税務調査の流れ|連絡から終了までの手順と期間
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
「電話が来てから、実際に来るまでどれくらいあるんでしょうか」。「終わるまでにどのくらいかかりますか」――日程の見通しが立たないことが、いちばんの不安になります。
税務調査は、事前通知の電話から始まり、日程調整、資料の準備、実地調査の当日、追加資料のやりとり、そして終了手続という順で進みます。中小企業の一般的な調査であれば、通知から2週間から3週間後に臨場、当日は1日から3日、終了までは全体で1か月から3か月というのが目安です。
税理士法人Light UPでは、通知の電話を受けた段階で、対象期間と対象税目を確認したうえで、当日までに何をどこまで揃えるかの逆算表を作ります。準備の総量が読めれば、日程の希望も出しやすくなるためです。
この記事では、各段階で何が行われ、事業者側は何をするのか、どこで日数が延びるのかを、国税通則法の定めに沿って順に整理します。
全体の流れと期間の目安
結論: 税務調査は、事前通知から終了まで6つの段階に分かれ、通知から実地調査までが2〜3週間、終了までは1〜3か月が一つの目安です。
6つの段階、長引くのは5、途中で止まる期間もある
| 段階 | 主に行われること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 事前通知 | 日時・場所・税目・期間の通知 | 電話1回 |
| 2. 日程調整 | 開始日と場所の確定 | 数日 |
| 3. 準備 | 帳簿・証憑・契約書の整理 | 1〜3週間 |
| 4. 実地調査 | 概況聴取と帳簿の確認 | 1〜3日 |
| 5. 追加確認 | 宿題の資料提出と質疑 | 2週間〜2か月 |
| 6. 終了手続 | 是認通知または調査結果の説明 | 数日〜数週間 |
当日の日数を心配される方が多いのですが、実際に日程が延びるのは、当日ではなく、そのあとの追加確認です。求められた資料がすぐ出ない、取引先に確認が必要になる、論点について見解が分かれる。この段階が長い調査は、数か月に及びます。
調査官は複数の案件を抱えています。こちらが資料を出したあと、返答まで2週間、3週間と空くこともあります。連絡がないから終わったのだろうと考えるのは早計で、多くの場合は順番待ちです。
事前通知で確認すること
結論: 事前通知の電話では、開始日時・場所・目的・税目・対象期間・対象となる帳簿書類・調査官の氏名を必ず控えます。
電話で伝えられる内容
国税通則法第74条の9第1項は、事前通知の内容として「調査を開始する日時」「調査を行う場所」「調査の目的」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」などを挙げています。
電話は突然かかってきます。手元にメモがない状態で聞くことになるので、折り返しにしてもらい、落ち着いて聞き直すほうが確実です。
対象税目で準備の量が変わる。顧問税理士がいる場合の連絡先
法人税だけなのか、消費税と源泉所得税も含むのか。ここで準備すべき資料の範囲が変わります。源泉所得税が入っていれば、給与台帳や扶養控除等申告書、報酬の支払調書まで対象になります。
税目のほかに、誰に連絡が行くかも確かめておきます。
税務代理権限証書を提出していれば、税理士へ通知が行われる場合があります。会社に電話が来たら、まず顧問税理士へ共有してください。
電話を受けた最初の10分ですること
結論: 通知の電話では、相手の所属と氏名、担当部門、折り返し先の番号を控え、その場で日程を確定させずに一度切るのが実務上は無難です。
相手を確認し、その場で日程を決めず、共有する範囲を決める
税務署の職員は、所属官署と氏名を名乗ります。施行令でも通知事項に含まれている項目です。聞き取れなければ、もう一度聞いて構いません。
税務署を名乗る不審な電話も報告されています。折り返しの番号は、名乗られた番号ではなく、公表されている税務署の代表番号にかけ直すほうが確実です。
電話口で候補日を提示されると、つい応じてしまいがちです。ですが、経理担当の予定、決算や申告の時期、資料の保管状況を確認しないまま返事をすると、後から動かしにくくなります。
一度預かって折り返す。この一手間で、準備期間が1週間伸びることがあります。
調査があることを全従業員に知らせる必要はありません。ただし、当日に資料を出す担当者、来客対応をする人には事前に伝えておきます。当日になって場所や資料の所在が分からない、という状態が最も時間を食います。
実地調査以外の接触との違い
