黄金株(拒否権付株式)とは|事業承継での使い方と4つのリスク

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

「息子に株は渡したいが、大事なことは自分が止められるようにしておきたい」。「顧問弁護士から黄金株という手があると言われました」――承継の相談で、代表の方から出てくる言葉です。

結論からお伝えすると、黄金株とは、株主総会や取締役会の決議に加えて、その株式を持つ株主だけの種類株主総会の決議がなければ効力が生じない、という定めのついた株式です。会社法第108条第1項第8号に定められた種類株式で、正式には拒否権付株式と呼びます。1株でも持っていれば重要事項を止められます。

税理士法人Light UPでは、黄金株を勧めることはあまりありません。承継を進める道具として理解できる一方で、事業承継税制が使えなくなるという決定的な副作用があるためです。株価が高い会社ほど、この損失は黄金株で得られる安心感を上回ります。

この記事では、黄金株の仕組みと発行の手続き、相続税評価の扱い、そして実務で本当に問題になる4つのリスクと、それを避ける設計を整理します。

黄金株とは何か

結論: 黄金株は、株主総会や取締役会で決議すべき事項について、その種類の株主だけで開く種類株主総会の決議も必要とする定めのついた株式です。俗称であり、法律上の呼び名は拒否権付株式です。

1株で決議を止められる。拒否できるだけで決められはしない

黄金株の持ち主は、賛成しないという形で決議の効力を止められます。持株比率とは関係がありません。1株しか持っていなくても、対象の事項については拒否できます。

議決権の多数決という原則を、特定の事項についてだけ外す仕組みだと考えてください。

黄金株は止める力であって、進める力ではありません。自分が望む議案を単独で通すことはできません。

ブレーキはあるがアクセルはない。この非対称さが、承継の途中段階に向くと言われる理由です。

もともとは、民営化された企業に対して政府が拒否権を残す仕組みを指す言葉でした。日本の中小企業では、先代が経営権を段階的に渡すときの安全装置として使われています。

会社法上の位置づけ【表】

結論: 黄金株は会社法第108条第1項第8号の種類株式で、同法第323条により、定款で定めた事項は種類株主総会の決議がなければ効力を生じません。

条文が定めていること

e-Gov法令検索の会社法第108条第1項第8号は、種類株式の内容として「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会……)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの」を挙げています。

同法第323条は、この定めがあるとき「株主総会、取締役会又は清算人会の決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない」としています。

他の種類株式との違いと、公開会社でも発行できること

黄金株は種類株式の一つです。会社法が認める類型のうち、拒否権付株式にあたります。他の種類株式と並べると、性格の違いがはっきりします。

種類株式 会社法の号 内容
配当優先株式 第1号 剰余金の配当について異なる定め
議決権制限株式 第3号 議決権を行使できる事項を制限
譲渡制限株式 第4号 譲渡に会社の承認が必要
取得条項付株式 第6号 一定の事由が生じたら会社が取得できる
拒否権付株式(黄金株) 第8号 種類株主総会の決議も必要とする
役員選任権付株式 第9号 種類株主総会で取締役・監査役を選任

第9号の役員選任権付株式は、指名委員会等設置会社と公開会社では発行できません。一方、第8号の拒否権付株式にその制限はありません。

とはいえ実務で使われるのは、株式に譲渡制限のある非公開会社がほとんどです。

拒否権が及ぶ範囲

結論: 拒否権の対象は定款で自由に決められます。役員の選任・解任、定款変更、合併や会社分割、重要な財産の処分など、承継で止めたい事項を選んで書きます。

拒否権が及ぶ範囲
01
よく設定される事項
取締役の選任と解任、定款変更、合併や事業譲渡
02
広げすぎると
日常の意思決定まで止まる
03
絞る目安
3つ程度に絞る
04
登記で見える
発行の内容は登記され、外から見える

