給与支払報告書とは|市区町村へ提出する書類

「源泉徴収票を税務署に出したので、もう終わりですよね」。「アルバイトの分も市役所に出すのですか」――年明けの手続きについて、この2つのご質問は毎年いただきます。

結論からお伝えすると、給与支払報告書は住民税を計算するために市区町村へ提出する書類です。提出期限は1月31日、提出先は従業員それぞれの1月1日現在の住所地の市区町村。税務署へ出す源泉徴収票と内容はほぼ同じですが、提出する範囲が違い、給与を支払った人は原則として全員分を出します

税理士法人Light UPでは、この書類でつまずくのは書き方ではなく誰の分をどこへ出すかだと考えています。従業員が10人いれば提出先が10市区町村に分かれることもあり、住所の把握が済んでいないと作業が進まないためです。

この記事では、提出先の決め方と対象になる人の範囲、総括表と個人別明細書の関係、源泉徴収票との違い、そして電子提出の義務までを、実際に中小企業の年末調整を代行している立場から整理します。

給与支払報告書は市区町村へ出す住民税の資料

結論: 給与支払報告書は、市区町村が住民税を計算するために使う資料です。地方税法317条の6が提出義務を定めており、根拠法も提出先も、税務署へ出す源泉徴収票とは別の系統になります。

条文が定めている義務

e-Gov 法令検索で地方税法317条の6第1項を引くと、「一月一日現在において給与の支払をする者…で、当該給与の支払をする際所得税法第百八十三条の規定により所得税を徴収する義務があるものは、同月三十一日までに…給与支払報告書に記載し、これを当該市町村の長に提出しなければならない」と定められています。

義務があるのは、源泉徴収をする義務がある事業者です。従業員を1人でも雇って給与を支払っていれば該当します。法人か個人事業主かは問いません。源泉徴収義務者であることと、給与支払報告書の提出義務があることは同じ範囲だと考えておくと分かりやすくなります。

何のために使われるのか

市区町村はこの書類をもとに、翌年度の個人住民税を計算します。所得税は会社が年末調整で年税額を確定させますが、住民税は市区町村が計算する仕組みです。会社が出した給与の情報がなければ、住民税の計算が始まりません。

計算された住民税は5月末までに会社へ通知され、6月から翌年5月にかけて給与から天引きされます。給与支払報告書は、1年後の給与計算の起点になる書類という位置づけです。提出が遅れれば、その分だけ住民税の決定も後ろにずれます。

公的年金等支払報告書という別の書類

同条4項は、公的年金等の支払をする者について、公的年金等支払報告書を提出する義務を定めています。企業年金を支給している会社では、給与とは別にこちらの提出が必要になります。

中小企業では該当する場面が限られますが、退職金制度として年金形式の支給をしている場合は確認が要ります。書類の名前も様式も別なので、給与支払報告書に含めることはできません。

提出先は「1月1日現在の住所地」で決まる

結論: 提出先は、従業員それぞれの1月1日現在における住所所在の市区町村です。会社の所在地ではありません。従業員が複数の市区町村に住んでいれば、その数だけ提出先が分かれます。

会社の所在地ではない

税務署へ提出する書類は会社の納税地を所轄する1か所で済みますが、給与支払報告書は違います。従業員が10人いて全員が別々の市に住んでいれば、10の市区町村へ提出することになります。

この点が事務の負担になりやすいところです。従業員数が少なくても、住んでいる場所がばらけていれば提出先は増えます。人数ではなく市区町村の数で作業量が決まるという構造だとお考えください。

住民票の住所で判断する

1月1日現在の住所とは、原則として住民票のある場所です。実際に住んでいる場所と住民票が違う場合は、住民票の所在地の市区町村へ提出します。

単身赴任で住民票を移していない従業員がいれば、住民票のある市区町村が提出先です。会社が把握している住所と住民票が食い違っていると、後から市区町村間で照会が発生します。年末調整の書類を集める段階で、住民票の住所を確認しておくと手戻りが減ります。

