法人税とは|会社が納める税金の全体像

「法人税は利益の3割くらい、という理解で合っていますか」。「赤字なら何も払わなくていいんですよね」――設立して間もない会社の方から、この2つは特によくいただくご質問です。

結論からお伝えすると、法人税とは、会社が1年間に稼いだ所得に対してかかる国税です。ただし会社が納めるのは法人税だけではありません。法人住民税・法人事業税・特別法人事業税が同時に動き、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税も加わります。赤字でも法人住民税の均等割は毎年発生します。

税理士法人Light UPでは、法人税を理解する順番は税率ではなく税目の並びからだと考えています。決算書の利益に何%を掛ければ税額が出る、という単純な構造ではないためです。利益と所得は別物で、税目ごとに計算の土台が変わります。

この記事では、法人税の位置づけと課税所得の作り方、税率の区分、住民税と事業税を含めた全体の負担感、申告と納付の期限、そして個人事業主の所得税との違いまでを、実際に中小企業の申告を代行している立場から整理します。

法人税は会社の所得に対してかかる国税

結論: 法人税とは、法人が事業年度ごとに得た所得に対して課される国税です。個人の所得税に相当するもので、株式会社・合同会社などの普通法人が主な納税義務者になります。

対象になるのは利益ではなく所得

決算書の当期純利益と、法人税の課税所得は一致しません。会計上の収益・費用と、税法上の益金・損金の範囲が違うためです。会計は会社の経営成績を株主や銀行に伝えるために作られ、税務の所得は税金を公平に計算するために作られます。目的が違えば、同じ支出でも扱いが変わります。

たとえば交際費の一部や、支払った法人税そのものは、会計では費用でも税法では損金になりません。逆に、会計では収益に立っている受取配当金の一部は、税法では益金に数えません。この差を調整して所得を出す作業を、実務では申告調整と呼びます。決算書を作り終えてからが、法人税の計算の始まりだとお考えください。

事業年度ごとに区切って計算する

個人の所得税が1月1日から12月31日で区切られるのに対し、法人は自分で決めた事業年度で区切ります。3月決算が多いのは慣習で、法律上の制約ではありません。定款で定めれば、9月決算でも12月決算でも構いません。設立の時期に合わせて選べる、法人ならではの自由度です。

決算月を変えると、税額の出方も資金繰りも変わります。繁忙期の直後を決算にすると在庫や売掛金が膨らんだ状態で締めることになり、逆に閑散期を決算にすると数字が落ち着いた状態で申告できます。納付の時期も決算月の2か月後に固定されるため、資金の谷とぶつからない月を選ぶという考え方もあります。

納税義務者の区分

普通法人(株式会社・合同会社など)のほか、協同組合等・公益法人等・人格のない社団等が区分されています。区分によって適用される税率が変わるため、計算に入る前に自社がどこに入るかを確認します。中小企業の多くは、資本金1億円以下の普通法人という区分に入ります。合同会社も株式会社と同じ普通法人で、税率に違いはありません。

一般社団法人や一般財団法人は、非営利型に該当するかどうかで課税の範囲が変わります。非営利型であれば収益事業から生じた所得だけが課税対象になり、それ以外は課税されません。設立時にどちらの形を選んだかで、毎期の申告の重さが変わってきます。途中で非営利型の要件を外れると、その期から全所得が課税対象になる点にも注意が要ります。

法人税は自分で計算して申告する

税務署から納付書が届く仕組みではありません。会社が自ら所得と税額を計算し、申告書を提出して納めます。固定資産税や自動車税のように、行政が税額を計算して通知してくれる税金とは組み立てが違うのです。この方式を申告納税制度と呼びます。

計算を誤れば修正申告や更正の対象になり、加算税と延滞税が伴います。法人税は請求書が来ない税金だと考えておくと、申告の位置づけが分かりやすいでしょう。誰も催促してくれないかわりに、期限を過ぎたことも自分では気づきにくい。ここが、設立初年度の会社がいちばん戸惑うところです。

決算書の利益と、税務の課税所得はどこがずれるか
会計上の当期純利益
会社の経営成績を示す数字
交際費も役員賞与も費用として引かれている
受取配当金は全額が収益
株主・銀行・取引先に見せる数字
税務上の課税所得
税額を計算するための数字
交際費や役員給与は損金にならない部分がある
受取配当金は一部が益金にならない
別表四で調整して作り直す数字

会社が納める税金は法人税を含めて5つある

結論: 会社の利益に連動して発生する税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税の4つで、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税が加わります。納め先も計算方法もそれぞれ異なります。

税目の一覧と、それぞれの土台

法人税だけを見て納税資金を用意すると足りなくなります。実際には法人税額の1.6倍前後が出ていくためです。土台が「課税所得」のものと「法人税額」のものがあり、後者は法人税が決まった瞬間に自動的に決まります。

税目 納め先 課税の土台 赤字のときの扱い
法人税 国(税務署) 課税所得 発生しない
地方法人税 国(税務署) 法人税額 発生しない
法人住民税(法人税割) 都道府県・市町村 法人税額 発生しない
法人住民税(均等割) 都道府県・市町村 資本金等の額・従業者数 赤字でも発生する
法人事業税・特別法人事業税 都道府県 所得(外形標準課税の対象法人は別) 所得割は発生しない
防衛特別法人税 国(税務署) 法人税額から年500万円を控除した額 発生しない

この表で唯一性格が違うのが均等割です。所得がいくらであろうと、会社が存在している限り課されます。逆に言えば、均等割以外はすべて所得か法人税額に連動するので、法人税額が決まった時点で総額の見当がつきます。目安としては法人税額の1.6倍前後です。

