事前確定届出給与とは?役員賞与の届出期限と書き方を解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

事前確定届出給与とは、役員賞与のように毎月同額ではない役員給与について、支給する時期と金額をあらかじめ税務署へ届け出て、そのとおりに支給することで、損金(税金の計算上の経費)の額に算入できるようにする制度です。届出の期限は原則として、決議の日から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日です。国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って、届出が要る給与、期限、届出書の書き方、届出と違う支給の扱いを整理します。

事前確定届出給与とは何?

結論: 事前確定届出給与は、届け出た時期に、届け出た金額を支払う役員給与です。役員賞与や非常勤役員への年数回の支給には届出が要り、毎月同額の役員報酬には要りません。

役員賞与に届出が要る理由

役員は自分の給与を決められる立場にあります。決算の結果を見てから額を決めても損金の額に算入できるなら、利益の調整ができてしまいます。そこで法人税法は、損金の額に算入できる役員給与を、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与の3つに限っています(国税庁タックスアンサーNo.5211)。

3つの型の比較は、次の記事にまとめています。

届出が要る給与と要らない給与

給与の種類ごとに、届出が要るかどうかを整理すると次のとおりです。

給与の種類 届出 見分け方
臨時に支給する役員賞与 要る 時期と金額を決めて払う給与
非常勤役員に年に数回払う報酬 要る 毎月の報酬を受けていない役員への支給も対象
毎月同額の役員報酬 要らない 定期同額給与
使用人兼務役員に、使用人としての職務に対して払う賞与 要らない 他の使用人の賞与と同じ時期に払う場合

使用人兼務役員の使用人分の賞与は、他の使用人の賞与と違う時期に払うと、損金の額に算入できません(法人税基本通達9-2-26)。代表取締役、副社長、専務、常務、監査役などは、使用人兼務役員になれません(No.5205)。

役員賞与の運用でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、届出の期限切れ、届出後の増額、手取りに合わせた額面の変更、議事録と届出書の食い違いの4つです。どれも、役員賞与が損金の額に算入できなくなる形で表れます。

届出は出したのに、支給の段で届出と違う額を払っていたと気づき、決算の直前に相談に来られる方が少なくありません。

総会が遅れて期限が過ぎる

3月決算の会社が7月20日に決議すると、決議日から1か月なら8月20日ですが、4月1日から4か月を経過する日は7月31日で、こちらが期限です。期限を過ぎると、その職務執行期間の役員賞与は損金の額に算入できません。

増額と額面の変更

届出のあとに業績が上振れしたので賞与を増やす例があります。届出の内容を変えられるのは役員の地位や職務が変わった場合などに限られ、業績が良かっただけの増額は変更の届出ができません。届出と違う額を払った扱いです。

届出の金額は、源泉所得税や社会保険料を引く前の額面です。手取りを切りのよい額にしようと額面を動かせば、届出と違う支給になります。

議事録と届出書の食い違い

議事録の支給日や金額が、届出書と違う例があります。届出書には決議の日を書き、定めの内容の写しを添える扱いのため、同じ日付、同じ金額にそろえます。

直近の株主総会の議事録、届出書の控え、賞与の支給予定表をお持ちいただければ、届出の期限、議事録と届出書の日付と金額の一致、支給日に払える見込みを一緒に確かめます。

役員報酬の手続きはまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

届出期限は、いつまで?

結論: 原則の期限は、決議の日から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日です。新設法人は設立の日以後2か月を経過する日です。

原則は2つの日付の早いほう

国税庁の「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」は、株主総会等の決議をした日から1月を経過する日までに届け出ると定めています。決議の日が職務の執行を開始する日より後のときは、その開始する日から数えます。ただし、その日が会計期間の開始の日から4か月を経過する日より後になるときは、4か月を経過する日が期限です。

1か月は、決議の日の翌日を起算日として暦で数えます。5月25日に決議すると、6月25日が1か月を経過する日です(届出書の記載要領)。3月決算の会社なら、4か月を経過する日は7月31日ですから、早い6月25日が期限になります。確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている法人は、4か月の部分が、指定された月数に3を加えた月数になります。

場面ごとの期限の早見表

場面 届出期限
原則 決議の日(職務の執行を開始する日のほうが早いときはその日)から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日
新設法人が設立時に開始する職務について定めた場合 設立の日以後2か月を経過する日
役員の地位が変わるなど、臨時改定事由が生じて新たに定めた場合 原則の期限と、臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日のいずれか遅い日

届出書の書き方と出し方は?

