年末調整の必要書類|従業員から集めるものと確認する点

「毎年11月に紙を配っているのですが、書き方の質問が止まりません」。「去年と同じ紙だと思って配ったら、去年と違うと言われました」――年末調整の季節になると、この2つはよくいただくご相談です。

年末調整で従業員から集める書類は4種類です。全員が出すのは給与所得者の扶養控除等(異動)申告書だけで、残りの3種類は該当する人だけが出します。国税庁のタックスアンサーNo.2665は、年末調整の対象になるのは扶養控除等申告書を「年末調整を行う日までに提出している一定の人です」としています。

税理士法人Light UPでは、年末調整の書類でつまずくのは書き方そのものより、その年に何が変わったかを配る側が押さえていないことだと考えています。令和8年12月に行う年末調整は、令和8年度税制改正の反映が要ります。去年の紙をそのまま配ると、去年の基準で書かれた紙が返ってきます。

この記事では、集める4種類の中身、扶養控除等申告書の欄ごとの書き方、令和8年分で増えた確認、記載漏れが起きやすい箇所、そして回収の段取りまでを、給与計算と年末調整を代行している立場から整理します。

年末調整で集める書類は4種類ある

結論: 年末調整で従業員から集める書類は、扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除の申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書の4種類です。全員が提出するのは扶養控除等申告書だけです。

4種類の中身と対象者。名前の長い申告書は令和7年分からの形

書類 出す人 主な提出期限 添付するもの
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 給与の支払を受ける人の全員 その年の最初に給与を受ける日の前日まで 勤労学生の証明書など該当者のみ
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 年末調整を受ける人 その年最後に給与を受ける日の前日まで 原則なし
給与所得者の保険料控除申告書 保険料を払っている人 その年最後に給与を受ける日の前日まで 各種の控除証明書
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除の2年目以降の人 その年最後に給与を受ける日の前日まで 金融機関の年末残高等証明書

紙の名前が長いのは、複数の申告を1枚にまとめているからです。用紙が4枚ある年もあれば3枚で足りる年もある、という言い方のほうが実態に近いでしょう。

2枚目の申告書は、もともと基礎控除申告書と配偶者控除等申告書と所得金額調整控除申告書を1枚にしたものでした。令和7年度税制改正で特定親族特別控除が新しくできたため、ここに特定親族特別控除申告書が加わっています。

国税庁の手続名も「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告」に変わりました。従業員に配るときは、去年と同じ紙だと言い切らないほうが安全です。

提出先は会社まで

4種類とも、従業員が出す先は勤務先です。会社から税務署へ回す必要はありません。国税庁の手続案内は扶養控除等申告書について、給与の支払者は「税務署長及び市区町村長から特に提出を求められた場合以外は、提出する必要はありません(給与の支払者が保管しておくことになっています。)」と示しています。

保管する側になるので、電子で集めるにせよ紙で集めるにせよ、7年間は取り出せる状態にしておきます。

出さない人がいるとどうなるか

扶養控除等申告書を出していない人は、毎月の源泉徴収が甲欄ではなく乙欄になります。乙欄は税額が高く設定されているため、手取りが目に見えて減ります。

そして年末調整そのものが行われません。国税庁の手続案内は「国内において給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません」としたうえで、申告を行わない場合は諸控除が受けられず、年末調整も行われないことになると明記しています。

扶養する家族がいないから出さなくてよい、という理解は誤りです。

扶養控除等申告書は上から順に埋める

結論: 扶養控除等申告書は、本人欄・A欄・B欄・C欄・D欄・住民税に関する事項の順に並んでいます。上から順に埋めれば、書く場所を迷う場面はほとんどありません。

扶養控除等申告書は上から順に埋める
1

本人の欄
氏名・個人番号・住所・世帯主との続柄・配偶者の有無。会社名と法人番号は会社側が入れる
2

A 源泉控除対象配偶者
本人の所得の見積額が900万円以下で、配偶者の所得も一定額以下のときだけ書く欄
3

B 控除対象扶養親族
12月31日時点で16歳以上の家族。19歳以上23歳未満は特定扶養親族の欄に印を付ける
4

C 障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生
該当する区分に印を付け、その事実を書く。証明書の提出が要る区分もある
5

D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
共働きで配偶者側が扶養に入れている家族を書く。二重に控除しないための欄
6

