法人税の実効税率とは?計算方法と表面税率との違い、中小企業の数字
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
法人税の実効税率は、会社が所得に応じて納める5つの税を1つの率にまとめ、事業税が損金の額に算入できる効果を織り込んだ率です。資本金1億円以下の中小法人は、年800万円を超える部分で標準税率なら約33.58%になります。税率を単純に足した36.80%より低いのは、事業税の分だけ、ほかの税の土台になる所得が小さくなるためです。この記事では、表面税率との違い、算式、水準、使いどころを、国税庁・財務省・企業会計基準委員会の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
法人税の実効税率とは?
結論: 法人税の実効税率は、所得に連動する5つの税を所得に対する1つの率にまとめ、事業税が損金の額に算入できる効果を織り込んだ率です。中小法人の年800万円を超える部分は、標準税率で約33.58%です。
実効税率が表す税負担
会社が所得に応じて納める税は5つあり、土台が税ごとに違います。法人税は課税所得に、地方法人税は法人税額に10.3%を掛けます。法人住民税の法人税割も法人税額に掛ける地方税で、標準税率は都道府県1.0%と市町村6.0%の合計7.0%です。事業税の所得割は所得に掛ける地方税、特別法人事業税は標準税率で計算した事業税額に37%を掛ける国税です。
このままでは、所得が100万円増えたら税金がいくら増えるかが分かりません。実効税率は、この5つを所得に対する1つの率に直したものです。赤字でも納める均等割と、外形標準課税(資本金1億円超の法人などに課す事業税)の付加価値割・資本割は、所得に連動しないので含みません。
表面税率との違い
表面税率は、法令に書いてある税ごとの税率そのものです。それぞれを所得に対する率に直して足したものが、表面税率の合計です。
資本金1億円以下の中小法人で、年800万円を超える部分に標準税率を当てはめると、次のとおりです。
| 税目 | 表面税率 | 所得に対する率 |
|---|---|---|
| 法人税 | 23.2% | 23.20% |
| 地方法人税 | 法人税額の10.3% | 2.39% |
| 法人住民税の法人税割 | 法人税額の7.0% | 1.62% |
| 事業税の所得割 | 7.0% | 7.00% |
| 特別法人事業税 | 事業税額の37% | 2.59% |
| 合計 | 36.80% | |
| 法定実効税率 | 約33.58% |
差の3.22ポイントが、事業税と特別法人事業税を損金の額に算入できる効果にあたります。この記事で実効税率と書くときは、法令の税率から算式で求める法定実効税率を指し、決算書の法人税等を税引前当期純利益で割った率は実際の負担率と呼びます。
実効税率の計算でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、税率の単純合計をそのまま使うこと、所得の区分と適用できる税率の取り違え、防衛特別法人税の見落としの3つです。どれも、手残りや納税資金の見込みがずれます。
ネットで見た約33%と、自社の決算書から出した負担率が違うので、計算を間違えているのかと相談に来られる方が少なくありません。多くは、使った率の前提のずれです。
税率の足し算で済ませる誤り
表面税率を足した36.80%を、そのまま手残りの試算に使う誤りです。事業税の損金算入の効果を落とすので、税負担を大きく見積もります。100万円の費用で減る税額は、33.58%なら約33万5,800円、36.80%なら約36万8,000円で、約3万2,000円の差が出ます。
区分と段差の取り違え
実効税率は1つの数字になりません。所得の区分で変わり、年800万円を境に10ポイント以上跳ね上がります。軽減税率の15%を適用できない会社(完全支配している親会社が大法人である子会社など)は、所得が小さくても全額に23.2%が掛かり、33.58%になります。
防衛特別法人税の見落とし
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税に加えて防衛特別法人税を納めます。基準法人税額(所得税額控除などを引く前の法人税額)から年500万円を引いた額に、4%を掛けます(国税庁)。500万円以下なら税額は0円ですが、申告書の提出は必要です。500万円を超える会社は、算式の率に加えます。
前期の申告書の別表一と別表四、それに本店所在地が分かる資料をお持ちいただければ、自社が使う率と、決算書の負担率が実効税率とずれる理由を一緒に確かめます。
実効税率の算式は?
