法人税申告書の書き方|別表の役割
「別表がたくさんあって、どれから手をつければいいのか分かりません」。「別表四と別表五が合わないのですが、どこを見ればよいですか」――申告書の作成についてのご相談は、この2つに集約されます。
結論からお伝えすると、法人税の申告書は別表四が税務上の損益計算書、別表五(一)が税務上の貸借対照表という関係で組み立てられています。この2つは検算式でつながっており、合わないときはどちらか一方の記入が誤っているということです。他の別表は、この2つに数字を送り込むための計算明細だと捉えると全体像がつかめます。
税理士法人Light UPでは、申告書の見方をご説明するとき、別表四と別表五(一)の関係から入るようにしています。個々の別表を順に覚えようとすると数が多すぎますが、この2つの役割が分かれば、どの別表がどこへ数字を送っているのかが見えてくるためです。
この記事では、申告書の全体構造、別表四の4つの区分、別表五(一)との検算、別表五(二)の役割、よく使う別表の一覧、そして作成の順序とつまずきやすい場面までを、実際に中小企業の申告を扱っている立場から整理します。
申告書は別表の集まりでできている
結論: 法人税の申告書は1枚の書類ではなく、目的の異なる別表の集まりです。中心にあるのが別表四と別表五(一)で、他の別表はこの2つへ数字を送るための明細という位置づけになります。
中心にある2つの表
別表四は、決算書の当期純利益から出発して、税務上の調整を加えて所得金額を求める表です。会計の利益と税務の所得は一致しないため、その差を1つずつ足し引きしていきます。別表五(一)は、その差が翌期以降にどう残るかを管理する表です。別表四が1年間の動き、別表五(一)が残高という関係で、会計における損益計算書と貸借対照表の対応をそのまま税務に持ち込んだ構造になっています。この対応が分かると、どちらに何を書くべきかの判断がつきやすくなります。
他の別表は明細にあたる
減価償却費の限度額を計算する別表十六、交際費の損金不算入額を計算する別表十五、貸倒引当金の繰入限度額を計算する別表十一。これらはいずれも、計算した結果を別表四へ送り込むための明細です。したがって作成の順序も、明細から先に作り、その結果を別表四に集めるという流れになります。別表四から書き始めると、埋められない欄が残るということです。個々の別表の細かい計算方法より、どこへ数字が流れていくのかを把握しておくほうが、全体の理解には役立ちます。
提出する別表は会社によって変わる
すべての別表を提出するわけではありません。該当する事項がある別表だけを提出します。減価償却資産がなければ別表十六は不要ですし、交際費の支出がなければ別表十五も要りません。一方、別表一、別表四、別表五(一)、別表五(二)は、ほぼすべての会社が提出することになります。必ず出す4つと、該当すれば出すものという整理をしておくと、書類の抜けに気づきやすくなります。
別表四は税務上の損益計算書にあたる
結論: 別表四は、決算書の当期純利益に加算と減算を行って、税務上の所得金額を求める表です。会計と税務の考え方の違いを、1項目ずつ調整していきます。
出発点は当期純利益
別表四の一番上には、決算書の当期純利益をそのまま記入します。ここから、会計では費用にしたが税務では損金にならないものを加算し、会計では収益にしたが税務では益金にならないものを減算していきます。決算書を作り直すのではなく、決算書の数字から出発して差だけを調整するという設計です。したがって決算が確定していなければ別表四も作れません。この点は法人税法74条1項が確定した決算に基づくことを求めていることとも整合しています。
加算する代表的なもの
損金経理をした法人税、法人住民税、加算税と延滞税、交際費のうち損金にならない部分、減価償却の限度超過額、引当金の繰入限度超過額などが加算の対象になります。いずれも会計上は費用ですが、税務では損金として認められない項目です。費用にはなるが損金にはならないという二重の構造が、加算という調整を必要にしています。中小企業でもっとも件数が多いのは、法人税等と減価償却の超過額です。交際費については、資本金1億円以下の法人であれば年800万円までの定額控除限度額があり、これを超える部分が加算の対象になります。