提出先は最低3か所で、期限は同じ日に重なる

税務署へ提出する法人税の申告書のほかに、都道府県と市町村へそれぞれ地方税の申告書を出します。本店だけの会社でも、提出先は最低3か所です。支店や営業所を別の市町村に置くと、その分だけ提出先が増え、従業者数で税額を按分する作業も加わります。拠点を増やす前に、この事務の増え方は見込んでおきたいところです。

納付の期限はいずれも原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月決算なら5月末日。同じ日に複数の納付が重なるため、資金の準備はまとめて考える必要があります。ここに消費税の納付も並ぶので、決算月の翌々月は1年でいちばん資金が薄くなる月になります。

税金の一部は損金にならない

法人税・地方法人税・法人住民税は、支払っても損金になりません。税金を払ったのに、その分だけ翌期の所得が減るわけではないということです。一方で法人事業税と特別法人事業税は、原則として納付した事業年度の損金に算入されます。同じ税金でありながら、扱いが真っ二つに分かれるわけです。

この違いが、後述する実効税率の計算に影響します。事業税が損金になるぶん、税金を全部足した割合よりも実質の負担率は少し下がる。実効税率という考え方が必要になるのは、この非対称があるためです。罰金・過料・延滞税・加算税も損金になりませんが、こちらは制裁の意味があるので性質が異なります。

課税所得は決算の利益に調整を加えて求める

結論: 法人税の課税所得は、会計上の当期純利益に益金算入・益金不算入・損金算入・損金不算入の4種類の調整を加えて計算します。利益がそのまま課税所得になるわけではありません。

4つの調整の意味

調整には次の4種類があります。

  • 益金算入:会計では収益でないが、税法では益金になるもの
  • 益金不算入:会計では収益だが、税法では益金にならないもの(受取配当等の一部など)
  • 損金算入:会計では費用でないが、税法では損金になるもの
  • 損金不算入:会計では費用だが、税法では損金にならないもの

実務で頻繁に出るのは損金不算入です。加算側の項目は数が多く、減算側は限られています。この非対称があるため、多くの会社では課税所得が当期純利益を上回ります。「利益が思ったほど出ていないのに税額が大きい」という感覚は、ここから生まれます。

損金にならない主なもの

法人税・法人住民税、罰金や科料、交際費のうち一定額を超える部分、役員給与のうち定期同額給与などに該当しない部分、そして減価償却の限度超過額です。いずれも会計では費用として計上されているため、決算書を見ているだけでは気づけません。

「経費で落としたのに税金が減らなかった」という状態は、たいていこの損金不算入が理由になっています。支出そのものは会社から出ていっているのに、税務上は無かったことになる。そのため、期中に大きな支出を決めるときは、それが損金になるかどうかを先に確認しておく必要があります。

交際費は800万円までが枠

資本金1億円以下の法人は、年800万円までの交際費等を損金に算入できます。あるいは接待飲食費の50%を選ぶこともでき、どちらか有利なほうを選択します。年800万円という枠は事業年度が1年に満たない場合に月数按分されるため、設立初年度や決算期を変更した期では枠が小さくなります。6か月の期であれば400万円です。

なお、1人あたり1万円以下の飲食費は、一定の書類を保存していれば交際費等から除かれます。この基準は令和6年4月1日以後の支出について5,000円から1万円へ引き上げられました。枠を消費せずに済む支出なので、参加者と人数の記録を残す習慣があるかどうかで、決算時に使える枠が変わってきます。

役員給与は形が決まっている

役員に払う給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに当てはまらないと損金になりません。期の途中で自由に増減できない点が、従業員の給与と大きく違います。定期同額給与であれば、原則として事業年度開始の日から3か月以内に改定を済ませ、その後は同額を払い続けることになります。金額を変えられるのは、年に一度この時期だけです。

役員報酬は、期首に一度だけ開く扉のようなものだと考えてください。閉まってからは動かせません。業績が想定より伸びたので期の途中で増やす、という判断はできず、増やした部分は損金になりません。だからこそ、期首の時点で1年分の着地を見込んで決める作業が要ります。

別表で調整を積み上げる

これらの調整は、申告書の別表四という様式で積み上げます。当期純利益から出発し、加算・減算を並べて所得金額にたどり着く構造です。決算書と申告書がつながっているのは、この別表四の1行目だけになります。

申告書を見て迷ったときの見どころは、別表四の一番上(当期利益)と一番下(所得金額)です。その差額が調整の合計になります。差が大きいほど、会計と税務のずれが大きい会社ということになります。前期の申告書と並べると、毎期繰り返し出てくる調整項目も見えてきます。

当期利益から納める額が決まるまで
1

決算を締める
棚卸・減価償却・未払計上を終えて当期純利益を確定させる。ここが出発点になる
2

加算・減算で課税所得を出す
別表四で損金不算入と益金不算入を積み上げる。作業の8割はここに集中する
3

税率を掛けて法人税額を出す
中小法人は年800万円以下が15%、超える部分が23.2%
4

税額控除を差し引く
所得税額控除や中小企業向けの投資減税を引いて、納める法人税額が確定する
5

地方税を上乗せする
地方法人税・住民税・事業税が連動する。総額は法人税額の1.6倍前後になる

中小法人の法人税率は15%と23.2%に分かれる

結論: 資本金1億円以下の普通法人は、年800万円以下の所得の部分に15%、800万円を超える部分に23.2%の法人税率が適用されます。資本金1億円を超える法人は、所得の全額に23.2%です。