結論: 税務署からの連絡には、実地調査のほかに、文書や電話で申告内容の確認を行う簡易な接触や、行政指導としてのお尋ね文書があります。
簡易な接触とは何か
国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」は、簡易な接触について「原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するもの」と説明しています。
同資料によれば、令和6事務年度の簡易な接触は68万9千件で、実地調査4万7千件の10倍以上でした。
行政指導と調査の違いと、来署依頼の扱い
お尋ね文書のように、行政指導として送られてくるものがあります。行政指導に応じて自主的に修正申告をした場合と、調査として行われた場合とでは、加算税の扱いが変わります。
届いた書面がどちらの性質のものかは、記載された文言で判断します。判断がつかない場合は、税理士に現物を見せてください。
税務署に来てほしいという連絡もあります。臨場を伴わないだけで、確認したい内容は同じです。何を持参するのかを必ず確認してから向かいます。
使われる言葉の整理
結論: 税務調査では、是認・修正申告・更正・決定・更正の請求という5つの言葉が使い分けられ、それぞれ手続と効果が違います。
5つの言葉の違い、修正申告と更正、更正の請求は残ること
調査の場では、似た言葉が並んで出てきます。修正申告と更正、是認と行政指導。どれも意味が違うため、混同したまま進めると判断を誤ります。
| 言葉 | 誰が行うか | 内容 |
|---|---|---|
| 是認 | 税務署 | 更正決定等をすべきと認められない旨の書面通知 |
| 修正申告 | 納税者 | 自ら申告内容を訂正して提出する |
| 更正 | 税務署 | 申告済みの内容を税務署が職権で訂正する |
| 決定 | 税務署 | 申告がない場合に税務署が税額を確定させる |
| 更正の請求 | 納税者 | 納めすぎていた場合に減額を求める |
修正申告は自分で出すもの、更正は税務署が行う処分です。修正申告に応じると、その内容について不服申立てはできなくなります。争う余地を残すなら、更正処分を受ける形になります。
修正申告をしたあとでも、更正の請求はできると条文に明記されています。あとから資料が出てきて、多く納めすぎていたと分かった場合の道が閉じるわけではありません。
日程調整で伝えてよいこと
結論: 通知された日時は、合理的な理由があれば変更を求めることができ、国税通則法は税務署長等が協議に努めるものと定めています。
条文にある協議の努力義務、認められやすい理由、場所も相談できる
e-Gov法令検索の国税通則法第74条の9第2項は、納税義務者から「合理的な理由を付して」日時または場所の変更を求められた場合、税務署長等は「当該事項について協議するよう努めるものとする」と定めています。
決算期や申告期限の直前、繁忙期、担当者や経営者の出張・入院、資料の保管場所が別にあり搬入に時間がかかる。こうした事情は、実務上ふつうに伝えられています。
一方で、理由を示さずに先送りを繰り返すのは別の話です。引き延ばしと受け取られると、その後の進行がかえって固くなります。
事務所が狭い、来客と動線が重なる、パート従業員に知られたくない。場所については、顧問税理士の事務所を使う形にすることもあります。
準備の段階でやること
結論: 準備では、対象期間の帳簿と証憑をそろえるだけでなく、数字が動いた理由を説明できる状態にしておくことが中心になります。
そろえる資料と、数字の説明を先に用意すること
- 総勘定元帳、決算書、申告書の控え
- 請求書・領収書・納品書(月別に整理)
- 預金通帳と借入関係の書類
- 契約書(賃貸借・外注・リース・保険)
- 給与台帳、源泉徴収簿、出勤簿
- 棚卸表、固定資産台帳
売上が伸びた年、粗利率が下がった年、外注費が増えた年。理由を一言で説明できるようにしておくと、当日の質疑が短くなります。
「なぜこの年だけ利益が落ちているんですか」と聞かれて、その場で考え込むより、先に整理しておくほうが誠実に見えます。
電子で保存しているものの扱いと、触ってはいけないこと
紙に出力し直す必要はありません。画面で確認できる状態にしておき、検索の仕方を分かる人が同席していれば足ります。
そろえる作業と並んで、やってはいけないこともあります。
通知を受けてから帳簿を作り直す、日付を書き換える、資料を処分する。これらは仮装隠蔽と評価される行為で、負担が跳ね上がります。準備とは、あるものを揃えることであって、作ることではありません。
実地調査の初日