住民税に関する事項
16歳未満の家族はここに書く。所得税の控除はないが、住民税の判定に使われる

本人欄は世帯主との続柄でつまずく。A欄に書ける配偶者

氏名・個人番号・住所までは迷いません。止まるのは世帯主の氏名と続柄です。自分が世帯主なら、氏名は自分の名前、続柄は本人と書きます。

「妻が世帯主なのに、なんとなく自分の名前を書いていました」というお声もよくいただきます。住民票のとおりに書けば足ります。

A欄は源泉控除対象配偶者の欄です。配偶者がいれば必ず書く欄ではありません。本人の合計所得金額の見積額が900万円以下で、なおかつ配偶者の合計所得金額の見積額が一定額以下、という2つの条件を同時に満たす場合に書きます。

本人の所得が900万円を超えている場合、配偶者がまったく働いていなくてもA欄は空欄です。控除が受けられないわけではなく、配偶者控除は年末に別の申告書で申告する形になります。この違いが分かりにくいところです。

B欄は年齢で書き方が変わる。C欄は該当する年だけ

B欄は控除対象扶養親族の欄で、その年12月31日時点の年齢が16歳以上の家族が対象です。国税庁のタックスアンサーNo.1180は、控除対象扶養親族を「扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」と定義しています。

19歳以上23歳未満は特定扶養親族です。控除額が63万円と大きいため、印の付け忘れは金額に直接ひびきます。70歳以上は老人扶養親族で、同居しているかどうかで控除額が48万円と58万円に分かれます。

障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の欄です。毎年状況が変わる欄ではないので、去年の紙を写して終わりにしがちな場所でもあります。

家族が障害者手帳の交付を受けた年、離婚や死別があった年、子どもが学生になった年は、ここが変わります。

D欄は共働きのための欄

D欄は、他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄です。共働き夫婦で、子どもを夫の側の扶養に入れているなら、妻の申告書ではその子をD欄に書きます。

同じ子を夫婦それぞれのB欄に書いてしまうと、二重に控除を受けた状態になります。あとから税務署に指摘され、両方の年末調整をやり直すことになった例は珍しくありません。

16歳未満は下段の住民税の欄へ

平成23年に年少扶養控除がなくなったため、16歳未満の子には所得税の扶養控除がありません。ただし住民税の非課税限度額の判定には使われるので、申告書の下段にある住民税に関する事項の欄に書きます。

書く場所がないのではなく、書く場所が下にあるという理解が要ります。ここはB欄との混同がいちばん多い箇所です。

異動月日及び事由の欄は空欄のままにしない

年の途中で子が生まれた、配偶者が働き始めて所得の条件を外れた、家族が亡くなった。こうした変化があったときは、この欄に日付と理由を書いて申告書を出し直します。

口頭やチャットで伝えただけでは、申告書の記載は変わりません。書面が残らないと、あとで根拠を示せなくなります。

扶養親族が増えた年、減った年は、その日付と理由を書きます。年の途中で結婚した、子が就職した、といった事実です。空欄のままだと、いつから扶養に入ったのかを追えません。

令和8年12月の年末調整は改正の反映が要る

結論: 令和8年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額と扶養親族等の所得要件が引き上げられました。令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。

令和8年12月の年末調整で確認する4点
01
扶養に入る線が上がった
扶養親族と同一生計配偶者の合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下へ。給与だけなら123万円から136万円になる
02
新たに扶養に入る家族がいる
去年は外れていた家族が対象に戻ることがある。該当したら扶養控除等申告書を出し直してもらう
03
11月までは変えない
施行は12月1日。11月までの毎月の源泉徴収は改正前のままで、扶養親族等の数に新しく入る人を含めない
04
12月1日を待たなくてよい
改正を反映した書類を12月1日より前に集めても差し支えない、と国税庁が示している

給与所得控除の最低保障額が74万円に。扶養に入る所得の線も上がった

国税庁「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」は、この改正を「給与所得控除について、65万円の最低保障額が74万円に引き上げられました」と示しています。

給与所得控除は、給与収入から差し引ける概算の経費です。この最低保障額が上がると、同じ給与収入でも合計所得金額が下がります。扶養に入るかどうかの判定が、収入の側から見ると緩くなる、ということです。