年末に引っ越した人に注意する

12月中に引っ越した従業員は、1月1日時点で新しい住所になっています。年末調整の書類に書かれた住所が古いままだと、提出先を誤ることになります。

とくに12月下旬の転居は見落としやすいところです。年明けに一度、住所の変更がなかったかを全員に確認する運用にしておくと安全でしょう。誤った市区町村へ提出した場合は、正しい市区町村へ出し直すことになります。

提出先の市区町村をどう決めるか
給与支払報告書の提出先を決めたい。どこへ出すか
在籍している従業員
1月1日現在の住民票がある市区町村。会社の所在地ではない
年の途中で退職した人
退職した日現在の住所所在の市区町村。ただし支払額30万円以下なら省略できる
単身赴任で住民票を移していない
住民票のある市区町村。実際の居所ではない
12月中に引っ越した人
新しい住所の市区町村。年末調整の書類の住所が古いままだと誤る

誰について提出するのか

結論: 給与を支払ったすべての人について提出します。税務署へ提出する源泉徴収票が金額の基準で絞られるのに対し、給与支払報告書には金額による下限がありません。

全員分を出すのが原則

正社員だけでなく、パート・アルバイト・役員のすべてが対象です。年間の支払額が数万円であっても、給与を支払っていれば提出します。扶養控除等申告書を提出していない乙欄の人も含まれます。

税務署へ提出する源泉徴収票は、年末調整をしたもので役員150万円超・一般の従業員500万円超などの基準があります。この感覚のまま市区町村への提出を絞ると、大量の漏れが出ます。給与支払報告書には、その基準がありません。

住民税の計算に必要だから範囲が広い

範囲が広い理由は、住民税の計算にあります。所得税は年末調整で完結しますが、住民税は市区町村がすべての所得を集めて計算します。少額の給与であっても、他の所得と合算すれば課税されることがあるためです。

複数の会社から給与を受け取っている人であれば、それぞれの会社が提出した報告書を市区町村が合算します。1社あたりの金額が小さくても、合計すれば課税対象になる。この仕組みがあるため、金額で絞ることができません。

提出範囲の違いを表で確認する

項目 給与支払報告書 源泉徴収票(税務署へ提出するもの)
提出先 従業員の住所地の市区町村 会社の納税地を所轄する税務署
根拠法 地方税法317条の6 所得税法226条
提出範囲 給与を支払った全員 役員150万円超・一般500万円超などの基準あり
期限 1月31日 1月31日
様式 総括表+個人別明細書 源泉徴収票+法定調書合計表

期限が同じ1月31日である点は共通です。年末調整を終えたら、この2つを並行して準備することになります。

表を見ると、違うのは提出先と提出範囲の2つだけだと分かります。中身は同じでも、出す相手と出す人数が違う。同じデータから2種類の提出物を作るという理解でいると、作業の全体像がつかみやすくなります。会計ソフトが両方を同時に出力するのも、この構造があるためです。

退職者は30万円以下なら省略できる

結論: 年の途中で退職した人についても、退職した日現在の住所地の市区町村へ提出します。ただしその年の支払額の総額が30万円以下であれば、提出を省略できます。

条文が認めている省略

地方税法317条の6第3項は、給与の支払を受けなくなった者について翌年1月31日までの提出を義務づけたうえで、ただし書で「その給与の支払を受けなくなつた日の属する年に当該給与の支払をする者から支払を受けた給与の金額の総額が三十万円以下である者については、この限りでない」としています。

30万円という基準は、その会社から支払った金額の合計です。他社での給与は含めません。短期のアルバイトや、年の初めに退職した人が該当しやすくなります。

省略しない選択もある

条文は「この限りでない」と定めているだけなので、提出しても構いません。実務では、判定の手間を省くために全員分を提出している会社もあります。

判断の分かれ目は人数です。短期のアルバイトが多い業種では、30万円以下の人が数十人になることもあります。この場合は省略したほうが作業は軽くなります。一方、退職者が年に数人であれば、金額を確認するより全員出すほうが早いでしょう。どちらでも構わないので、社内で方針を決めておくことが要点です。