税率の区分

国税庁のタックスアンサーNo.5759「法人税の税率」に示された区分を、中小企業に関係する部分だけ整理すると次のようになります。

法人の区分 年800万円以下の部分 年800万円超の部分
資本金1億円以下の普通法人 15% 23.2%
同上のうち適用除外事業者 19% 23.2%
同上で所得が年10億円超の事業年度 17% 23.2%
上記以外の普通法人 23.2% 23.2%

15%と23.2%の差は8.2ポイントあります。所得が800万円を挟むかどうかで、実質的な負担率が目に見えて変わるということです。年800万円という枠は事業年度が1年に満たない場合に月数按分されるため、設立初年度が6か月であれば枠は400万円になります。

軽減税率が使えなくなる3つの場合

資本金1億円以下であれば必ず15%が使えるわけではありません。対象から外れるのは、次の3つの場合です。ひとつめは適用除外事業者で、国税庁の同タックスアンサーの注記では「その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等」とされています。

ふたつめは所得の規模による区分で、同注記7には「令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります」と示されています。みっつめは資本関係で、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある子会社は対象から除かれます。

つまり中小企業向けの15%という数字は、いまや無条件ではありません。資本金・所得・親会社の3つで判定するという理解が要ります。グループ会社として設立した子会社や、持株会社を作った会社では、資本金が小さくても対象外になることがあるので注意が必要です。

地方法人税が上乗せされる

法人税額に対して10.3%の地方法人税がかかります。国税として税務署に納め、その後に国から地方へ配分される仕組みです。税率表に出てこないため見落としやすいのですが、法人税の申告書のなかで一緒に計算し、同時に納付します。

法人税額が182万円であれば、地方法人税は約18万8,000円。金額としては小さく見えますが、これが法人住民税・法人事業税と積み重なって最終的な負担になります。税率を調べるときに法人税の23.2%だけを見て資金計画を立てると、この上乗せ分がまるごと抜け落ちます。

どの法人税率が適用されるか
課税所得が確定した。年800万円以下の部分にどの税率が適用されるか
資本金1億円超
全額に23.2%。軽減税率の対象にならない
資本金1億円以下の通常の中小法人
年800万円以下は15%、超える部分は23.2%
前3期の所得の年平均が15億円超
適用除外事業者。年800万円以下も19%になる
所得が年10億円超の事業年度
令和7年4月1日以後開始の期から、年800万円以下の部分は17%
資本金5億円以上の法人の完全子会社
軽減税率の対象外。全額に23.2%
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法人住民税は均等割と法人税割で構成される

結論: 法人住民税は、資本金等の額などに応じて定額でかかる均等割と、法人税額に比例する法人税割の2つで構成されます。均等割は赤字でも毎年発生します。

均等割の標準税率は資本金等で決まる

e-Gov 法令検索で確認できる地方税法第52条は、「法人の均等割の標準税率は、次の表の上欄に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める額とする」としたうえで、資本金等の額が1,000万円以下の法人を年額2万円、1,000万円超1億円以下を年額5万円と定めています。

市町村民税については、同法第312条が資本金等の額と従業者数の組み合わせで区分しており、資本金等1,000万円以下かつ従業者数50人以下の法人は年額5万円です。都道府県と市町村の両方に納めるため、実際の負担はこの2つを足した金額になります。従業者数は事務所ごとに数えるため、支店を出すと市町村民税の均等割がその分だけ増えます。

資本金1,000万円以下なら年7万円が目安

資本金等の額 従業者数 道府県民税 市町村民税 合計
1,000万円以下 50人以下 2万円 5万円 7万円
1,000万円以下 50人超 2万円 12万円 14万円
1,000万円超1億円以下 50人以下 5万円 13万円 18万円
1,000万円超1億円以下 50人超 5万円 15万円 20万円

いずれも地方税法が定める標準税率で、自治体によってはこれを超える税率を条例で定めている場合があります。実際の金額は本店所在地の自治体のサイトで確認するのが確実です。

表を見ると分かるとおり、資本金1,000万円と従業者50人の2か所で段が上がる設計になっています。1,000万円以下で50人以下なら年7万円ですが、資本金が1円でも超えると18万円へ跳ねます。従業者数は事業年度の途中で増減しますが、判定に使うのは事業年度終了の日の現況です。パート・アルバイトの数え方も自治体によって扱いが分かれるため、境目に近い会社は事前に確認しておくと安心でしょう。

赤字でも均等割は消えない

所得がゼロでも、休眠状態でなければ均等割は課されます。「1年間まったく売上がなかったのに納付書が来ました」というご相談は、設立してすぐの会社から毎年いただきます。法人税は所得に対する税金なので赤字ならゼロですが、均等割は会社が存在していることに対する負担だからです。

会社を維持するだけで年7万円前後がかかる。これが法人と個人事業のいちばん分かりやすい違いでしょう。事業を休んでいる期間も同じで、休眠の届出を出して自治体が認めた場合を除き、均等割は毎期発生します。使っていない法人を残しておくと、この費用だけが積み上がっていきます。

資本金1,000万円は2つの意味を持つ

資本金を1,000万円ちょうどにすると、均等割の区分は1,000万円以下のままです。1円でも超えると次の区分に上がり、道府県民税が2万円から5万円、市町村民税が5万円から13万円へと動きます。年間で11万円の差になるため、設立時の資本金は意識して決める会社が多くなっています。

消費税の免税判定でも1,000万円という数字が出てきます。設立時の資本金が1,000万円以上だと、第1期から課税事業者になるためです。同じ数字が2つの税目で境目として使われているので、資本金を決めるときは両方を並べて考えることになります。