所得要件は次のとおり変わりました。かっこ内は、収入が給与だけの場合の収入金額です。

区分 改正後(令和8年分) 改正前
扶養親族・同一生計配偶者 62万円以下(136万円以下) 58万円以下(123万円以下)
ひとり親の生計を一にする子 62万円以下(136万円以下) 58万円以下(123万円以下)
特定親族 62万円超123万円以下(136万円超197万円以下) 58万円超123万円以下(123万円超188万円以下)
配偶者特別控除の対象となる配偶者 62万円超133万円以下(136万円超207万円以下) 58万円超133万円以下(123万円超201万5,999円以下)
勤労学生 89万円以下(163万円以下) 85万円以下(150万円以下)

パートで働く配偶者の給与収入が130万円だった場合を考えます。改正前の基準では扶養親族の要件を外れていましたが、改正後は136万円以下に収まるので、要件を満たします。

新たに対象になった家族は申告書を出し直す

国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」は、この場合の記載方法を示しています。改正により新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を書くときは、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載する、という扱いです。

同じQ&Aには、令和8年分の扶養控除等申告書の様式について「様式裏面の注意事項等が改正前の内容となっている場合がありますのでご注意ください」という注記もあります。紙の裏面に書いてある金額が古いことがある、という状態です。

11月までの毎月の源泉徴収は変えない。集めるのは12月1日より前でよい

施行が12月1日なので、11月までに支払う給与の源泉徴収は改正前のままです。源泉徴収税額表を使うときの扶養親族等の数に、改正で新しく対象になった人を含めません。

ここを先走って11月から人数に含めてしまうと、毎月の徴収額が本来より少なくなり、年末調整で不足分をまとめて追徴することになります。

Q&Aは、実務上12月1日から書類を集めたのでは年末調整に間に合わない事態も想定されるとして、改正を反映した書類を同日前から提出することとしても差し支えない、としています。

例年どおり11月に配って構いません。配る紙の中身だけを改正後にそろえる、というのが今年の対応です。

保険料控除申告書は証明書とセットで集める

結論: 保険料控除申告書は、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金の4つの控除を1枚で申告する書類です。控除の種類によって証明書の要否が変わります。

保険料控除申告書に証明書を添えるかどうかは、控除の種類で決まる
生命保険料・地震保険料
証明書が要る。旧生命保険料だけは、剰余金などを差し引いた残額が9,000円以下なら添付しなくてよい
給与から天引きされている社会保険料
証明書は要らない。会社が金額を把握しているため、そもそも申告書に書かなくてよい
国民年金保険料・国民年金基金の掛金
証明書が要る。家族の分を本人が払った場合も同じ扱いになる
小規模企業共済等掛金(iDeCoを含む)
証明書が要る。本人あてに10月から11月にかけて届く

1枚に4つの控除が入っている

用紙は上から生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の順に並びます。生命保険料控除の欄がいちばん広く、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つに分かれています。

生命保険料控除は、平成24年1月1日以後に契約した新契約と、平成23年12月31日以前の旧契約で計算式が違います。新契約は各4万円、旧契約は各5万円が上限で、3つを合計した控除額の上限は12万円です。

証明書が要るもの、要らないもの

国税庁の手続案内は、社会保険料控除について国民年金保険料等の証明書の提出を求めたうえで、「国民年金保険料等以外の社会保険料については、添付の必要はありません」と示しています。

給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料は、会社が金額を持っています。申告書に書かなくても年末調整で控除されます。ここに天引き分の金額を書き写してくる人が毎年いますが、二重に控除してしまうので、記入不要と伝えておきます。

一方、社員が自分で払った国民年金保険料は会社に情報がありません。前職を辞めてから入社するまでの空白期間に国民年金を払っていた人、学生時代の保険料を追納した人が該当します。

23歳未満の扶養親族がいる場合の特例

令和8年分と令和9年分に限って、年齢23歳未満の扶養親族がいる人の一般生命保険料控除に特例が設けられています。新生命保険料に係る控除額の計算表が次のとおり変わり、上限が6万円になりました。

年間の新生命保険料 控除額
30,000円以下 新生命保険料の全額
30,000円超 60,000円以下 新生命保険料×1/2+15,000円
60,000円超 120,000円以下 新生命保険料×1/4+30,000円
120,000円超 一律60,000円

