法人税申告書の書き方をわかりやすく解説|決算書から作る手順
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
法人税申告書は、確定した決算書の当期純利益を別表四に写して税務上の所得金額を出し、その所得金額から別表一で税額を決めて作ります。別表は別表一から別表二十一まであり、法人の活動内容や決算の状況で作る別表が変わります。この記事では、決算書の数字がどの別表に入るか、作る順番、別表四と別表五(一)の検算、提出期限と出し方を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
法人税申告書は決算書からどう作る?
結論: 法人税申告書は、確定した決算書の数字を別表に写し、税務上の調整を加えて所得金額を出し、その所得金額から税額を決めて作ります。作る順番は、明細の別表、別表四、別表一、別表五(一)(二)の仕上げです。
申告書は別表の集まり
法人税申告書は1枚の書類ではなく、別表と、貸借対照表や損益計算書などの添付書類でできています(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」令和7年版)。すべての法人がすべての別表を作るわけではありません。
中心になる別表は3つです。別表四は所得金額の計算、別表一は税額の計算、別表五(一)は利益積立金額(利益のうち会社に残っている金額)などの残高の管理です。
決算書の数字が入る先
国税庁の手引の設例では、決算書の数字が次のように別表へ入ります。
| 決算書の数字 | 入る別表 |
|---|---|
| 損益計算書の当期純利益 | 別表四の一番上 |
| 損益計算書の法人税、住民税及び事業税 | 別表五(二)に写し、別表四で加算する |
| 損益計算書の交際費、寄附金 | 別表十五、別表十四(二)で損金不算入額を計算する |
| 貸借対照表の未払法人税等 | 別表五(一)の納税充当金の期末残高と一致する |
| 貸借対照表の資本金 | 別表五(一)の資本金等の額の欄と一致する |
| 貸借対照表の繰越利益剰余金 | 別表五(一)の繰越損益金の欄に写す |
納税充当金は、決算で計上した、まだ納めていない法人税等の見積額です。
作る順番は4段階
手引は、申告書を4段階で作る流れを示しています。明細の別表を先に作って別表四で所得金額を確定し、別表一と別表五(一)(二)は最後に仕上げます。
法人税申告書の書き方でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、前期の申告書を使わないこと、決算が確定する前に数字を入れること、納税充当金と事業税の処理、必要な別表の出し忘れの4つです。利益や納める税金がずれ、翌期以降も続きます。
決算の直前に、別表四と別表五(一)の数字が合わないと気づいて相談に来られる方が少なくありません。原因は次の4つのどれかです。
前期の申告書を見ずに期首の数字を入れる
別表五(一)の期首の金額は、前期の別表五(一)の期末の金額をそのまま写します(国税庁の手引)。会計ソフトの繰越の数字が前期の申告書と違っていても、そのまま使うと期首がずれます。期首がずれると、当期の検算が合わないだけでなく、翌期以降も同じずれが続きます。
決算が確定する前に数字を入れる
法人税の申告書は、確定した決算に基づいて作ります(法人税法74条1項)。承認前の仮の決算書で別表四を作ると、利益が変わった時点で別表のほとんどをやり直すことになります。
納税充当金と事業税の処理
決算で計上した法人税等は、損金経理をした納税充当金として別表四で加算します。翌期に納税充当金から事業税などを支出したときは、損金の額に算入できるため、別表四で減算します(国税庁の手引)。減算を落とすと所得が多く出て、税金を払いすぎます。
必要な別表の出し忘れ
次の別表は、出さないと控除を受けられません。
- 別表六(一):預金の利息などから引かれた所得税額の控除。確定申告書に別表六(一)の記載が必要です(国税庁タックスアンサーNo.5760)
- 別表七(一):繰越欠損金の控除。欠損金が生じた事業年度に青色申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出していることが要件です(同No.5762)
法人税関係の租税特別措置の適用を受けるときは、適用額明細書も添付します。
税理士が確認する順番
税理士は、前期の別表五(一)(二)と決算書を並べて、期首の金額と納税充当金の残高が貸借対照表と合っているかを先に見ます。次に、別表四の加算と減算が決算書のどの行から来ているかをたどり、最後に別表四と別表五(一)の検算を確かめます。
前期の申告書一式と今期の決算書、勘定科目内訳明細書をお持ちいただければ、別表五(一)の期首の金額と、納税充当金・事業税の処理を、別表四と突き合わせて一緒に確かめます。
別表四は何を書く表?
結論: 別表四は、損益計算書の当期純利益から出発し、加算と減算で税務上の所得金額を求める表です。各項目は、将来に逆の調整が生じるかどうかで、留保と社外流出に分かれます。
加算と減算で所得金額を出す
加算するのは、会計では費用にしたが、税務では損金の額に算入できないものです。損金経理をした納税充当金、交際費等の損金不算入額、寄附金の損金不算入額、一括償却資産の損金算入限度超過額などがあります。減算するのは、納税充当金から支出した事業税や、受取配当等の益金不算入額などです。
国税庁の手引の設例では、次のように所得金額が出ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当期純利益 | 600,000円 |
| 加算:損金経理をした納税充当金 | 150,000円 |
| 加算:寄附金の損金不算入額 | 38,750円 |
| 減算:繰越欠損金の損金算入額(別表七(一)) | 100,000円 |
| 所得金額 | 688,750円 |
この所得金額が別表一に写り、設例では法人税額が103,200円になります。
留保と社外流出の違い
留保は、調整した金額が会社の中に残り、将来の事業年度で逆の調整が生じるものです。社外流出は、会社の外へ出ていき、将来の調整が生じないものです。別表四の留保の欄の金額が、別表五(一)の増減につながります。
| 区分 | 留保 | 社外流出 |
|---|---|---|
| 加算 | 損金経理をした納税充当金、一括償却資産の損金算入限度超過額 | 交際費等の損金不算入額、寄附金の損金不算入額 |
| 減算 | 納税充当金から支出した事業税 | 受取配当等の益金不算入額 |
一括償却資産の限度超過額は、後の期に認められて減算されるので留保です。交際費は、支出した金額が戻ってこないので社外流出です。
別表四と別表五(一)が合わないときは?