法人税割は法人税額に比例する

法人税割は、法人税額を課税標準として計算します。標準税率は道府県民税1.0%、市町村民税6.0%で、合わせて7.0%です。法人税額が確定すれば自動的に決まる部分なので、独自に計算する要素はほとんどありません。

法人税がゼロなら法人税割もゼロになります。赤字の年に納めるのは均等割だけ、という構造です。逆に黒字の年は、法人税額の7.0%が上乗せされることになります。複数の自治体に事務所がある場合は、従業者数で按分して各自治体に申告します。

均等割が発生する場面・しない場面
01
赤字の期
発生する。所得ではなく会社が存在していることに対する負担のため
02
売上がまったくない期
発生する。設立直後や事業を休んでいる期間も同じ扱いになる
03
休眠の届出を出して認められた場合
免除される自治体がある。自治体ごとに扱いが違うので確認が要る
04
事業年度が1年未満の期
月数按分される。設立初年度や決算期を変更した期は金額が下がる

法人事業税と特別法人事業税は所得に応じてかかる

結論: 法人事業税は都道府県に納める税金で、資本金1億円以下の法人は所得を課税標準とする所得割のみが課されます。あわせて、法人事業税額を基礎とする特別法人事業税が国税として課されます。

所得割の税率は段階的

資本金1億円以下の普通法人の場合、所得のうち年400万円以下の部分・400万円超800万円以下の部分・800万円超の部分で税率が分かれます。標準税率は3.5%・5.3%・7.0%です。法人税が2段階なのに対し、事業税は3段階になっている点が違います。

自治体によって超過税率が設定されている場合があります。東京都のように標準税率を上回る税率を条例で定めている自治体があるため、本店の所在地によって実際の負担は変わります。また、3以上の都道府県に事務所を置く資本金1,000万円以上の法人は、税率の区分が適用されず一律の税率になる点も押さえておく必要があります。

外形標準課税は資本金1億円超が対象

資本金1億円を超える法人は、所得だけでなく付加価値額と資本金等の額にも課税されます。これが外形標準課税で、赤字でも税額が生じる仕組みです。付加価値額には報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料が含まれるため、人件費が多い会社ほど負担が重くなります。

中小企業には原則として関係がありませんが、増資で資本金1億円を超えると対象に入ります。増資の際に見落とされやすい点で、資金調達のために増資したところ翌期から外形標準課税の対象になり、赤字でも数百万円の事業税が生じるという事態が起こり得ます。資本金を増やす前に、この影響は必ず試算しておきたいところです。

特別法人事業税は事業税に上乗せされ、翌期の損金になる

特別法人事業税は、法人事業税の所得割額に一定の税率を掛けて計算する国税です。外形標準課税の対象とならない普通法人であれば、所得割額の37%が目安になります。名前は国税ですが、申告と納付は法人事業税とあわせて都道府県に行うため、手続き上は地方税と同じ窓口で完結します。

法人事業税と特別法人事業税は、原則として納付した事業年度の損金に算入されます。当期に確定した事業税は、翌期に損金として落ちる形です。このタイムラグがあるため、決算書の税引後利益と実際の税負担の感覚がずれます。前期が大きく黒字だった会社は、翌期の所得がその分だけ抑えられることになります。

実効税率で見ると中小企業でおおむね3割前後

結論: 法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税を合わせた実効税率は、中小企業でおおむね25〜34%の範囲に収まります。所得の規模と自治体の税率によって幅が出ます。

単純に利益へ掛け算はできない

実効税率は、事業税が損金になることを織り込んで計算される概念です。決算書の利益にそのまま掛けても、実際の納税額とは一致しません。課税所得と会計上の利益が違う以上、ここは避けられないずれになります。

実効税率は物差しであって、請求書ではないと考えてください。使いどころは、設備投資や採用の判断で「税引後にいくら残るか」を概算するときです。所得が800万円を挟むかどうかで水準が変わるため、着地見込みが境目の近くにある年は、上下どちらのケースでも試算しておくと判断を誤りません。

資金繰りは納付月で見る

税額の見込みより、いつ出ていくかのほうが経営には影響します。決算日から2か月後に4つの税目がまとめて出ていくため、決算月の翌々月は資金が薄くなります。ここに消費税の納付が重なると、月商の何割かがまとめて消える月になります。

中間申告がある会社は、その半年後にもう一度山が来ます。年に2回、大きな支出の月があるという前提で資金を組む必要があるわけです。私たちは、四半期ごとに概算の所得を出して必要な納税額を先に別口座へ寄せておく運用をお勧めしています。決算月に資金を探し回る状況からは、これで抜けられます。

表面税率と実効税率はどう違うか
表面税率
法定の税率をそのまま足したもの
法人税23.2%+地方法人税+住民税+事業税
事業税が損金になることを織り込まない
制度の説明に使う数字
実効税率
事業税が翌期の損金になる効果を織り込んだ率
中小企業でおおむね25〜34%
所得800万円を境に水準が変わる
税引後にいくら残るかを概算する数字

防衛特別法人税が令和8年4月から加わる

結論: 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が課されます。法人税額から年500万円を控除した金額に4%を乗じて計算するため、法人税額が500万円以下の会社では税額が生じません。

計算の仕組み

課税標準は、その事業年度の基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額です。ここに4%を掛けます。基礎控除額は事業年度が1年に満たない場合に月数按分されるため、設立初年度や決算期変更の期では枠が小さくなります。

法人税額が500万円ということは、中小法人の税率で逆算すると所得がおよそ2,300万円前後の水準です。多くの中小企業では税額が生じません。ただし、所得が伸びて基礎控除額を超えると、超えた部分に対して負担が発生します。中期の利益計画を作っている会社では、この境目を織り込んでおく価値があります。

