法人税の申告期限|延長が認められる場合
「決算から2か月では株主総会が間に合いません」。「延長すれば納付も後でよいのですか」――申告期限についてのご相談は、この2つに分かれます。
結論からお伝えすると、法人税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2月以内です。定款等の定めにより2か月以内に定時総会が招集されない常況にある場合は、申請により1か月延長できます。ただし延長されるのは提出期限だけで、納付が遅れれば利子税がかかります。期限が延びても、資金の準備は2か月以内という前提が変わりません。
税理士法人Light UPでは、延長のご相談を受けたとき、申請の期限が事業年度終了の日までであることを最初にお伝えしています。決算を迎えてから申請しても、その事業年度には間に合わないためです。
この記事では、原則の期限、延長できる場合とその範囲、提出期限と納付期限の違い、消費税と地方税それぞれの手続、そして期限を過ぎたときに起きることまでを、実際に中小企業の申告を扱っている立場から整理します。
原則は事業年度終了の日の翌日から2月以内
結論: 法人税の確定申告書は、事業年度が終わってから2か月以内に提出します。3月決算なら5月31日、12月決算なら翌年2月末日が期限です。
条文が定める期限
e-Gov 法令検索で法人税法74条1項を引くと、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない」と定められています。ここで重要なのが確定した決算に基づきという文言で、株主総会等の承認を経た決算が前提になっているということです。決算が確定していなければ、申告書も作れません。株主総会の開催が遅い会社ほど、この前提と2か月という期限が噛み合わなくなります。延長の制度が設けられているのは、この噛み合わせを整えるためです。
添付する書類も条文で定められている
同条3項は「第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない」と定めています。決算書の添付は任意ではなく義務です。株主資本等変動計算書、個別注記表、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書もこれに含まれます。申告書だけを期限内に出しても、添付書類が揃っていなければ完結しません。勘定科目内訳明細書は作成に時間がかかるうえ、決算の数字が固まらないと着手できません。期限が厳しい会社では、この書類の作成時間を逆算しておく必要があります。
| 決算月 | 原則の期限 | 1か月延長した場合 |
|---|---|---|
| 3月 | 5月31日 | 6月30日 |
| 9月 | 11月30日 | 12月31日 |
| 12月 | 翌年2月末日 | 翌年3月31日 |
| 6月 | 8月31日 | 9月30日 |
期限が土日祝日にあたる場合
期限の日が土曜日、日曜日、国民の祝日にあたるときは、これらの日の翌日が期限になります。5月31日が日曜日であれば6月1日が期限です。ただし電子申告は期限日の24時まで受け付けているため、窓口の開庁日を気にする必要はありません。期限日の判定と提出手段の選択は別の話として整理しておくと、直前の作業が組み立てやすくなります。納付についても、金融機関の窓口は営業日に限られる一方、ダイレクト納付やインターネットバンキングであれば時間の制約が緩みます。
延長できるのは提出期限であって納付期限ではない
結論: 期限の延長を受けても、納付が2か月を超えて遅れた部分には利子税がかかります。延長は書類を出す期限を延ばす制度であって、納税を先送りする制度ではありません。
見込納付という実務
延長を受けている会社の多くは、原則の期限である2か月以内に見込みの税額を納付しています。これを見込納付と呼びます。確定した税額が見込額を上回れば差額を追加で納め、下回れば還付を受ける形です。見込納付をしておけば利子税がかからないため、延長を受けている会社ではこの運用が定着しています。見込額は決算の数字が概ね固まった段階で計算するため、結局のところ2か月以内に大枠の決算を終える必要があります。延長があっても作業の前倒しが要らなくなるわけではない、という点は押さえておく価値があります。
利子税は延滞税とは別のもの