減算する代表的なもの
前期に加算した項目が当期に認容される場合、受取配当等の益金不算入額、還付された法人税等などが減算の対象になります。前期の減価償却超過額が当期に認容されるという形の減算は、資産を売却したり除却したりしたときにも生じます。加算した項目はいつか減算されることが多く、この対応関係を追うのが別表五(一)の役割です。減算だけが単独で発生する項目は限られています。
加算・減算と留保・社外流出の4つの区分
結論: 別表四の各項目は、加算か減算か、そして留保か社外流出かという2つの軸で分類されます。この4つの区分が、別表五(一)へ送るかどうかを決めます。
留保と社外流出の違い
留保は、その調整が会社の中に残るもの、つまり将来において逆の調整が生じるものです。減価償却の限度超過額が典型で、当期に加算した金額は将来の事業年度で減算されます。社外流出は、会社の外へ出ていってしまい将来の調整が生じないものです。交際費の損金不算入額や、損金にならない罰科金がこれに当たります。留保だけが別表五(一)へ送られるという点が、2つの表をつなぐ仕組みになっています。
4象限で整理する
加算・留保、加算・社外流出、減算・留保、減算・社外流出の4通りがあります。加算・留保の代表が減価償却超過額、加算・社外流出の代表が交際費の損金不算入額です。減算・留保には前期の超過額の当期認容、減算・社外流出には受取配当等の益金不算入額が当たります。この分類を間違えると、別表五(一)の残高がずれ、翌期以降にわたって誤りが続きます。分類の判断は、将来に逆の調整が生じるかどうかを基準にすると迷いません。
| 区分 | 留保 | 社外流出 |
|---|---|---|
| 加算 | 減価償却超過額、引当金の繰入超過額、未払事業税の否認 | 交際費の損金不算入額、罰科金、寄附金の損金不算入額 |
| 減算 | 前期の超過額の当期認容、納税充当金から支出した事業税 | 受取配当等の益金不算入額、還付金等の益金不算入 |
法人税等は特殊な扱いになる
損金経理をした法人税と法人住民税は加算しますが、その扱いは他の項目と少し違います。納税充当金として計上した金額を加算し、実際に納付した金額を減算するという二段階の処理になるためです。この処理は別表五(二)の租税公課の納付状況等に関する明細書と連動しており、3つの表を行き来することになります。申告書の中でもっとも間違えやすいのがこの部分で、検算が合わない原因の多くはここにあります。
別表四と別表五(一)は検算式でつながっている
結論: 別表五(一)には検算式が印刷されており、この式が成り立たなければどこかに記入の誤りがあります。合わない場合は、まずこの式に沿って原因を絞り込みます。
検算式の考え方
期首の利益積立金額に、当期の別表四で留保とされた金額を加え、当期に納付した法人税と法人住民税を差し引くと、期末の利益積立金額になります。これが検算式の内容です。会計でいえば、期首の繰越利益剰余金に当期純利益を加えて配当を引くと期末の繰越利益剰余金になる、という関係と同じ構造です。税務版の株主資本等変動計算書だと考えると、役割が理解しやすくなります。
合わないときに見る順序
検算が合わない場合、確認する順序があります。まず別表四で留保と社外流出の分類を誤っていないか、次に別表五(二)の納付額が別表五(一)に正しく反映されているか、最後に前期からの繰越額が正しく引き継がれているかです。分類の誤りが最も多く、次いで納税充当金の処理という順で当たると、原因にたどり着きやすくなります。金額が合わないまま提出すると、翌期以降も同じずれが残り続けます。
前期の申告書を必ず参照する
別表五(一)の期首残高は、前期の別表五(一)の期末残高をそのまま引き継ぎます。したがって前期の申告書がなければ作成できません。会計ソフトが自動で繰り越す場合も、金額が正しいかを確認する価値があります。申告書は毎年つながっている書類であり、1年分だけを見て完結するものではないという点は、担当者が交代したときにとくに重要になります。