結論: 届出書と付表1に、決議の日、職務の執行を開始する日、役員ごとの支給時期と金額を書き、納税地の所轄税務署長へ出します。e-Taxか書面で出せます。

届出までの4つの手順

事前確定届出給与の手続きの流れ
1

時期と金額を決める
決算が悪くても払える額と、支給日を決める
2

株主総会等で決議する
議事録に、誰にいつ幾ら払うかを書く
3

期限内に届け出る
届出書と付表1を税務署へ出す
4

届出どおりに支給する
支給日と額面を、届出のとおりにする

届出書に書く内容

国税庁の記載要領に沿うと、書く項目は次のとおりです。

  • 決議をした日と決議をした機関:株主総会、取締役会などの名前を書きます
  • 職務の執行を開始する日:定時株主総会の日などを書きます
  • 定期同額給与にしない理由と、支給時期をその時期にした理由:どちらも具体的に書きます。従業員の賞与と同じ時期にそろえた、などの事情が材料です
  • 定めの内容の写し:議事録の写しなどを添えます

付表1には、役員ごとに、支給時期と支給額(円)を書きます。届出書は、定めごとに1通作り、対象になる役員全員の分をまとめます。期の途中で就任した役員の分を新たに定めたときは、別の届出書を作ります。

提出先と受付の時間

提出先は、納税地の所轄税務署長です。e-Taxで送信するか、書面の届出書1部を持参または送付します。税務署の総合窓口の受付時間は、令和8年10月1日から原則として午前9時から午後3時までです。

届出と違う支給をしたらどうなる?

結論: 届け出た支給額と実際の支給額が違うと、事前確定届出給与に当たりません。その支給額の全額が損金の額に算入できなくなります。多く払っても、少なく払っても同じです。

届出どおりの支給と、届出と違う支給
損金の額に算入できる
届出の支給日に支給した
届出の額面と同じ額を支給した
複数回の支給がすべて届出どおり
全額が算入できない
届出より少ない額を支給した
届出より多い額を支給した
複数回のうち1回でも届出と違う

差額ではなく支給額の全額が外れる

国税庁の質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定」の例では、12月と翌年6月に200万円ずつ支給すると届け出たあと、12月に100万円、6月に200万円を支給すると、支給額の全額(300万円)が損金の額に算入できません。差額の100万円だけが外れるのではありません。

複数回の支給は職務執行期間でまとめて判定する

役員給与は、定時株主総会から次の定時株主総会までの職務の対価と考えられます。複数回の支給は、原則として、その職務執行期間に係る当該事業年度と翌事業年度の支給のすべてが定めどおりかで判定します。年2回に分けると、満たす条件が増えます。

例外があります。当該事業年度の分を定めどおりに支給し、翌事業年度に定めどおりに支給しなかった場合は、翌事業年度に支給した額だけを損金の額に算入しない扱いでも差し支えないとされています。

役員ごとの判定

A役員にだけ届出と違う額を支給しても、届出どおりに支給した他の役員の給与は、損金の額に算入できます(国税庁の質疑応答事例)。

支給日が休日と重なったとき

届出の支給日が土曜日や日曜日、祝日で、実際の振込が前後の営業日になっても、それだけで否認されることはありません。届出の支給日に未払金を立て、遅滞なく支払った日に未払金を消せば足ります。

役員賞与の額と支給日の決め方は?