利子税は、正規の手続によって期限を延長した場合に、その期間に応じて課されるものです。期限を過ぎて放置した場合の延滞税とは性質が異なり、税率も低く設定されています。ただし発生することに変わりはなく、法人税の計算上は損金に算入されます。延滞税が損金にならないのとは扱いが違うため、経理処理でも区別が要ります。租税公課の科目にまとめて計上していると、申告書で加算する対象を選び分けられなくなります。補助科目で分けておくか、摘要に内容を書いておく運用が確実です。
延長の特例は定款等の定めが前提になる
結論: 延長が認められるのは、定款等の定めや特別の事情により、2か月以内に定時総会が招集されない常況にある場合です。忙しいからという理由では認められません。
条文が求める要件
法人税法75条の2第1項は、延長が認められる場合を「定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものの定めにより、又は当該内国法人に特別の事情があることにより、当該事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から二月以内に当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合」と定めています。常況にあるという表現が使われており、その年だけたまたま間に合わないという事情では足りません。
定款の変更が必要になることが多い
多くの中小企業の定款には、定時株主総会を事業年度終了後3か月以内に招集する旨が定められています。この場合はそのまま要件を満たしますが、2か月以内と定めている場合は定款の変更が必要になります。定款の変更には株主総会の特別決議が要るため、申請の前に定款を確認するという手順が入ります。申請書には定款の写しを添付します。定款の変更そのものには登記が不要ですが、株主総会の議事録は残しておく必要があります。設立から一度も定款を見直していない会社では、この確認に時間がかかることがあります。
特別の事情による場合
定款の定めではなく、会社に特別の事情がある場合も対象になります。法人税法75条の2第1項2号は、3か月以内に定時総会が招集されない常況にあることその他やむを得ない事情がある場合について、税務署長が指定する月数の期間を延長できるとしています。海外子会社の決算を待つ必要があるといった事情が想定されています。この場合は税務署長が月数を指定するため、あらかじめ何か月延びるかが決まっているわけではありません。申請書に事情の内容を記載し、その妥当性を含めて判断される仕組みです。
会計監査人を置いていれば最大4月まで
結論: 会計監査人を置いており、かつ定款等の定めにより3か月以内に定時総会が招集されない常況にある場合は、4か月を超えない範囲で税務署長が指定する月数まで延長できます。
1号の指定を受ける場合
法人税法75条の2第1項1号は、会計監査人を置いている場合について「当該定めの内容を勘案して四月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間」と定めています。原則の2か月に4か月を加えれば、事業年度終了後6か月まで延びる計算です。上場企業や大規模な会社が対象になる規定で、中小企業では会計監査人を置いていないことが通常です。会計監査人の設置は会社法で大会社に義務づけられているほか、任意で置くこともできますが、監査報酬という固定費が発生します。申告期限の延長だけを目的に設置するという判断にはなりません。
中小企業は1か月延長が基本
会計監査人を置いていない会社の延長は1か月です。3月決算であれば6月30日が期限になります。定時株主総会を6月に開催する会社にとっては、この1か月があることで決算の確定から申告までの流れが自然につながります。1か月の延長で足りるかどうかが、中小企業にとっての実際の判断になります。6月末に総会を開く予定であれば1か月で足りますが、7月にずれ込む見込みがあるなら別の検討が要ります。総会の時期そのものを前倒しできないかを、あわせて考えることになります。
申請は事業年度終了の日までに出す
結論: 延長の申請書は、その事業年度が終わる日までに提出する必要があります。決算を迎えてから申請しても、その事業年度には適用されません。
期限を過ぎたら翌期からになる
法人税法75条の2第3項は「前二項の申請は、第一項に規定する申告書に係る事業年度終了の日までに」と定めています。3月決算の会社が延長を受けたいのであれば、3月31日までに申請書を出さなければなりません。4月に入ってから申請しても、適用は翌事業年度からです。気づいたときには手遅れになりやすい規定なので、決算の3か月前あたりに検討しておくのが現実的です。決算日が近づいてから慌てて定款を確認すると、変更のための株主総会が間に合わないという事態も起こります。
