法人税の計算シミュレーション|利益別の納税額と必要な資金
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
法人税のシミュレーションは、今期の課税所得(税務上の利益)の見込みに税率を掛け、地方税と均等割まで足して、納める税金の総額を出す作業です。中小法人で課税所得が1,000万円なら、総額は約270万円になります(説明用の金額です)。この記事では、課税所得別の早見表、試算の進め方、利益が動いたときの税額の変わり方、決算後に手元から出ていく資金の見積もり方を、国税庁と東京都主税局の公表資料(2026年10月時点)で整理します。
利益別の法人税等はいくら?
結論: 資本金1億円以下の中小法人で課税所得が1,000万円なら、法人税・地方法人税・法人住民税・事業税を合わせた総額は約270万円です。課税所得が増えるほど、総額が占める割合は上がります。
早見表の前提
前提は次の3つです。
- 資本金1億円以下の中小法人で、事業年度は12か月。法人税は、年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%
- 地方税は標準税率で、法人住民税の均等割は年7万円(資本金1,000万円以下で従業者50人以下の標準額)
- 事業税の所得は、課税所得と同じ額
15%は、令和9年3月31日までに開始する事業年度に適用できる特例の税率です(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」)。所得が年10億円を超える事業年度は17%になり、大法人の完全支配下にある会社などは15%を使えません。使えない会社の条件は、次の記事にまとめています。
地方法人税は法人税額の10.3%、法人住民税の法人税割は法人税額の7.0%(道府県1.0%と市町村6.0%)、事業税は年400万円以下の部分が3.5%、400万円超800万円以下の部分が5.3%、800万円超の部分が7.0%です。特別法人事業税は、事業税の所得割額の37%を別に納めます。
課税所得別の税額の早見表
説明用の金額です。
| 課税所得 | 法人税 | 地方法人税 | 法人税割 | 事業税・特別法人事業税 | 均等割 | 総額 | 課税所得に対する割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 45.0万円 | 4.6万円 | 3.2万円 | 14.4万円 | 7.0万円 | 74.2万円 | 25% |
| 600万円 | 90.0万円 | 9.3万円 | 6.3万円 | 33.7万円 | 7.0万円 | 146.3万円 | 24% |
| 1,000万円 | 166.4万円 | 17.1万円 | 11.6万円 | 67.4万円 | 7.0万円 | 269.6万円 | 27% |
| 1,500万円 | 282.4万円 | 29.1万円 | 19.8万円 | 115.4万円 | 7.0万円 | 453.6万円 | 30% |
| 2,000万円 | 398.4万円 | 41.0万円 | 27.9万円 | 163.3万円 | 7.0万円 | 637.6万円 | 32% |
各欄は四捨五入のため、足した額が総額と合わないことがあります。均等割は赤字でも納める税金で、総額に含めています。
800万円を超えた部分には、15%でなく23.2%が掛かります。課税所得が増えると割合が上がるのは、このためです。
令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、防衛特別法人税も加わります。基準法人税額(所得に対する法人税の額)から年500万円を引いた額に4%を掛ける税で、この表の範囲では0円です。法人税額が500万円を超えるのは、課税所得が約2,440万円を超えるときです。3月決算の会社なら、令和9年3月期から対象です。
試算でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、売上や決算書の利益をそのまま使うこと、地方税と均等割の足し忘れ、前期の事業税の減算漏れの3つです。見込みと実際の納税額が食い違います。
会計ソフトの利益に税率を掛けて見込んだら、決算で納税額が大きく違ったと相談に来られる方が少なくありません。
売上や決算書の利益をそのまま使う
税金は売上でなく、売上から経費を引いた利益に掛かります。売上が1,500万円でも、経費が1,200万円なら利益は300万円で、見るのは早見表の300万円の行です。
決算書の利益をそのまま課税所得として使うのも誤りです。課税所得は、決算書の利益に加算と減算を行って出します。
地方税と均等割の足し忘れ
法人税だけを見積もると、資金が足りなくなります。早見表の1,000万円の行では、総額が法人税の約1.6倍です。赤字の見込みでも、均等割は納めます。
前期の事業税の減算漏れ
事業税と特別法人事業税は、申告書を出した日の属する事業年度の損金の額に算入できます(国税庁タックスアンサーNo.5300)。今期の事業税は翌期の損金で、前期の決算で費用に計上した事業税を今期に納めたなら、今期の申告で課税所得から減算します。
減算を忘れると、課税所得を実際より大きく見込みます。扱いは前期の決算の処理で変わるため、前期の申告書で確かめます。
直近の月次試算表と前期の申告書をお持ちいただければ、加算と減算の項目、前期の事業税の減算額を拾い、今期の課税所得の見込みと納税額の幅を一緒に確かめます。
試算はどの順で進める?
結論: 試算は、期末の利益の見込み、税務上の調整、税率の当てはめ、地方税と均等割の加算の順に進めます。決算日の前に済ませると、支出の時期などを決められる余地が残ります。
期末の利益の見込み方
出発点は、月次試算表の累計の利益です。これに残りの月の見込みを足して、期末の税引前利益(法人税等を引く前の利益)を出します。
残りの月は、前年の同じ月を参考にします。季節で売上が動く事業は、直近の月の実績を単純に掛け算しないでください。決算賞与や設備の購入のような大きな支出は、別に載せます。期末の利益は決算の日まで確定しないため、上振れと下振れの2通りで試算し、資金は大きいほうに合わせます。
税務上の調整の拾い方
利益から課税所得への調整で、金額が動きやすい項目は次のとおりです。
- 交際費等:資本金1億円以下の法人は、定額控除限度額(年800万円)を使う場合、800万円を超えた部分が加算されます。1人あたり1万円以下の飲食費は、書類を残せば交際費等から除かれます(国税庁タックスアンサーNo.5265)
- 役員給与:事業年度の途中で増額した部分は、定期同額給与に当たらず、損金の額に算入できません(国税庁タックスアンサーNo.5211)
- 前期の事業税:前の節のとおり減算します
調整の項目の一覧は、次の記事にまとめています。
利益1,500万円の試算例は?
