間に納付の遅れがなく、期限から1か月以内に納付した場合

不納付加算税の割合と、延滞税も別に発生すること

納付が期限に遅れた場合、原則として納付すべき税額の10%の不納付加算税がかかります。税務署から指摘を受ける前に自主的に納付した場合は5%に軽減されます。

ただし、正当な理由があると認められる場合や、直前1年間に納付の遅れがなく、期限から1か月以内に納付した場合には課されない扱いがあります。

不納付加算税とは別に、法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税がかかります。延滞税の割合は毎年見直され、令和8年は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です。

資金繰りとの関係

源泉所得税の納付遅れは、資金繰りが苦しい会社で起こります。預り金という性質上、本来は手元にあるはずのお金です。それが無いということは、運転資金が不足している状態を示しています。

納付が難しい状況になったら、遅れてから対処するのではなく、その前に資金繰りの見直しをご相談ください。

預かった税金は会社のお金ではありませんが、口座には一緒に入っています。給与を払った時点で別に取り分けておく運用にすると、納付の月に足りなくなることがなくなります。

海外に住む人へ支払うときは税率が変わる

結論: 非居住者に支払う給与や報酬は、源泉徴収の税率が20.42%になります。居住者と非居住者では計算の仕組みそのものが違うため、まず本人がどちらに当たるかを確定させます。

判定するのは国籍ではなく住所と居所
国内に住所がある
居住者。外国籍でも日本に住所があればこちら。税額表で計算する
国内に1年以上の居所がある
居住者として扱う
いずれにも当たらない
非居住者。日本国籍でも海外に住んでいればこちら。税率は20.42%

居住者と非居住者の分かれ目

所得税法上の居住者とは、国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上の居所がある個人をいいます。これに当たらない人が非居住者です。

判定は国籍ではありません。日本国籍でも海外に住んでいれば非居住者になりますし、外国籍でも日本に住所があれば居住者です。「外国人だから20.42%」という処理は間違いのもとです。

海外赴任が決まったとき

従業員が1年以上の予定で海外へ赴任する場合、出国の時点で非居住者になります。このとき、出国までの給与について年末調整を行います。12月を待たずに、その人だけ先に精算するかたちです。

赴任後に日本の会社が支払う給与は、国内での勤務に対応する部分だけが源泉徴収の対象になります。海外での勤務に対する給与は、日本では課税されません。

租税条約で軽減されることがある

相手国との間に租税条約がある場合、税率が軽減されたり免除されたりします。ただし自動的に適用されるわけではなく、支払いを受ける本人が租税条約に関する届出書を、支払者を経由して税務署へ提出する必要があります。

届出が支払いに間に合わなければ、いったん20.42%で源泉徴収したうえで、後日還付を請求する流れになります。海外の取引先へ支払う使用料やコンサルティング料でも同じ論点が出てきます。該当しそうな支払いが出た段階で、税理士へご相談ください。

実務でつまずきやすい5つの場面

結論: 源泉徴収の実務で問題になるのは税額の計算そのものではなく、身分の判定・書類の回収・期限の管理といった周辺の手続きです。

税額表の外側で起きる5つ
01
外注か雇用かの判定
指揮命令、時間や場所の拘束、材料や用具の負担で総合判断。給与と判定されると遡って徴収され、消費税の仕入税額控除にも影響する
02
扶養控除等申告書の回収漏れ
甲欄を使うには、その年最初の給与の支払日の前日までに提出を受ける必要がある。入社手続きの書類一式に組み込むのが確実
03
通勤手当の非課税枠の超過
電車通勤は月15万円まで、マイカー通勤は片道の距離に応じた額まで。引っ越しで経路が変わったのに手当だけそのまま、が見落とされやすい
04
現物給与と決算期をまたぐ賞与
社宅・食事の補助も原則は給与。賞与の源泉徴収は実際の支払日が基準で、損金算入の時期とは別に管理する

外注か雇用かの判定

もっとも判断が難しいのが、業務委託として支払っている相手が実質的に従業員ではないか、という論点です。指揮命令を受けているか、時間や場所の拘束があるか、材料や用具を誰が用意しているか。こうした要素で総合的に判断されます。

外注費として処理していたものが給与と判定されると、源泉徴収漏れとして遡って徴収されます。消費税の仕入税額控除にも影響します。

扶養控除等申告書の回収漏れ/通勤手当の非課税枠の超過

甲欄を使うには、その年の最初の給与を支払う日の前日までに扶養控除等申告書の提出を受ける必要があります。回収が遅れたまま甲欄で計算していると、本来の手続きから外れた状態になります。

入社手続きの書類一式に組み込んでおくのが、いちばん確実です。

通勤手当には非課税の限度額があります。電車通勤は月15万円まで、マイカー通勤は片道の距離に応じた金額までです。限度額を超えた部分は給与として源泉徴収の対象になります。