提出先は退職時の住所

在籍者は1月1日現在の住所ですが、退職者は退職した日現在の住所です。基準日が違う点に注意が要ります。退職後に引っ越していても、会社が把握しているのは退職時の住所なので、それで提出します。

退職者の住所を後から追いかけるのは現実的ではありません。退職時の書類で住所を確認し、その情報をそのまま使う形になります。

提出の対象になる人と、省略できる人
01
在籍している従業員・役員
全員が対象。パート・アルバイト・乙欄の人も含む。金額の下限はない
02
年の途中で退職した人
対象になるが、その年の支払額が30万円以下なら省略できる
03
複数の会社から給与を得ている人
各社がそれぞれ提出する。市区町村が合算して住民税を計算する
04
公的年金等の受給者
給与支払報告書ではなく、公的年金等支払報告書という別の書類になる
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総括表と個人別明細書の2枚組

結論: 給与支払報告書は、市区町村ごとに1枚の総括表と、その市区町村に住む従業員ごとの個人別明細書で構成されます。個人別明細書の内容は源泉徴収票とほぼ同じです。

個人別明細書は源泉徴収票と同じ様式

国税庁が公開している様式には、給与支払報告書(個人別明細書)と給与所得の源泉徴収票(受給者交付用)を同時に作成できる用紙があります。記載する内容が同じだからです。

会計ソフトや給与ソフトを使っていれば、年末調整のデータから両方が自動的に作られます。手書きで作る場合も、同じ内容を書き写す形になります。中身を考える作業ではなく、仕分けと集計の作業だと考えておくと段取りが立てやすくなります。

総括表は提出先ごとに1枚

総括表には、その市区町村へ提出する人数、給与の支払総額、事業所の情報などを記載します。市区町村ごとに作るため、提出先が10市区町村あれば総括表も10枚です。

多くの市区町村では、前年に提出実績のある事業者へ12月頃に総括表の用紙を送ってきます。届いた用紙をそのまま使えば、事業所番号などがあらかじめ印字されているので入力の手間が減ります。届かない市区町村へ新たに提出する場合は、自治体のサイトから様式をダウンロードします。

普通徴収にする人がいれば別の書類が要る

住民税は特別徴収が原則ですが、一定の場合には普通徴収が認められます。その場合、総括表とあわせて普通徴収切替理由書を提出する市区町村が多くなっています。

理由書には該当する符号を記入します。何が認められるかは市区町村によって運用が異なるため、提出先の案内を確認することになります。徴収方法そのものの詳しい扱いは、別記事に整理してあります。

給与支払報告書と源泉徴収票の違い
給与支払報告書(市区町村へ)
地方税法317条の6が根拠
提出先は従業員の1月1日現在の住所地
給与を支払った全員が対象。金額の下限はない
総括表を市区町村ごとに添える
翌年度の住民税の計算に使われる
源泉徴収票(税務署へ)
所得税法226条が根拠
提出先は会社の納税地を所轄する税務署
役員150万円超・一般500万円超などの基準で絞られる
法定調書合計表を添える
令和9年1月から、みなし提出の特例で提出が不要になる

提出方法はeLTAXと書面の2つ

結論: 提出方法は、eLTAX(地方税ポータルシステム)による電子提出と、書面または光ディスク等による提出です。一定の規模を超える事業者には電子提出が義務づけられています。

eLTAXなら1回の送信で全市区町村へ届く

eLTAXを使うと、提出先の市区町村が何か所あっても1回の手続きで送信できます。市区町村ごとに封筒を用意して郵送する作業がなくなるため、提出先が分かれている会社ほど効果が大きくなります。

さらに、給与支払報告書を eLTAX で提出すると、同じデータから源泉徴収票を税務署へ送ることもできます。1つの入力で2つの提出が済む仕組みです。提出先が3市区町村を超えるなら、電子提出に切り替える価値があります。

書面で提出する場合

市区町村から届いた総括表と、印刷した個人別明細書を郵送または持参します。個人別明細書は市区町村ごとに仕分けて、それぞれの総括表と一緒にします。

郵送の場合は、期限までに到着する必要があるのか、消印有効なのかを確認しておきます。市区町村によって扱いが異なることがあるためです。1月31日が土日にあたる年は、翌開庁日が期限になります。