結論: 初日は午前に事業概況の聞き取り、午後から帳簿と証憑の突合という進み方が一般的で、経営者の同席が求められるのは主に午前です。
午前の聞き取り、午後の確認作業、昼食は用意しなくてよい
会社の沿革、事業の内容、取引先の構成、受注から入金までの流れ、従業員の人数と業務分担、経営者の一日の動き方。数字ではなく事業の話です。
ここで語られた事業の姿と、帳簿の姿が合っているかを見るための時間だと考えてください。
総勘定元帳から気になる科目を追い、原始資料と突き合わせます。経営者がずっと横についている必要はありません。質問が出たときに答えられる人が近くにいれば足ります。
気を遣われる方が多い部分ですが、調査官は昼食や手土産を受け取れません。お茶を出す程度で十分です。
2日目以降と持ち帰り
結論: 2日目以降は、初日に出た疑問点の確認と、追加資料の依頼が中心になり、その場で完結しない項目は後日のやりとりに移ります。
依頼された資料はリストに、コピーの記録、催促しすぎない
口頭で次々に依頼されると、抜けが出ます。誰が・いつまでに・何を出すかを一覧にして共有しておくと、往復が減ります。
提出した書類は、控えを残し、何を渡したかを記録します。後から「あの資料はお渡ししました」と確認できる状態にしておくためです。
こちらから資料を出したあと、返答が2週間以上空くことは珍しくありません。進捗の確認は、税理士から適度な間隔で行います。
反面調査に移る場合
結論: 自社の資料だけで事実が確認できない場合、取引の相手方に確認する反面調査が行われることがあります。
行われやすい場面、事前に知らされるとは限らない、至らない場合
保存されていない書類がある、説明と記録が食い違う、外注費の実態が資料から読み取れない。こうした場面で相手方への確認に移ります。
反面調査は、対象となる相手方に対する調査です。自社に予告される決まりはありません。取引先から連絡が来て初めて知る、ということもあります。
「取引先に迷惑をかけたくない」というお声はよくいただきます。自社の資料で事実が確認できれば、相手方に確認する必要が生じない場合があります。資料を整えておく理由の一つです。
調査結果の説明を受ける
結論: 更正決定等をすべきと認められる場合、調査官は指摘の金額と理由を説明することが国税通則法で定められています。
理由も説明される。勧奨されたときの選択と、是認の書面通知
国税通則法第74条の11第2項は、調査官が納税義務者に対し「その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする」と定めています。
納得できない部分があれば、その場で聞き返して構いません。理由の説明は制度上の義務です。
同条第3項は、修正申告を勧奨する場合、申告書を提出すると「不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨」を説明し、書面を交付しなければならないとしています。
応じるか、更正処分を受けて争うか。ここは判断が分かれる場面なので、税理士と論点を整理してから決めることになります。
同条第1項により、更正決定等をすべきと認められない場合は、その旨が書面で通知されます。いわゆる是認通知です。
修正申告から納付まで
結論: 修正申告書を提出した場合、その税額は原則として提出した日が納期限となり、延滞税は法定納期限の翌日から計算されます。
納付は待ってもらえない。分割の相談と、延滞税
修正申告書を出したその日が納期限です。資金の手当てを含めて、提出のタイミングを考える必要があります。
一括で納められない場合、換価の猶予などの制度があります。申請には要件と書類があるため、納期限を過ぎる前に相談することになります。
国税庁「延滞税の割合」によれば、令和8年1月1日から令和8年12月31日までは、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8パーセント、それ以降が年9.1パーセントです。
終わったあとに再び来ることはあるか
結論: 国税通則法は、調査終了後でも新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは質問検査等ができると定めています。
条文の定め、次の調査までの間隔、指摘された論点は継続して見られる
同法第74条の11第5項は、是認の通知や修正申告のあと、あるいは更正決定等のあとでも、「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」は質問検査等を行うことができるとしています。