結論: 法定実効税率は、分子に各税の負担率を並べ、分母を1に事業税等の率を足した数にして求めます。分母が、事業税等を損金の額に算入できる効果を表します。
算式の形
算式は、企業会計基準適用指針第28号が次のように定めています(防衛特別法人税を加える前)。
法定実効税率 = {法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率} ÷ {1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率}
分子の前半は法人税と、法人税額に連動する地方法人税・法人税割、後半は事業税と特別法人事業税です。
数字を入れた計算例
中小法人の年800万円を超える部分に、標準税率を入れます。
- 分子:0.232×(1+0.103+0.07)+0.07+0.07×0.37=0.368036
- 分母:1+0.07+0.07×0.37=1.0959
- 実効税率:0.368036÷1.0959=約33.58%
分母が表す損金の算入
法人税、地方法人税、法人住民税の本税は、損金の額に算入できません。事業税は、申告書を提出した事業年度の損金の額に算入でき(国税庁タックスアンサーNo.5300)、特別法人事業税も同じです(東京都主税局)。その分だけ、法人税などの土台になる所得が小さくなります。算式の分母は、この効果を1つの数にしたもので、分母を1にすると分子の36.80%になります。
所得で実効税率はどう変わる?
結論: 中小法人の実効税率は、年400万円以下の部分が約21.4%、400万円超800万円以下が約23.2%、800万円超が約33.6%です。法人税と事業税が、どちらも所得の階段で税率を変えるためです。
中小法人の3段階
外形標準課税の対象外で、軽減税率を適用できる中小法人に標準税率を当てはめた結果です。
| 所得の区分 | 法人税率 | 事業税率 | 法定実効税率 |
|---|---|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 15% | 3.5% | 約21.4% |
| 年400万円超800万円以下の部分 | 15% | 5.3% | 約23.2% |
| 年800万円を超える部分 | 23.2% | 7.0% | 約33.6% |
表の率は、所得の各部分に掛かる率で、会社全体の率は、これを所得の大きさで重みづけした水準になります。自社の実効税率は何%かに、1つの答えはありません。 着地の見込みが年800万円を挟みそうな年は、上下の両方で試算します。
15%は、令和9年3月31日までに開始する事業年度に適用できる特例の税率です(国税庁・財務省)。所得が年10億円を超える事業年度は17%になります。
大法人の29.74%
財務省の「諸外国における法人実効税率の比較」(2026年1月現在)は、日本の法人実効税率を29.74%(2018年度以降)としています。標準税率で計算した大法人の率で、事業税の所得割は年800万円超の所得分で3.6%(特別法人事業税を含む)です。中小法人の33.58%より低いのは、外形標準課税の対象法人は所得割の率が低いためです。ただし、付加価値割と資本割も納めるので、負担が軽いとは限りません。
防衛特別法人税を加えた率
同じ財務省の資料は、防衛特別法人税の課税対象にあたる場合の日本の法人実効税率を30.64%としています。中小法人の年800万円超の部分に同じ考え方を当てはめると、分子に法人税率×4%(0.928%)が加わり、約34.4%になります(当方の計算)。基準法人税額が年500万円を超えた部分に限る話で、軽減税率を適用できる中小法人なら、課税所得が約2,440万円を超えた部分からです。
実効税率が自治体で変わる部分は?