よく設定される事項と、広げすぎると経営が止まること

代表取締役の選定と解職。取締役の選任と解任。定款の変更。合併・会社分割・株式交換。事業の全部または重要な一部の譲渡。募集株式の発行。

このあたりが定番です。会社の支配権と資産の流出に関わる決議が並びます。

対象を欲張ると、日常の意思決定にまで種類株主総会が必要になります。後継者が何も決められない状態になれば、承継そのものが進みません。

「重要事項は全部止められるようにしたい」というご要望をいただくことがありますが、範囲を絞るほうが結果として機能します。

行使は決議しないことで足りる

拒否権は、種類株主総会で反対の決議をする必要すらありません。決議をしなければ、その事項は効力を生じない状態のままです。

反対の意思を示すだけで、議案は通りません。積極的に何かを決める必要はありません。この受動的な性質が、黄金株の使いどころと限界の両方を作っています。止められても、前へ進める力はありません。

事業承継で使われる理由

結論: 黄金株は、後継者に普通株式の大半を移しながら、先代が重要事項の拒否権だけを残せるため、株式の移転と経営権の移譲の時期をずらせる点で使われます。

株を渡す不安を分解する。相続税の観点では先に渡したい

代表の方が株の移転をためらう理由は、たいてい2つです。会社を売られてしまわないか。役員構成を勝手に変えられないか。

黄金株はこの2つだけを止められます。株の大半を渡しながら、この不安に手当てできるという構図です。

自社株の評価額は、業績が伸びるほど上がります。後で渡すほど贈与税や相続税の負担が重くなるため、早く渡すほうが有利になる場面は多くあります。

早く渡したいが手放すのは怖い。この矛盾を埋める道具として説明されてきました。

ただし前提が変わっている

事業承継税制の特例措置が使えるようになってから、この位置づけは変わりました。次に述べるとおり、黄金株を持ったままでは税制が使えないためです。

事業承継税制が広く使われるようになったこと、そして種類株式そのものの副作用が知られてきたことです。かつて有効とされた設計が、いまも同じように働くとは限りません。導入の前に、代替手段と並べて見ることです。

事業承継・相続・M&Aは私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

発行の手続き

結論: 黄金株を発行するには、定款を変更して種類株式の内容を定め、登記を行います。定款変更には株主総会の特別決議が必要です。

発行の手続き
1

内容を決める
拒否権の対象になる事項を絞る
2

定款を変更する
株主総会の特別決議
3

発行または内容の変更を決議する
既存の株式を変える場合は、同意を取る範囲を確かめる
4

登記する
種類株式の内容が登記される

手順

  1. 定款変更の議案を作る:種類株式の内容、拒否権の対象事項、発行可能種類株式総数を定めます。
  2. 株主総会の特別決議を得る:議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります。
  3. 登記を申請する:種類株式の内容は登記事項です。変更から2週間以内に申請します。
  4. 株主名簿を整える:誰が何株の黄金株を持つかを記録します。

つまずきやすいのは2番目。登記で外から見える

株主が分散している会社では、特別決議の可決自体が難しいことがあります。先代と後継者だけで議決権の3分の2を持っていない場合、他の株主の理解を得る作業から始まります。

手順のなかで止まりやすいのは、同意を取る場面です。

種類株式の内容は登記されるため、取引先や金融機関が登記事項証明書を取れば分かります。黄金株の存在を隠しておくことはできません。

既存の株式を黄金株に変える場合

結論: すでに発行済みの普通株式の一部を黄金株に変えるには、定款変更に加えて、内容を変更する株式の株主の同意が必要になると考えられています。

新たに発行するか、変えるか。同意を取る範囲

新株として黄金株を1株発行する方法と、先代が持つ普通株式の1株を黄金株に変える方法があります。実務では後者が使われることが多くなります。

株式の内容を変更すると、他の株主の権利に影響します。変更する株式の株主本人の同意に加え、影響を受ける株主の同意まで求められるという整理が一般的です。

手続きに不確かさが残る部分なので、司法書士と設計を詰めることになります。

相続税評価の扱い

結論: 黄金株は、拒否権を持たない普通株式と同じ方法で評価されます。国税庁は、拒否権を考慮せずに評価するとしています。

国税庁が示している取扱いと、評価が下がる道具ではないこと

国税庁の文書回答事例「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」は「拒否権付株式(会社法第108条第1項第8号に掲げる株式)については、拒否権を考慮せずに評価する」としています。