光ディスク等による提出

CD・DVDなどの記録媒体で提出する方法もあります。かつては電子提出の主要な手段でしたが、eLTAXの普及により利用は減っています。

市区町村によっては光ディスク等での受付を終了しているところもあります。この方法を選ぶ場合は、事前に提出先へ確認しておくのが確実です。

法令上は電子提出の義務を果たす手段として認められていますが、実務としては eLTAX に一本化されつつあります。これから電子化を始めるのであれば、光ディスクを経由せず eLTAX へ直接移るほうが手戻りがありません。記録媒体の郵送や返却の手間も不要になります。

eLTAXで提出するときの手順
1

利用者IDを取得する
eLTAXのポータルサイトから申請する。取得までに数日かかるので早めに済ませる
2

給与ソフトからデータを出力する
年末調整のデータから給与支払報告書の形式で書き出す
3

提出先の市区町村を確認する
従業員の1月1日現在の住所から自動で振り分けられる。人数を目視で確認する
4

送信して受付通知を確認する
送信後にメッセージボックスへ受付結果が届く。エラーがあれば修正して再送する
5

控えを保管する
送信データと受付通知を保存する。翌年の作業でも参照する

電子提出の義務は源泉徴収票と連動する

結論: 源泉徴収票について電子提出の義務がかかる事業者は、給与支払報告書もeLTAXまたは光ディスク等で提出しなければなりません。地方税法317条の6第5項がそう定めています。

条文の仕組み

地方税法317条の6第5項は、給与支払報告書を提出する義務がある者のうち「所得税法第二百二十六条第一項に規定する源泉徴収票について同法第二百二十八条の四第一項の規定の適用を受けるもの」は、eLTAXを使う方法または光ディスク等を提出する方法によらなければならないとしています。

所得税法228条の4第1項は、法定調書の電子提出の義務を定めた規定です。つまり税務署への電子提出義務がかかると、市区町村への提出も自動的に電子が義務になるという構造になっています。別々に判定するのではありません。

令和9年1月から基準が下がる

国税庁は、法定調書の電子提出の義務について、前々年の提出枚数が100枚以上であるものが対象とし、令和9年1月1日以後は30枚以上に引き下げられるとしています。この基準が下がれば、給与支払報告書の電子提出義務も同時に広がることになります。

100枚であれば従業員100人規模の話でしたが、30枚となると多くの中小企業が対象に入ります。書面で提出してきた会社ほど、次回の提出前に eLTAX の準備が必要になる可能性があります。利用者IDの取得には日数がかかるため、年末を待たずに手続きを始めておくのが安全です。

提出する時期 電子提出の義務がかかる基準(前々年の提出枚数) 給与支払報告書への影響
令和8年12月31日まで 100枚以上 同じ事業者に eLTAX 等での提出義務がかかる
令和9年1月1日以後 30枚以上 対象が広がり、多くの中小企業が義務の範囲に入る
書面で提出する場合と、eLTAXで提出する場合
書面で提出する
市区町村ごとに仕分けて郵送または持参する
提出先が多いほど作業量が増える
前年実績があれば総括表の用紙が届く
電子提出の義務がかかる事業者は選べない
eLTAXで提出する
提出先が何か所でも1回の送信で済む
同じデータから源泉徴収票を税務署へも送れる
受付通知が残るため控えの管理が楽になる
利用者IDの取得に日数がかかるので早めに準備する

制度の変わり目にあたるので案内を確認する

令和9年1月からは、給与支払報告書を市区町村に提出すれば源泉徴収票を税務署に提出したものとみなす特例も始まります。給与支払報告書の位置づけが変わる時期にあたるため、提出方法の細かい運用は国税庁と提出先の市区町村の案内で確認することになります。

制度が動くタイミングでは、様式や手順の変更も同時に起こりがちです。前年と同じやり方で進めず、年末に一度、提出先の案内を見ておく手間を惜しまないほうがよいでしょう。