別表五(二)は租税公課の納付状況を追う
結論: 別表五(二)は、法人税、住民税、事業税などについて、期首の未納額、当期の発生額、当期の納付額、期末の未納額を追う表です。別表四と別表五(一)の両方に数字を送ります。
納付の方法によって欄が分かれる
この表では、納付した金額を「充当金取崩しによる納付」「仮払経理による納付」「損金経理による納付」に分けて記入します。決算で未払法人税等を計上し、翌期にそこから支払った場合は充当金取崩しです。未払計上をせずに支払った期に費用処理した場合は損金経理による納付になります。どの欄に書くかで別表四の調整が変わるため、経理処理の方法を確認してから記入する必要があります。
事業税だけ扱いが違う
法人税と法人住民税は損金になりませんが、法人事業税は損金になります。ただし損金になるのは納付した事業年度で、発生した事業年度ではありません。したがって前期の事業税を当期に納付した場合、当期の損金になります。この期ずれが、別表四での減算という形で現れます。同じ地方税でも住民税と事業税で扱いが違うという点は、仕訳の段階で科目を分けておかないと後から追えなくなります。
よく使う別表とその役割
結論: 中小企業で使う別表は限られています。必ず提出するもの4つと、該当すれば提出するものをあらかじめ把握しておけば、作業の見通しが立ちます。
ほぼすべての会社が提出する4つ
別表一は所得金額から税額を計算する表、別表四は所得金額を求める表、別表五(一)は利益積立金額と資本金等の額の残高を管理する表、別表五(二)は租税公課の納付状況を追う表です。この4つはほぼすべての会社が提出します。あわせて、同族会社の判定を行う別表二も、株主構成にかかわらず提出することになります。まずこの5つが土台だと考えておくと、他の別表の位置づけが見えてきます。
| 別表 | 役割 |
|---|---|
| 別表一 | 所得金額に税率を掛けて納付税額を計算する |
| 別表二 | 同族会社に該当するかを判定する |
| 別表四 | 決算書の利益から税務上の所得金額を求める |
| 別表五(一) | 利益積立金額と資本金等の額の残高を管理する |
| 別表五(二) | 法人税・住民税・事業税の納付状況を追う |
| 別表六(一) | 利子や配当から源泉徴収された所得税額の控除 |
| 別表七(一) | 欠損金の繰越控除 |
| 別表十一 | 貸倒引当金の繰入限度額 |
| 別表十五 | 交際費等の損金不算入額 |
| 別表十六 | 減価償却資産の償却限度額 |
該当すれば提出するもの
減価償却資産があれば別表十六、交際費の支出があれば別表十五、過去の赤字を繰り越していれば別表七(一)を提出します。欠損金は中小法人であれば10年間繰り越せますが、この別表を毎期提出し続けなければ控除を受けられません。預金利息を受け取っていれば別表六(一)で源泉所得税額の控除を受けます。該当がないのに提出しても差し支えはありませんが、該当があるのに出さないと控除が受けられない場合があります。とくに別表七(一)と別表六(一)は、提出しなければ有利な取扱いを受けられない性質のものです。
作成の順序を決めておく
結論: 申告書は、明細となる別表から作り、別表四に集め、別表五(一)で検算し、最後に別表一で税額を計算するという順で進めます。この順序を守れば手戻りが減ります。
明細から先に作る
減価償却の限度額、交際費の損金不算入額、貸倒引当金の繰入限度額。これらは別表四に記入する金額の根拠になるため、先に計算しておく必要があります。会計ソフトから出力できる資料をもとに、該当する別表を埋めていきます。この段階で決算書の数字と突き合わせておくと、後の検算で原因を探す手間が減ります。とくに減価償却は、会計上の償却費と税務上の限度額が一致しているかを確認しておきます。
検算が通ってから税額計算へ進む
別表四と別表五(一)の検算が通る前に別表一を作ると、所得金額が変わったときに税額もやり直しになります。検算を通してから税額計算へ進むほうが、結果として早く終わります。検算は作業の最後ではなく途中の関門だと位置づけておくと、順序が崩れません。税額が確定したら、中間納付額や源泉所得税額の控除を差し引いて納付額を出します。中小法人であれば、所得のうち年800万円以下の部分に15パーセント、超える部分に23.2パーセントの税率が適用されます。