結論: 別表五(一)は、利益積立金額と資本金等の額の残高を管理する表です。別表四との間には検算式があり、合わないときは、前期の繰越、留保と社外流出の分類、納税充当金と事業税の順に確かめます。
別表五(一)の役割
別表五(一)は、利益積立金額を計算するⅠと、資本金等の額(資本金や資本剰余金など、株主が出したお金)を計算するⅡに分かれます。別表四が1年間の動き、別表五(一)が期末の残高という関係です。
国税庁の検算式
国税庁の申告書確認表には、別表四と別表五(一)の検算式があります。別表四の留保の所得金額に、別表五(一)の差引合計額の期首の金額を足し、当期に増えた未納の住民税などを引くと、別表五(一)の差引合計額の期末の金額と一致します。行番号は年度ごとの様式で確かめてください。
合わないときに見る順番
- 前期の別表五(一)の期末と、当期の期首が一致しているか
- 別表四の留保と社外流出の分類が正しいか
- 納税充当金の積み立てと取り崩し、事業税の減算が別表五(二)と別表四に反映されているか
- 貸借対照表の未払法人税等と、別表五(一)の納税充当金の期末が合っているか
提出する別表はどれ?
結論: 別表一、別表四、別表五(一)、別表五(二)は軸になる別表です。ほかは、同族会社の判定、交際費、寄附金、減価償却、欠損金など、決算の内容に当たるものを加えます。
主な別表の一覧
| 別表 | 名称 | 作る場面 |
|---|---|---|
| 別表一 | 各事業年度の所得に係る申告書 | 税額を計算するとき |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 所得金額を計算するとき |
| 別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 | 利益積立金額と資本金等の額の残高を管理するとき |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 | 法人税や住民税の納付と納税充当金を管理するとき |
| 別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 | 利息などで源泉所得税を引かれたとき |
| 別表七(一) | 欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書 | 欠損金が出たとき、繰越欠損金を控除するとき |
| 別表十四(二) | 寄附金の損金算入に関する明細書 | 寄附金を支出したとき |
| 別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 | 交際費を支出したとき |
| 別表十六(八) | 一括償却資産の損金算入に関する明細書 | 一括償却資産があるとき |
減価償却資産があれば別表十六(一)や(二)、同族会社の判定には別表二を使います。特殊な調整事項がない法人は、別表四の簡易様式を使えます(国税庁の手引)。
申告書はいつまでに、どう出す?
結論: 法人税の確定申告書は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に税務署へ提出します。納付も同じ期限で、赤字や休業中でも提出が必要です。
提出期限と延長
提出期限は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。確定申告で納める税額も、この期限までに納めます。欠損で納める税額がない場合や、休業中の場合も、確定申告書は出します(国税庁の手引)。
決算が2か月以内に確定しない事情があるときは、延長の制度があります。災害などで決算が確定しない場合は、事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請します。定款の定めなどで、2か月以内に定時総会が開かれない場合の特例は、事業年度終了の日までに申請します。延長を受けて納める法人税には、利子税がかかります。
添付書類
確定申告書には、別表のほか、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書又は損益金の処分表、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類を添付します。組織再編成を行った場合は、契約書の写しなども付けます(国税庁の手引)。
e-Taxでの提出
法人税の確定申告は、e-Taxで出せます。書面で税務署へ送ったり、持参したりもできます(国税庁の手引)。事業年度開始のときの資本金が1億円を超える法人などは、e-Taxで申告する義務があります(国税庁e-Tax「大法人の電子申告の義務化について」)。
令和8年4月以後は防衛特別法人税の欄が加わる
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が加わります。別表一は、法人税、地方法人税、防衛特別法人税の申告書として、様式が変わりました。基準法人税額から年500万円を引いた額に4%を掛けて計算し、税額が0円でも確定申告書の提出は必要です。
よくある質問
別表はどの順番で書けばよいですか?
赤字のときも法人税申告書は必要ですか?
防衛特別法人税の税額が0円でも申告書は必要ですか?
まとめ:決算書から順に別表を作ろう
- 法人税申告書は、確定した決算書の当期純利益を別表四に写し、税務上の調整で所得金額を出して作る
- 作る順番は、明細の別表と別表四で所得金額を確定し、別表一で税額を出し、別表五(一)(二)を仕上げる
- 別表五(一)の期首は、前期の別表五(一)の期末から写す
- 繰越欠損金や所得税額の控除は、別表七(一)と別表六(一)を出さないと受けられない
- 提出期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。赤字でも提出が必要
別表四と別表五(一)が合わない方、前期からの引き継ぎに不安がある方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。前期の申告書と今期の決算書を確認し、期首の金額、納税充当金、事業税の処理を整理します。
出典
- 国税庁「令和7年版 法人税のあらましと申告の手引」
- 国税庁「法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)」令和8年4月1日以後終了事業年度分の別表と記載要領
- 国税庁「申告書確認表」(別表四と別表五(一)の検算式)
- 国税庁 タックスアンサー No.5760「所得税額控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
- 国税庁「防衛特別法人税に関する納付手続等について」
- 国税庁 e-Tax「大法人の電子申告の義務化について」
- e-Gov 法令検索「法人税法」第74条、第75条、第75条の2