税額がゼロでも申告は要る

対象となる事業年度については、税額が生じない場合でも申告が必要です。決算業務としては1つ増えることになります。法人税の申告書に別表が加わる形なので、作業量そのものは大きくありませんが、忘れると無申告の状態になります。

初年度は失念が起こりやすいため、決算のチェックリストに加えておくのが安全でしょう。会計事務所に依頼している会社であれば自動的に対応されますが、自社で申告している会社は、使っている申告ソフトが対応しているかを事前に確認しておく必要があります。

適用開始の時期を間違えない

適用されるのは令和8年4月1日以後に開始する事業年度です。3月決算法人であれば令和8年4月1日から始まる期、12月決算法人であれば令和9年1月から始まる期が最初になります。「令和8年4月から」と聞いて、その月をまたぐ期から対象になると誤解しやすいところです。

決算日によって初年度がずれる点に注意が要ります。判断の基準は事業年度の開始日であって、終了日でも暦年でもありません。9月決算の会社なら令和8年10月1日開始の期が最初になり、実際に申告するのは令和9年11月末になります。

申告と納付の期限は事業年度終了から2か月以内

結論: 法人税の確定申告書は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、同じ期限までに納付します。定款の定めなどにより申告期限を1か月延長する特例もあります。

3月決算なら5月末日

事業年度終了の日の翌日から2か月以内が期限です。3月31日決算なら5月31日、12月31日決算なら翌年2月末日になります。期限が土日祝日にあたる場合は、翌開庁日が期限です。

この2か月のあいだに、決算を締め、申告書を作り、納税資金を用意することになります。3月決算の会社が集中しているため、4月から5月は税理士事務所も最も忙しい時期になります。資料の提出が遅れると申告書の作成も後ろにずれるので、決算月の翌月中には資料を揃えておきたいところです。

申告期限の延長には手続きが要る

定款で株主総会の開催時期を定めているなどの理由があれば、申告期限を1か月延長できます。「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を、適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出します。一度提出すれば、その後の事業年度についても継続して適用されます。

ただし延長されるのは申告期限だけで、納付は本来の期限までに行う必要があります。遅れた分には利子税がかかります。実務では、本来の期限までに見込額を納付しておき、確定した税額との差額を後から精算する形をとります。延長したから納付も待てる、という理解は誤りです。

中間申告が必要になる場合

前事業年度の法人税額が20万円を超える会社は、事業年度開始の日から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告を行います。前期の実績を基礎とする方法と、仮決算による方法のいずれかを選べます。3月決算なら11月末日が期限です。

上半期の業績が前期より大幅に落ちている場合は、仮決算を選ぶことで納付額を抑えられる場合があります。ただし仮決算では決算と同等の作業が必要になるため、手間との兼ね合いで判断します。中間申告書を提出しなくても、前期実績による申告があったものとみなされ、納付義務は残ります。

電子申告と、期限を過ぎたときの扱い

資本金1億円超の法人には電子申告が義務づけられています。中小企業に義務はありませんが、e-TaxとeLTAXでの提出が実務の標準になりました。控えの管理が楽になり、提出の記録も残るため、義務のない会社でも切り替える価値があります。

期限後申告になると、無申告加算税と延滞税の対象になります。2期連続で期限内申告をしないと、青色申告の承認が取り消される取扱いもあります。青色申告が取り消されると欠損金の繰越控除が使えなくなるため、1回の遅れが将来の税額に影響する構造です。

納付の状況は外部から確認される

融資の審査や入札の資格申請では、納税証明書の提出を求められます。未納があると、その3(未納の税額がないことの証明)は発行されません。延滞税がわずかに残っているだけでも発行されないため、提出の予定があるなら早めに残高を確認しておきます。

納税の状況は、会社の信用を測る材料として外から見られています。金融機関が決算書と一緒に納税証明書を求めるのは、申告書の数字が本物かどうかを確かめる意味もあるためです。納期限を守ることは、税務上の問題を避けるだけでなく、資金調達の条件にも影響します。

3月決算の会社の1年
1

4月1日 期首
役員報酬の改定はここから3か月以内。事前確定届出給与の届出もこの時期
2

5月31日 前期の申告・納付
法人税・地方法人税・住民税・事業税・消費税がこの日に重なる
3

11月30日 中間申告・納付
前期の法人税額が20万円超なら対象。予定申告か仮決算かを選ぶ
4

3月31日 期末
決算整理へ。この日を過ぎると動かせる項目がほぼ無くなる
5

5月31日 当期の申告・納付
決算を締め、申告書を作り、納税資金を用意する2か月間になる

赤字でも申告は必要で、繰り越せる

結論: 所得が赤字(欠損)でも、法人は毎期の確定申告が必要です。青色申告法人であれば、その欠損金を翌期以後10年間繰り越して所得と相殺できます。

欠損金の繰越控除は10年

平成30年4月1日以後に開始した事業年度で生じた欠損金は、10年間繰り越せます。それ以前に生じたものは9年です。繰り越した欠損金は古いものから順に使われるため、期限が近いものから消えていきます。

中小法人は、繰り越した欠損金を所得の全額まで控除できます。資本金1億円超の法人には所得の50%という控除限度があるため、ここも中小法人の有利な点です。設立から数年赤字が続いた会社が黒字転換したとき、この差は大きく表れます。過去の赤字を全額ぶつけられるか、半分しかぶつけられないかで、納税額がまったく変わってきます。

繰戻し還付という選択肢

中小企業者等については、欠損金を前期に繰り戻して法人税の還付を受ける制度も使えます。前期に納めた法人税がある場合に限られます。今期が赤字で前期が黒字だった会社であれば、前期に納めた税金の一部が戻ってくることになります。