拒否権という強い権利が付いているのに、評価は普通株式と変わりません。逆に言えば、黄金株にしたからといって評価が上がることもありません。

「黄金株にすれば株価対策になりますか」というご質問をいただくことがありますが、評価の面での損得は生じないというのが答えです。

無議決権株式とは扱いが違う

同じ文書回答事例では、配当優先の無議決権株式について、一定の条件を満たす場合に5パーセントを控除して評価し、その分を議決権のある株式に加算する調整計算を選べるとしています。

議決権のない株式には調整の余地があるのに、拒否権付株式にはない。ここは対照的です。

評価の場面での取扱いが分かれます。どちらも種類株式ですが、目的も結果も別です。

事業承継税制が使えなくなる

結論: 後継者以外の者が黄金株を保有していると、事業承継税制の認定を受けられません。先代が黄金株を持ち続ける設計は、この制度と両立しません。

事業承継税制が使えなくなる
黄金株を持ったままだと
→
事業承継税制
後継者以外が黄金株を持っていると、要件を満たさない
影響の大きさ
猶予されるはずだった税額が、そのまま納税になる
手放す順番
制度を使うなら、その前に黄金株を消しておく
消すにも手続き
定款変更と登記。時間がかかる

これが最大の副作用。数字で見るとどれくらいか

中小企業庁が示す法人版事業承継税制の認定要件では、後継者以外の者が拒否権付種類株式を保有していないことが求められます。

先代が黄金株を1株持っているだけで、後継者は納税猶予を受けられません。自社株の評価額が高い会社ほど、失うものが大きくなります。

自社株の相続税評価額が3億円で、相続税の実効的な負担が仮に4割程度だとすれば、猶予される税額は1億円を超える規模になります。黄金株を持ち続ける安心感と、この金額を比べることになります。

手放す順番の問題

黄金株を消せば税制は使えます。ただし、税制を使う時点で後継者に株が集中している必要があるため、先代が拒否権を持てる期間はそこで終わります。

段階的に渡す道具として使いながら、最後は自分で外す。この出口まで決めてから始めないと、税制を諦めるか黄金株を諦めるかの二択になります。

税制を使うなら、先に黄金株を整理します。

相続で第三者に渡るリスク

結論: 黄金株を持つ先代が亡くなると、その株式は相続財産として相続人に承継されます。後継者以外の相続人に渡れば、経営を止める権利が社外に出ることになります。

相続で第三者に渡るリスク
01
相続で渡る
黄金株も相続財産。想定外の人に渡ることがある
02
遺言だけでは足りない
遺留分の請求や、遺言の不備で崩れる
03
取得条項を付ける
定めた事由が生じたら会社が取得できる定めを置く
04
判断能力が落ちたとき
行使できる人がいなくなり、会社が動けなくなる

遺言だけでは足りない場面。取得条項を付けておく

遺言で後継者に相続させると書いても、遺留分の問題が残ります。他の相続人が権利を主張したときに、黄金株がどう扱われるかは事案によります。

会社法第108条第1項第6号の取得条項付株式と組み合わせ、先代が死亡したときや一定の年齢に達したときに会社が黄金株を取得できるようにしておく設計があります。

これを入れておかないと、拒否権が誰の手に渡るか分からない状態が残ります。

実務での順番

黄金株を作るなら、消し方を先に決める。この順番を外すと、承継のための道具が承継の障害になります。

先に取得条項を定めてから、黄金株を発行します。逆にすると、種類株主総会の同意が要る場面が増えます。定款の変更をまとめて行うほうが、手続きも登記も1回で済みます。作るときより、消すときのほうが手間がかかります。

判断能力が落ちたときに何が起きるか

結論: 黄金株の株主が認知症などで判断能力を失うと、種類株主総会の決議ができなくなり、対象事項の決議がすべて止まります。

会社が動けなくなる。高齢の株主に持たせる制度である以上

代表取締役の選定を拒否権の対象にしていた場合、株主本人が決議に参加できなければ、代表者を変えられません。緊急の合併や増資も止まります。

成年後見人が付いても、後見人が議決権を行使できるかどうかには実務上の議論があります。

黄金株を持つのは、たいてい高齢の先代です。この構造上、判断能力のリスクは常について回ります。

年齢を条件とする取得条項を入れておくのが、現実的な備えになります。

第三者承継の障害になる場面

結論: 会社を第三者に譲渡する場面では、黄金株の存在が買い手にとって重大な障害になります。株式を100パーセント取得しても、黄金株が残れば経営を完全には掌握できません。