4月15日までの異動届という見落としやすい義務

結論: 給与支払報告書を提出した従業員のうち、4月1日現在で給与の支払を受けなくなった人がいる場合、4月15日までに市区町村へ届出をする義務があります。

条文が定めている届出

地方税法317条の6第2項は、給与支払報告書を提出した者のうち「四月一日現在において給与の支払を受けなくなつたものがある場合には、同月十五日までに…その旨を記載した届出書を当該市町村長に提出しなければならない」と定めています。

1月末に報告書を出した後、2月から3月にかけて退職した人が対象です。この期間の退職は年度末と重なるため、実際には毎年発生している会社が多いはずです。

出さないと誤った通知が届く

届出をしないと、市区町村はその人がまだ在籍していると考えて、5月に特別徴収税額の通知を送ってきます。すでに退職している人の住民税を天引きする形になり、後から訂正の手続きが必要になります。

4月15日という期限は、5月末の通知に間に合わせるために設けられています。 ここで正しい情報を届けておけば、6月から始まる特別徴収を正しい人数で開始できます。

実務では給与所得者異動届出書で行う

多くの市区町村では、給与支払報告に係る給与所得者異動届出書という様式を用意しています。退職した従業員について、退職日と退職後の住民税の徴収方法を記載して提出する形です。

年度の途中で退職した人の届出と同じ様式を使うことが一般的です。2月から3月の退職者については、退職の都度出す運用にしておくと、4月に慌てて洗い出す必要がなくなります。

提出後にも発生する手続き
01
4月15日 異動届
4月1日現在で退職している人がいれば届出が必要(地方税法317条の6第2項)
02
5月31日まで 税額の通知
市区町村から特別徴収税額の通知が届く。会社と本人あての2種類がある
03
6月から 特別徴収の開始
通知された金額を6月から翌年5月にかけて毎月天引きする
04
期中の入退社
そのつど異動届を出す。新入社員は特別徴収への切替届で継続できる

提出しなかったときの扱い

結論: 給与支払報告書の提出は地方税法上の義務であり、提出しない場合や虚偽の記載をした場合には罰則が定められています。あわせて、住民税の決定が遅れることによる実務上の影響も生じます。

罰則の定めがある

地方税法には、給与支払報告書を提出しなかった場合や虚偽の記載をして提出した場合の罰則が置かれています。実際に適用される場面は限られますが、任意の提出物ではないという位置づけは押さえておく必要があります。

市区町村から提出の督促が来ることもあります。前年に提出実績があるのに今年届いていない場合、市区町村側で気づくためです。

従業員に不利益が及ぶ

会社が提出しないと、市区町村はその従業員の給与所得を把握できません。住民税が正しく計算されないだけでなく、所得証明書や課税証明書が発行できない状態になります。

これらの証明書は、住宅ローンの審査、保育園の入園申込み、公営住宅の申込みなどで求められます。会社の手続きの遅れが、従業員の生活の場面で表面化するということです。年明けの繁忙期に後回しにしがちな作業ですが、影響が及ぶ先を考えると優先順位は高くなります。

遅れた場合はすぐに提出する

期限を過ぎたことに気づいたら、できるだけ早く提出します。地方税法321条の4第3項は、給与支払報告書が期限までに提出されなかったことなどにより5月31日までに通知ができなかった場合について、その後に通知することを妨げないとしています。

つまり遅れても手続きは進みます。ただし通知が遅れれば、6月から始まるはずの特別徴収の開始も後ろにずれます。従業員は数か月分をまとめて天引きされることになるため、給与計算の側でも説明が必要になります。

事例:提出先が12市区町村に分かれていた運送会社

「毎年1月は郵送作業だけで丸2日かかっています」。従業員18名の運送会社から、年末調整の代行をお引き受けする際にご相談をいただきました。

従業員の住所を確認すると、提出先が12の市区町村に分かれていました。市区町村ごとに個人別明細書を仕分け、総括表を作り、封筒に入れて郵送する。この作業が丸2日かかっていたわけです。