結論: 税引前利益が1,500万円の会社が、交際費の超過100万円を加え、前期の事業税30万円を引くと、課税所得は1,570万円です。総額は約479万円になります(説明用の金額です)。
課税所得の出し方
事業年度は12か月、交際費は年900万円で、定額控除限度額の800万円を使う会社の例です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 1,500万円 |
| 加算:交際費等の損金不算入額(900万円-800万円) | +100万円 |
| 減算:前期の事業税・特別法人事業税 | -30万円 |
| 課税所得 | 1,570万円 |
税額の積み上げ
課税所得1,570万円から、税目ごとに積み上げます。
| 税目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万円×15%+770万円×23.2% | 298.6万円 |
| 地方法人税 | 法人税額×10.3% | 30.8万円 |
| 法人税割 | 法人税額×7.0% | 20.9万円 |
| 事業税 | 400万円×3.5%+400万円×5.3%+770万円×7.0% | 89.1万円 |
| 特別法人事業税 | 事業税×37% | 33.0万円 |
| 均等割 | 標準額 | 7.0万円 |
| 防衛特別法人税 | 法人税額が500万円以下 | 0円 |
| 総額 | 479.4万円 |
課税所得の770万円は、1,570万円から800万円を引いた額です。今期の事業税と特別法人事業税(合計122.1万円)は、翌期の試算で減算の項目になります。
納税資金はいくら必要?
結論: 決算後に納める額は、年税額から中間納付額を引いた残りです。確定申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内(3月決算なら5月31日)です。
納める時期
法人税、地方法人税、防衛特別法人税は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告をして、同じ日までに納めます。
中間納付を引く
事業年度が6か月を超える会社は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に中間申告が必要です。前期の実績を基準にする方法では、前事業年度の法人税額を前事業年度の月数で割り、中間期間の月数を掛けた額を納めます。この額が10万円以下なら、中間申告書の提出は必要ありません(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」)。地方法人税にも中間申告があり、防衛特別法人税の中間申告は、令和9年4月1日以後に開始する事業年度から始まります。
前期の法人税額が120万円(12か月)なら、中間納付は60万円です。課税所得1,000万円の今期の法人税166.4万円から60万円を引くと、決算後に納める法人税は106.4万円になります(説明用の金額です)。
資金の置き方
資金は、試算の総額から、すでに納めた中間納付を引いた額を目標に置きます。消費税は別の計算で、納付の時期が重なることが多いため、見込みを並べて総額を出します。
利益が動くと税額はいくら変わる?
結論: 課税所得が100万円増えると、納税額は年800万円以下の部分で約22万〜25万円、800万円を超える部分で約37万円増えます。減るときも同じ幅で減ります。
100万円あたりの増減額
| 課税所得の区分 | 100万円あたりの増減 | 内訳(万円) |
|---|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 約22.4万円 | 法人税15.0、地方法人税1.5、法人税割1.1、事業税等4.8 |
| 400万円超800万円以下の部分 | 約24.9万円 | 法人税15.0、地方法人税1.5、法人税割1.1、事業税等7.3 |
| 800万円を超える部分 | 約36.8万円 | 法人税23.2、地方法人税2.4、法人税割1.6、事業税等9.6 |
事業税等は事業税と特別法人事業税の合計で、増減の額は今期に納める額で数えています。約2,440万円を超える部分は、防衛特別法人税で100万円あたり約0.9万円がさらに増えます。
費用や設備の購入を検討するとき
損金の額に算入できる費用が100万円増えれば、課税所得が800万円を超える部分では、納税額が約36.8万円減ります。ただし、100万円を支払うので、手元の現金は差し引き約63.2万円減ります。
事業に必要な支出かを先に決め、税額の変化は確認の材料にします。
赤字の見込みのとき
課税所得がマイナスなら、法人税、地方法人税、法人税割、事業税は発生しません。均等割は納めます。赤字は、青色申告書を出していれば、翌期以降10年間、黒字の所得から引けます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。
よくある質問
課税所得に何%を掛ければ、法人税等の総額が分かる?
売上が1,500万円なら、税金はいくら?
防衛特別法人税は、試算に入れる?
試算の額と、決算で確定した額は一致する?
まとめ:見込みの課税所得から総額を出そう
- 試算は、課税所得の見込みに税率を掛け、地方税と均等割を足して総額を出す
- 中小法人で課税所得が1,000万円なら、総額は約270万円(均等割7万円を含む)
- 決算書の利益と課税所得は別で、前期の事業税の減算を忘れない
- 課税所得が800万円を超える部分は、100万円増えるごとに約36.8万円の納税額が増える
- 決算後に納める額は、年税額から中間納付額を引いた残り
今期の納税額と決算後の資金を見込みたい方、決算書の利益から課税所得への調整に不安がある方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の月次試算表と前期の申告書を確認し、今期の課税所得の見込みと納税資金の幅を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
- 国税庁 タックスアンサー No.5300「損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」
- 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」(令和7年10月)
- 国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」(防衛特別法人税の創設、中小企業者等の法人税率の特例の見直し)
- 国税庁「地方法人税の税率の改正のお知らせ」
- 東京都主税局「令和元(2019)年10月1日以後に開始する事業年度に係る法人事業税の税率について」「特別法人事業税」
- 総務省「法人住民税・法人事業税」