繰り越すか繰り戻すかは、翌期以降の黒字の見通しで判断します。翌期にすぐ黒字が見込めるなら繰り越して所得と相殺し、当面の資金が必要なら繰戻し還付を選ぶ。ただし繰戻し還付を請求すると税務調査の対象になりやすいという指摘もあるため、帳簿を説明できる状態にしておくことが前提になります。

申告を続けることが条件

繰越控除を受けるには、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出している必要があります。1年でも申告を飛ばすと、繰越しの権利が途切れます。売上がゼロの期でも、申告そのものは続けなければなりません。

赤字だから出さなくてよい、という判断はここで裏目に出ます。数年後に黒字化したとき、使えるはずだった欠損金が消えている。これは実際に起こることで、しかも後から取り戻す手段がありません。申告を出す手間と、繰越しが切れる損失は釣り合わないとお考えください。

赤字の年に何が起きるか
課税所得がマイナスになった。何が発生して、何が残るか
法人税・地方法人税・住民税法人税割・事業税
発生しない。所得を土台にする税目はゼロになる
法人住民税の均等割
発生する。資本金1,000万円以下なら年7万円前後
消費税
判定が別。課税売上高で決まるため、赤字でも納付が生じることがある
欠損金
青色申告で連続して申告していれば10年繰り越せる。中小法人は所得の全額まで控除できる

設立したら期限のある届出が5つある

結論: 法人を設立したら、法人設立届出書を設立から2か月以内に提出します。青色申告の承認申請には別の期限があり、設立第1期から青色にするには早い段階での提出が必要です。

主な届出と期限

国税庁のタックスアンサーNo.5100「新設法人の届出書類」に示された内容を整理すると、次のようになります。

書類 期限
法人設立届出書 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内
青色申告の承認申請書 設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書 給与の支払を始めた日から1か月以内
棚卸資産の評価方法の届出書 設立第1期の確定申告書の提出期限まで
減価償却資産の償却方法の届出書 設立第1期の確定申告書の提出期限まで

登記が完了した直後は営業の立ち上げに気を取られがちですが、この5つは期限を過ぎると取り返しがつかないものを含みます。設立の手続きを依頼した司法書士は税務の届出までは扱わないため、ここは会社側で管理する必要があります。

青色申告の期限がいちばん短い

国税庁の同タックスアンサーは、設立第1期目から青色申告の承認を受けようとする場合の提出期限を「設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで」としています。

決算月を設立から3か月以内に置いた会社は、期限が前倒しになります。設立2か月目に決算を迎える設計にした場合、青色申告の申請期限もその前日です。青色申告でないと欠損金を繰り越せず、少額減価償却資産の特例も使えません。設立初年度は赤字になる会社が多いだけに、ここを落とすと影響が長く残ります。

事前確定届出給与と、地方への届出

役員に賞与を出す予定があるなら、「事前確定届出給与に関する届出書」を設立の日以後2か月を経過する日までに提出します。設立初年度に賞与を検討している場合は、この期限が先に来ます。届出をせずに支給した賞与は損金になりません。

税務署への届出とは別に、都道府県と市町村へ法人設立届出書を提出します。様式も提出先も自治体ごとに異なり、期限も税務署とは違う場合があります。登記が終わってひと段落した時期に、この地方の届出が抜けやすくなります。均等割の納付書が届かないまま期が進み、後から気づくというのがよくある流れです。

設立直後に期限が来る届出
01
法人設立届出書
設立登記の日から2か月以内。税務署のほか都道府県と市町村にも別途提出する
02
青色申告の承認申請書
5つのなかで最も期限が短い。決算月を早く置いた会社ほど前倒しになる
03
給与支払事務所等の開設届出書
給与の支払を始めた日から1か月以内。役員報酬を払い始めた時点で必要になる
04
事前確定届出給与に関する届出書
初年度に役員賞与を出すなら、設立から2か月を経過する日まで

個人事業主の所得税とは構造が違う

結論: 個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進構造ですが、法人税は区分ごとにほぼ一定の税率です。加えて、法人は経営者への役員報酬を損金にできる点が大きく異なります。

税率構造の比較

比較の軸 個人事業主(所得税) 法人(法人税)
税率 5〜45%の7段階(超過累進) 15%・23.2%(中小法人)
住民税 所得割10%+均等割 法人税割+均等割(赤字でも均等割)
経営者への給与 損金にならない 役員報酬として損金になる
赤字の繰越 3年(青色申告) 10年(青色申告法人)
決算期 1月〜12月で固定 自由に設定できる
社会保険 国民健康保険・国民年金 健康保険・厚生年金

軸ごとに有利・不利が入れ替わるのが分かります。税率だけを見れば所得が大きいほど法人が有利ですが、社会保険の欄まで含めると単純ではありません。

とくに差が出るのは、経営者への給与と赤字の繰越の2行です。個人事業主は自分への給与という概念がなく、事業の利益がそのまま所得になります。法人なら役員報酬として損金にでき、会社と個人に所得を分けられる。赤字の繰越も3年と10年では倍以上の開きがあり、立ち上がりに時間がかかる事業ほど法人の設計が活きます。一方で決算期を自由に設定できる点は、繁忙期と決算をずらせるという実務上の利点になります。

所得を分けられるのが法人の特徴

法人にすると、会社の利益と経営者個人の給与に所得を分けられます。それぞれに税率が適用されるため、合計の税負担が変わります。個人事業主は事業の利益がそのまま自分の所得になりますが、法人では役員報酬という形で会社から自分へ支払い、残りが会社の所得になるという二層構造です。