結論: 実効税率のうち、自治体によって率が変わるのは、法人住民税の法人税割と事業税です。法人税、地方法人税、特別法人事業税の率は、全国共通です。
全国共通の税と自治体で決まる税
超過税率の確かめ方
標準税率を超える率は、法人税割なら都道府県は2.0%、市町村は8.4%までです(地方税法51条・314条の4)。東京都主税局の税率表では、23区内の法人税割は、標準税率が7.0%、超過税率が10.4%です。ただし、資本金等が1億円以下で法人税額が年1,000万円以下の法人には、標準税率が適用されます。超過税率の適用条件は自治体ごとに違うので、本店所在地の都道府県と市町村の税率表で確かめます。
超過税率が適用される会社は、算式の住民税率と事業税率を差し替えます。
決算書の負担率と違うのはなぜ?
結論: 決算書の税引前当期純利益に対する法人税等の割合は、法定実効税率と一致しません。会計上の利益と課税所得が違い、均等割も加わるためです。
ずれが出る主な理由
損金の額に算入できない支出があると、負担率は高く出ます。交際費の限度超過分などは、会計では費用でも課税所得に加算するためです。逆に、受取配当等の一部のように会計では収益でも益金に算入しないものがあれば、負担率は低くなります。過去の赤字を引く繰越欠損金を使った期は、課税所得が小さくなり、負担率が大きく下がります。均等割は所得に関係なく納めるので、利益が小さい期ほど負担率を押し上げます。
どちらを見るべきか
将来の試算には法定実効税率を、実績の分析には実際の負担率を使います。実際の負担率がかなり高い期は、損金の額に算入できない支出が膨らんでいる合図です。利益から課税所得を出す手順は、次の記事にあります。
実効税率はどこで使う?
結論: 実効税率は、投資や費用の手残りの試算と、税効果会計の繰延税金資産・負債の計算に使います。いずれも、所得が動いたときの税の増減を1つの率で測る場面です。
投資や費用の手残りの試算
100万円の費用が損金の額に算入できると、所得が100万円減ります。所得が年800万円を超える部分に収まるなら、税負担は約33万5,800円減り、手元から実際に減るのは約66万4,200円です。
特別償却と税額控除を選べる設備投資では、特別償却の効果は「償却額×実効税率」で概算でき、税額控除は控除額がそのまま効果です。
税効果会計
税効果会計は、会計と税務のずれが将来解消されるときの税の増減を、繰延税金資産・負債として計上する処理です。計算には、企業会計基準適用指針第28号が定める法定実効税率を使い、税率は決算日に国会で成立している税法のものです。令和8年4月1日以後に開始する事業年度に解消する差異には、防衛特別法人税を加えた率を使い、基礎控除の500万円は算式で考慮しません(企業会計基準委員会の補足文書)。
よくある質問
中小企業の実効税率は何%ですか?
実効税率が約30%と聞きますが、33.58%と違うのはなぜですか?
防衛特別法人税は、実効税率に入りますか?
まとめ:自社の率を決めて試算に使おう
- 実効税率は、所得に連動する5つの税を1つの率にまとめ、事業税の損金算入を織り込んだ率です
- 中小法人の年800万円超の部分は、標準税率で約33.58%です。表面税率の合計36.80%との差は3.22ポイントです
- 所得の階段で約21.4%・約23.2%・約33.6%と変わり、会社全体の率は1つになりません
- 法人税割と事業税は自治体で変わります。法人税、地方法人税、特別法人事業税は全国共通です
- 決算書の負担率とは一致しません。実効税率は将来の試算に、負担率は実績の分析に使います
法人税の見込みと決算書の数字がずれて悩んでいる方、設備投資を税引後の手残りで比べたい方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。前期の申告書と本店所在地の税率を確認し、自社に使う実効税率と投資後の税負担の見込みを整理します。
出典
- 財務省「諸外国における法人実効税率の比較(2026年1月現在)」
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
- 国税庁 タックスアンサー No.5300「租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」
- 国税庁「防衛特別法人税に関する納付手続等について」
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」
- 企業会計基準委員会「防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(補足文書・2025年2月20日)
- 東京都主税局「法人事業税・法人都民税の税率」「特別法人事業税」
- e-Gov 法令検索「地方税法」「特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律」