一度申請すれば継続して適用される
延長の申請は毎年行うものではありません。一度承認されれば、その事業年度以後の各事業年度について継続して適用されます。定款の定めが変わった場合や、要件を満たさなくなった場合には取消しや変更の処分がありますが、通常は申請が一度で済みます。事業年度を変更したときは、要件の確認が要ります。決算月を変えると定時株主総会の時期も変わるため、定款の定めとの関係を見直す必要があるからです。逆に、承認が取り消される処分を受けた場合は、その処分のあった日の属する事業年度以後について延長がなくなります。
消費税は届出で1か月延ばせる
結論: 法人税の延長を受けている法人は、届出を出すことで消費税の申告期限も1か月延長できます。ただし年7.3パーセントの利子税がかかります。
条文が定める延長後の期限
e-Gov 法令検索で消費税法45条の2第1項を引くと、法人税法75条の2の適用を受ける法人が届出書を提出した場合について、消費税申告書の提出期限を「当該課税期間の末日の翌日から三月以内とする」と定めています。原則が2か月なので、1か月の延長ということです。法人税の延長を受けていることが前提で、消費税だけを単独で延ばすことはできません。この特例が設けられたのは比較的最近で、それ以前は法人税だけが延び、消費税は2か月以内という運用でした。長く経理を担当している方ほど、以前の前提のまま業務を組んでいることがあります。
利子税は年7.3パーセント
同条4項は、延長を受けた法人について「当該課税期間終了の日の翌日以後二月を経過した日から同項の規定により延長された提出期限までの期間の日数に応じ、年七・三パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその計算の基礎となる消費税に併せて納付しなければならない」と定めています。法人税と同じく、2か月を超えた部分に利子税がかかる構造です。消費税額が大きい会社では金額も無視できないため、見込納付を検討する余地があります。
届出を出さなければ延びない
法人税の延長を受けていても、消費税の届出を出さなければ消費税の期限は2か月のままです。法人税と一緒に延びると誤解していると、消費税だけ期限後申告になってしまいます。制度ごとに手続が独立しているという点は、この論点全体を通じた原則です。届出書の提出時期にも定めがあり、適用を受けたい事業年度の終了の日までに出しておく必要があります。法人税の申請と同時に済ませておくのが確実です。
地方税は国税とは別の手続になる
結論: 法人住民税と法人事業税の申告期限も延長できますが、それぞれ別に手続が必要です。法人税の延長が自動的に適用されるわけではありません。
都道府県と市町村のそれぞれに届出
法人事業税と道府県民税は都道府県、市町村民税は市町村へ、それぞれ延長の届出を提出します。事業所が複数の地方公共団体にある場合は、その数だけ手続が発生します。拠点が多いほど手続の数も増えるため、拠点を増やしたときは延長の届出が漏れていないかを確認する必要があります。様式や提出先は地方公共団体によって異なることがあり、電子申告に対応している範囲もそれぞれです。新しい市町村に事業所を出したときは、その団体の手続を個別に確認してください。
地方税にも利子税がかかる
地方税についても、延長した期間に対応する部分には利子税に相当する額が課されます。国税と同じく、2か月以内に見込納付をしておけば負担を避けられます。3つの制度でそれぞれ手続と納付を管理することになるため、決算のスケジュール表に制度ごとの期限を並べて書く運用にしておくと抜けが起きにくくなります。法人税、消費税、法人住民税、法人事業税と並べれば4行ですが、事業所が複数あればさらに増えます。
期限を過ぎるとどうなるか
結論: 期限内に申告書を提出しないと、無申告加算税と延滞税の対象になります。青色申告の承認が取り消される場合もあり、影響は税額だけにとどまりません。
加算税と延滞税がかかる
期限後申告になると、納付すべき税額に対して無申告加算税が課されます。調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものでない場合は割合が軽くなりますが、負担が生じること自体は変わりません。あわせて、納付が遅れた日数に応じた延滞税もかかります。気づいた時点ですぐ提出することに、金額としての意味があります。延滞税は納付が遅れた日数に応じて増えるため、全額を用意できない場合でも納められる分から納めることで負担を抑えられます。