一方で、役員報酬を上げれば社会保険料も増えます。会社負担と本人負担を合わせると報酬のおよそ30%になるため、税金だけを見て決めると手取りで逆転することがあります。法人化の試算では、この社会保険料を必ず同じ表に入れて比べる必要があります。

判断は3つの数字を並べてから

法人化を検討するときは、法人税等・所得税と住民税・社会保険料の3つを同じ表に並べます。加えて、法人の維持にかかる均等割と申告報酬も入れて比べます。法人は赤字でも年7万円前後の均等割が出ますし、申告書の作成も個人より複雑になります。

「法人にしたほうが税率が低いから」という一点だけで決めた会社が、2期目に社会保険料で苦しくなる。この流れは実際によく見ます。判断の材料は3つ以上あり、しかも事業の見通しによって答えが変わるものです。数字を並べたうえで、5年先まで見て決めるのが現実的でしょう。

消費税は法人税とは別の判定で動く

結論: 消費税は利益ではなく課税売上高で納税義務が決まるため、法人税がゼロの赤字の年でも納付が生じます。設立時の資本金とインボイス登録の有無が、初年度からの扱いを左右します。

赤字でも消費税は出る

法人税は所得に対する税金ですが、消費税は預かった消費税から支払った消費税を差し引いた差額を納めるものです。赤字でも売上があれば納付が生じます。人件費のように消費税がかからない支出が多い業種では、赤字なのに消費税だけが大きく出るということも起こります。

「利益が出ていないのに納付書が来ました」というご相談の多くは、法人税ではなく消費税です。しかも金額は法人税より大きくなることが珍しくありません。納税資金を考えるときは、法人税等と消費税を別々に見積もっておく必要があります。

設立当初の免税は資本金で決まる

新設法人は基準期間(原則として2期前)がないため、設立第1期と第2期は原則として免税事業者になります。ただし、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上の場合は、この免税の扱いを受けられません。設立時の資本金を1,000万円未満に抑える会社が多いのは、この理由が大きいところです。

第1期の上半期の課税売上高と給与等の支払額がともに1,000万円を超えた場合も、第2期から課税事業者になります。特定期間の判定と呼ばれるもので、順調に立ち上がった会社ほど早く課税事業者になるという構造です。給与の支払額で判定することもできるため、どちらで判定するかを選べる点も覚えておくと役に立ちます。

インボイス登録で免税の前提が消える

インボイス発行事業者として登録すると、課税売上高にかかわらず課税事業者になります。設立時に免税を見込んでいても、登録すればその効果はなくなります。設立初年度から登録するかどうかは、取引先の構成を見て決めることになります。

取引先が課税事業者中心であれば、登録しない選択が取引条件に影響することもあります。免税と登録は、どちらか一方しか取れない二者択一です。売上規模が小さいうちは免税のまま様子を見て、取引先から求められた時点で登録するという判断もあり得ます。

納付は法人税と別の期限で来る

消費税の確定申告と納付も、原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内です。法人税と同じ日に並ぶため、決算月の翌々月に出ていく金額はさらに大きくなります。この月の資金を確保できるかどうかが、決算期の資金繰りの山場になります。

前課税期間の消費税額に応じて、中間申告が年1回・3回・11回と分かれる点も、法人税とは違うところです。法人税の中間申告は年1回だけですが、消費税は納税額が大きくなると回数が増えます。年11回になると毎月納付することになるため、資金の出方がまったく変わります。

法人税と消費税は判定の土台が違う
法人税
課税所得を土台に計算する
赤字なら発生しない
中間申告は年1回だけ
資本金は税率と均等割の区分に影響する
消費税
課税売上高で納税義務を判定する
赤字でも納付が生じる
中間申告は年1回・3回・11回に分かれる
資本金1,000万円以上だと設立第1期から課税事業者になる

実務でつまずきやすい5つの場面

結論: 法人税の実務でご相談が多いのは、役員報酬の変更時期・交際費の区分・減価償却の届出・中間申告の失念・赤字期の申告漏れの5つです。いずれも決算後には直せない点が共通しています。

期の途中で役員報酬を変えてしまう

定期同額給与から外れた部分は損金になりません。原則として、事業年度開始の日から3か月以内に改定を済ませる必要があります。それを過ぎてから増額すると、増やした部分は損金にならず、しかも本人には所得税と社会保険料がかかります。

業績が悪化した場合の減額など例外はありますが、要件が限定されています。経営状況の著しい悪化など、客観的に説明できる事情が求められるため、「思ったより利益が出そうだから下げる」といった調整はできません。期首に1年分を見込んで決める作業が、そのまま税額に影響します。

交際費と会議費を分けていない

1人あたり1万円以下の飲食費は、参加者の氏名や人数を記録した書類を保存していれば交際費等から除かれます。記録がないと、金額が小さくても交際費に入り、年800万円の枠を消費していくことになります。

領収書の裏に人数と相手先を書く。この習慣があるかどうかで、決算時の作業量が変わります。1年分をまとめて思い出そうとしても、参加者は正確に再現できません。記録は支出の直後にしか作れない、という性質のものです。

減価償却の方法を届け出ていない

届出をしない場合、法人の機械装置や器具備品は定率法が法定の償却方法になります。定額法を採りたい場合は届出が必要です。定率法は初期に多く償却できるため、立ち上がりの利益を抑えたい会社には向きますが、費用を平準化したい会社には向きません。

設立第1期の申告期限までという期限があります。この期限を逃すと、次に変更できるのは所定の手続きを踏んだ後になります。どちらの方法が自社に合うかは、設備の使い方と利益の出方で決まるため、設立時に一度考えておく価値があります。