前回の調査で指摘が多かった会社は、間隔が短くなる傾向があります。逆に是認で終わった会社は、間隔が空きやすくなります。
同じ論点が翌期以降どう処理されているかは、次の機会に確認されます。指摘を受けた項目は、運用そのものを変えておくことになります。
日数が延びる4つの原因
結論: 調査が長引く原因は、資料が出てこないこと、説明が変わること、反面調査に移ること、見解の相違が残ることの4つに集約されます。
資料が出てこない/説明が途中で変わる
保存場所が分からない、担当者が退職している、電子データが開けない。探す時間そのものが日数になります。
資料の遅れと並んで多いのが、説明の揺れです。一度言ったことが後から変わると、確認の範囲が広がります。
最初の説明と後の説明が食い違うと、確認の範囲が広がります。分からないことは、分からないと答えるほうが早く進みます。
反面調査に移る/見解の相違が残る
取引先への確認が始まると、相手方の都合に日程が左右されます。こちらが急いでも短くできない部分です。自社の資料で事実が確認できれば、この段階に進まない場合があります。
外注費と給与の区分、交際費と会議費の区分、期ずれの判定。事実は同じでも評価が分かれる論点は、資料での説明が必要になります。
主張を書面で整理して提出すると、論点が絞られて進みが早くなることがあります。口頭のやりとりだけで往復すると、同じ説明を繰り返すことになりがちです。
規模によって進み方が変わるところ
結論: 一人社長の会社と従業員20名規模の会社では、当日の日数よりも、資料の所在と担当者の分業で進み方に差が出ます。
一人社長の場合、従業員20名前後の場合、拠点が複数ある場合
資料も記憶も一箇所に集まっているため、聞き取りは早く終わります。その反面、経営者本人が丸1日拘束されるので、業務を止める段取りが要ります。
役員報酬、社宅、車両、貸付金といった、会社と個人の境目にある論点が中心になりやすい傾向もあります。
経理担当が資料を出し、経営者は概況の聞き取りだけ同席する形が取りやすくなります。ただし、担当者しか分からない処理があると、そこで確認が止まります。
処理の理由を担当者の頭の中だけに置かない。日常の運用が、そのまま当日の速度になります。
資料が拠点に分散していると、搬入と確認に日数がかかります。事前通知の段階で、どの拠点の資料が必要かを確認しておくと、当日の待ち時間が減ります。
よくある相談事例|進み方が分かれた3つの場面
通知の翌週に臨場となった小売業、往復が2か月続いた建設業、是認で終わった製造業
繁忙期と重なっていましたが、理由を伝えて2週間後に変更してもらいました。その間に月別のファイリングを済ませ、当日は1日で確認が終わっています。
現場ごとの請負関係を示す資料が散在しており、出すたびに追加の依頼が来る状態でした。途中で一覧表を作り、まとめて提出する形に切り替えたところ、往復が収束しました。
月次で帳簿を締め、証憑も月別に整理されていた会社です。当日の確認は1日で終わり、追加の依頼も2件だけでした。指摘なしの書面通知を受けています。
よくある質問
通知から当日まで、どのくらい期間がありますか?
調査は何日くらいで終わりますか?
経営者はずっと同席していないといけませんか?
途中で連絡が途絶えたのですが、終わったということですか?
修正申告をしたらすぐ納付ですか?
まとめ:見通しが立てば、準備の順番が決まる
税務調査は、事前通知、日程調整、準備、実地調査、追加確認、終了手続という順で進みます。通知から臨場までが2〜3週間、当日が1〜3日、全体では1〜3か月というのが一つの目安です。
日数が延びるのは当日ではなく、そのあとの追加確認の段階です。資料が出てこない、説明が変わる、反面調査に移る、見解の相違が残る。この4つが主な原因になります。
準備で最も差がつくのは、資料の量ではなく、数字が動いた理由を先に言葉にしてあるかどうかです。理由が用意されていれば、質疑は短く済みます。
日程の変更を求められること、修正申告に応じるかどうかを選べること、指摘なしなら書面で通知されること。いずれも法律に定めがあります。知らずに身構える必要はありません。
調査の連絡を受けて、何から手を付けるか決めかねている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。通知の内容から逆算して、当日までにやることを一覧にします。
出典
- e-Gov法令検索「国税通則法」第74条の9・第74条の11
- 国税庁「延滞税の割合」(令和8年1月1日から令和8年12月31日までの割合)
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月)