青色申告の承認が取り消されることがある
2事業年度続けて期限内に申告書を提出しなかった場合、青色申告の承認が取り消される取扱いがあります。青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除、少額減価償却資産の特例、各種の税額控除といった制度が使えなくなります。期限の管理は税額よりも制度の適用に影響するということです。1年目の遅れの時点で対応しておく必要があります。とくに欠損金の繰越控除が使えなくなると、過去の赤字を将来の黒字と相殺できなくなり、影響が何年も続きます。
延長を受けるかどうかの判断
結論: 延長は誰にとっても有利な制度ではありません。決算の確定が2か月で間に合っている会社では、手続と利子税の負担が増えるだけになります。
延長が向いている会社
決算から株主総会までに時間がかかる会社、監査や親会社への報告が必要な会社、決算月に業務が集中する会社は、延長の恩恵を受けやすいといえます。とくに3月決算で6月に定時株主総会を開催する会社では、延長がないと総会前に申告することになり、決算の確定という前提と実務が食い違います。株主が複数いて総会の日程を動かしにくい会社ほど、この制度の意味が大きくなります。
延長しないほうがよい場合
決算が2か月以内に確定している会社では、延長の手続をしても実務が変わりません。むしろ見込納付の管理が増えるだけになります。また、還付を受ける立場の会社では、申告が遅れるぶん還付も遅くなります。自社の決算がいつ確定しているかを実績で確認するところから判断するのが確実です。過去3期の決算確定日と申告日を並べてみて、2か月以内に収まっているかを見れば判断がつきます。毎年ぎりぎりになっているようであれば、延長を検討する余地があります。
事例:申請の期限に間に合わなかった製造業の会社
3月決算の製造業の会社から、5月にご相談をいただきました。決算の作業が例年よりも遅れており、5月31日までに申告できそうにないという内容です。
延長の申請を検討しましたが、法人税法75条の2第3項により、申請は事業年度終了の日までに行う必要があります。
3月31日は、すでに2か月前に過ぎていました。
この事業年度については延長を受けられないため、期限内の提出を優先する方針に切り替えました。勘定科目内訳明細書の一部について概算での作成を避け、確定できる範囲を優先して仕上げ、5月31日に提出しています。
その後、翌事業年度に向けて対応を進めました。定款には定時株主総会を3か月以内に招集する旨の定めがあったため変更は不要で、翌年3月31日までに申請書を提出しています。あわせて消費税の届出と、都道府県および市町村への届出も同時に済ませました。3つの制度で別々に手続が要ることを、この機会に決算のスケジュール表へ書き込んでいます。
よくある質問
延長すれば納税も後でよいのですか?
延長の申請はいつまでに出しますか?
消費税の期限も一緒に延びますか?
地方税はどうなりますか?
期限を過ぎるとどうなりますか?
まとめ:延びるのは提出期限だけ
法人税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2月以内で、定款等の定めにより2か月以内に定時総会が招集されない常況にある場合は、申請により1か月延長できます。会計監査人を置いていれば最大4か月です。
ただし押さえておくべき点が3つあります。1つめは、延長されるのは提出期限だけで、納付が2か月を超えれば利子税がかかること。多くの会社が見込納付で対応しています。
2つめは、申請の期限が事業年度終了の日までであること。決算を迎えてからでは間に合わず、翌期からの適用になります。
3つめは、消費税と地方税は別に手続が要ること。法人税の延長が自動的に及ぶわけではなく、消費税は届出、地方税は都道府県と市町村のそれぞれに届出が必要です。
税理士法人Light UPでは、決算のスケジュール設計から延長の手続までご相談を承っています。自社に延長が向いているかの判断も含めて、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第74条、第75条、第75条の2
- e-Gov 法令検索「消費税法」(昭和六十三年法律第百八号)第45条、第45条の2
- e-Gov 法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号)第53条、第72条の25、第321条の8
- e-Gov 法令検索「国税通則法」(昭和三十七年法律第六十六号)第11条、第60条、第66条