中間申告を忘れる

前期の法人税額が20万円を超えると中間申告の対象です。申告をしなくても前期実績で申告したとみなされますが、納付は必要になります。つまり「申告書を出していないから納めなくてよい」ということにはなりません。

納付を忘れると延滞税がつきます。しかも中間納付の時期は決算から半年後で、日々の業務に紛れて意識から外れやすい時期です。決算が終わった時点で、半年後の納付予定をカレンダーに入れておくのが確実な対策になります。

赤字の期に申告を飛ばす

繰越欠損金を使うには、連続して申告書を提出していることが要件です。売上がない期でも申告は続けます。休業状態であっても、申告そのものを止めてはいけません。

この失敗は、数年後に黒字化したときに初めて表面化します。使えるはずだった欠損金が消えていて、しかも後から遡って復活させることはできません。赤字の期の申告は「今年の税額のため」ではなく「数年後の税額のため」に出すもの、と考えておくと位置づけが分かりやすくなります。

事例:設立2期目で税額が跳ねた会社

サービス業で設立2期目の会社から、決算の直前にご相談をいただきました。開口一番は「今期は利益が出そうなのですが、いくら残しておけばいいのか見当がつきません」というものでした。

試算してみると、課税所得は900万円前後の見込みでした。800万円を超えるため、超えた部分には法人税23.2%と事業税7.0%がかかります。地方税まで含めた総額は250万円を超える見込みで、想定していた金額の倍近くになりました。

そこで最初に確認したのは、決算日までに動かせる項目でした。未払費用の計上漏れ、少額減価償却資産として処理できる備品、そして翌期に予定していた広告出稿の前倒しです。いずれも実態のある支出で、時期を寄せられるものに限って洗い出しました。

次に見たのが役員報酬でした。ただし当期はすでに改定の時期を過ぎており、動かせるのは翌期からです。この点は間に合いませんでした。

結果として、当期は納税資金を確保する方向に切り替え、翌期の役員報酬の設計を先に決めています。社長からは「決算の3か月前に相談していれば、選べる手が違ったんですね」という言葉がありました。時期の問題だったという振り返りです。

よくある質問

赤字なら法人税の申告はしなくてもよいですか?
赤字でも確定申告は必要です。法人税は生じませんが、法人住民税の均等割は課されます。加えて、欠損金を翌期以後10年間繰り越すには、連続して確定申告書を提出していることが要件になります。申告を飛ばすと繰越しの権利が途切れます。
資本金はいくらにするのが無難でしょうか?
税制の面では1,000万円が一つの区切りです。資本金1,000万円以下であれば法人住民税の均等割が低い区分にとどまり、消費税の判定でも設立当初の扱いが変わります。ただし、許認可や取引先の与信で一定の資本金が求められる業種もあるため、税制だけで決める話ではありません。
法人税の税率は本当に15%なのですか?
資本金1億円以下の普通法人で、年800万円以下の所得の部分については15%です。ただし、過去3年の所得の年平均額が15億円を超える適用除外事業者は19%、所得が年10億円を超える事業年度は17%になります。資本金5億円以上の法人の完全子会社も対象外です。
中間申告の納税が厳しいときはどうすればよいですか?
前期実績による中間申告に代えて、上半期を1事業年度とみなす仮決算による中間申告を選べます。上半期の業績が前期より落ちている場合は、納付額が下がる可能性があります。ただし仮決算では決算と同等の作業が必要になるため、手間との兼ね合いで判断します。
決算月はいつでも変えられますか?
定款を変更し、株主総会の決議を経れば変更できます。税務署・都道府県・市町村への異動届出書の提出も必要です。ただし変更した期は事業年度が12か月未満になり、軽減税率の800万円という枠も月数按分されます。変更のタイミングは慎重に選ぶ必要があります。
納税資金はどのくらい見ておけばよいですか?
所得のおよそ3割を目安に置く会社が多いです。法人税だけでなく地方税まで含めると、法人税額の1.6倍前後になるためです。加えて消費税の納付が別に来るので、決算月の翌々月は資金の山になります。四半期ごとに概算を出して別口座へ寄せておく方法をお勧めしています。

まとめ:税率より先に、税目と期限を把握する

  • 法人税は会社の所得にかかる国税で、会計上の利益とは一致しない
  • 会社が納めるのは法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税。令和8年4月以後開始の事業年度からは防衛特別法人税も加わる
  • 中小法人の税率は年800万円以下が15%、超える部分が23.2%。資本金・所得・親会社の3つで判定する
  • 法人住民税の均等割は赤字でも発生し、資本金1,000万円以下なら年7万円前後
  • 申告と納付は事業年度終了から2か月以内。赤字でも申告を続けないと欠損金を繰り越せない

先に手を付けるべきは、税率の比較ではなく期限の把握です。役員報酬の改定も、青色申告の申請も、決算後には動かせません。

やらなくてよいことも1つ挙げます。設立初年度から複雑な節税の器を作る必要はありません。事業の形が定まる前に組んだ仕組みは、たいてい2期目に組み直すことになります。

税理士法人Light UPでは、設立直後の届出から決算の着地見込みまでのご相談を無料でお受けしています。

法人税の基礎のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
  • 国税庁 タックスアンサー No.5100「新設法人の届出書類」
  • 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」
  • e-Gov 法令検索「法人税法」(第66条・第71条・第74条)
  • e-Gov 法令検索「地方税法」(第52条・第312条)
  • e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(第42条の3の2・第61条の4)

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。地方税の税率は自治体の条例により標準税率と異なる場合があります。税制は毎年の改正で変わるため、適用にあたっては最新の情報をご確認ください。

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