結論: 金額は、決算が悪くても払える額に置き、定款や総会で決めた限度額の枠に収めます。支給日は、従業員の賞与と同じ時期など、合理的な日に置きます。

不相当に高額な部分は外れる

届出どおりに支給しても、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入できません(法人税法34条2項)。月額の報酬と賞与を合わせた年間の額で見られ、基準は2つあります。

  • 実質基準:役員の職務の内容、会社の収益、使用人への給与の支給状況、同種で事業規模が似た法人の役員給与の支給状況などから見て、相当な額か
  • 形式基準:定款の定めや株主総会の決議で決めた限度額を超えていないか

形式基準は自社で確かめられます。総会で決めた総額の枠に、月額の報酬と賞与の合計が収まっているかを、届出の前に見ます。

支給日は合理的な時期に置く

職務執行期間の途中で支給する賞与でも、支給時期が合理的に定められていれば、事前確定届出給与として損金の額に算入できます。国税庁の質疑応答事例「職務執行期間の中途で支給した事前確定届出給与」は、従業員の盆暮れの賞与と同じ時期にし、毎期継続して同じ時期に支給しているような場合を挙げています。

届出を変えられるのはどんなとき?

結論: 届け出た内容を変えられるのは、臨時改定事由か業績悪化改定事由があるときだけです。業績悪化改定事由による変更は、減額に限られます。

変更が認められる2つの事由

臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情です。変更の届出は、その事由が生じた日から1か月を経過する日までに出します。

業績悪化改定事由とは、経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由です。一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは含まれません(タックスアンサーNo.5211)。国税庁の「役員給与に関するQ&A」は、該当する例として、取引銀行との借入金返済の見直しの協議で減額せざるを得ない場合や、減額を盛り込んだ経営改善計画を作った場合を挙げています。

変更の届出の期限は、変更を決議した日から1か月を経過する日です。ただし、変更前の届出に基づく支給日がその日より前にあるときは、その支給日の前日までに、変更届出書で出します。支給日に資金が足りないだけでは、どちらの事由にも当たりません。

役員賞与の社会保険料は?

結論: 役員賞与にも、健康保険と厚生年金保険の保険料がかかります。標準賞与額の上限は、健康保険が年度の累計で573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円です。

賞与の保険料と届出

日本年金機構によると、賞与の保険料は、税引き前の総支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が折半で負担します。賞与を支給したときは、支給日から5日以内に被保険者賞与支払届を出します。賞与として扱われるのは年3回以下の支給で、年4回以上のものは標準報酬月額の対象です。四半期ごとの支給は、年4回のため賞与になりません。

よくある質問

届出を出し忘れたら、役員賞与は出せませんか?
支給はできますが、損金の額に算入できません。届出がなかったことにやむを得ない事情があると認められる場合だけ、期限内に届け出たものとして扱う定めがあります(タックスアンサーNo.5211)。出し忘れを前提にした規定ではないため、決議と届出の日程を先に決めます。
決算が終わってから、利益を見て役員賞与を決めてもよいですか?
決算後に決める賞与は、事前の定めがないため、損金の額に算入できません。支給の前に時期と金額を決め、期限内に届け出ます。
同じ内容の賞与を毎年出す場合も、毎年届出が要りますか?
要ります。株主総会などで定めをするたびに届出が要る給与です。定時株主総会から次の定時株主総会までの職務執行期間ごとに、決議し、届け出ます。

まとめ:届け出たとおりに払える額で決めよう

  • 事前確定届出給与は、時期と金額を届け出て、そのとおりに支給する役員給与です
  • 届出の期限は、決議の日から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日です
  • 届出と違う額を支給すると、その支給額の全額が損金の額に算入できません
  • 変更できるのは、臨時改定事由と業績悪化改定事由があるときだけです

役員賞与の届出期限が近い方、届出と違う額を支給してしまった方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。株主総会の議事録、届出書の控え、賞与の支給予定表を確認し、期限と届出内容の一致、損金の額に算入できる範囲を整理します。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」・No.5205「役員のうち使用人兼務役員になれない人」
  • 国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」「C1-24 事前確定届出給与に関する変更届出」
  • 国税庁「事前確定届出給与に関する届出書の記載要領等」
  • 国税庁 質疑応答事例(定めどおりに支給されたかどうかの判定、職務執行期間の中途で支給した事前確定届出給与、届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い)
  • 国税庁「役員給与に関するQ&A」・法人税基本通達 9-2-26・法人税法34条
  • 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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