引っ越しで通勤経路が変わったのに手当だけそのまま、というケースが見落とされがちです。

現物給与の処理/決算期をまたぐ賞与

社宅、食事の補助、レクリエーション費用など、金銭以外の経済的利益も原則として給与に含まれます。社宅であれば、賃貸料相当額と本人負担額の差額が給与として扱われます。

期末に賞与の支給を決議し、支払いが翌期になる場合、源泉徴収の時期は実際の支払日が基準です。損金算入の時期とは考え方が異なるため、両方を分けて管理する必要があります。

事例:はじめて人を雇った会社の1年

「3人目を採用したところで、何をどこに出せばいいのか分からなくなりました」。創業2年目の建設業のお客様からのご相談でした。

聞き取りをすると、給与の天引き自体は前任の経理担当が引き継いだ表で行っていました。ただ、納付が毎月ではなく思い出したときになっており、直近3か月分が未納の状態でした。

最初に手を付けたのは、税額の見直しではなく期限の整理です。未納分をすぐに納付し、不納付加算税の軽減が受けられる範囲で処理しました。そのうえで納期の特例を申請し、毎月10日の納付を年2回に切り替えています。

同時に、入社時の書類を1つのセットにまとめ直しました。扶養控除等申告書、通勤経路の届出、住民税の切替書類の3点です。採用のたびに何を集めるか考える状態を、なくすためです。

翌年の年末調整は、11月の頭に書類を配って12月第1週に回収する日程で回りました。1月の3つの提出物も、期限内に終わっています。担当の方からは、期限が決まっていることが分かっただけで気持ちが楽になった、という言葉をいただきました。

よくある質問

社長1人だけの会社でも源泉徴収は必要ですか?
必要です。役員報酬も給与所得にあたるため、毎月の報酬から所得税を差し引いて納付します。役員報酬をゼロにしている場合は源泉徴収する対象がありませんが、その場合も給与支払事務所等の開設届出書の提出状況は確認しておくほうが安全です。
従業員が「自分で確定申告するから天引きしないで」と言っています。応じてよいですか?
応じることはできません。源泉徴収は法律で支払者に課された義務のため、本人の希望で取りやめることはできない仕組みです。年末調整の対象外になる人でも、毎月の源泉徴収は行います。
アルバイトやパートも源泉徴収の対象ですか?
対象です。ただし扶養控除等申告書の提出があり、社会保険料控除後の月額が一定額に満たない場合は、税額表上の税額がゼロになります。天引きが不要になるのであって、対象から外れるわけではありません。
納期の特例を使っていますが、デザイナーへの報酬も半年分まとめて納めてよいですか?
まとめられません。納期の特例の対象は、給与・退職金と、税理士・弁護士・司法書士など一定の報酬に限られます。デザイン料や原稿料は対象外のため、支払った月の翌月10日までに納付します。
納付を1日忘れました。すぐに納めれば問題ないでしょうか?
自主的に納付すれば不納付加算税は5%に軽減され、直前1年間に遅れがなく期限から1か月以内の納付であれば課されない扱いもあります。ただし延滞税は日数に応じて発生します。気づいた時点ですぐ納付してください。
令和8年から税額表が変わったと聞きました。何をすればよいですか?
令和8年分以後の源泉徴収税額表を使って毎月の計算を行うことと、従業員から提出を受ける扶養控除等申告書に源泉控除対象親族の記載が正しく行われているかを確認することの2点です。給与計算ソフトを使っている場合は、税額表の更新が適用されているかをご確認ください。

まとめ:計算より期限で決まる

源泉徴収は、給与や一定の報酬を支払う側が所得税を差し引いて国へ納める仕組みです。義務を負うのは支払った会社であり、従業員本人の希望で取りやめることはできません。

  • 法人は役員報酬を払った時点で、個人事業主は従業員を雇った時点で源泉徴収義務者になる
  • 毎月の税額は源泉徴収税額表を引いて求める。甲欄か乙欄かは扶養控除等申告書の提出で決まる
  • 納付は原則として支払月の翌月10日まで。10人未満なら納期の特例で年2回にできる
  • 12月に年末調整で精算し、翌年1月末までに源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書を出す
  • 令和8年分から税額表が改正されている。令和9年分では基礎控除の上乗せが終わる

実務で問題になるのは、税額の計算そのものではありません。外注か雇用かの判定、書類の回収、そして期限の管理です。この3つが仕組みとして回っていれば、源泉徴収でつまずくことはほとんどなくなります。

最初にやることを1つだけ挙げるなら、入社時に集める書類をセットにして固定することです。ここが崩れていると、年末調整と1月の提出物まで連鎖して遅れます。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.2502「源泉徴収義務者とは」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2662「年末調整のしかた」
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
  • 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
  • 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)
  • e-Gov法令検索「所得税法」第183条・第204条・第216条

【メタディスクリプション】
源泉徴収の仕組みを、誰が義務を負い、何を対象に、いくら差し引き、いつまでに納めるかの順に整理しました。源泉徴収税額表の甲欄と乙欄、納期の特例、年末調整との関係、令和8年分から変わった控除額、納付が遅れた場合の加算税まで解説します。

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