買い手が引く理由。消すにも手続きが要る

買収監査で登記事項証明書を見れば、黄金株の存在はすぐ分かります。買い手は、拒否権が残ったままの会社を買いたがりません。

譲渡の交渉に入る前に、黄金株を消しておく作業が必要になります。

黄金株をなくすには、定款変更と登記が必要です。株主の同意も要ります。買い手が現れてから動くと、交渉のスピードに追いつきません。

承継先が決まっていない会社では

将来どの道を選ぶか分からない段階で黄金株を作ると、選択肢を狭めます。親族内承継が固まってから検討する順番が無難です。

誰に渡すかが決まっていない段階で黄金株を作ると、選択肢を狭めることになります。第三者への承継を選ぶ可能性が残っているなら、作らないほうが動きやすくなります。先に承継先を決めることです。道具はその後で選べます。

リスクを抑える設計【表】

結論: 黄金株を使うなら、拒否権の対象を絞り、取得条項を付け、消す時期をあらかじめ決めておく3点をセットで設計します。

リスクと、それぞれの備え
リスク
事業承継税制が使えない
相続で第三者に渡る
判断能力が落ちると会社が止まる
第三者承継の障害になる
備え
制度を使う前に消す
取得条項を付けておく
期限を決めて始める
対象事項を絞る

4つのリスクと備え、対象事項は3つ程度に絞る、期限を決めて始める

副作用が大きいぶん、設計で抑えられる部分もあります。リスクと備えを対にして見ておくと、導入するかどうかの判断がしやすくなります。

リスク 起きること 備え
事業承継税制が使えない 納税猶予を受けられない 税制を使う前に黄金株を消す時期を決める
相続で第三者に渡る 拒否権が社外へ出る 取得条項を付ける・遺言で承継先を定める
判断能力の低下 対象事項の決議が止まる 年齢や事由による取得条項を入れる
第三者承継の障害 買い手が引く 譲渡の検討前に消す段取りを組む

代表取締役の選定と解職、定款変更、会社の合併・分割・株式譲渡。この程度に絞れば、日常の経営は後継者が回せます。

3年後に消す、後継者が代表に就いて2年後に消す。時期を先に決めておけば、道具として使い切れます。

黄金株を使わない代替手段

結論: 拒否権を持たせずに承継の速度を調整する方法として、議決権の一部を残す、種類株式で議決権を制限する、持株会社を使う、といった選択肢があります。

同じ狙いを別の形で
黄金株を使わない代替手段
→
議決権の3分の1超を残す
特別決議を止められる。種類株式を作らずに済む
議決権制限株式を使う
後継者以外に、議決権のない株式を渡す
段階的に渡す
一度に全部渡さず、時間をかけて移す
迷ったら作らない
消すのにも手続きが要る。作る前に代替を検討する

議決権の3分の1超を残す、議決権制限株式を使う、種類株式を使わない道

特別決議を阻止するには、議決権の3分の1超があれば足ります。黄金株を作らずに、株式の3分の1超を先代が持ち続ける方法です。

株の移転が遅れるという難点はありますが、制度上の副作用はありません。

後継者以外の相続人には議決権のない株式を渡し、議決権は後継者に集中させる設計です。分散を防ぐ目的なら、こちらのほうが素直に働きます。

定款や株主間の取り決めで、重要事項に先代の同意を要する運用を決める方法もあります。法的な強制力は弱くなりますが、登記に残らず、税制にも影響しません。

導入を判断する順番

結論: 黄金株の検討は、事業承継税制を使うか、承継先が決まっているか、消す時期を決められるか、の3つをこの順で確認してから行います。

3つの問いと、検討する価値がある会社

  1. 事業承継税制を使う予定があるか:使うなら、黄金株は原則として選べません。ここで多くの会社が外れます。
  2. 承継先が決まっているか:第三者承継の可能性が残る会社では、後から消す手間が生じます。
  3. 消す時期を決められるか:出口を決められないなら、作らないほうが安全です。