ただし一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除を合計した適用限度額は、改正前と同じ12万円のままです。一般の枠が広がっても、3つの合計で受けられる額が増えるとは限りません。

子育て世帯を対象にした期間限定の措置なので、扶養親族の年齢を申告書から確認する手間が増えます。

給与・源泉・年末調整の判断に迷っていませんか。実際の数字を見ながらお答えします。初回のご相談は無料です。

基礎控除申告書は見積りの紙

結論: 基礎控除申告書等は、本人と家族のその年の合計所得金額の見積額を書き、そこから控除額を導く書類です。確定した金額ではなく見積額を書きます。

4つの申告書が1枚になっている。書くのは見積額でよい

正式には、給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書です。左から右へ、基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除の欄が並びます。

基礎控除の欄は年末調整を受ける人が全員書きます。残りの3つは、該当する人だけが書く欄です。

12月の給与が確定する前に提出するので、収入は見積りになります。12月の賞与が業績で動く会社では、ずれが出るのが普通です。

見積りが大きく外れて控除額が変わる場合は、年末調整をやり直す形になります。12月の給与額が固まった時点で、対象になりそうな人だけ確認するのが現実的でしょう。

特定親族特別控除の欄で確認するもの

特定親族とは、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が一定の範囲に収まる人です。大学生の子がアルバイトで扶養控除の範囲を超えたとき、この控除で段階的に手当てされます。

令和8年分は給与所得控除の改正が入っているので、改正後の給与所得控除額で計算した合計所得金額を使います。前年の感覚で判定すると、控除額を1段階まちがえます。

国税庁のQ&Aは、扶養控除等申告書に源泉控除対象親族として書いていた特定親族が、改正で控除対象扶養親族に該当することになった場合には、扶養控除の対象になると示しています。この場合も、異動があった旨を書いた扶養控除等申告書の提出が要ります。

住宅ローン控除は1年目だけ会社で扱えない

結論: 住宅ローン控除は、入居した年は本人の確定申告が必要で、会社の年末調整では扱えません。2年目以降は税務署から届く申告書と金融機関の証明書を会社に出す形になります。

住宅ローン控除を会社で扱えるようになるまで
1

入居した年
本人が確定申告する。会社は関与しない。ここを会社の手続きだと思っている人が毎年います
2

確定申告のあと
税務署から本人あてに、残りの適用年分をまとめた住宅借入金等特別控除申告書が届く
3

2年目の年末調整
本人が、その年分の申告書と金融機関の年末残高等証明書を会社へ提出する
4

3年目以降
同じ束から1年に1枚ずつ使う。なくした場合は税務署で再交付を受けることになる

初年度は本人の確定申告

家を買った年に「会社で手続きしてもらえますか」と聞かれることがあります。初年度は登記事項証明書や売買契約書の写しなど添付書類が多く、税務署での確認が要るため、本人が確定申告します。

会社としては、確定申告に行く時間を作ってもらう以外にできることがありません。入社時や住宅取得の報告を受けたときに、この点を伝えておくと年末に慌てずに済みます。

2年目以降に集めるのは2枚。証明書が間に合わないとき

税務署から届く住宅借入金等特別控除申告書は、残りの適用年分がまとめて送られてきます。控除期間が13年の場合は12枚が一度に届く形です。新築や買取再販の住宅は控除期間が13年、既存住宅を取得した場合は10年です。

これに金融機関の年末残高等証明書を添えて提出します。会社側は、申告書に書かれた借入限度額や控除率をそのまま使って計算します。

年末残高等証明書は10月から11月にかけて届きますが、借換えをした年などは遅れることがあります。年末調整に間に合わない場合、その年は本人が確定申告で控除を受ける形になります。

会社が控除なしで年末調整をしても誤りではありません。従業員には、確定申告が要ることを早めに伝えておきます。

記載漏れが起きやすい箇所

結論: 年末調整の書類でよく起きる漏れは、16歳未満の記載場所・共働きの二重計上・見積額のずれ・年の途中の異動という4つの型に集約されます。

扶養控除等申告書でよくある書き方
迷いやすい書き方
16歳未満の子をB欄に書く
共働きの子を夫婦の両方がB欄に書く
見込みが外れた収入をそのままにする
年の途中で変わった内容を口頭で伝える
別居の親を扶養に入れているが仕送りの記録がない
申告書に沿った書き方
16歳未満は下段の住民税に関する事項へ
一方がB欄、他方はD欄へ
12月の給与が確定した時点で書き直す
異動月日及び事由の欄に日付と理由を書いて出し直す
送金の記録を残し、生計を一にする事実を説明できる状態にしておく