このときお勧めしたのが eLTAX への切り替えでした。利用者IDの取得に数日かかるため、11月のうちに申請を済ませ、12月中にテスト送信まで行っています。翌年1月の作業は、データの確認と送信で半日ほどに収まりました。

もう1つ変えたのが、住所の確認の順番です。年末調整の書類を配るときに住民票の住所を確認する欄を設け、12月中の転居予定も聞くようにしました。提出先が確定するのが早ければ、1月の作業はデータを流すだけになります。

社長からは「郵便局へ行かなくなっただけで、1月の空気が変わりました」という言葉がありました。作業量が減ったこと以上に、期限に追われる感覚がなくなったことが大きかったようです。

よくある質問

アルバイトの分も提出する必要がありますか?
必要です。給与支払報告書には金額による下限がないため、給与を支払った人は全員が対象になります。税務署へ提出する源泉徴収票には役員150万円超・一般500万円超などの基準がありますが、市区町村への提出はその基準と関係ありません。乙欄の人も含めて提出します。
提出先は会社の所在地の市区町村ですか?
違います。従業員それぞれの1月1日現在の住所地の市区町村です。従業員が複数の市区町村に住んでいれば、その数だけ提出先が分かれます。住民票の住所で判断するため、単身赴任で住民票を移していない場合は住民票のある市区町村へ提出します。
年の途中で辞めた人の分はどうしますか?
退職した日現在の住所地の市区町村へ、翌年1月31日までに提出します。ただしその年にその会社から支払った給与の総額が30万円以下であれば、提出を省略できます。省略するかどうかは会社の判断なので、社内で方針を決めておくとよいでしょう。
源泉徴収票を税務署に出せば市区町村への提出は不要ですか?
不要にはなりません。提出先も根拠法も別の書類です。むしろ令和9年1月からは、給与支払報告書を市区町村に提出すれば源泉徴収票を税務署に提出したものとみなす特例が始まります。関係が逆になる形なので、給与支払報告書の重要性は増すことになります。
eLTAXでの提出は義務ですか?
源泉徴収票について電子提出の義務がかかる事業者は、給与支払報告書も電子で提出しなければなりません(地方税法317条の6第5項)。その基準は前々年の法定調書の提出枚数で判定し、令和9年1月1日以後は30枚以上に引き下げられます。義務がない会社でも、提出先が複数あるなら利用の価値があります。
提出した後に間違いが見つかったらどうしますか?
訂正した給与支払報告書を提出先の市区町村へ出し直します。様式や手続きは市区町村によって異なるため、提出先へ連絡して指示を受けるのが確実です。5月末の税額決定より前であれば、訂正が間に合うことが多くなります。

まとめ:住所の確認から始める

  • 給与支払報告書は住民税を計算するために市区町村へ提出する書類。期限は1月31日
  • 提出先は従業員の1月1日現在の住所地。会社の所在地ではない
  • 給与を支払った全員が対象で、金額による下限はない。退職者は30万円以下なら省略できる
  • 源泉徴収票について電子提出の義務がかかる事業者は、給与支払報告書も電子提出が義務になる
  • 4月1日現在で退職している人がいれば、4月15日までに届出が必要

先に手を付けるべきは、書類の作成ではなく住所の確認です。提出先が確定しないと仕分けも集計も始まりません。年末調整の書類を配るタイミングで、住民票の住所と年末の転居予定を聞いておくと、1月の作業が一気に軽くなります。

やらなくてよいこともあります。金額の小さい従業員について提出するかどうかを1人ずつ迷うことです。退職者の30万円基準以外に下限はないので、在籍者は全員出すと決めてしまえば判断そのものが不要になります。

税理士法人Light UPでは、年末調整から給与支払報告書・法定調書の提出まで一貫してお引き受けしています。eLTAXへの切り替えや、住所確認の段取りの設計も含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。

給与・源泉・年末調整のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • e-Gov 法令検索「地方税法」(第317条の6・第321条の4)
  • 国税庁「F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.7411「『給与所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」
  • 国税庁 タックスアンサー No.7455「法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務」

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。様式や普通徴収の取扱いは市区町村により異なるため、提出前に提出先の案内をご確認ください。

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