つまずきやすい場面
結論: 申告書の作成で誤りが起きるのは、留保と社外流出の分類、納税充当金の処理、前期からの繰越、そして事業税の期ずれに集中します。いずれも別表五(一)の検算で発見できます。
納税充当金の処理を誤る
決算で未払法人税等を計上したとき、その金額を別表四で加算し、別表五(一)で残高として管理します。翌期に納付したときは、充当金を取り崩したものとして処理します。この一連の流れのどこかが抜けると検算が合いません。計上と取崩しが対になっていることを意識して記入すれば、誤りは防げます。会計ソフトが自動で処理する場合も、初年度は結果を確認しておく価値があります。
事業税の期ずれを忘れる
法人事業税は納付した事業年度の損金になります。したがって決算で未払計上した事業税は、その期の損金にはならず、翌期に納付したときに損金になります。別表四では、計上時に加算し納付時に減算するという処理になります。この期ずれを反映し忘れると、所得金額が2期にわたってずれます。住民税と事業税を同じ処理にしないという点が、実務での注意点です。
事例:検算が合わず前期からたどり直した卸売業の会社
従業員16名の卸売業の会社で、申告書の作成中に別表五(一)の検算が合わないという状態になりました。差額は約38万円です。
まず別表四の留保と社外流出の分類を確認しましたが、誤りは見つかりませんでした。次に別表五(二)を見たところ、当期に納付した事業税が損金経理による納付として記入されていました。
前期の申告書を取り寄せて確認しました。
前期の決算では事業税を未払計上しており、別表五(一)に納税充当金として残高が計上されていました。当期の納付はこの充当金を取り崩したものであるため、充当金取崩しによる納付の欄に記入すべきものでした。記入する欄が違ったために、別表四での減算も漏れていたということです。
修正して検算は一致しました。あわせて、申告書は前期からつながっているという前提を作業手順に書き込み、着手の前に前期の別表五(一)と別表五(二)を手元に置くことを標準にしています。担当者が交代しても同じ確認ができるようにするための対応です。
よくある質問
別表はどれから作ればよいですか?
別表四と別表五(一)が合わないときはどこを見ますか?
すべての別表を提出する必要がありますか?
留保と社外流出はどう見分けますか?
法人事業税はいつ損金になりますか?
まとめ:2つの表の関係から入る
法人税の申告書は別表の数が多く、順に覚えようとすると全体像が見えなくなります。別表四が税務上の損益計算書、別表五(一)が税務上の貸借対照表という関係から入れば、他の別表がどこへ数字を送っているのかが分かります。
別表四の各項目は、加算か減算か、留保か社外流出かという4つの区分に分かれます。このうち留保だけが別表五(一)へ送られるという仕組みが、2つの表をつなぐ検算式の根拠です。分類を誤ると残高がずれ、翌期以降にわたって誤りが続きます。
作成の順序も決めておく価値があります。明細の別表を先に作り、別表五(二)で租税公課を整理し、別表四に集め、別表五(一)で検算し、最後に別表一で税額を出す。この順で進めれば手戻りが減ります。
そして申告書は毎年つながっている書類です。着手の前に前期の別表五(一)と別表五(二)を手元に置くところから始めてください。
税理士法人Light UPでは、法人税の申告書作成と、既存の申告内容の確認についてご相談を承っています。検算が合わない、前期からの引き継ぎに不安があるといった場合も、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第22条、第38条、第74条
- e-Gov 法令検索「法人税法施行規則」(昭和四十年大蔵省令第十二号)別表
- 国税庁「法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)」