4つの型を表で押さえる。別居の家族を扶養に入れている場合

漏れの型 起きる場面 影響
記載場所の間違い 16歳未満をB欄に書く 所得税の控除が過大になる。住民税の判定にも影響する
二重計上 共働きで同じ子を両方が申告 どちらかの年末調整をやり直すことになる
見積額のずれ 配偶者のパート収入が年末に伸びた 配偶者控除等の額が変わり、追徴が生じる
異動の未反映 出生・離婚・死亡・就職 控除額が実態と合わなくなる

いちばん多いのは16歳未満の記載場所です。用紙の下段は住民税に関する事項という見出しになっていて、所得税の話をしている人の目には入りにくい位置にあります。

親を扶養に入れている人からは「仕送りはしていますが、記録は特に残していません」というご相談をよくいただきます。生計を一にしているという事実が説明できる状態かどうかが問われます。

手渡しをやめて振込に変える、通帳を残す、というだけで説明の材料になります。

前職の源泉徴収票

中途入社の人は、前職の源泉徴収票がないと年末調整ができません。国税庁のタックスアンサーNo.2668は、前職の給与や源泉徴収税額は源泉徴収票により確認するとしたうえで、「この確認ができないときには、年末調整を行うことはできません」と明記しています。

入社時に回収するのがいちばん確実です。年末に催促すると、前職に連絡しづらいという事情が絡んで時間がかかります。

回収の段取りと出してこない人への対応

結論: 年末調整の書類は10月に配り、11月中旬に一次締めを置くと12月の給与計算に間に合います。全員が揃うのを待つ運用にすると、毎年12月が逼迫します。

11月に回収を終えるための段取り
01
10月に配る
保険料控除証明書が10月から届き始める。紙を配るのはその前後が動きやすい
02
11月中旬に一次締め
ここで揃わない人を特定する。全員が出すまで待つと12月の給与計算に間に合わない
03
未提出の人に個別で当たる
扶養控除等申告書が出ていない人は、そもそも年末調整ができない
04
12月の給与で精算
過不足は12月分の給与に載せる。納期の特例を受けている会社は翌年1月20日までの納付にまとめる

配る時期と締める時期。出してこない人への当たり方

生命保険料控除証明書は10月に届き始めます。iDeCoの掛金払込証明書は11月に入ることもあります。証明書が手元にない段階で紙だけ配っても、書けないまま机に置かれます。

10月末に配り、11月20日前後を締切にする会社が多い印象です。締切を12月に置くと、給与計算と重なって身動きが取れなくなります。

扶養控除等申告書が出ていない人は、乙欄で源泉徴収したうえで年末調整をしません。本人が確定申告することになります。

ただし、これは本人にとって不利な扱いです。出すよう促すのが実務の運用で、それでも出ない場合に初めて乙欄の処理を検討します。書類を配った記録と、催促した記録を残しておくと後の説明が楽になります。

掛け持ちしている人の扱いと、年末調整のあとに異動があったとき

国税庁の手続案内は「2以上の給与の支払者から給与の支払を受ける場合には、そのいずれか一の給与の支払者に対してのみ提出することができます」としています。副業をしている人が両方の会社に扶養控除等申告書を出すことはできません。

自社が主たる勤務先でない人からは、申告書を受け取らずに乙欄で源泉徴収します。本人が確定申告で精算します。

12月に年末調整を終えたあと、その年の12月中に子が生まれる場合があります。この場合、翌年1月の給与の支払をする日までであれば、年末調整のやり直しができます。

その時期を過ぎたら、本人の確定申告で精算します。会社側で無理に処理しようとせず、確定申告を案内するほうが早く片づきます。

事例:配偶者の働き方を毎年聞かれる会社

「うちは主婦のパートが多いので、11月になると、あといくらまで働けますかという質問が集中するんです」。従業員30名ほどの小売業から、こんなご相談をいただいたことがあります。

その会社では、店舗ごとにシフトを組んでいて、本部が年間の給与を把握するのは12月に入ってからでした。11月の時点では見込みしか言えず、結果として毎年何人かが見込みを超えていました。