株価がそれほど高くなく事業承継税制の必要性が薄い、親族内承継が固まっている、後継者の経験がまだ浅い。この3つが揃う会社では、選択肢に入ります。

迷ったら作らない

黄金株は、作るより消すほうが手間がかかります。迷っている段階では、議決権を一部残す方法から検討するのが現実的です。

作らなくても困らない会社のほうが多いのが実際です。議決権の3分の1超を残す、種類株式を使わない設計にする。代わりになる手段が用意されています。副作用の大きさを考えると、迷う段階では見送るほうが安全です。

よくある相談事例

承継の相談現場で実際に多い3つの場面を挙げます。特定の顧問先が分かる内容は含めていません。

息子への承継を進めたい製造業

「株は全部渡してよいが、会社を売られるのだけは避けたい」というのが相談の中身でした。自社株の評価額は高く、事業承継税制の適用を前提に設計を進めていた会社です。

黄金株を1株持つだけで税制が使えなくなることを数字で示したところ、方針が変わりました。最終的には、譲渡制限を確認したうえで議決権の3分の1超を数年間だけ残す形にしています。

承継先が固まっていない小売業

後継者候補が2人いて、まだ絞り込めていない状態でのご相談でした。将来的に第三者への譲渡も選択肢に残っています。

この段階で黄金株を作ると、どの道を選ぶにしても消す作業が発生します。承継先が固まるまで種類株式には手を付けず、まず自社株の評価と株主構成の整理から着手する順番にしました。

作る前に、承継先を決める段階に戻しています。

すでに黄金株がある会社

先代が10年前に黄金株を発行しており、いまは判断能力が落ちているという相談を受けたことがあります。代表取締役の選定が拒否権の対象に入っており、代表者を変えられない状態でした。

取得条項が付いていなかったため、解消の手続きに時間がかかっています。作るときに出口を決めておくことの重みが、最もはっきり出る場面です。

よくある質問

黄金株は何株あればよいのですか?
1株で足ります。拒否権は持株数に関係なく働くため、複数株を持つ意味は通常ありません。むしろ1株にしておくほうが、後で処理しやすくなります。
黄金株を持っていると株価は上がりますか?
上がりません。国税庁は拒否権を考慮せずに評価するとしており、普通株式と同じ方法で評価されます。
黄金株があると本当に事業承継税制が使えないのですか?
後継者以外の者が保有している場合は認定を受けられません。先代が持ち続ける設計は、この制度と両立しないことになります。実際の判定は個別の状況によるため、適用を検討する段階でご相談ください。
あとから普通株式に戻せますか?
戻せます。定款変更と登記が必要で、株主の同意も要ります。ただし手続きに時間がかかるため、消すタイミングを先に決めておくほうが安全です。
取引先に知られてしまいますか?
種類株式の内容は登記事項なので、登記事項証明書を取れば分かります。隠しておくことはできません。
黄金株の代わりになる方法はありますか?
議決権の3分の1超を先代が持ち続ける、議決権制限株式で後継者に議決権を集める、といった方法があります。制度上の副作用が少ないのは前者です。

まとめ

  • 黄金株は会社法第108条第1項第8号の拒否権付株式で、1株でも重要事項の決議を止められる
  • 拒否権の対象は定款で決める。役員の選解任・定款変更・合併あたりに絞るのが現実的
  • 相続税評価では拒否権を考慮せず、普通株式と同じ方法で評価される
  • 後継者以外が黄金株を持つと事業承継税制の認定を受けられない。これが最大の副作用
  • 作るなら、取得条項と消す時期をセットで決める。出口がないまま作ると承継の障害になる

書かなかったことを最後に一つ。黄金株を検討する会社の多くは、実は黄金株を必要としていません。株を渡すのが不安なのであれば、渡す量とタイミングを調整すれば足りることがほとんどです。制度を足す前に、株主構成をどう動かすかを先に描く。そのほうが、あとで解く手間が生まれません。

承継の設計で迷う場面があれば、税理士法人Light UPの無料相談からお気軽にご連絡ください。自社株の評価額と後継者の状況をうかがったうえで、税制を使う道と使わない道を並べて整理します。

事業承継・相続・M&Aは私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • e-Gov法令検索「会社法」第108条第1項第8号(拒否権付株式)・第323条(種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合)・第108条第1項第6号(取得条項付株式)
  • 国税庁 文書回答事例「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」(拒否権付株式は拒否権を考慮せずに評価する)
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」(認定要件・後継者以外の者が拒否権付種類株式を保有していないこと)

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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