最初に手を付けたのは、質問への回答ではなく数字の出し方です。10月末時点の累計支給額を店舗別に一覧にして、本人と店長の両方に渡すようにしました。残りの枠が数字で見えると、質問そのものが減ります。

次に、扶養控除等申告書と基礎控除申告書等を配る日を10月最終週に固定し、11月20日を締切として掲示しました。締切を過ぎた人には、店長経由で個別に声をかける流れにしています。

3つ目は、12月の給与が確定した時点で、見積額と実績が3万円以上ずれた人だけを抽出する仕組みです。全員を確認せず、控除額が動きうる人だけに絞りました。

導入した年の12月は、やり直しが2件で収まりました。それまでは毎年6件から8件あった作業です。11月の問い合わせも、店長の段階でほとんど止まるようになりました。

よくある質問

扶養する家族がいない独身の社員も、扶養控除等申告書を出す必要はありますか?
必要です。この申告書は扶養控除を受けるためだけの紙ではなく、毎月の源泉徴収で甲欄を使うための紙でもあります。出していない人は乙欄で源泉徴収され、年末調整も行われません。
令和8年分の申告書の裏面に書いてある金額が、改正後の数字と違っているようです。どちらが正しいのでしょうか?
改正後の数字が正しい判断基準です。国税庁のQ&Aも、令和8年分の扶養控除等申告書について、様式裏面の注意事項等が改正前の内容となっている場合があると注意を促しています。裏面の記載は参考程度に扱ってください。
12月の給与を11月中に支払って年末調整を終えた場合、令和8年度改正の控除は使えますか?
使えません。改正の施行が令和8年12月1日のため、最後の給与の支払が11月30日以前だった人の年末調整には改正後の控除が適用されない、と国税庁のQ&Aが示しています。この場合は本人の確定申告で精算する形になります。
社員が家族の国民年金保険料を払っている場合、その社員の社会保険料控除に入れられますか?
生計を一にする配偶者や親族の分を本人が負担した場合は、その社員の社会保険料控除に含められます。ただし控除証明書の提出が要るので、保険料控除申告書と一緒に集めます。
保険料控除証明書をなくしたと言われました。どうすればいいですか?
保険会社に再発行を依頼します。手元に届くまで1週間から2週間かかることが多いため、締切に間に合わないなら、その社員だけ年末調整から外して確定申告に回す判断もあります。年末調整の電子化を導入している会社では、証明書のデータを本人が取得できるので、紛失そのものが起きにくくなります。

まとめ:紙の枚数より、今年の基準を配ること

年末調整で集める書類は4種類、全員が出すのは扶養控除等申告書だけ。ここまでは毎年変わりません。

変わるのは基準のほうです。令和8年12月の年末調整では、給与所得控除の最低保障額が74万円に上がり、扶養親族と同一生計配偶者の所得要件が62万円以下になりました。去年は扶養から外れていた家族が、今年は入る場合があります。

優先順位を付けるなら、いちばん先に手を打つのは配る時期です。証明書が届く10月末に配り、11月中旬で一次締めを置く。この2点だけで、12月の負荷は目に見えて下がります。

やらなくてよいこともあります。全員の見積額を12月に検算する必要はありません。ずれが控除額を動かす人だけを抽出すれば足ります。

次の一歩として、今年の紙を配る前に、去年から変わった項目を1枚のメモにして同封してみてください。従業員からの質問は、書き方より「去年と何が違うのか」に集中します。

年末調整の判断で迷う場面や、改正の反映に不安がある場合は、給与計算と年末調整を扱っている税理士にご相談ください。税理士法人Light UPでは、書類の設計から回収の段取りまで、会社ごとの事情に合わせて整理しています。

給与・源泉・年末調整のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2668「年末調整の対象となる給与」
  • 国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」
  • 国税庁 「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
  • 国税庁 「A2-3 給与所得者の保険料控除の申告」
  • 国税庁 「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
  • 国税庁 「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)

【メタディスクリプション】
年末調整で従業員から集める4種類の書類と、扶養控除等申告書の欄ごとの書き方を整理しました。令和8年度税制改正で変わった所得要件、16歳未満の記載場所、共働きの二重計上、回収の段取りまで解説します。

給与・源泉・年末調整の記事

更新日 2026年8月9日
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